2024.07.14
DASEIN@渋谷REX
「Soconial DASEIN SUMMER TOUR 2024【ACOUSTIC ELECTRIC ~陽炎立つ 夕闇に燃ゆ~】」

炎暑だろうと、激暑だろうと、それでも夏という季節には人々の心を高揚させてしまうような華やかさがあり、同時にそれとは裏腹などこか儚く切ない機微までもがも漂う。

2024年7月14日の渋谷REX公演から始まった、DASEINの「Soconial DASEIN SUMMER TOUR 2024【ACOUSTIC ELECTRIC ~陽炎立つ 夕闇に燃ゆ~】」は、そんな夏の二面性を表わしたかのようなコンセプトにて行われているもので、彼らは今まさに全く趣の異なる2デイズライヴを各地にて展開中なのだ。

「東京ではコロナ禍に数回アコースティックライヴを実施させていただいたのですが、それがけっこう良い感じだったんですよね。せっかくなら東京だけでなく地方のザイナー(ファンの呼称)にもアコースティックなDASEINを届けたいなということで、今ツアーでは2デイズのうち1日目がアコースティック、2日目はエレクトリック=通常ライヴということでやらせていただこうかと思っております」(Ricky)

なんでも、今回のツアーは一昨年の夏以来約2年ぶりでの開催が実現したものとなるそうで、初日の渋谷REXからヴーカリスト・Rickyはもちろんのこと、ドラマー・JOEも夏を意識した純白のコスチュームにて颯爽と登場。そのうえ、セトリ的にも「まぶしくて」や「上昇気流」といった、夏にこそ似合うDASEINの楽曲たちをライヴ冒頭からふんだんに聴かせてくれたのだった。

「久しぶり、みなさま。夏ツアーの初日ということで、どうなるかと思っていたんですけど、実はしょっぱなから僕のイヤモニが全然聴こえなくて(苦笑)。調べてもらったら、イヤモニが壊れてました! みなさんに僕のドラムの音は聴こえてますか?」(JOE)

もちろん、JOEの説得力あるドラミングは場内にこれでもかと響きわたっている状態で、受け手側からすればそのようなアクシデントがあったとは露知らず。急な出来事にもまるで動じず、堂々とプレイし続けていたJOEの腕と肝っ玉は流石としか言いようがない。

そして、今回のライヴにおいてはそんなJOEの作曲した新曲「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」が本編中盤にて初披露されるという一幕もあり、ここではRickyが伸びやかで高らかなヴォーカリゼイションをもって、DASEINのあらたな可能性を提示してくれたと言っていいのではないだろうか。むろん、この新曲のタイトルは今回のツアータイトルに冠されている言葉そのものでもある。

しかも、インスト曲以外の歌メロがついた曲を初めてJOEが作った、というのはDASEINにとって初の出来事となるわけで、この事実はきっとここからのDASEINにとって大きな転換ポイントとなっていく可能性が高い。そして、この曲は「Soconial DASEIN SUMMER TOUR 2024【ACOUSTIC ELECTRIC ~陽炎立つ 夕闇に燃ゆ~】」のファイナルを目前に控えた7月31日にデジタルシングル『陽炎立つ、夕闇に燃ゆ』としてリリースされるという。

2000年に始動してからというもの、“HYPER BEAT ROCK”という唯一無二のスタイルを確立しながら、ここに至るまで常に進化を続けてきたDASEINの最新な音と、これまた始動以来ずっとRickyが一貫して描いてきた和の心を滲ませた歌詞世界を、ぜひともこの新曲から存分に感じ取っていただきたい。

なお、今回ツアー初日を飾った渋谷REX公演においてはJOEのセンスフルなドラムソロや、今度のシングルに収録される新インスト曲「旅愁」も聴けたほか、後半に向けてはそれこそDASEINの真髄である“HYPER BEAT ROCK”な楽曲たちが目白押しとなり、ダブルアンコールのラストを飾った「共鳴り」でもザイナー(DASEINファンの総称)との一体感がより強調されることに。8月4日に新横浜NEW SIDE BEACH!!にて行われるツアーファイナルでは、おそらくこの初日よりもさらに濃厚なDASEINのライヴ世界が繰り広げられるものと思われる。

また、このツアー初日の開演前には7月31日から配信開始となるデジタルシングル『陽炎立つ、夕闇に燃ゆ』についての取材を行うことが出来たため、ここではあわせてその模様もインタビュー記事としてお届けすることとしよう。


今回のデジタルシングル『陽炎立つ、夕闇に燃ゆ』は、ツアーの前ではなく、[Soconial DASEIN SUMMER TOUR 2024【ACOUSTIC ELECTRIC ~陽炎立つ 夕闇に燃ゆ~】]のファイナル前にあたる7月31日にリリースされることになりました。この絶妙な日取りになったのは、やはり敢えてのことだったのでしょうか?

