2024.03.17
Sadie@豊洲PIT
「THE REVIVAL OF SADNESS」
「また重なり合う未来で会いましょう」「また必ず…帰ってきます。約束」――真緒(Vo)がこう告げたのは2015年9月21日、Zepp Tokyo。その公演をもって10年にわたる活動に一旦のピリオドを打ったSadieが、2023年6月7日、約8年の歳月を経て再始動を宣言し、2024年3月17日に豊洲PIT、4月7日になんばHatchにて復活公演を開催することを発表した。
先立って2月28日には公演タイトルと同名のセルフカバーアルバムをリリースし、その進化したサウンドを我々に示してくれた彼ら。そして、あの日から約8年半。いよいよ迎えたSadie復活の日、定刻を過ぎ、会場の客電が落ちた瞬間に拍手と大歓声が湧いた様子は、ここに集結した人々がどれだけ彼らとの再会を待ち侘びていたのかを物語るものだった。
Sadieを思い、あの日それぞれの旅に出た5人が、8年を経てこのステージに戻ってきたという旨の英文で表現されたオープニング映像。その最後の一文には「掲げてる未来図の配役はこの5人」と、活動休止前ラストシングルかつラストライブの最後を締め括った楽曲「Voyage」の一節が映し出されるという印象的なイントロダクションから、活動再開の狼煙として一発目に発表した代表曲「迷彩」が今宵の幕開けを飾った。ステージ、フロア共にとてつもない熱量を放ち、フルスロットルのスタートとなったわけだが、曲中に演奏を止めオーディエンスのメンバーコールが鳴り響く場面では、長めの尺を取り、その声を5人が一身に受け止める姿が胸を打つものだった。
「2015年から活動休止して約8年、ここにSadie5人が帰ってきました。ただいまー!」という真緒の言葉に、すかさずフロアからは「おかえりー!」の声が。「8年間、各々の道を進んで、たくさんの経験をしてきたこと、ここに5人集まるための活動休止だったと思います。今晴れて、この5人、8年ぶりにここに集結です。だったら、あの日から今に至る空白の時間、もう関係ないな。全力で8年分、溜まってるもん全て吐き出しちまおうぜ!」(真緒)と、「Ice Romancer」では当時のMVを背景にプレイし、フロアには大合唱が鳴り響いた。
続く「Payment of Vomiter」では真緒の歌と美月(G)、亜季(B)のシャウトが重なり合い、剣(G)が恍惚のパフォームを見せれば、再びヘドバンの嵐を巻き起こした「under the chaos」では、剣と美月によるツインギターの掛け合いやユニゾンも魅力的。亜季に赤のスポットライトが差し、野太いベース音から始まったミディアムチューン「melancholia」が次へと繋ぐグラデーションを描き出した。
Sadieとは“SADNESS”すなわち哀しみや痛みを生きる力に変えてきたバンドであり、8年半ぶりのステージであっても当然その軸がブレることはない。中でも、中盤のエモーショナルなバラードナンバー「嘆きの幸福」、剣が紡ぐアルペジオと景(Dr)が刻むハイハットのリズムに乗せた真緒の歌から始まり、亜季による動きのあるベースフレーズも特徴的な「サイレントイヴ」、さらに静寂を切り裂くように剣と美月による鋭利なギターサウンドが響き、景が打ち鳴らすリズムが実にドラマティックなハードチューン「Crimson Tear」が続いた流れは、楽曲の毛色は様々ながら強く“生きる意味”が打ち出された印象深い場面だった。
「生きてるか!?」「生きてる証見せてくれ!」「お前たちの存在を証明してくれ!」といった真緒の絶叫も随所で見られ、本編終盤の「サイコカルチャー」では「お前たちの居場所はここだー!」と、この場に居合わせた誰もが待ち望んでいたであろう言葉が放たれることに。本編ラストナンバーとなった「陽炎」では銀テープが舞い、最後はドラム台を4人が囲むように5人が円となり、フィニッシュを迎えたのだった。
アンコールでは、真緒が「何が一番嬉しいって、メンバーへの声援を聞きながら歌うこの気持ちよさ、たまらんすね。だからもっと俺に聞こえるように、お前たち(オーディエンス)に叫んでほしいんですよ」と言い、メンバー紹介からそれぞれの言葉が届けられた。
