2025.05.03
hide with Spread Beaver@東京体育館
「hide Memorial Day 2025 hide with Spread Beaver“REPSYCLE” ~Life is still going on!!~」

こんなにも数奇な運命をたどったバンドはない。彼らは1998年1月1日、新聞の全面広告の中にhide with Spread Beaverという名前で登場した。メンバーはhideとそのソロ活動を支えてきた仲間たち。改めてバンド名を得てさらなるステップアップが、と誰もが思った。発表前夜がX JAPANのラストライヴであったゆえ、よけいに期待は盛り上がった。

そのわずか4ヵ月後、3rdアルバム『Ja,Zoo』制作途中にhideは去った。様々なメディアで熱く未来を語り続けていた真っ最中に。しかし、苦闘のちI.N.A.を中心にhide with Spread Beaverのメンバーは制作途中の3rdアルバムを完成させ、hide不在のまま全国ツアーを行なっている。そしてアルバム『Ja,Zoo』はミリオン・セラーに。

普通だったら、ここで終わっていただろう。あるいはクイーンなどのように新たなヴォーカリストを迎えて活動を継続していったかもしれない。けれどもhide with Spread Beaverは違った。映像の中のhideと共に’08年味の素スタジアム、 ’16年幕張メッセ、’18年お台場野外特設ステージとビッグ・ステージに登場しつづけた。’23年には再びワンマン・ツアーすら行なっている。hideに代わりはいない、ということを身を持って示し続けた歳月。メンバーとスタッフの努力は、回を重ねるごとに映像とバンドがより一体化していく、という奇跡をも産んでいた。

そしてhideの生誕60周年を記念して制作された永久保存版スペシャルBOX『REPSYCLE 〜hide 60th Anniversary Special Box〜』の発売を記念して開催するライヴの日がやってきた。場所は東京体育館。その公演、2日目に足を運んだ。

DJブース、hideの愛車の展示、難病や復興支援のテント、沢山の親子連れを含む単独アーティストのライヴとは思えない多彩なお客さんたち。この場外の光景がすでに特別さを伝えていた。

オープニング。スクリーン映像の中で、登場した各メンバーのアーティスト写真とリアルタイム動画が紐付けられていく。hideの写真のあとに映し出されたのは舞台中央に置かれた愛用のギター、イエローハートだった。

冒頭の3曲は「POSE」「BACTERIA」「DAMAGE」。こんなにも激ハードなレパートリーを取り揃えつつ大メジャーな存在でいられたhideの不思議さを改めて想う。
MC。「hideが帰ってきたぜ。祭りだぜー!」と叫んだKIYOSHIにすかさず「江戸っ子だってね」と返す映像の中のhide。笑った。こうした部分も明らかに進化している。「Cafe Le Psyence」ではさらに凝ったコンビネーションが。D.I.E.の素晴らしいピアノ・ソロに対してhideが絶賛する。指遣いをも褒めるとリアルで指がアップになる。しかも背景でCHIROLYNが歌い続けることで虚と実の境目がさらにあいまいになる、といった具合に。

8曲目「PINK SPIDER」あたりで気づいたのは、過去1ヴォーカルが鮮明、という点。hide with Spread Beaverならではの轟音感あふれるオケの中でもクッキリと聴こえてくる。「EYES LOVE YOU(DEATH HOLLYWOOD ver.)」も、彼の中では特異な朗々とした歌い方が鮮明に浮かび上がっていた。

「オモチャ箱をひっくりかえしたような」という生前のhideの言葉が蘇ってきたのが「FISH SCRATCH FEVER」。ここでは背中側に魚の尻尾、前側に頭が飛び出したシャツを着たD.I.E.が音頭をとって、メンバー全員を魚に例えつつコール&レスポンス。ヘヴィだったりポップだったりする楽曲群の中に謎の、そして懐かしい空間が生まれていた。