JOE:けっこう前から今年の夏に新曲を出したいという方向で動いてはいたんですけど、リリースの時期に関してはRickyの中でなかなか歌詞が納得のいくかたちにならなかったという状況もあり、結果的に7月31日になりました。

Ricky:僕の作業が遅れただけです(苦笑)。

JOE:Rickyはそれだけ歌詞の完成度にもこだわるヤツなんですよ。

Ricky:実は、歌詞に時間がかかったのには理由がありました。この「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」って、JOEさんが初めて作ったメロディありの曲なんです。

JOE:インスト曲はこれまでも作ってたんですけどね。

Ricky:やっぱり、僕としては「DASEINとしてこれが初めてJOEさんが作ったヴォーカル入りの曲になるんだ」と思ったら、絶対に中途半端な詞は書けないなと思ったんです。だから、まずはどういったことを伝える詞にするのか、それをどんな言葉で伝えるのか、どうやったらこのJOEさんが作った曲をより良いかたちに出来るのか、っていうところをずっと考えることになって、なかなか自分の中でまとまらなかったんですよ。いわゆる産みの苦しみというものを、かなり感じたのがこの「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」だったんです。

そもそも、JOEさんは今回なぜ初の歌入り楽曲を作ることにされたのです?

JOE:最初はいつもと同じように、インストを作るつもりでキーボードでリフを弾くところから始めようとしたんです。そうしたら、急に曲のテーマになる部分が思い浮かびまして、その音階がカッコよかったんですよ。それで、そのままインストとしてダンスビートとかブレイクビーツとかドラムンベースのリズムを織り交ぜた複雑なリズムの曲にしていこうとしていたんですけど、あまりに複雑で難しい曲になってきてしまって「これは自分があとでライヴでやる時に困るな」と思ったんですね(笑)。

なるほど。では、そこから少し方向転換をされることになったのですね。

JOE:その時点で普通にコードも入れちゃってたんで、ふと「これはメロディでもつけてみるか」ってなったんです。ただ、僕は音楽理論とか一切分からないので、そこはもう野性の感で作っていった感じでしたね。そして、出来たものをRickyに聴かせたら「これ、誰かにアレンジをしてもらったら凄く良い曲になるんじゃない?」って言ってくれたんです。過去にも、2曲くらいサビのメロディーだけの曲を聴かせたことはあったんですけど、その時は全然かすりもしなかったんですよ(笑)。

Ricky:え。そんなことあったけ?

JOE:うん、2曲は確実に聴かせてる。まぁでも、DASEINとしてここまで何十曲とかたくさん作ってきている中で、僕がたった2曲やそこら作りましたといったところで、それがすんなり通るような甘い世界じゃないというのもわかってはいましたし、今回もどうなのかな?とは思ってたんですよ。でも、幸いにもRickyが今回は「良い曲になるんじゃない?」と言ってくれたので、その言葉がとても嬉しかったです。

Ricky:なんか、偉そうだな自分(笑)。

Rickyさんは「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」の原曲を聴いた段階で、どのようなところに可能性を見出されたのでしょうか。

Ricky:細かいところでは改良の余地があるなとは思いつつ、全体としてはJOEさんの好きなマイナー調の曲になっているところ、それと同時に初期のDASEINらしさもある曲になっている、というところが良いなと感じました。JOEさんから出てきたメロと、その前向きな創作意欲というものを、僕としてもどうにか新曲というかたちにしたいと思いましたね。

JOE:完成形のこのサビを作ってくれたのは、Rickyだったんです。僕はテーマとして思い浮かんだイントロのフレーズをそのままサビとしてもはめ込んでいて、それ以上のサビっていうのは全然思いつかなくて困ってたのに、Rickyは原曲よりも強烈なサビをしっかり作りあげてくれました。

Ricky:詞を書く以前に、サビメロを作るのも産みの苦しみでしたねぇ。なかなか出て来なくて困りましたけど、最後には我ながらサビっぽいサビが出て来たなと思いました(笑)。

JOEさんとRickyさんの共同作業によって「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」が完成へと至ったというのは、とても素敵なエピソードだと感じます。

