2025.05.02-05.03
Psycho le Cému presents「姫路シラサギROCK FES 2025」@アクリエひめじ 大ホール

生まれ故郷でフェスを開催するというのは、アーティストのひとつの夢かもしれない。2025年5月2、3日、Psycho le Cémuがそんな夢をかなえ、地元・兵庫県姫路市の姫路アクリエ大ホールで、『姫路シラサギROCK FES』を開催した。新たな歴史の幕開けとなる、記念すべき第一回目の模様をお届けしよう。
夜中からの激しい雨が、正午を迎える頃にはすっかり晴れ渡っていた。姫路駅からまっすぐ伸びる道の正面に、白い壁が美しく、白鷺城の別名を持つ姫路城が輝いて見える。駅前にはPsycho le Cémuの大きな看板が飾られたフォトスポットが用意され、会場へ向かうファンが足を止めて記念撮影を楽しんでいた。姫路アクリエ大ホールに到着すると、ロビーにはファンからの応援提灯が華やかに展示され、推しカラーの法被に身を包んだサイコファンの姿もちらほら。フェスならではのお祭り気分が盛り上がる。
オープニングを飾ったのは、Psycho le Cémuのお芝居。派手なヴィジュアルに、コンセプトに基づいたストーリーを絡めたステージを展開する彼らだが、現在は、アクリエ(この会場の名前!)なる漆黒の隕石が地球に衝突するのを防ごうと、幾多の冒険を繰り広げてきたところだったのだ。そこでたどり着いたのが、まさに隕石そのものの上だという。ここでアーティストが音楽を奏で、応援するファンが集うことで、愛と希望を集めて隕石を小さくし、地球を救うのだ。このフェスが持つ意味合いを観客へ伝え、DAISHIがフェスのスタートを高らかに宣言した。


そこへ流れ出す「メープルガンマン」。トップバッターを務めるアンティック-珈琲店-が、その姿を現した。以前は可愛いという印象の強い彼らだったが、2023年に復活して以来、すっかりカッコよく、たくましく成長したようだ。特にヴォーカルのみくは、太く力強さを増した歌声を聴かせながらマイクスタンドを振りかざし、カッコいいフロントマンぶりを見せつける。負けじと楽器陣も、ノリノリのダンスミュージックで楽しく踊らせつつ、個々の存在感を光らせていた。

「もうおじさんなんだけど」と笑いとともに前置きをして、おなじみ「ニャッピーo(≧∀≦)o」の挨拶。そして、前夜にYURAサマおすすめの辛い料理を食べに行ってしまったと、会場を和ませる。「テケスタ光線」「スノーシーン」といった初期の名曲を畳みかけ、「Cherry咲く勇気!!」ではAYAとYURAサマを加え、フェスならではのステージを展開(この後も、Psycho le Cémuのメンバーは大活躍)。にぎやかに、そしてカッコよく、アンティック-珈琲店-らしい個性を存分に見せつけ、トップバッターの大役を果たした。


転換中、くつろいでいる観客の前に、IZAMが登場。Psycho le Cémuとは同じ事務所に所属していたことがあり、後輩を思って「盛り上げたいじゃん」と笑顔を見せる。軽妙なトークに観客がすっかり惹き込まれたところで、「サウンドチェックします」と言って始まったのは、SHAZNAによる、Psycho le Cémuの「LOVE IS DEAD」のカヴァー。おおいにざわめく会場へ、AYAも加えて続けて投下されたのが、「Melty Love」。この会場に足を運んだ、90年~00年代のバンギャたちは間違いなく口づさめたであろう、1997年の大ヒット曲を、令和の今、ナマで聴けるのは何とも感慨深い。それだけの時間が経過しているにもかかわらず、太ももをチラリと見せるIZAMのヴィジュアルの変わらなさっぷりに、驚かされた観客も多かっただろう。

さらに、昨年夏リリースしたアルバム『参華三釼』から2曲を聴かせ、現在進行形で活動を重ねている姿を見せることも忘れず、魅力を凝縮したステージが終了。歌はもちろん、花のあるヴィジュアルに、観客を引き込むトーク力、圧倒的な存在感を放つIZAMと、ロックミュージシャン然としたA・O・IとNIYというコントラストが鮮やかで、彼らの実力やポテンシャルを再確認させられた。

