2024.11.07
メリー@恵比寿LIQUIDROOM

ラムフェス2024

2001年の結成から丸23年を迎えた記念日の11月7日に、東京・恵比寿LIQUIDROOMで主催イベント「ラムフェス2024」を開催したメリー。

その前哨戦として4月に開催した「ラムフェス2024-EXTRA-」では、メトロノーム、heidi.、ダウト、RAZORというバラエティに富んだバンドとしのぎを削ったが、この「ラムフェス 2024」に集ったのはcali≠gari、有村竜太朗、kein。メリーを結成した当時、すでにその名を轟かせていた面々ばかりで、ガラいわく「化け物達」である。

「あんな化け物達と俺らは結成した当初戦おうとして、戦い合って、またここに集まれたのはすごく嬉しいこと」。同じ景色を見て、同じ時代を生きてきた彼らと共演できた喜びを、並々ならぬ想いでガラは噛み締めていた。

永遠がないこと。有限であるこの世界の一瞬一瞬が尊いこと。近年に味わった日本のロックシーンにおける大きな喪失感を胸に抱いて、そんなことに想いを馳せる。この日の出演者もまた、同じ想いを共有していたのではないだろうか。

トップを飾ったのはcali≠gari。カツカツと響く大きな足音のSEと共にメンバーが登場し、一曲目に鳴らしたのは「東京アーバン夜光虫」だ。サポートドラムはササブチヒロシ。

語りかけるような石井秀仁(Vo)のローヴォイスと、グルーヴィーなアンサンブルは、ゆらりと立ち上り広がっていく瘴気のように会場の中を侵食していく。村井研次郎(B)の躍動するベースフレーズから「龍動輪舞曲」が始まると、リズムに合わせて軽快なクラップが湧き起こった。その中を駆け抜ける桜井青(G)のギターソロの爽快さは心地よく、続く「乱調」「化ヶ楽ッ多」と最新アルバム『17』からのロックナンバーで、今のcali≠gariサウンドの現在地を見せた。

「一つのメルヘン」「ハイカラ・殺伐・ハイソ・絶賛」「燃えろよ燃えろ」とアッパーチューンでさらにボルテージを上げた後、「バカになるぞ!バカになるのに必要なのは、メリー!結生&ネロ!」と桜井が呼び込むと、マイクとタオルを手にしたネロ(Dr)と、結生(G)が登場。桜井は結生に自身のギターを託すと、「バカ!バカ!バカ!バカ!」でネロと一緒にステージを右に左に盛り上げる。

吐き出し系の暴れ曲でありながら、“ぼくもわたしも笑って死にたい!”と歌う死生観は、先に書いたガラの想いともリンクする。会場も一体となって大合唱するその様子は、やけにキラキラとして見えた。全8曲MCなしのほぼノンストップで、30分のステージを駆け抜けた。最後に残った桜井が観客に向けて掛けた「がんばろっ」の一言は、とても温かだった。

青いライトがステージを照らす中、SE「幻形テープ/genkeitêpu」の美しい調べに乗って登場したのは、二番手の有村竜太朗。幻想的な空気を引き継いで始まったのは「円劇/engeki」。SYUTO(Key)が奏でる鍵盤と有村の歌、そこに悠介(G)のドラマチックなギターリフが絡み合い、メランコリックな世界へと誘っていく。

その空気を一変するように、高垣良介(Dr)の高らかな4カウントから、疾走感あふれる「猫夢/nekoyume」へ。歌に寄り添うな鳥石遼太(B)のベースも心地いい。短いメンバー紹介を挟んで、瑞々しさをまとうロックチューン「≒kagidokei」を披露した後、有村がギターを置いてハンドマイクを手にし、「僕らとも遊んでいってくれますか?楽しいことしますよ」と前置き。「≒jukyusai」のイントロに乗せて「ここでガラさん登場!」と有村がガラを呼び込んだ。

