2025.12.06
Luv PARADE vs NUL.「SYNCROSS」@渋谷REX

Luv PARADE&NUL.

12月6日、渋谷REXにて「Luv PARADE vs NUL.『SYNCROSS』」が開催された。密接な関係にある両バンドがステージで交わるのは、2022年に行われたLuv PARADE主催「DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2」以来だが、ツーマンとして対峙するのは今回が初。本公演の実現がいかに意味深いものであるか、まずは2バンドの成り立ちと直近の出来事をあらためておさらいしておきたい。

Luv PARADEは2009年のD’ESPAIRSRAYのツアー中に、Karyu(G)、ZERO(B)、TSUKASA(Dr)の楽器隊によるセッションバンドとして誕生。2011年、D’ESPAIRSRAYの解散発表後、HIZUMI(Vo)の喉の不調により解散ライブが行えない状況の中、TAKA(Vo/defspiral)がゲストヴォーカルを務める形で、急遽ファンのためにイベント出演を遂行した。その後、KaryuはAngelo、ZEROとTSUKASAはTHE MICRO HEAD 4N’Sで精力的に活動を続けてきたが、2022年1月にAngeloが活動を休止し、各メンバーの動向が注目されていた中で、同年4月にLuv PARADEが再始動を発表。それぞれの活動と並行しながら真のバンドとして歩みを加速させている。

Luv PARADE

一方、D’ESPAIRSRAYの解散以降、音楽活動を止めていたHIZUMIが、岸利至(Prog/abingdon boys school etc.)とMASATO(G/defspiral)に声をかけ、2019年に結成したのがNUL.。なお、岸はD’ESPAIRSRAYの元プロデューサーでもある。これまでに3人でのステージのほか、多彩なミュージシャンと共にライブを重ね、本公演ではKOHTA(B/PIERROT、Angelo)、DUTTCH(Dr/UZMK)、yukako(VJ/Hello1103)をゲストに迎えて臨むこととなった。ちなみに、HIZUMIが再び歌い始めたきっかけ、すなわちNUL.始動の契機となったのは、KOHTAが発した「やりたいんだったらやればいいじゃん」の一言だったという。そうした経緯も踏まえれば、当夜のステージにKOHTAが加わった意味は大きい。

NUL.

ここまで記してきた時系列が示す通り、当夜はLuv PARADEとNUL.のツーマンであると同時に、事実上D’ESPAIRSRAY、defspiral、Angeloの各メンバー同士による対バンともなった。加えて、去る10月にはAngeloが約3年9ヵ月ぶりの再始動公演を完遂、11月には「CROSS ROAD Fest」にてD’ESPAIRSRAYが約11年ぶりに再集結を果たしたばかり(2026年5月4日に開催される約14年ぶりの単独公演は、すでに完売)。さらに言えば、2025年にdefspiral、2026年にTHE MICRO HEAD 4N’Sが15周年の節目でもあり、それぞれ活発な動きを見せている。つまり、界隈が大変賑やかな状況にある昨今なのだ。そして、この日はKaryuの誕生日前夜という要素まで揃った。そんな中で迎えた初の“直接対決”は、当然ソールドアウト。終始熱気に包まれた一夜となったのだった。

HIZUMI

先攻のNUL.は、臨戦態勢と言わんばかりに煽りこそあれど和やかなMCは皆無で、全11曲をプレイ。ダークな「八咫烏 -Yatagarasu-」で重厚感のある幕開けを魅せると、岸によるデジタルビートが映える「Hyena」でテンションを急上昇させ、NUL.の始まりの曲「XStream」を投下。お立ち台に上がり、バックライトに照らされたHIZUMIが〈枯れ果てた声刻め 生きた証を〉と歌う姿は、この日だからこその説得力を帯び、いっそうのリアリティをもって響いた。

さらにMASATOのエッジーなギターリフが冴え渡る爆速ナンバー「Crumble」、満場のOiコールが上がったキラーチューン「ジル」と、前半戦をフルスロットルで駆け抜けた。なお、この日のゲストミュージシャンであるKOHTA、DUTTCH、yukakoはこれまでにもNUL.とステージを重ねてきた面々。視覚聴覚ともに鉄壁の3人が支え、起伏に満ちたステージを繰り広げていった。

MASATO

暗転を挟み、空気を一変させたのは「THE LAST DAY」。いつか訪れる最期の日を思い、歌に愛を込めることを綴ったこの曲が、いわば当夜のNUL.のステージにおける第2章の始まりを告げた。次いでメンバーコールを含む鉄板の「Dictate」で一気にギアチェンジを図ると、ドラマティックな構成が魅力的な「SUNBREAK」が前後を繋ぐフックとなり、いよいよ終盤へ。

「Awakening」「HYBRiD BEAST」と畳み掛けたオーディエンス参加型のハードなライブナンバー2曲は、白熱の光景を描き出すことはもちろん、自らの意思を持って生きること、逆風さえも浮力に変えて唯一無二になれという力強いメッセージを刻む、まさにクライマックスにふさわしい展開となった。そして、「今、俺たちが伝えられるすべてを詰め込んだ曲です」(HIZUMI)と、エモーショナルな新曲「IMAGICAL TATOO」をもってこのステージを締めくくったのだった。

岸利至

幕開けを「八咫烏 -Yatagarasu-」、後半への折り返しを「THE LAST DAY」、ラストを「IMAGICAL TATOO」と、聴かせる3曲の効果的な配置が実に見事な起承転結を作り上げていたことを、あらためて記しておきたい。また、去り際に「明日誕生日のヤツがいるから、思いきり祝ってやってよ」と告げたHIZUMIの心意気が、温かな余韻を残した。

