[ kei ]が6月22日、東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにてワンマンライブ<THE NIGHT THE STARS SING->を開催。

そのステージのアンコールのMCを通して、これまで22年間所属してきた事務所であるフリーウィルを8月11日をもって退所すること、その後は1人で活動をスタートさせ、自身の誕生日である8月12日に東京・Veats Shibuyaにおいて独立後初のワンマンライブ<-365>を開催することを電撃発表した。

事実上、[ kei ]の事務所所属ラストライブとなったこの日の公演の模様を緊急レポートする。

開演直前、場内にはしっとりとした雰囲気のジャズが流れている。2023年、圭から[ kei ]へとアーティスト名の表記を変えて以降、ワンマンライブは今回で2回目。

ブラックスーツに白シャツ、白いリボンタイをシックに、品よく着こなした[ kei ]は、ステージに出てくるなり「ようこそ」と観客に呼びかける。それだけで表現者として成立するぐらい、いまやれっきとしたセンターとしての存在感を手にした[ kei ]。

先にスタンバイしていたサポートメンバーの高松浩史(B/THE NOVEMBERS、Petit Brabancon)、植木建象(Dr)を観客に紹介したあとは、しっとりとしたムードをそのままオープナーの「ETERNAL HEART」につなげて、この日は最新にして[ kei ]の最高傑作ともいえるこの極上のバラードでライブは幕開け。

なんともいえないブリリアントな夜が、場内を包み込む。ヴォーカリストにギタリスト、ソングライター、アレンジャーなど[ kei ]というアーティストが持つ多面的な魅力。その感性を全方位へとゆっくりとこの曲で開いていったあとは、ステージが照明でブルーに染まり、そこから「青空に吹かす夜、晴れ渡る日」(Cover)、「17.」とエネルギッシュなアップチューンを勢いよく連打。[ kei ]の歌声、メンバーの演奏に合わせてファンは身体を揺らし、拳を振り上げ、シンガロングを届ける。

勇気を出して歌声を届けるフロアを愛おしそうに見つめて、[ kei ]は曲終わりに甘いウィスパーヴォイスで「いいね」とファンに優しく語りかける。このような3ピース形態でライブをやるようになって、約1年。「今日はこの3人とみんなで素敵な夜にしましょう」と伝えたあとは、バックのBGMをイントロにして、次の「cry symphony.」へと展開していく。

歌ものと変拍子と宇宙空間的音像が見事に共存しながら、ポップワールドを織りなしていくこの曲で、観客たちの脳内宇宙を開いていったあとは、インストチューン「mobius.」でよりクリアに3人の音を脳内に浮かび上がらせていく。高松が歌うようにベースを奏でれば、建象は途中から変則ビートを叩き出し、[ kei ]はスキップするようこのリズムを跳ねながらキャッチ。

そうして要所要所に速弾きのアプローチを入れ、さっきの歌ものとはまったく違う音像で観客たちに宇宙を体感させていく。そのあと「Home sick」(Cover)が始まると、[ kei ]は地上に降り立ったような体温感でこの曲を人の温かみを感じさせるような柔らかなトーンで歌唱。

そうして、場内にノスタルジックな空気感が広がっていたあと、3人は一旦ステージからいなくなり、そのあとジャケットを脱いで白いシャツ姿になった[ kei ]が一人で登場。人生のラストシーンを綴ったBAROQUE時代の「LAST SCENE」を、それとは正反対にあるようなとびきりドリーミーな歌と弾き語りにのせてパフォーマンス。

歌い終わったあと、不穏なシンセが響き渡ると場内の空気は一転。再びリズム隊が登場し、始まったのはインスト「vita.」。宇宙から地上に舞い降り、そこから死に際までいったあと、誘った先に待ち構えていたのは地獄の果ての世界だった。

さっきまで穏やかで優しい雰囲気だった[ kei ]はそこにはいなくなり、悪魔が乗り移ったような表情をうかべ、ダークフォースを身体じゅうから放っていく。ライティングでステージが真っ赤になった瞬間、それを合図に3人はステージ上で一気に音でバースト。