明るく華やかなステージの空気を、ガラッと一変させたのがDEZERT。「楽しむ準備はできてますか?」と千秋が投げかけ、「君の脊髄が踊る頃に」が始まると、会場中に緊張感が広がり、温度が少し低くなったような、そんな空気の変化が感じられる。


「ちょっとアウェーな気がするんですけど」と口にしつつも、千秋は気に留める様子などまるでない。どんな環境であっても、聴いている一人ひとりに伝えようとする、その明確な意志の強さこそが彼の魅力だろう。「“あなたたち”にではなく、“あなた”に」と繰り返す、実直で人間くさいところは、DAISHIとLidaとともに、おなじみの「「殺意」」を聴かせるシーンでも垣間見られた。慣れ合うことはないが、フェスを盛り上げようという気概は人一倍だったのではないか。Sacchanのキュートなリコーダーで空気を和ませた後、最後に贈られたのは「ミザリィレインボウ」。3階席まである広い空間を満たすように、歌から放たれる温もりや優しさが広がり、照明の光とともにからだ全体でじっくりと味わわせるエンディングだった。

「ドラゴンクエスト」のSEが高らかにPENICILLINの登場を告げた。ゆったりとした足取りでメンバーが登場、最後にHAKUEIがセンターへ。広いステージでも目を引く長身に黒づくめの衣装、黒い眼帯という姿は貫禄十分。「NEW FUTURE」からひとたび演奏が始まると、タイトなドラムで後方からサウンドを引き締めるO-JIRO、これぞギターヒーローと言わんばかりに派手に弾きまくる千聖と、それぞれのパートの力を集約するバンドだからこそのパワーを感じさせる。結成33年を越え、自分たちを貫き続け、活動を重ねているバンドが持つ、経験に裏打ちされた実力が現れていた。


そこへ、PENICILLINと言えばこの曲と言っても過言ではない「ロマンス」を披露し、これまた観客は大喜び。現在も成長を続けていることは言うまでもないが、その偉大な歴史はファンを熱狂させ続けてやまないのだ。そして最後は、seekを加えて、「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」をプレイ。seekは、HAKUEIのユニット、machineのサポートを務めることが既に発表されており、7月のライヴでも、熱くクールなツーショットが見られるのが楽しみだ。


トリを飾るのは、もちろんPsycho le Cému。「クロノス」が始まった途端、いつも以上に気合いの漲ったDAISHIの歌声に耳を奪われた。このフェスに掛ける強い思いを感じずにはいられない。5人でダンスを繰り広げる「BLADE DANCE」では、YURAサマのいつも以上にキレッキレの動きから、テンションの高さがうかがえた。


今日のライヴにははずせなかったであろう「夢風車」は6曲目。「白鷺城下町を旅立ち今」という歌詞で始まるこの曲を、地元姫路での主催フェスで演奏するメンバーの胸中を想像すると、思わずこちらの胸まで熱くなる。そんな感傷めいたものを吹き飛ばすように、激しく駆け出していく「MOON PRISONER」、さらに熱くぶつかり合う「Murderer Death Kill」と続け、彼らのデビュー曲である「愛の唄」で締めくくる。明るく伸びやかなメロディ、まっすぐ心に届く歌詞、それらをひたすら届けようとする5人の姿はまぶしく、キラキラと輝いていた。


音楽の力でもって、漆黒の隕石アクリエが愛と希望に満ちて消滅したというナレーションの後、アンコールには、seekの母校である姫路南高等学校(2025年から統合され姫路海稜高等学校)のコーラス部の高校生たちが登場。このフェスのためにつくられたテーマソング「シラサギ」を地元の後輩たちと一緒に届けるという、どこまでも姫路愛にあふれた演出と、Psycho le Cémuの未来をつづる歌詞、そして合唱のハーモニーが重なり、どこまでも感動的なフィナーレとなった。

この後、盛りだくさんな告知の最後に告げられたのは、6月4日、デジタルシングル『シャクティシャクティアスティ』のリリース。これは、Waiveの杉本善徳がプロデュースするコンセプト「Psycho le Cému of The DEAD ~शि त शि त अि त~」から最初に披露される曲となる。新コンセプトに基づいたヴィジュアルは、ホールの外に出てみると、あちこちに掲示されたポスターで披露され、さらにチラシが配布された。フェスの最後の最後までワクワクさせ続け、ファン思いのPsycho le Cémuらしく、第一日目が終了。

