2025.12.28
lynch.@東京ガーデンシアター
lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」

2025年12月28日は、lynch.の歴史において特別な一日となった。2025年全般を通じて20周年にちなんだ活動展開を繰り広げてきた彼らは、この日、その流れの締め括りとなる記念公演「lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT『ALL THIS WE’LL GIVE YOU』」を東京ガーデンシアターにて開催。2004年12月27日に初ライブを行っているこのバンドは、21歳になったバンドとしての最初のステージを迎えることになった。
しかも、過去に幕張メッセや日本武道館での公演実績があるものの、彼らにとってこの会場は初めての場所。5人は「すべてをあなたに与えよう」という意味合いの公演タイトルに似つかわしい集大成的内容の演奏を、自身にとって新鮮きわまりない場所で披露し、その場に集結したオーディエンスに熱狂と歓喜をもたらした。

ただ、そうした特別な意味合いを持つ機会においても、彼らはあからさまに普段と違うことをするわけではない。開演定刻の17時を5分ほど過ぎて場内が暗転し、オープニングSEに乗ってステージ上の配置に就いた5人が最初に披露したのは“ALL THIS I’ LL GIVE YOU”だった。公演タイトルとのリンクを感じさせるこの曲が初めて世に出たのは、インディーズ期にあたる2010年のこと。ほとばしる激情とメロウな甘美さが同居するこの曲にオーディエンスはすぐさま温度差なく同調し、フロアもスタンド席もすぐさま一体感に包まれていく。
オープニング曲が着地点に達すると、余分な空白を設けることなくフロントマンの葉月は「遊ぼうぜ!」と告げ、次なる“斑”へと雪崩れ込んでいく。こちらは2024年リリースの『FIERCE-EP』からの選曲だ。この序盤2曲の誕生時期には約14年もの時差があるわけだが、そこには彼らの音楽における本質的な部分が不変であることを無言のうちに伝えるかのような趣が感じられる。そして、さらに”GREED”、“EVOKE”へと畳み掛けていく展開は、まさに「これぞlynch.のライブ」といえるもの。コンパクトに研ぎ澄まされた楽曲が間断なく連射されるからこその破壊力が、そこにはある。

「lynch.です、よろしくお願いします」
最初のブロック4曲を終えたところで、葉月はいつものように挨拶し、来場者たちに感謝の言葉を述べる。そして彼の口からは、「20周年、lynch.尽くしの1年を締め括り。それよりも、今後の未来が楽しみになるようなライブをみんなにぶっ刺したい」「素晴らしいライブハウスへ、ようこそ!」という言葉が聞こえてきた。1986年に行なわれたBOØWYの日本武道館公演において氷室京介が発した「ライブハウス武道館へようこそ!」という言葉は日本のロック史に残る名言のひとつとなり、アリーナ/スタジアム規模の会場にライブハウスならではの熱く親密な空気を持ち込むことは、ひとつの理想とされるようになった。そして当然ながらこの夜の東京ガーデンシアターには、すでにそうしたエネルギーが充満していた。
“CREATURE”を皮切りに始まった次のブロックにおいても、5人は攻撃の手を緩めることなく、さまざまな時代に生まれたキラー・チューンたちを次々と繰り出してきた。彼らには、世間の誰もが一度は耳にしたことがあるようなヒット曲というものがない。ただ、熱心なファンに愛され、ライブハウスで育てられてきた宝物のような楽曲がいくつもある。だからこそ、彼らのライブから初期の楽曲が完全に排除されることはないのだ。


ことに2025年には、4月に『GREEDEY DEAD SOULS/UNDERNEATH THE SKIN』、9月には『THE AVOIDED SUN/SHADOWS』というふたつのリテイク・アルバム、すなわちインディーズ時代の楽曲が今現在の5人により再録されたアルバムがリリースされている。結成当時、lynch.は葉月、玲央、晁直の3人体制だった。その後、2006年に悠介、2010年に明徳が加入しているが、この2作品の登場によって、彼らは過去すべての楽曲を現在の体制、最新型の水準とバランス感覚で形にするというミッションを終えているのだ。しかも両作品に伴うツアーも経てきただけに、現在のlynch.においては結成当初から近年に至るまでの楽曲すべてが温度差のない同列の状態になっており、インディーズ期やメジャー進出まもない頃を原体験していないファンも、そのすべてを温度差なく受け止めている状況にある。だからこそ往年の楽曲が登場しても、それが過度にノスタルジックな空気をもたらすことはない。もちろん長年演奏されてきた楽曲には相応の思い入れが伴うものだが、それが「懐かしくも新鮮なもの」として響き、今現在にリンクするものを伝えてくれるのだ。