パンキッシュな「≒jukyusai」を有村とガラのツインヴォーカルで聴かせると、フロアのボルテージもMAXに。曲中で有村が最前列の観客からタオルを2枚拝借して、2人で楽しそうにタオルを回している場面も。歌い終わりにハグをしてガラが捌けると、高垣が繰り出すパワフルなビートに合わせてクラップが起こったポップな「≒fuyuu」で盛り上げ、ラストはミディアムナンバーの「恋ト幻/rentogen」へ。

求心力のある有村のヴォーカルに引き込まれ、ステージを降りるメンバーを目にしながらも観客はしばらく身動きができず、しばし沈黙が流れたのは印象深い。

幕裏でのサウンドチェックの音から轟音で存在感を知らしめたのは、三番手のkein。トライバルな「Anno Domini」のサウンドに乗って登場したメンバーが最初に披露したのは、11月20日(水)リリースのミニアルバム『PARADOXON DOLORIS』収録の「Spiral」。強力なSally(Dr)のドラムと、太くうねるような攸紀(B)のベースライン、玲央(G)とaie(G)の重厚なツインギターが厚みを上げ、眞呼の歌声は途中の転調で疾走感を増していく。2本の角がピョコンと生えたような眞呼のヘアスタイルを目で追いながらも、新曲の重厚なサウンドを一音足りとも聴き逃さまいと耳を傾けていた。

三拍子のイントロから始まるアバンギャルドな「an Ferris Wheel」、物悲しくも美しいメロディを眞呼が一言一言丁寧に歌い上げたミディアムナンバー「思い出の意味」、転調を繰り返すラウドな「君の心電図」では観客も拳を振り上げヒートアップ。気づけばaieが下手からフロアの方へと降り、ギターをかき鳴らしていた。

玲央が「ここでゲストを紹介します。25年来の名古屋の盟友、テツ!」と呼び込むと、勢いよくメリーのテツ(B)がステージに登場。骨太なハードチューン「keen scare syndrome」をセッション。玲央とテツが1本のマイクでコーラスをしたかと思えば、眞呼が観客の中に埋もれていたりと、見どころ満載で目が忙しい。そしてkeinの代表曲「グラミー」を最後に炸裂。大きな余韻と興奮を残して、次のメリーへバトンを渡した。

いよいよ本日の主役、メリーの登場だ。「六本木ジャジー喫茶」のSE クラップで迎えられ、定位置に着くと、ネロの気合いの咆哮から「やさしさ・キッド」がスタート。結生、テツ、ネロが白をベースにした衣装を着用の中、遅れて登場したガラは全身黒に身を包み、マイクスタンドを両手で掴んでグルグルと回る。その前にはお立ち代替わりの学習机。

面白いのは、出演者3組が比較的新しい楽曲で挑んできたことに対して、メリーはいわゆる“メリーの王道”と言えるキラーチューンを多くセレクトしていたことだ。“ラムフェス”の開催は2016年以来8年ぶり。メリーをメリーたらしめる音とパフォーマンスを、今一度心に体に刻みつけてくる。 “メリーここに在り”とばかりに、「今夜はメリーだけを贔屓してください!」とガラが高らかに叫んだ。「ロストジェネレーション-replay-」「オリエンタルBLサーカス」と攻撃性の高いナンバーで会場をかき回した後、ガラの習字タイムで小休止。

ガラ(Vo)

「ラムフェス2024/ようこそ/楽しんでるか?/もっと楽しもうぜ/えびす」。上半身裸になって、もっともっとと歓声を煽るガラ。まだまだ足りないとばかりに背を向けると、歓声が一段と大きくなった。それを聞いてニヤリと笑い、墨汁を口に含んで噴き出す。顔も上半身も墨で汚れたまま「23年目も墨汁最狂だぜ!!」と叫ぶと、その勢いのままにラウドな「sweet powder」「陽の当たらない場所」を投下した。

ガラ(Vo)

