2023.05.02
Kαin@新宿ReNY
「Kαinワンマンライブ「約束の日」CD無料配付GIG」

1993年に始動したD≒SIREを皮切りに、以降JILS、Kαinのシンガー/コンポーザーとして精力的な活動を行っているYUKIYA(藤田幸也)。硬派なロック・テイストと洗練感を併せ持った独自の音楽性やパンク・スピリットを感じさせる熱い人柄などは非常に魅力的で、彼は長年に亘って多くのリスナー(男性ファンが多いことも注目)から篤い支持を得続けている。

そんなYUKIYAが彼の誕生日となる5月2日に「Kαinワンマンライブ「約束の日」CD無料配付GIG」と銘打ったライブを、新宿ReNYで行なった。同公演はタイトルどおり来場者全員に未発表音源のCDを配布するという特典がつき、さらに記念グッズなどが付加される“VIPチケット”と一般チケットを選べる形態で開催。両チケットともに完売となり、YUKIYAが高い動員力を誇っていることをあらためて感じさせる中でのライブとなった。

場内が暗転してストリングスやピアノをあしらった穏やかなオープニングSEが流れ、ステージ前に降ろされたスクリーンに森や湖などの美しい情景が映し出される。続いてKαinのメンバー達がステージに姿を現し、客席から男性ファンが多いライブ(半数以上は男性でした)ならではの「ウォーッ!」という野太い歓声と盛大な拍手が湧き起り、ライブは「LiFE」から始まった。

シックなロングコートを身に纏い、ステージに力強く立って、エモーショナルな歌声を聴かせるYUKIYA。引き締まった表情で、しなやかなビートやフィルを紡いでいくATSUSHI(Dr)。サポートメンバーでいながら強い存在感を発しつつシュアなプレイを展開して、強固なバンド感を生み出す一也 -kazuya-(G)とkazu(B)。華やかなステージと爽やかなサウンドにオーディエンスは一体感のあるリアクションを見せ、ライブは非常にいい雰囲気で幕を開けた。

その後はソリッドなサウンドと弾力感のあるヴォーカルのマッチングを活かした「NUMBER SIXXX.」や翳りを帯びた「因果律」、ダークな歌中とメロディアスなサビを配した「BARREL」といったアップテンポのナンバーを続けてプレイ。曲が進むに連れて加速していく流れが心地いいし、客席に煽りを入れながら歌うYUKIYAのカッコよさに目を奪われる。気持ちが駆り立てられる瞬間の連続に牽引される形で、場内のボルテージはどんどん高まっていった。

クール&スタイリッシュな「レイシー」を聴かせた後、「こんばんは、Kαinです」とYUKIYAが挨拶。
「今日は俺の誕生日を祝うGIGということで、超高価なチケットを皆さん買ってね。皆さんが一生懸命働いて、皆さんが汗水垂らして時間……時間というのはイコール命ですから、命を使って稼いでくれたお金をチケット代として払わされた挙句に、おかしな服(VIPチケット特典のTシャツ)を着させられているじゃないですか(笑)。こういうのを、同調圧力と言うんですかね(笑)。そんな中ですよ、皆さんが今日という1日をどんなふうに過ごしたいかは皆さん次第なわけです。たしかに、ステージの上に立って皆さんを先導しているのは私です。今日のライブを企画したのも私です。だから、皆さんに責任を押しつけるわけじゃありません。が、しかし皆さんに責任を押しつけましょう(笑)。今日のライブがいいライブになるかどうかは、お前ら次第です。今日のライブの主役は君達だ。俺達に、目にものを見せてくれるんだろう? 目にものを見せてくれるんだよな!」というYUKIYAのアジテーションに、客席から「ウォーッ!」という熱い声があがる。

ところが、YUKIYAは続けて「盛り上がれ、盛り上がれみたいな話をしましたけど、次からバラードのセクション(笑)。ここからは少しミドル・テンポの曲をやります」とコメント。客席は一気に和み、この辺りの持っていき方は上手いなと思う中、「落日の砂」や「レイニーレイン」「あいのうた」といった憂いを帯びたナンバーが相次いで披露された。アッパーな前半からメンバー全員がスッと気持ちを切り替えるのはさすがだし、バンドとしての秀でた表現力を発揮して深みのある世界を構築するのも実に見事。スロー・チューンの連続でいながら退屈さは微塵もなく、深く惹き込まれずにいられなかった。

その後は1部(今回のライブは2部制だった)の締め括りとして、美麗な「Nowhere Else」をプレイ。じっくり聴かせる構成でオーディエンスを魅了して、Kαinはステージから去っていった。

15分ほどのインターバルを経て、2部はラグジュアリーな「NOWHERE」と流麗なメロディーや効果的なビート・チェンジなどを活かした「graver」からスタート。共に新曲でいながらオーディエンスの反応はよく、Kainの楽曲クオリティーの高さを再確認させられる。スロー・チューンを纏めたセクションから休憩を挟んだ後、耳に馴染みの薄い新曲2曲という流れにも拘わらず客席のテンションが下がることはなく、ライブは終始いいムードで進んでいった。