ところで熱気の充満するライブハウスには機材トラブルやアクシデントもつきものだが、実際、この夜の彼らもそれに見舞われることになった。機材的な相性の問題なのか、CO2の白煙が噴出する演出を伴う場面において同期音源が止まってしまうという現象が発生し、演奏中断を余儀なくされることになった。ただ、そんな局面においても百戦錬磨のライブバンドはたじろぐことがない。葉月は自虐的な笑みを浮かべながら「ここで、非常にlynch.らしいトラブルです」と客席に報告し、さらに「21年もやっておりますと、これぐらいへっちゃらなんです」と言って笑いを誘う。そして、そんな話をしているうちに問題は一旦解消され、演奏が再開されると同時に、場内はそれまでと同じ熱気を取り戻していく。結果、こうした出来事もマイナス要素にはならず、このバンドの動じない強さを伝えてくれることになった。

また、容赦のない攻撃性はlynch.の大きな魅力だが、彼らの持ち味はそればかりではない。まさしく万華鏡のように移り変わっていく映像を背にしながら披露された“KALEIDO”から始まった3つ目のブロックにおいては、スピードやアグレッシヴさに答えを求めていない楽曲が続けざまに披露され、このバンドの音楽的な奥行きと多面性が示されていた。テンポ良く続く攻撃の狭間で、ねっとりと絡み付くような空気を醸し出していたこのブロックは、ライブ全体の物語においては“山”というよりも“谷”の部分にあたるものだが、実はこの部分こそがエモーショナルな意味での肝だったようにも思う。ただ単に明暗のコントラストを演出するだけではなく、今や長い歴史を持つようになったこのバンドならではの説得力、円熟味が感じられる場面でもあった。

とはいえ、当然ながらlynch.のライブはそうした空気感のまま終わりはしない。葉月が晁直の名前をコールすると短いドラム・ソロが始まり、誰もが次なる曲の正体が“MIRRORS”であることを察知する。しかしドラムの激走に呼応しながらCO2の白煙が噴き出したところで、前述のようなトラブルが再発生。ここで葉月はマイクを通して「ケムリ禁止!」を宣言し、「なんだかすげえ楽しくなってきた!」と笑う。こうした流れが、仕切り直しを経て改めて炸裂した“MIRRORS”の興奮度をいっそう高めることになった。そしてこの曲を皮切りに必殺曲のさらなる連射が繰り広げられると、時間経過と比例しながら場内の熱はいっそうの高まりをみせていく。しかも“GALLOWS”や“PULSE_”といった鉄板曲の連続を経て、葉月の「この日に向かうために作った曲。その曲でひとつになっていくぞ!」との言葉に導かれながら始まったのは、その言葉通り、アニヴァーサリー・イヤーを締め括るこの夜のために作られた“BRINGER”だった。空中を舞う大量の金テープといい、オーディエンスの大合唱の渦といい、まさにクライマックスに相応しい光景がそこに広がっていた。
この約束の曲をもってライブはひとたび幕を閉じたが、5人が姿を消すや否や、当然のようにアンコールを求める声が湧く。そして数分後、ふたたびステージに登場した葉月は、20年間の積み重ねてきたことの証明となるようなライブになったと喜びを語り、それが改めて自信に繋がったと発言。そのうえで「でもみんな、やっぱり新曲聴きたいですよね?」と客席に告げると大きな歓声が起こり、そこで2026年初夏に次なるアルバムがリリース予定であること、それに合わせてツアーが実施されることが発表されると、オーディエンスの歓喜の声はいっそう高まっていった。葉月は「すっげえの作ります。楽しみに待っててください」とも告げ、さらにこの夜のライブの模様が映像作品化されることも報告。そして「ここでまたやりましょう!」と呼びかけ、「夢を叶える」うえで何よりも不可欠なのは「辞めずに続けること」だと語った。加えて「まだ叶えてないことがたくさんある」とも。