「長い間待っていてくれて、またこうやってSadieに戻ってきてくれて本当にありがとうございます。マジで感謝の気持ちでいっぱいです。最高。このライブをするのにも色々な方が携わってくれて、皆のお陰でステージに立たせてもらっています。本当にありがとうございます」(景)
「ただいま。(「おかえりー!」と応えたオーディエンスに対し)久しぶりだから許すけど、『おかえりなさい“ませ”』な(場内笑)。本当に感謝しています。それをベースに乗せて、シャウトに乗せて精一杯伝えたつもりです。なので、言葉で付け足すことはもう何もないです」(亜季)
「(声援に)うるさい(笑)! 8年半しつこく『復活せえ、復活せえ』って応援してくれてありがとうございました。そのあなたたちのしつこさがあって、今日を迎えることができました。しつこくどうもありがとうございました! 心から感謝しております! この約8年間、それぞれの道に進んで、それぞれの新しい人生がありますが、それを8年間応援してくれてありがとうございました。あなたたちが支えてくれたから、今日ここに立っていられると思います。(Sadieのライブが初めての人に向けて)そんなん関係ない。長さじゃない、深さやから。どの活動もそれぞれ応援よろしくお願いします」(美月)
「本当に生きててくれてありがとうございます。それぞれ色々な事情があると思いますが、皆が生きていてくれたから、こうやってまた会えるんです。別に頑張らなくていいんです。ただ生きているだけで、こういう日を迎えられることができるということを、今スゲー感じているので。昨今悲しい発表も多い中、生きてさえいてくれれば、また会えるかもしれない。正直、未来なんて誰もわからない。俺らだっていつ復活できるかなんてわからんかったし。でも、あるきっかけがあって、それって結び付くんですよね。俺も頑張って生きようと思います。なので、これからも一緒に生きてください」(剣)
そして「生きてる証見せてくれ! カッコいいところ見せてくれ! 俺たちがSadieだ!」(真緒)と、「GRUDGE OF SORROW」を投入。真緒のグロウルが轟き、ステージには白煙が噴出すれば、その勢いのまま鉄板の暴れ曲「妄想被虐性癖」へ。景による高速ドラミングに亜季のシャウトが炸裂し、真緒からマイクを託された亜季が「いけるか東京! 一つになれるか! 全員でかかってこい!」と煽るシーンも。ステージ、フロア共に最高の暴れっぷりを見せたこの光景は、涙が滲むほどあまりに美しく、Sadieが帰ってきたという事実と、人の熱量は人の心を動かすのだと改めて実感させられる瞬間でもあった。
「ラスト、俺たちの思い、お前たちに届けさせてくれ」(真緒)と最後に奏でられたのは、〈独りじゃないよ傍にいてるから 遠く離れてても〉と歌うメッセージソング「a holy terrors」。リアルタイムの5人の映像と共に歌詞が映し出される中、フロアとの大合唱が響き、再びの「俺たちがSadieだー!」という真緒の絶叫をもって幕となったのだった。
なお、どこを切り取ってもハイライト尽くしだったこの日、例えば「迷彩」での亜季の振り、「Crimson Tear」や「M.F.P」で魅せたツインのギターソロ、「VIRTUAL FAKEMAN」での5人のワチャワチャとした雰囲気、「妄想被虐性癖」での美月によるハンドマイクを手にした煽り…私たちの記憶にあるSadieの姿が再び見られたことも嬉しさを伴うものであったし、真緒が再始動に向けた準備期間を振り返り、「俺たち何も変わってなかった。これができるのってホンマに仲間なんやなと改めて実感できました」と述べていたが、バンドのみならず、オーディエンスを含め筆者の目の前に広がった景色は、まさに8年の空白なんて嘘のようだった。
全てのパフォーマンスを終えた後、真緒は率直かつ実感のこもった言葉を述べた。
