2024.01.27
Crack6@新宿ReNY
「Crack6 20th Anniversary Best Album『EVER BLESSING』 TOUR」

時を経てより眩しさを増した輝きと、揺るがぬ信念がそこには在った。PENICILLINのギタリスト・千聖が、バンドとは一線を画するかたちで“MSTR(ミスター)”と名のり、2003年に起ち上げたCrack6が20周年の節目を迎え、今年1月には20th Anniversary Best Album『EVER BLESSING』を発売し、それを受けるかたちで開催されたのが年明けから始まった「Crack6 20th Anniversary Best Album『EVER BLESSING』TOUR」だ。そして、1月27日に新宿ReNYにて行われた今回のツアーファイナル公演においては、まさに躍動的でダイナミックなライヴパフォーマンスをもって、Crack6の“眩しさを増した輝きと揺るがぬ信念”が証明されていくことになったのである。

ちなみに、2003年といえば日本郵政公社が設立され、イラク戦争が始まり、ミスドでポン・デ・リングが発売開始となって、東名阪では地デジ放送が開始になった頃となる。携帯電話の世界も完全にガラケー全盛期で、ようやく各機に200万画素レベルのメガピクセルカメラが搭載されだしたあたりだったろうか。そう考えると、20年前というのはそこそこ昔のことのようにも感じられるが…ことCrack6の表現してきた音楽について言えば、時間経過によって古びたりすることはまるでなく、むしろこの20年の間に右肩上がりでその魅力を増幅してきたと言える。

「2003年から始まったCrack6が20周年を迎えたということで、こうして20年続けて来られたのはみんなのおかげだと思う。今日のツアーファイナルではそんなみんなに対する感謝の気持ちというか、俺たちからみんなに対するプレゼント的な企画として、このあとにやる『Break The Darkness』では動画を撮影OKということにしました。みんな、撮ったら出来るだけ#Crack6とか#MSTRカッコイイとかハッシュタグをつけてSNSにあげてください(笑)」(MSTR)

力強い響きを持った「Cry For Truth」で幕開けし、疾走感あふれる「Butterfly Effect」までの4曲を一気にたたみかけたあとにMSTRが述べたのはこの言葉で、場内ではここからファン感謝祭的な撮影大会が繰り広げられることに。

かと思うと、もともとは2005年に“千聖ソロ10周年をCrack6が祝う”というコンセプトで制作された『千聖 DEBUT 10th Aniversary Album“DECADE”』に収録されていた楽曲で、今回は“Crack6としてのセルフカバー曲である”と定義してベスト盤『EVER BLESSING』にも収録された「CYBER ROSE -DECADE Version-」も、このライヴの場では大きな聴かせどころ、および見せ場となっていたよう思う。MSTRのエレアコを駆使したスパニッシュ風味の香る絶妙なプレイと、そこはかとない色気の漂うヴォーカリゼイションには20年選手ならではの円熟味が宿り、その滋味深い音を我々はじっくり堪能することが出来た。

さらに、本編中盤ではMSTRが彼の敬愛するスティーヴ・スティーヴンスに対するオマージュを込めながら、映画『トップガン』のメインテーマ「Top Gun Anthem」をドラマティックなギターインストルメンタルとして聴かせる場面もあり、ここではギターヒーローとしてのMSTRの存在感がより強く発揮されていたと言っていい。

くわえて、ここから本編ラストの「Loveless」まではほぼ瞬く間の出来事のように感じられるくらいにエキサイティングな展開になっていたのだが、今宵のライヴはアンコールの充実ぶりもまた相当なものだったように思う。
「今日のツアーファイナルはベスト盤『EVER BLESSING』の曲以外もいろいろと入れつつ、Crack6の20年をギュッと凝縮したライヴになってます。そして、ベスト盤の収録曲を決める時にはみんなからのリクエストを募ったわけなんだけど、思った以上に歌モノだけじゃなくハードな曲が上位に入っていたのも俺としてはそれも嬉しかったですね。(中略)Crack6はこれまで20年やってきたけど、プロジェクトとしてはもっともっとここからまたいろんなことを出来ると思っているので、みんなが求めてくれる限りは続けていきたいと思う。ぜひ、今後とも応援よろしくお願いします!」(MSTR)

このMSTRによる未来へ向けた宣言のあとに演奏されたのは、Crack6のファーストアルバム『Trinity』に収録されていた「Shining Days」と、ベスト盤の中に唯一の新曲として収録されていたタイトルチューンでもある「EVER BLESSING」。初心忘れベからず的な意味での前者と、アーティストとしての今現在を詰め込んだ後者を意図して連打することにより、ここでは始動以来ずっと音楽的には刻々と進化してきた一方、スタンスとしてはブレることなく邁進してきたCrack6の姿勢というものが明示されていた。

また、ダブルアンコールではベスト盤のリクエスト結果においてランキング上位に入っていたことにMSTRが驚いたという楽曲「Set Me Free」と、Crack6のFC名称・CLUB NEOにも冠されている「NEO」が演奏されるに至ったのだったが、この日は公演終演後にもベスト盤購入特典として対象者限定のスペシャルライヴがこの場で引き続き行われ、「SPEED FREEKER」など計3曲がさらに追加演奏されていたことも付記しておきたい。つまり、実質トリプルアンコールまであったことになるわけだ。

もっとも、今回の記念すべきライヴで体感することが出来た“Crack6の20年”は、あくまでひとつの経過点でしかないのも忘れてはならない点となろう。20年の時を積み重ねてくる中で、MSTRが丹念に築き上げてきたCrack6というひとつの世界。それはきっと、これからも時を経るごとに眩しさを増す輝きと、時を経ても揺るがぬ信念に支えられながら、さらに拡大化していくはずだ。

◆セットリスト◆
01. CRY FOR TRUTH
02. 電撃ミサイル2006
03. 破壊不可能
04. Butterfly Effect
05. Break The Darkness
06. Baby I love you
07. Carry on
08. COOL MOON
09. CYBER ROSE -DECADE Version-
10. 記憶の匣
11. Re;Born
12. TOP GUN ANTHEM
13. Change the World
14. キラ☆キラ
15. 狂瀾 -20th Anniversary ver.-
16. CODA
17. Crazy Poker Face
18. Loveless

En1
01. Shining Days
02. EVER BLESSING
03. ZEROから始めよう
04. マリーゴールド

En2
01. SET ME FREE
02. NEO

(文・杉江由紀/写真・折田琢矢)


【ライブ情報】
●Crack6 2024 SUMMER TOUR「BABEL69」
6月15日(土)高田馬場CLUB PHASE
開場17:00/開演17:30
6月22日(土)西川口Hearts
開場17:00/開演17:30
6月29日(土)大阪 Yogibo HOLY MOUNTAIN
開場17:00/開演17:30
7月5日(金)渋谷REX
開場18:30/開演19:00
7月6日(土)渋谷REX
開場16:30/開演17:00

チケット発売中

Crack6 オフィシャルサイト