TAKA

後攻のLuv PARADEは、フロアにハンドクラップとOiコールが鳴り響く疾走感溢れる「SHOOT IT DOWN」でトップギアのスタートを切ると、「FREAK PARADE」でさらに熱気を押し上げ、序盤から圧巻の一体感を築き上げた。「NUL.との対バン、この日を本当に楽しみにしていました」というTAKAの言葉を経て、楽器陣によるアタック感の強いユニゾン始まりの「Hameln」、邪悪なヘヴィーサウンドが轟く「JOKER」へと雪崩れ込み、フロアには激しいヘッドバンギングが巻き起こった。

ここで舞台はモノクロの世界に切り替わり、ドラマティックなバラード「EDELWEISS」が一瞬にして場内の空気を支配すれば、そこに続いたのはキャッチーなロックチューン「Heaven or Hell」で、2曲の鮮やかなコントラストが際立つ流れとなったのが印象的。攻撃力の高いハードナンバー「MIDNIGHT SUN」で再び熱量を爆上げしたのち、本編ラストナンバー「TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT」を前にTAKAが語ったのは、この夜の本質を象徴するものだった。

Karyu

「『SYNCROSS』はSYNCROとCROSSを掛け合わせた言葉ですが、いろんな絆、運命で繋がっている仲間だと思います。メンバーだけじゃなく、集まってくれた皆も何かしらの縁で繋がった仲間です。同じ場所に集まって過ごせるのは、奇跡だと思います」

Karyuが奏でるギターに乗せ、オーディエンスとの掛け合いによる〈We live tonight We live tonight 思いのまま跳べばいい We live tonight We live tonight 二度とは無いこの夜に〉の温かなシンガロングが響き渡った。TAKAが〈思いのまま歌えばいい〉と歌い替える場面もありながら、タイトルコールでバンドイン。TSUKASAの軽快なドラミングとZEROのパーカッシブなプレイ、広大な景色を感じさせるダイナミックかつ劇的な展開で、光り輝く締めくくりとなった。

ZERO

アンコールでは、Karyuへのバースデーサプライズの一幕も。ケーキを手にしたHIZUMIをはじめ、出演者が勢揃いし、祝福のムードに包まれた。KOHTAがKaryuの隣に立ち、「お前のためにこのまま(メイク・衣装)待ってたよ。Happy Birthday!」と、はにかんだ笑顔を見せれば、TAKAは「これからもカッコいい曲を書いてもらって、歌わせてください!」と粋な言葉を贈る。さらに、「何回祝ったかわからないくらい祝っていきたいと思います。これからもKaryuをよろしくお願いします!」(ZERO)、「生まれてきてくれてありがとう! お父さんお母さん、ありがとう!」(TSUKASA)と、リズム隊の二人が温かなメッセージを添えた。

TSUKASA

ここで披露されたのが、当夜唯一のカバー曲「The NeverEnding Story」(Limahl)であり、Luv PARADEとNUL.の初のツーマン、仲間たちとの絆、誕生日…そんなさまざまな意味合いが重なり合う中で奏でられる“終わらない物語”は、なんとも感慨深いものだった。そして、この楽曲との親和性も高いメロディアスな最新曲「ARROWS」で、多幸感に満ちたエンディングへ。なお、これら2曲がいずれもギターソロを有するナンバーであったことは、Karyuの誕生日前夜にもふさわしいラストだったと言えるのではないだろうか。

かくしてこの特別な一夜は終幕を迎えたわけだが、両バンドとも今後多くのステージを控えている。いつか再び彼らの道が交わる日を願いつつ、それぞれの未来に幸多からんことを。

◆セットリスト◆
【NUL.】
01. 八咫烏 -Yatagarasu-
02. Hyena
03. XStream
04. Crumble
05. ジル
06. THE LAST DAY
07. Dictate
08. SUNBREAK
09. Awakening
10. HYBRiD BEAST
11. IMAGICAL TATOO

【Luv PARADE】
01. SHOOT IT DOWN
02. FREAK PARADE
03. Hameln
04. JOKER
05. EDELWEISS
06. Heaven or Hell
07. MIDNIGHT SUN
08. TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT

En
01. The NeverEnding Story/Limahl
02. ARROWS

(文・金多賀歩美/写真・堅田ひとみ)


【Luv PARADE ライブ情報】
●machine主催「ULTRA BEAST HAMMER BATTLE」
2026年1月23日(金)川崎CLUB CITTA’
出演:machine、Psycho le Cému、JILUKA、摩天楼オペラ、Luv PARADE/司会:団長(NoGoD)

●Luv PARADE「WHITE NIGHT」「BLUE NIGHT」
2026年
1月24日(土)渋谷REX「WHITE NIGHT」
1月25日(日)渋谷REX「BLUE NIGHT」

●Luv PARADE ツアー(タイトル未定)
2026年
2月21日(土)OSAKA RUIDO
2月22日(日)名古屋ell.FITZ all
2月28日(土)新宿ReNY

【NUL. ライブ情報】
●NUL. LIVE 2025「Resonance of Noise #3」
12月27日(土)吉祥寺PLANET K

●NUL. FC限定ライブイベント「違法解放区」
2026年1月9日(金)吉祥寺SHUFFLE

●NUL. live 2026
2026年2月6日(金)下北沢ReG

●Verde/ 2MAN LIVE「TWIN RESONANCE II」
2026年2月13日(金)高円寺HIGH
出演:Verde/、NUL.

●NUL. live 2026「Distorted Circus」
2026年3月1日(日) EDGE Ikebukro

Luv PARADE オフィシャルサイト
NUL. オフィシャルサイト