ギミック的な演出はなにもないなか、曲中、バンド・アンサンブルが突っ走ったり抑制を繰り返してグルーヴをキープしながら狂ったように錯乱しくパフォーマンスは、大迫力。

狂気に取り憑かれたような音楽を浴びせかけられた観客は、ひたすら圧倒されるしかない。見るたびにスリルを増していくこの曲は、いまや[ kei ]のライブの裏定番曲。さらにそのパワーに磨きをかけ、この日はなんと14分間かけて、人間が現実世界ではたどり着けないような真っ暗闇の不気味な世界のどん底まで、観客全員をどっぷり引き摺り込んでいった。

いつもなら、ここで観客を突き放したままこのブロックは終わるのだが、この日は新しい展開としてこの後にインスト「in the light.」をプレイ。どん底まで落ちていった観客たちの心拍を、まず脈打つような力強いビートで蘇らせ、生きる道しるべとなる光をサウンドで灯して心のなかに広がった暗闇をどんどん浄化。こうして、みんなの心と身体をリセットしてみせたのだ。

「闇を抜けて、光までいって、ついにマイクも口元まできました」とおどけて話す[ kei ]。装着したヘッドセットマイクは、ギターを弾きながらアクティブなステージングを行うために、最近彼がトライしている新しいギア。

ギアを調整しながら、正式にソロになって以降、渋谷でしかライブをやっていないことに触れて「令和のシブヤ系アーティスト!(微笑)」といって場内を和ませ、ライブはここからは、音楽を歌って踊って楽しむ後半戦へ。

「コロナ禍に作りまして、BAROQUEから引き継いでる曲をやりましょうか」という曲紹介から「STAY」が始まると、たちまち場内の空気が華やかにきらめく。観客は冒頭からクラップを鳴らし、スタンドマイクから解き放たれた[ kei ]は、ギタリスト時代を彷彿させるように、ステージ上を自由気ままに動き回る。

3ピースのネクストフェーズ。その進化をたっぷり感じさせるアクティブなパフォーマンスでフロアを刺激すると、観客たちは「3、2、1、GO!」という[ kei ]の合図で、楽しそうに一斉ジャンプを繰り広げていく。

曲が終わると同時に、[ kei ]は自らシャツのボタンを全開。上半身を露わにしながら、袖をまくりあげたところにインダストリアルなダンスビートが鳴り響き、始まったのは「SIN QUALIA」。

華やかにきらめく自分のなかに表裏一体として存在している内面を、無機質なのに重量感あるサウンドでえぐり出し、ギターソロを入れたあとは、さらにそこにラップで追い打ちをかけ、心の奥深いところまでさらけ出していく。

そうして、お立ち台に立ち、その表裏にあるものすべてをエネルギーに変えるように、最後は「I LUCIFER」をものすごいテンションで歌い、演奏。エモさすべてをこの1曲に注ぎ込んでいって、本編はフィニッシュ。

アンコールの声に呼ばれ、この日の[ kei ]はシャツではなく物販のTシャツに着替えて登場。「ねっ。珍しいでしょ? 人生で初めてグッズの宣伝をしました」と話す[ kei ]。

普段はなかなか見られないレアな着こなしを見て、クスクス笑っているファンを「俺のようにね、裸シャツのほうが似合う人もいるの」といって説き伏せ、アンコールはエレキではなくアコギの弾き語りでスタート。

「みんな、いまから生まれた日のことを想像してみようよ」と提案したあと、曲に入る前にまずは観客が担当する歌パートとハミングで歌唱を入れるパートを練習。そうして、[ kei ]の弾き語りに合わせて、全員で「sleep2 the moon.」を歌唱していった。

美しい歌唱を届けてくれたファンに「ありがとうございました」と感謝を述べた[ kei ]は「僕からお知らせがあります」といい、まず自身の誕生日である8月12日、東京・Vesta Shibuyaで<-365>と題したライブを行うことを発表。

続けて「今年4月に決めたことがあって」と前置きをしたあと「22年間ずっとフリーウィルに所属して、事務所に面倒を見てもらってきましたが、8月11日をもって退所します。8月12日から1人で歩いていこうと決意しました」と、事務所を退所することを電撃発表。

