鳥籠から放たれたカナリアが、樹木の間を翔びまわりながら自由に歌い続けるかのように。このたび全国6ヵ所での計7公演にわたった「TOUR 2023 「カナリア最終楽章:CODA」」を渋谷REXで無事に締めくくってみせたCrack6は、何時にも増して躍動感にあふれたパフォーマンスを繰り広げてくれたのだった。

「やっぱり、こういうライヴが本来の姿だよね! みんなとこうして盛り上がれて、ほんと幸せだわ。今日は『カナリア最終楽章:CODA』の収録曲も通常盤の方はぜんぶやれたんで、もう思い残すことはないです。ありがとね!!」(MSTR)

Crack6とは、PENICILLINのギタリスト・千聖がバンドとは一線を画するかたちで“MSTR(ミスター)”と名のり、ここまで20年にわたり牽引して来ているソロプロジェクト。今年6月には2016年の『薔薇とピストル』以来で7年ぶりとなるオリジナルフルアルバム『カナリア最終楽章:CODA』が発表されたわけだが、そこに至るまでの道程は紆余曲折の連続だったそうである。

本来であれば、Crack6としては2020年中に“カナリアというひとりの女性を主人公とした恋愛がテーマのコンセプトアルバム”のリリースを想定していたというのだが、コロナ禍の勃発によってそのプランは一旦頓挫し、結果的にカナリアはしばし鳥籠の中で時を待つことになってしまったのだ。しかしながら、Crack6の20周年という大きな節目を前にして今年はようやく『カナリア最終楽章:CODA』が完成へと至り、そのうえでこれまた3年ぶりとなる全国規模のツアーを開催することが出来たという事実は、Crack6にとってはもちろんのこと、ファンの方々にとっても喜ばしいことであったに違いない。

最新アルバムの内容に沿うかたちで、まず「Your Name…」と「カナリア」から始められた今回のツアーファイナル公演では、そのアッパーな曲調にあおられるかのように冒頭から場内が熱く沸き立つこととなり、その光景の中ではまさにオーディエンス側の放つ“待ちに待っていた感”が激しくほとばしっていた印象だ。

また、艶やかな歌詞とモダンな曲調が光る「HEAVEN」や、スラッシュメタルばりの激しさを持った「Rain Dance」など、さまざまな『カナリア最終楽章:CODA』の収録曲たちが音源以上のダイナミックさをもって伝えられていくことになったのにくわえて、今回のライヴでは観客側の声出しも可能であったため、コール&レスポンスを交えたステージとのコミュニケーションが存分にはかられる場面が多々あったことも、今回のライヴがMSTRいわくの“本来の姿”になっていた大きな一因であったのではなかろうか。

そして、このツアーファイナルにおける本編最後を飾ったのは『カナリア最終楽章:CODA』のラストソングでもあった「CODA」だったが、ここには恋愛という人間にとっての普遍的テーマを超えた、人生における幸福論までが深く描き出されていたようにも思える。しかも、ここでMSTRの歌いあげた〈~僕は 終わりなき歌をうたう~〉という力強いそのフレーズには、Crack6が臨む未来へ向けたヴィジョンも滲んでいた。

今夏はPENICILLINの「30th anniversary tour real final」が7月17日にLINE CUBE SHIBUYAにて開催されるほか、8月6日にもVeats SHIBUYAでの「「祭」2023(仮)」が決定しているため、次なるCrack6のライヴを拝めるのは今秋のことになるそうで、10月28日と29日にはなんと3年ぶりでの実現となるCrack6主催「Crazy Monsters -Halloween Party 2023-」が新宿ReNYにて決定したそう。さらに、少し先にはなるが12月23日にはCrack6としての恒例ライヴ「冬会2023」も予定されているとのことだ。

めでたく20th Anniversaryを迎えたCrack6の自由で確かな羽ばたきは、きっとこれからも終わりなき日々を風切っていくものと確信する。

◆セットリスト◆
SE カナリアprologue
01. Your name…
02. カナリア
03. What is TRUE ?!
04. HEAVEN
05. Break The Darkness
06. FIGHT BACK!!
07. デラシネ
08. RainDance
〜TOPGUN ANTHEM〜
09. SPEED FREACKER
10. Carry on
11. アオイユメ
12. MSTR A 2 Z
13. ZEROから始めよう
14. Crazy Poker Face
15. SET ME FREE
16. CODA

En1
01. アネモネ
02. アップルパイ
千聖ソロコーナー
03. VENUS〜XX ver.〜

En2
01. Cry For Truth
02. NEO

(文・杉江由紀/写真・折田琢矢)


【ライブ情報】

●Crazy Monsters Halloween Party 2023
[Day.1]10月28日(土)新宿ReNY
OPEN 15:00/START 15:30
出演:Crack6、THE MICRO HEAD 4N’S、KAMIJO(Versailles)、Nicori Light Tours、168、甘い暴力
司会:NoGoD団長

[Day.2]10月29日(日) 新宿ReNY
OPEN 15:00/START 15:30
出演:Crack6、THE MICRO HEAD 4N’S、Kneuklid Romance、Kαin、H.U.G、Dacco、クマムシ
司会:NoGoD団長

<プレイガイド先着先行受付>
先行受付期間:6月25日(日)21:00〜7月9日(日)23:59
ローソンチケット
イープラス
受付券種:スタンディング¥6,500(税込・別途ドリンク代)

●冬会(ワンマンライブ)
12月23日(土)渋谷REX
※詳細は後日発表

Crack6 オフィシャルサイト