15分間の休憩を経て始まった2部は木村世治(ZEPPET STORE)のソロ・コーナー。’96年仙台サンプラザ公演でステージに彼を呼び込んだhideが「めちゃめちゃ愛してる彼の歌を聴いてください」と言った映像がまず流れ、弾き語りで「FLAKE」。さらに途中からhideが加わって「GOOD-BYE」。「木村、いつかデュエットしようぜ」と言ってくれたhideさんの言葉がかなった、と彼はしめた。

木村世治(ZEPPET STORE)

第3部は「PSYCHOMMUNITY」の映像から。ギーガー作マスクのお面をかぶって遊ぶ子供たちの映像は今見ても強烈。もうこの時点からhideは未来を歩いてたんだな、と思う。曲は再び「DICE」「DOUBT」とヘヴィー・チューンを披露のち車椅子でPATA登場。「はい、行ってまいります」と言って「CELEBRATION」のリフを弾き始める。さらに「松本さん、今夜もお借りします」とイエローハートを手にして「TELL ME」。頭上には金銀のテープが舞い、間奏ではKIYOSHI、CHIROLYN、K.A.ZがPATAを囲んだ。さらに「でっけえロケットを打ち上げようぜ!」とCHIROLYNがさけんで「ROCKET DIVE」へ。エンディングで彼は、腹の底からWe are hide with Spread Beaver!と叫んだ。

最後に舞台の前に並んで手を取り合い掲げたメンバーたち。が、真ん中が1箇所だけ空いている。その奥にイエローハートが見えてハッとした。色んな場面で、彼がいるような気になっていた自分に気付かされて。「こんなときhideだったらどうするか?」とは、あの日以来メンバーやスタッフがたえず口にしてきた言葉だ。その気持ちの汲み方が27年ぶん積み重なって生まれたこの日。ゴーグルをつけて観るより遥かに愛しい、ヴァーチャル・ライヴが立ち現れていた。

◆2025.05.03セットリスト◆
SE PSYENCE
01. POSE
02. BACTERIA
03. DAMAGE
04. BEAUTY & STUPID
05. 限界破裂
06. Cafe Le Psyence
07. FLAME
08. PINK SPIDER
09. EYES LOVE YOU(DEATH HOLLYWOOD ver.)〜 EYES LOVE YOU
10. MISERY
11. Junk Story
12. FISH SCRATCH FEVER
13. ever free

《2部》
Guest
01. FLAKE/木村世治
02. GOOD-BYE/木村世治 feat. hide

《3部》
SE PSYCHOMMUNITY
14. DICE
15. DOUBT
16. CELEBRATION
17. TELL ME
18. ROCKET DIVE
SE HURRY GO ROUND

(ライブ写真・Kazuko Tanaka (CAPS))


【番組情報】
●「hide Memorial Day 2025 hide with Spread Beaver “REPSYCLE” ~Life is still going on!!~」
hide with Spread Beaver東京体育館公演2日目を、6月29日(日)18時〜WOWOWで独占放送&配信決定!

7月にはhide MV集と、映画2作品『hide 50th anniversary FILM JUNK STORY』『TELL ME~hideと見た景色~』もあわせてお届け!

番組サイト

【ライブ情報】
●「hide Birthday Party 2025」
12月13日(土)CLUB CITTA’
OPEN 14:00/START 14:45
出演:hide、Chirolyn、defspiral、DIE、DJ-INA、JOE、PATA、木村世治、桃知みなみ (Opening DJ) and more. . . ※アルファベット順

hide誕生日をお祝いするライブパーティーが今年も開催決定! 会場となるCLUB CITTA‘のステージには、2025年に待望のワンマンライブを実現させたhide with Spread Beaverのメンバーが、DJ、ソロ、バンドなどそれぞれの活動スタイルで出演。ほかhideのスピリットを継承するゆかりの深いアーティストが次々のと登場し、オーディエンスと一緒にhideの誕生日をお祝いします!

5月2日(金)17:00よりhideオフィシャルファンクラブ『JETS』会員最速チケット先行スタート!
特設ページ
公演についてのお問い合わせ:クラブチッタ 044-246-8888(平日12:00〜19:00)

hide オフィシャルサイト