JOE:いやもう最高ですね。本当にRickyに対しては尊敬の眼差しですよ。

Ricky:そこはでも、ゼロからイチを作ったJOEの原曲ありきですから。実際にAメロとBメロはJOEの作ったメロディそのままになってます。そういった意味では、結成(結婚)24年目にして初めて夫婦でお互いのメロディー(愛)を繋ぎ合わせて生み出した楽曲ということで、そんな記念すべき作品(我が子)をぜひ可愛がってやってくださいませ♡

夫婦ではなくとも、長く連れ添ってきた相棒同士であるのは紛うことなき事実となりましょう。ところで、今回「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」のアレンジについては都啓一さん(SOPHIA、Rayflower)が手掛けてくださることになったそうですね。

JOE:都さんには2021年にDASEIN20周年のタイミングで『泡沫なる夢幻』というシングルを出した時にもアレンジをしていただいていまして、そうした縁もありつつ今回もお願いすることにしたんですよ。イメージ的には、ちょっとトランスっぽい雰囲気のあるサウンドに仕上げていただいてます。前作よりもさらに“行き切った”感じも出ましたね。

Ricky:イントロの新しい何かが始まりそうなワクワク感もインパクトあるし、キメごとのオケヒットなんかも初期のサウンド観を踏襲していたりと、新しさと懐かしさのマリアージュ的な仕上がりでとても気に入ってます。また、割と制作過程の後半でサビメロを変えたことによるキー調整もあったりと、都さんには色々とご尽力いただき感謝しております。

なおかつ、今回「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」のギターは元ViViDで現在は各方面で活躍されているRENOさんが弾いてくださっているのだとか。これも要注目ポイントですね!

JOE:RENOくんとはMASAKIさんの現場で一緒になったのが最初の出会いで、その後DASEINのライヴやレコーディングに参加してくれたこともあるんです。で、今回のレコーディングに関しては都さんにギターの人選もお願いしていたところ、RENOくんの名前があがって我々としても「ぜひ!」となりました。期待通り、素晴らしいプレイをしてくれてます。

RENOさんのハードロック色が強い音は、最高のスパイスになっている印象です。

JOE:そうそう、そうなんですよ。DASEINがやっているのはあくまでも“HYPER BEAT ROCK”なんで、トランス色とかも入ってはいますけど、やっぱりロックな部分も非常に重要なんです。RENOくんの音はそういう意味で凄く良い味を出してくれてます。

では、JOEさんが「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」のドラムプレイをしていく際に重視されていたのはどのようなことでしたか。

JOE:リズムはかなりシンプルにしました。この曲を聴いた人たちが、踊りだしたくなるような感じのリズムにしたかったんで、音数をあんまり詰め込むよりも、シンプルなビートに抑揚をつけていくという方向のアプローチをしていったんです。基本的には、いつも手数足数は多い方なんですけどね。

Ricky:多いのは口数もでしょ!

JOE:それはオマエには負けるわ(笑)。

いやはや相変わらず仲睦まじいですねぇ。

JOE:ちなみに、この曲には途中にドラムソロがあって、大体どの曲にもDASEINの場合はドラムソロはあるんですけど、今回はそこもいつもとは違うかたちでドラムのキメに合わせて歌も入ってます。別に話し合ったわけではないのに、僕が「いつもと何か違うことが出来たらいいな」と思っていたら、Rickyがさりげなくドラムソロのところに歌をはめてきたんですよ。「やるなぁ!」って感心しました。それに、「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」は歌詞がとても良いんですよ。

Ricky:今回はツアータイトルにも「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」というフレーズがサブタイトルとしてついてますけど、まずはそっちの締切ギリギリのタイミングで出て来たのがこの言葉だったんですよ。その時点で、このサブタイトルを使って新曲の歌詞も書こうって自分の中では決めてましたね。結果的に曲タイトルにもなってしまったという意味では、この曲は詞先でも曲先でもなくタイトル先だったわけです(笑)。

「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」とは実に趣深いタイトルですね。

Ricky:まずは、夏ツアーのタイトル先というだけあって夏を意識したワードチョイスになってますが「夏」を使ってないのが一つの拘りです(笑)。それっぽいワードによって夏感を醸しつつ、そこにDASEINとしての今の立ち位置と現状に対する僕らの想いを込めました。夕闇というワードでいえば、バンドやアーティストにとっての25周年って1日の中で例えると朝と昼を過ぎたあたり、すわなわ夕暮れ時なのかなと。1日が終わりに向かう哀愁感もあれば夜へ向けての高揚感もある状態、さらにはライブが始まる時刻とも重なりますよね。陽炎立つ、というフレーズには、25年経った今でもまだまだやる気に満ちていたい!という願望を込めました。DASEINを継続することでJOEもザイナーも僕自身も独りにしない!という、そこが=燃ゆというワードに表れていて、実はとんでもなく情熱的なラブソングになっている!?まあそこは聴く側の受け止めに委ねるとしましょう(含笑)。