「8年以上経って、こうやって応援してくれる皆がいて。どうやって僕たちが歩んできた軌跡を伝えようか、たくさん頭を悩ませました。でもそこには仲間がいて、先輩後輩がいて、たくさんの人に支えられて今日という日を迎えられました。自分で言うのもなんですが、仲間、先輩後輩が、僕たちのことを愛してくれていたんだなと思いました。こんな勝手に8年間活動休止して、勝手に始めた俺たちに対して、色々な人たちが今日という日を作ってくれました。もちろん、ここにいるお前たち、本当にありがとう。皆、8年も経てば環境も変わったり、ライブはもう体がついていかないとか、他のものに興味を持ったとか、色々なことがあったと思います。この8年の空白の中で、今日という0から1を作るのは難しいことで、こうやって集まってくれた皆、すごいと思っています」
そして、「こういうことを言うのはあまり良くないかもしれないけど」と前置きしつつ、「めっちゃ大変やった! 8年間めっちゃ考えました。どうやって5人を集めて、どうやって形にして、皆来てくれるかな、忘れられてしまうかな…いろんなことを思いました。でも、こうやって今日を迎えられて、めっちゃ安心しています。まだまだ大変なこと、これから先考えなきゃいけないこと、正直いっぱいあります。でも、これだけの人に支えられて何も怖くないです。これから先、胸張ってSadieという活動、この5人の姿をまた皆に見せたいと思います。だから、これからも…この5人をよろしくお願いします!」
先述の通り、この後Sadieは4月7日に結成地である大阪・なんばHatchでの「THE REVIVAL OF SADNESS」第二夜を行うが、“NEXT PHASE”として9月21日JAPAN PAVILION HALL Aにて、lynch.、キズを迎えた主催イベント「THE UNITED KILLERS」を開催することがこの日、新たに発表となった。
なお今宵、開演前のステージに映し出されていたメインアートワークに公演タイトルと併せて「19TH ANNIVERSARY」とあった通り、Sadieはこの再出発と同時に(厳密には翌3月18日が記念日)19周年を迎えた。あの日に誓った“重なり合う未来”。その約束を果たした今、ここから再び始まるSadieと彼らを愛する人たちの旅の続きが幸福に満ちたものとなりますように。
◆セットリスト◆
01. 迷彩
02. 心眼
03. MAD-ROID
04. Ice Romancer
05. Payment of Vomiter
06. under the chaos
07. melancholia
08. 嘆きの幸福
09. サイレントイヴ
10. Crimson Tear
11. Grieving the dead soul
12. M.F.P
13. VIRTUAL FAKEMAN
14. サイコカルチャー
15. 陽炎
En
01. GRUDGE OF SORROW
02. 妄想被虐性癖
03. a holy terrors
(文・金多賀歩美/写真・小松陽祐)
【リリース情報】
●New Album『THE REVIVAL OF SADNESS』
2024年2月28日(水)発売
[限定盤](CD+DVD+36Pフォトブックレット+A3ミニポスター)TMZR-1011 ¥5,500(税込)
[通常盤](CD+24Pブックレット)TMZR-1012 ¥3,300(税込)
[CD]※共通
01. 迷彩
02. 心眼
03. Ice Romancer
04. under the chaos
05. GRUDGE OF SORROW
06. サイレントイヴ
07. Grieving the dead soul
08. MAD-ROID
09. Crimson Tear
10. 妄想被虐性癖
11. 陽炎
12. a holy terrors
[限定盤DVD]
01. 迷彩 -MUSIC VIDEO-
02. OFF SHOT & INTERVIEW
【ライブ情報】
●「THE REVIVAL OF SADNESS」
4月7日(日)なんばHatch
●Sadie presents 「THE UNITED KILLERS」
9月21日(土)JAPAN PAVILION HALL A
出演:Sadie、lynch.、キズ