翌5月3日。ヴィジュアル系の王道をいく出演者ばかりだった前日とは、かなり印象の異なる出演者が揃っているだけに、観客の雰囲気もずいぶんと違うよう。そんな中、幕が上がって、照明に浮かび上がったのは、ENVii GABRIELLAの3人のシルエット。壮大なSEに手拍子が加わり、期待感がふくらんでいく。唯一、バンド編成ではない出演者ではあるが、「オネエ、入りまーす!」という一言から、あっという間に自分たちのペースに。


「ドンチードンチー言ってりゃいいのよ」と、愛あふれる乱暴な口調で次々にまくしたて、4つ打ちのビートに乗せ、3人のフォーメーションを活かしたダンス(それも足もとはピンヒール!)で観客を魅了する。LidaとYURAサマが登場し、一緒にダンスした「サイコダンス」を挟み、最後はドラマチックな「Symphony」。Takassyの声の魅力でしっかりと聴かせ、音楽でも存分に楽しませてくれた。「オネエ3人の音楽をメインとした総合エンターテイメントユニット」の名にふさわしいステージには、初見の観客もすっかり引き込まれたはず。

華やかなムードを一転、どす黒く染め上げたのはキズ。個性豊かな出演者が揃った両日だが、ここの落差が一番激しかったかも。傘をさし、フードを深くかぶったまま登場したヴォーカルの来夢の表情は、ステージ中央の立ち位置まで来てもまるでうかがえない。ミドルテンポの「ストロベリー・ブルー」が始まると、真綿で首を絞めるかのように、じっくりと攻められているようにさえ感じられる。それがまた、恐ろしくも美しい。

ピアノの静かな音色から、感情の赴くまま歌い上げる声が重なって、「鬼」が始まる。楽器陣の音が加わっていくと、生きることへの渇望のような、来夢の生々しい感情がさらに迫ってくる。サウンドはもちろん、観客への向き合い方や突きつけてくる表現など、出演者の中でも群を抜く“圧”を感じさせた。フェスだから、みんなで仲良く盛り上げようといったようなところはちらりとも見せず、ひたすら攻撃に専念したのがまさにキズらしく、それこそがPsycho le Cémuへの彼らなりの礼の尽くし方だったのだろう。

続いては、ゴールデンボンバー。メンバー4人の登場と同時に「元カレ殺ス」が始まると、メンバーは自由奔放が過ぎるほどで、ステージのどこに目をやればいいか、思わず迷ってしまう。「抱きしめてシュヴァルツ」では、DAISHIの顔のお面と黒ビキニ姿で樽美酒研二が現れたり、姫路出身のあややに扮した(?)喜矢武豊が、あややのシャンプーのCMを再現したりと、とにかく大騒ぎ。


さらにPsycho le Cémuのメンバーもステージに登場。勇者姿のDAISHIが、「酔わせてモヒート」を鬼龍院翔とツインヴォーカルで聴かせ、ギターを手にしたseekが、「♰ザ・V系っぽい曲♰」でエアギターを披露。さらに、歌広場淳は3階席まで客席中を駆け回るというにぎにぎしさ。そして最後はもちろん「女々しくて」で会場をひとつにまとめ上げる。サービス精神の塊でありつつ、楽曲からはヴィジュアル系らしさがしっかりと漂い、エアーバンドであることを超えた個性と魅力でおおいに楽しませてくれた。

バイクのエンジン音が、氣志團の登場を告げる。楽器陣がそろったところで、綾小路翔がバイクに乗って登場。パワフルなドラムソロに、エンジン音を重ねるセッションから「喧嘩上等」で幕を開けると、観客をステージに釘付けにする。聴かせ方も見せ方も細やかに工夫されたうえ、ひとつひとつを丁寧につくり上げていることが伝わるところには、誠実ささえにじんでいた。


『氣志團万博』を開催している彼らは、いわばフェスの先輩。今日のフェスを「我がことのように嬉しく、感動してます」という綾小路の言葉には、後輩の成功を喜ぶ漢気があふれていた。そんな綾小路のカッコよさは、彼らの地元を思い、万感の思いを込めて歌い上げる「落陽」でさらに輝く。そして、彼の歌そのものが持つ説得力にも圧倒された。最後は、特攻服に身を包んだPsycho le Cému5人を迎え、「One Night Jamboree」で明るく華やかに締めくくる。すでに大団円といった空気さえ漂わせた彼らは、ロックでありながら、極上のエンターテインメントを届け、会場全体を巻き込んでがっつりと盛り上げた、このフェスの功労者とも言えるだろう。