「graver」の後は、さらに世界を深化させるように妖艶な雰囲気の「聖痕-stigma-」や耽美感を湛えたシャッフル・チューンの「残月」、客席から合唱が湧き起こった「Latency Sorrow」などをプレイ。幅広さと完成度の高さを兼ね備えた楽曲群は聴き飽きることがないし、1曲の中で柔から剛まで自在に使い分けるYUKIYAのヴォーカルや楽曲の世界観作りに寄与するATSUSHIのドラムを始めとした上質なプレイの数々も実にいい。YUKIYAの美意識の揺るぎなさは本当に魅力的だし、それに共鳴して説得力のある形で聴かせることができるメンバーが揃っていることはKαinの大きな強みといえる。

「Latency Sorrow」を聴かせた後、再びYUKIYAのMCが入った。
「いつかロックが死ぬ日がくるとしても、それは因果応報かもしれないね。俺達がガキの頃はさ、演歌なんてオッサンが聴くもんだぜと思っていたわけよ。今は、演歌は好きだよ。でも、10代の頃はそう思っていたわけじゃん。同じように、今の若いヤツらはロックなんてオッサンが聴く音楽だと思っているかもしれない。だけど、俺はすごくロックに救われて生きてきたんだ。学校のみんながテレビで流れている音楽ばかりを聴いている中で、俺が好きな音楽は絶対にテレビで流れないということにちょっとした優越感を感じたりしてさ。そういう暗い、暗い青春時代を送ってきたわけよ。俺はずっとロックが好きで、ロックをやるうえでどうしても必要なものがあった。それは、メンバーと君達オーディエンス。だからさ、ファンの人っていうのはすごく大事だよ。だけど、正直に言うけど、ファンの人ってウザいじゃん。ああ言えばこう言うみたいな人もいるし、自分の理想を押しつけたりするし。俺はマジでお前達のことなんか嫌いだし、ウザいと思ってた。だけど、俺が表現したいことを残していくうえでときには苦しかったり、悩んだり、うまくいかなったり、思うように活動できなかったり、理不尽な目に遭ったり。そんな中で、たったひとつの光が自分の曲を心から愛してくれる君達でした」

そんな熱い言葉に続けて、「そのことを歌った曲があります。俺達のスタイルやサウンドだけじゃない、俺達のロックです」という言葉と共に煌びやかな「光」が届けられた。そして、爽やかかつウォームな「Re:MEMBER」を聴かせた後、ラストソングとして「theEPIC」をプレイ。しなやかにたゆたうサウンドと情熱的に歌い上げるヴォーカルをフィーチュアした同曲の聴き応えは圧倒的で、感動的な余韻を残して「Kαinワンマンライブ「約束の日」CD無料配付GIG」は幕を降ろした。

ハイ・クオリティーな音楽や独創的なライブ・アプローチなどで、場内を埋めたオーディエンスを満足させたKαin。ミュージシャン・シップの高さが光ると同時にVIPチケット/一般チケットを用意し、VIPチケット購入者限定でアンコール(アンコールではメンバー全員によるトークと「証-akashi-」を披露)やサイン会などを実施するアイディアもさすがといえる。今は選択肢があることを喜ぶユーザーが多い時代であり、YUKIYAがそれを理解していることがうかがえた。彼がアーティストのみならずプロデュースやレーベル運営などでも実績を残しているのは、時代を読み取る力を備えているからこそといえるだろう。

YUKIYAは今年の秋に音楽活動30周年を迎えるが、それも単なるひとつの節目に過ぎず、彼はこれからも輝き続けるに違いない。それを強く予感させられる上質なライブだった。

◆セットリスト◆
【第一部】
SE. THE ONE DAY
01. LiFE
02. NUMBER SIXXX.
03. 因果律(未音源化)
04. BARREL(未音源化)
05. レイシー
06. 落日の砂(未音源化)
07. レイニーレイン(未音源化)
08. あいのうた
09. Nowhere Else(未音源化)
SE. theEND -piano ver-

【第二部】
SE. NOWHERE SE
10. NOWHERE(新曲)
11. graver(新曲)
12. 聖痕-stigma-
13. 残月
14. あふれそうな涙(未音源化)
15. Latency Sorrow
16. 光(未音源化)
17. Re:MEMBER(未音源化)
18. theEPIC(未音源化)
SE. east of eden

En(VIPのみ)
19. 証-akashi-(未音源化)
SE. 証-akashi-2023

(文・村上孝之/写真・逸見隆明)


【ライブ情報】
●Kαin結成16周年記念公演「GIGS VISUALIVE~東京、モノクローム…」【day:1】
7月8日(土)渋谷REX
開場17:30/開演18:30

出演:Kαin(YUKIYA&ATSUSHI)
※Support Guitar:一也 -kazuya-(HOLLOWGRAM)
※Support Bass:kazu(the god and death stars、gibkiy gibkiy gibkiy、STEREO.C.K etc…)

料金:前売¥7,700(全席指定/ドリンク代別)
前売:予約はTMFRメルマガ会員のみ/一般チケットは当日券のみ

●Kαin結成16周年記念公演「GIGS VISUALIVE~東京、モノクローム…」【day:2】
7月9日(日)渋谷REX
開場17:30/開演18:30

出演:Kαin(YUKIYA&ATSUSHI)
※Support Guitar:一也 -kazuya-(HOLLOWGRAM)
※Support Bass:kazu(the god and death stars、gibkiy gibkiy gibkiy、STEREO.C.K etc…)

料金:前売¥7,700(全席指定/ドリンク代別)
前売:予約はTMFRメルマガ会員のみ/一般チケットは当日券のみ

藤田幸也 オフィシャルサイト