JOE:凄いな。最初に「夢つれづれ」でデビューした我々としては、ここでも和な雰囲気がタイトルや詞に漂っているところがいいなと思いましたし、意味合いについての説明を細かく聞いて、さらに「凄いな、そんなことを何時考えてたんだよ!?」「どうやったらこういうタイトルや詞が出てくるんだ??」って僕は率直に思いました。書き上げるのに時間がかかってリリースがズレたのもしょうがないというか、これは当然です。普通こんなの考えつきませんよ。一体どういう思考してんだ?

Ricky:そこまでベタ褒めされるとちょっと恥ずかしい(照笑)。

JOE:ここに来てまたいろいろと新しいことを今回のシングルでやれたというのは凄く幸せですね。しかも、そのことは今回「陽炎立つ、夕闇に燃ゆ」と同時に配信するインスト曲「旅愁」についても言えることなんですよ。

といいますと?

JOE:「旅愁」は今回のツアーでもやっていくことになる曲なんですが、これは僕が夢で見た光景を曲にしたものになんです。シルクロードのような砂漠をラクダに乗って旅している、という夢を見まして。立ち寄った華やかな街ではいろんな事件が起きたりもするんですけど、その世界を音で表現しようとしたら異様にトリッキーなリズムのカオスな曲になってしまったんですね。でも、今これをかたちに出来たことで自分は今までにないような達成感を得られたんですよ。そして、ここからも無限の可能性に向かって進んでいきたいなと今あらためて感じてます。

Ricky:まずは今回の[Soconial DASEIN SUMMER TOUR 2024【ACOUSTIC ELECTRIC ~陽炎立つ 夕闇に燃ゆ~】]で新曲たちとともに夏を思い切り楽しんでいって、そこからは25周年に向けてさらにテンション上げていきたいですね。なんとも不思議なもので、今年からはRIDER CHIPSにもJOEがサポートで参加するようになったりして、何かとふたりで一緒にいることが増えてます(笑)。

JOE:Rickyに「RIDER CHIPS、いいなぁ。うらやましーなー」って何回も言ってたら、ありがたいことに参加させていただけることになっちゃいました(笑)。

Ricky:お互いに認めあって、協力しあっていけてるのがDASEINの良いところですかね。

JOE:だと思うよ。来年のDASEIN25周年は盛大にいこうな!

◆セットリスト◆
01. まぶしくて
02. 上昇気流
03. リフレイン~ありふれた奇跡~
04. 漣
05. 待宵影
06. 激情
07. 天つ風
08. 歩
09. 闇
― Drum solo ―
10. 旅愁
11. 陽炎立つ、夕闇に燃ゆ
12. レジスタンス
13. 今に勝る時はナシ 今に敗けるよりはマシ
14. COGITO ERGO SUM

En1
01. 唯、此処に在る事が愛しくて
02. BREAK OFF!!!
03. I miss you

En2
01. 共鳴り

(文・杉江由紀/写真・Lestat C&M Project)


【配信情報】
●『陽炎立つ、夕闇に燃ゆ』
2024年7月31日(水)配信

【ライブ情報】
●Soconial DASEIN SUMMER TOUR 2024「ACOUSTIC ELECTRIC」陽炎立つ 夕闇に燃ゆ
7月27(土)大阪・阿倍野ROCKTOWN(アコースティックver.)
開場17:30/開演18:00
前売¥7,000(D別)/当日¥8,000(D別)
*指定席
*グッズ先行販売 16:00~17:00
*クロークあり

7月28(日)大阪・阿倍野ROCKTOWN
開場16:00/開演16:30
前売¥7,500(D別)/当日¥8,500(D別)
*スタンディング
*グッズ先行販売 14:30~15:30
*クロークあり

8月3(土)神奈川・新横浜NEW SIDE BEACHI!!(アコースティックver.)
開場17:30/開演18:00
前売¥7,000(D別)/当日¥8,000(D別)
*指定席
*グッズ先行販売 16:00~17:00
*クロークあり

8月4(日)神奈川・新横浜NEW SIDE BEACHI!!
開場16:00/開演16:30
前売¥7,500(D別)/当日¥8,500(D別)
*スタンディング
*グッズ先行販売 14:30~15:30
*クロークあり

チケット発売中

DASEIN オフィシャルサイト