そうした流れのなかで、各メンバーに発言の機会が巡ってきた。晁直は,当初は「(結成当時の)3人のもの」に過ぎなかったlynch.が「みんなのもの」になった感慨深さを語り、悠介はこのバンドの歩みは「山あり谷あり」だったことを認めつつ、そうしたトラブルを乗り越えてきたことが成長に繋がったと語り、「みんなでもっといい景色、見に行きましょう!」と呼びかけていた。幕間のあいだにバックステージで髭を剃ってきたという明徳は、もはや「何をやるにも不安を感じる必要ない」と感じるようになっていると言い、玲央は「葉月(が言ったこと)と同じことを思っていた」と発言していた。
その玲央の口から聞こえてきた「諦めなければ、可能性はゼロではない。これからも、死に物狂いで」という言葉に胸を打たれたファンも多かったことだろう。玲央はその発言の前に、lynch.は彼自身が30歳の時に始めたバンドであること、48歳で武道館公演、51歳でガーデンシアターのステージに到達したという事実を告げていたが、まさにそんな彼だからこその説得力を感じずにいられない。若くして目標達成するのも素晴らしいことだが、挫折やそれに近いものを味わい、人間として成熟期を迎え、常識や判断力を持ち合わせたうえで夢を追うことも否定されるべきではないはずなのだ。


そして熱狂は、その後も続いた。“ADORE”から始まったアンコールでは「ああ、まだ今夜はこの曲を聴けていなかった!」と感じずにはいられない切り札のような楽曲が次々と繰り出された。そんな流れのなか、インディーズ期の終わりを告げる楽曲となった“JUDGEMENT”の歌詞の一節である「さあ、選べばいい/未来も過去も、何もかも忘れて」という言葉が、すべてを語っているように感じられた。そこにはlynch.の紛れもない“今”があり、その“今”に対する共鳴の輪のなかに自分がいるのを感じたのだ。また、それに続いた“EUREKA”は、この記念すべき夜を経たことで本当に特別な1曲へと開花を遂げたように思えた。彼ら自身が影響を受けてきた先人たちの名曲とされるものに肩を並べるものをlynch.もたくさん創造してきたのだという現実が、目の前で証明されているかのような感動を筆者はおぼえた。


この段階でlynch.は23曲を演奏済みだったが、彼らは再度のアンコールに応えてみせた。そして“THIRTEEN”と“TIAMAT”の爆裂をもって、この夜は幕を閉じた。喜びと感謝を口にしながら、5人がステージから立ち去ったのは午後7時39分のことだった。冒頭でも述べた通り、間違いなく特別な一日だった。しかし重要なのは、彼らが20周年の節目を超えたから特別なのではなく、lynch.そのものが特別な存在になっているということだろう。そして彼らはこの先も、特別な日をいくつも重ねていくことになる。信頼と期待をもって、物語の次なる章の始まりを待っていたい。どれほど期待を膨らませようと、2026年の彼らならばそれを飛び越えてくれるはずだからこそ。
◇セットリスト◇
01.ALL THIS I’LL GIVE YOU
02.斑
03.GREED
04.EVOKE
05.CREATURE
06.I BELIEVE IN ME
07.INVINCIBLE
08.IDOL
09.KALEIDO
10.REMAINS
11.A FOOL
12.THE WHIRL
13.MIRRORS
14.THE FATAL HOUR HAS COME
15.GALLOWS
16.INVADER
17.OBVIOUS
18.PULSE_
19.BRINGER
EN
01.ADORE02.JUDGEMENT
03.EVIDENCE
04.EUREKA
W EN
01.THIRTEEN
02.TIAMAT
(文・増田勇一)
【プレイリスト情報】
●プレイリスト名:ALL THIS WE’LL GIVE YOU
lynch.結成20周年の締めを飾った東京ガーデンシアター公演(2025年12月28日)。当公演のセットリストをプレイリスト化。ライブの熱狂と興奮を追体験しよう!
【リリース情報】
●lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」25.12.28 TOKYO GARDEN THEATER【数量限定版】
2026年4月22日Release
¥16,500(税抜¥15,000)
KIXM-90653~4
Blu-ray(2枚組)
[収録内容]Disc.1:lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT 「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」 25.12.28 TOKYO GARDEN THEATER(ライブ本編映像)/オーディオコメンタリー付き
Disc.2:20TH ANNIVERSARY DOCUMENTARY MOVIE
※特別パッケージ仕様:OUTER CASE/DIGIPAK/32P PHOTO BOOK
作品詳細はこちら
[購入特典]
タワーレコードオリジナル特典:ライブフォトブックレット
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●プレミア先行上映会決定!
2026年
4月18日(土) 東京某所
4月19日(日) 名古屋某所
※上映後メンバーによる舞台挨拶あり。詳細は後日発表。