ラストナンバーへ進む前、一息ついたガラは今日のセットリストの意図を明かした。

「“ラムフェス2024”最高の仲間が集まってくれました。あの頃を思い出したくて、今日はあえてバチバチにやりました」

それは次のフェーズへと向かうための彼らなりの儀式だったのかもしれない。本編ラストは「夜明け前」。ピアノのイントロから、徐々に熱を帯びていくバンドアンサンブル、“立ち止まるな!振り返るな!前を向け!前を向け!”、叫ぶように熱唱するガラ。“夢掴む日まで”と前に伸ばした手は力強く見えたのに、ラストは崩れ落ちるように机の上に座り込んだのだ。思わずハッとさせられた記憶に残るエンディングだった。

ガラ(Vo)
結生(G)

アンコールで再びステージに上がったメリーは、2025年2月12日(水)にニューアルバムを約3年半ぶりにリリースすることを発表した。そのタイトルは『The Last Scene』。近年に経験した突然の別れから、永遠なんてないことをリアルに感じたというガラは、このタイトルに込めた思いを語った。

「いつ来るか分からないその時に、俺はどんな景色を見て、何を感じて終わるんだろうっていうことをすごく感じて。最後に目に映るものがすごい幸せであってほしいし、それを見て“ああ俺はこれでよかった。すげえ最高の人生だった”と思いたいなと思って。そういうのをこのアルバムに残したいと思って」

テツ(B)
ネロ(Dr)

アンコールの一曲目に披露したのは、“ラムフェス2024”の開催を記念して会場限定シングルとしてリリースした「GAGA」。印象的なギターリフと疾走感のあるリズム、ガラのMCとリンクするような歌。アルバムへの期待感を高めるアッパーなナンバーだ。そしてラストはスペシャルゲストとしてaieを呼び込み、「ジャパニーズモダニスト」で3時間にわたるイベントを締め括った。

ニューアルバムの発表と同時に、新作を引っ提げて久しぶりの全国ツアーに出ること、最終日は5月31日(土)東京キネマ倶楽部で開催することを告げたメリー。アルバムと全国ツアーでメリーが紡ぐ新たなストーリーを、しっかりと見届けたいと思う。

(文・大窪由香、撮影・田澤里美)


【リリース情報】
●12th ALBUM『The Last Scene』
2025年2月12日発売

【ライブ情報】
●テツ Birthday Live第4回 羊学園鐡組文化発表会
11月20日(水)EDGE Ikebukuro

●メリー ONEMAN 2DAYS
VERY MERRY CHRISTMAS Special night~白い羊・黒い羊~
12月25日(水)目黒鹿鳴館

ハレンチ学園FINAL
12月26日(木)目黒鹿鳴館

●メリー MEMBER PRODUCE ONEMAN LIVE at EDGE Ikebukuro
ガラDAY「吐き初め」
2025年1月3日(金)EDGE Ikebukuro

●結生DAY「オトナメリー 成人の日」
2025年1月13日(月・祝)EDGE Ikebukuro

●テツDAY「オール・テツ」
2025年1月24日(金)EDGE Ikebukuro

●ネロDAY「ドラムセンター暴走機関車伝説!」
2025年2月11日(火・祝)EDGE Ikebukuro

●メリー ONEMAN TOUR 「The Last Scene #1」
2025年
3月1日(土)EDGE Ikebukuro
3月8日(土)HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1
3月9日(日)長野LIVE HOUSE J
3月15日(土)千葉LOOK                   
3月29日(土)名古屋CLUB UPSET
4月5日(土)京都磔磔
4月6日(日)高松DIME
4月12日(土)F.A.D YOKOHAMA
4月19日(土)OSAKA MUSE
4月20日(日)岡山Image
4月26日(土)福岡Queblick
4月27日(日)福岡Queblick
5月10日(土)高崎 Club JAMMERS   
5月11日(日)仙台ROCKATERIA
5月24日(土)札幌SPiCE
5月25日(日)札幌SPiCE

TOUR FINAL
5月31日(土)東京キネマ倶楽部

●メリー×EDGE Ikebukuro Presents「FIRST CONTACT」
2025年12月18日(水)EDGE Ikebukuro
[出演]メリー / NICOLAS / ゼラ

●ΛrlequiΩ LIVE TOUR「ひとりにはなれない僕ら」
2025年3月22日(土)EDGE Ikebukuro
メリー(Guest) / ΛrlequiΩ

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