事務所にはこれまで散々迷惑をかけながらも「守られてたからね。そりゃあ居心地はいいですよ」といい、「でも、圭から[ kei ]というアーティスト名になり、新たな人生の挑戦をしなきゃいけないタイミングだなと思った」と、この決断に至った経緯を告白。

そのタイミングの1度目は高校にも行かず「この世界に飛び込んだこと」だったと振り返り「それがあったからkannivalism、BAROQUEというバンドがあって、ここまで続いてきた」と自身の人生を振り返った。

そうして、あのときの音楽への情熱はいまもなお消えることなく自分のなかにあること。2度目のタイミングとなった今回は、この自分のなかにある情熱、音楽の行き先、自分とはなんなのか。それらが到達したところにはいったいなにがあるのか。その未来を、すべてをかけて自分で掴みたいと思ったことを、いつも自分のことを父親のような立場で守ってきてくれた事務所の社長であるTOMMY氏に打ち明けたところ「大変なことがあったらいつでも戻ってこい」と快諾してくれたことを報告。

「大丈夫、何かやらかして首になったんじゃないからね」と付け加えて「これからも失敗や迷惑をかけるかもしれないけど、どんなときもこの音楽への愛、この世界への愛を道しるべに歩んでいきたいと思うので、よろしくお願いします」と伝えると、客席からはその決断に対してエールをおくるように大きな拍手がわきおこった。

そうして[ kei ]はこのあと<-365>という次のライブのタイトルについても触れ、数字の前にマイナスがついているのは、「これから1年、ある目標に向かってやっていく」という意味で、そのカウントダウンがこの日から始まるのだと解説。

サポートメンバーを呼び込んだあとは「1度きりの人生、自分が思い描く最上の自分になりたい。そんな奇跡みたいな人生を楽しんでいきましょう。[ kei ]としての活動してきたそのすべてがMIRACLE。奇跡でできています」といって、[ kei ]の始まりとなった最新シングル「MIRACLE」をアクト。

キラキラするサウンドでみんなを照らしていったあと「俺にとっては一人ひとりが希望の光です。一人ひとり、人生の歌を歌いましょう」と伝え、最後はこの日のオープニングを飾ったバラードにダンサブルなアレンジを施した「ETERNAL HEART-the night the star sing-」を披露。

ムーディーな夜の幕開けとなった1曲目から始まり、宇宙から地上、死に際から暗闇の最果てまで旅をしながら、最後はこの光り輝く未来がこの先どこまでも続いていくという気持ちをみんなの胸に刻み込み、誰もが大きな多幸感に包まれたところでこの日のライブはエンディングを迎えた。

こうして[ kei ]の事務所所属、その最後を飾るライブとなった本公演は、集まった人々とともに、これから自分の全人生をかけて、1人で歩き出すと決断した[ kei ]の未来をも明るく、はっきりと照らしだしていた。

8月12日、事務所独立後初の公演となる<-365>で、自らの意思を持って新たな一歩を踏み出す[ kei ]を楽しみにしていてほしいと思う。

◆セットリスト◆
01.ETERNAL HEART
02.青空に吹かす夜、晴れ渡る日 ※Cover
03.17.
04.cry symphony.
05.mobius.
06.Home sick ※Cover
07.LAST SCENE
08.vita.
09.in the light.
10.STAY
11.SIN QUALIA
12.I LUCIFER
14.sleep2 the moon.
15.MIRACLE
16.ETERNAL HEART -the night the stars sing-

(文・東條祥恵/写真・尾形隆夫)


【リリース情報】
●[ kei ]NEW SINGLE //『MIRACLE』
NOW ON SALE

[ kei ] – MIRACLE (Music Clip_Full ver.)


【LIVE INFO.】
●kei. LIVE 2023「-365」
8月12日(土)Veats Shibuya
OPEN 16:30 / START 17:00

[Support Members]
Bass:高松浩史(THE NOVEMBERS、Petit Brabancon)
Drums:植木建象

[ kei ]オフィシャルサイト