フェスの二日目である5月3日は、Psycho le Cémuの26周年の結成記念日。そんな大切な日、そしてフェスを締めくくるライヴは、「君がいる世界」からスタートした。前日はやはり緊張があったのか、イキイキと躍動する5人の姿が頼もしく映る。DAISHIは今日も絶好調な様子で、「FANTASIA-恋の幻想曲-」をピアノに合わせて切々と歌い上げる。メンバーそれぞれが思いを込め、全力でプレイに集中していることが伝わってくるようだった。
ダンスを交え、彼ららしい楽しいライヴを繰り広げたところで、攻撃へと転じていく。「Murderer Death Kill」では、seekが客席へと降り、堂々と通路を歩いていく。この空間をおおいに味わい、胸にやきつけるかのようだ。熱気が広がる会場へ最後に贈られたのは、「アカツキ」。コロナ禍を経て、未来への希望と決意を込めて生まれた曲が、彼らの未来にとって重要な一歩となるに違いない『姫路シラサギROCK FES』に刻まれた。

そして前日と同様に学生達との共演のステージ。フェスの大成功を実感しながら聴く「シラサギ」は、新たな感慨をもたらしてくれた。「青き春 君を想い 愛を唄った日々よ シラサギが舞う青い空で 千年の夢をみよう」と歌われるこの歌は、Psycho le Cémuの夢がまだまだ続くことを示している。26年の歳月を経て、彼らは大きな夢を抱き続けているのだ。だからこそ、彼らはこんなにも輝いているのだろう。

最後の最後には、『姫路シラサギROCK FES 2026』の開催決定というとびきりの発表があり、Psycho le Cémuの未来をさらに明るく照らし出した。個性的で実力のある出演者たちが、主催者であるPsycho le Cémuのメンバーを交えつつ、このフェスならではのステージを繰り広げた二日間。第一回目にして、このフェスならではの空気感が生まれていたことは、姫路を盛り上げたいというPsycho le Cémuのフェスに懸ける強い思いの結果だろう。
この先、どんなふうにこのフェスが成長していくのか。『姫路シラサギROCK FES 2026』で、桜の咲く頃に再会するのが今から待ち遠しい。

(文・村山幸/ライブ写真・kondoh midori/アーティスト写真・Sayaka Aoki(PROGRESS-M))
【配信情報】
●「姫路シラサギROCK FES 2025」のアーカイブ配信
DAY1:Psycho le Cému、PENICILLIN、SHAZNA、アンティック-珈琲店-、DEZERT
DAY2:Psycho le Cému、氣志團、ゴールデンボンバー、ENVii GABRIELLA
※キズの配信はございません。氣志團は6曲目までの配信となります。予めご了承ください。
視聴チケット購入はこちら
2025年5月17日(土)23:59まで視聴可能、販売は同日20:00まで
<姫路シラサギROCK FES 2025テーマソング:「シラサギ」>

【Psycho le Cému ライブ情報】
●Psycho le Cému Tour 2025「शक्ति शक्ति अस्ति ~破壊と創造の物語~」
7月12日(土)渋谷WWW X
7月19日(土)福岡DRUM Be-1
7月20日(日)岡山IMAGE
8月3日(日)仙台MACANA
8月10日(日)さいたま新都心VJ-3
●Psycho le Cému Tour 2025「शक्ति शक्ति अस्ति ~神聖なる新生~」
8月31日(日)新宿LOFT
9月19日(金)新横浜NEW SIDE BEACH!!
9月21日(日)柏PALOOZA
9月23日(火・祝)名古屋ELL
10月4日(土)大阪BIG CAT


●MUD FRIENDS 2000〜2025
Psycho le Cému、Waive、MUCC
11月13日(木)Zepp DiverCity Tokyo
OPEN17:30/START 18:30
1Fスタンディング ¥9,900/2F指定席 ¥11,000
※入場時別途DRINK必要
最速先行受付:5月14日(水)23:59まで
●CROSS ROAD Fest <DAY1>
11月15日(土)幕張イベントホール
OPEN12:00/START13:00
出演:Psycho le Cému、Laʼcryma Christi、SHAZNA、Plastic Tree、FAIRY FORE、Waive、DʼESPAIRSRAY
先行受付:5月19日(月)23:59まで
【Psycho le Cému リリース情報】
●New Digital Single『シャクティ シャクティ アスティ』
2025年6月4日(水)サブスク&配信スタート
New Concept Produced by 杉本善徳(Waive)