2023.05.04
「橋本祭2023〜Last 30’s〜」@渋谷REX
◆渋谷REX、店長「橋本裕也」が一番輝いた日
5月4日、渋谷REXを舞台に、ひと癖あるイベントが行われた。それが「橋本祭2023〜Last 30’s〜」。この時期、渋谷REXでは毎年恒例の行事。イベント名に記された”橋本祭”とは、橋本裕也店長の誕生日を祝うお祭りを略してのこと。彼は、もともとヴィジュアル系バンドマンとして活動。今も、渋谷REXをヴィジュアル系バンドの聖地として育み続けている。そんな橋本店長のヴィジュアル系愛が爆発。同時に、「たまには俺も主役にさせてくれよ」と、毎年、1日限定のバンドを結成。その腕前と、ヴィジュアル系愛を披露する場として「橋本祭」を開催している。
今年参加したのは、Yuyaセッション[Ba.Yuya(SHIBUYA-REX)、Vo.mitsu(ν[NEU])、Dr.輝喜(アンティック-珈琲店-)、Gt.公佑(SPLENDID GOD GIRAFFE)、Gt.未月(アンフィル)]、168、HERO、ZOMBIEの4バンド。さっそく、当日の模様をここにお伝えしたい。
【ZOMBIE】
◆カオスだ、このカオスな空気が、むしろ気持ちをイカせてゆく。
「僕らはみんな死んでいる」のSEを受け、だらりと両腕を前に出したゾンビポーズのメンバーが舞台から現れた。ライブは、「シン・細菌マン」からスタート。ヘヴィでダークネスなサウンドとデジタル音をミックス。その上で、奏多が生々しくも”生”を感じる歌声を響かせ、フロア中の人たちをZOMBIEが生み出す音の細菌で侵してゆく。背景にはMVも上映。フロアでは、エモくダークでラウドなZOMBIEの音楽に合わせ、跳ねたり、タオルを振りまわす人たちも。冒頭からZOMBIEは、この空間に黒い熱を沸き立てていた。
「ZOMBIEなりに愛情たっぷりの曲をどうぞ」。奏多の言葉を合図に飛びだしたのが、「四丁目アパート殺害事件」。気持ちをウキウキと掻き立てる演奏に合わせ、フロア中の人たちが両手を広げて踊りだす。サビ歌では、大きく横揺れする様も。楽しい。気持ちが疼くのなら、身体が求めるままに騒げばいい。間奏でも、いい感じで観客たちが沸き上がる。ZOMBIEの演奏は、どんどん熱とエモい歌を重ねながら、この空間に”生々しい衝撃”を描きだしてゆく。
奏多の「手拍子!」の声を合図に、青井ミドリのベースがノイズにも似た音を轟かせる。楽曲は「腐り姫」へ。墓場の十字架に見立てた特徴的なマイクスタンドを抱えながら、奏多は胸を熱くくすぐるエモくメロい歌を通して、観客たちの身体と気持ちを揺らし続ける。izunaのギタープレイに向けて花咲く場面も色鮮やかだ。重厚な音が響くたびに、フロア中の人たちがヘドバンをすれば、開放的なサビでは、大勢の観客たちが無心に踊り狂い、はしゃいでいた。気持ちが動くままゾンビのように、本能のままに楽しめばいい。それが一番の快楽だ。
腰にガツンッと響く演奏が炸裂。ZOMBIEは「クソったれが」を突きつけ、凄まじい黒い音の銃弾を次々とビートに乗せて撃ち(叩き)続ける。魔境の司祭と化した奏多へ導かれるように、フロア中の人たちが凄まじいリズムとシンクロするように頭を振り乱し、ときに身体を深く折り畳みながら、熱狂へ嬉しくひれ伏していた。
橋本店長への愛と感謝の思いを述べたうえで、ライブは終盤へ。「この渋谷REXに絶望を!」の声を合図に、超絶激しい楽曲が轟きだした。フロア中の人たちが全力で頭を振り、腕をブンブン振りまわす。ZOMBIEは「午前五時、絶望」を奏で、フロア中に痛い衝撃を降り注ぐ。絶望と言いつつも、体感的な衝撃の強い楽曲だけに、フロア中の人たちが理性を投げ捨て、演奏へ引きずられるように飛び跳ね、拳や手にしたタオルを振りまわしていた。カオスだ、このカオスな空気が、むしろ気持ちをイカせてゆく。
最後にZOMBIEは、〈死んじまえ!死んじまえ!〉と「死ねばいいのに。」を絶唱。フロア中の人たちがサムズダウンしながら高く掲げた腕を大きく揺らし、踊り腐るゾンビと化していた。サビ歌では嬉しそうに飛び跳ねる景色。転調し、三拍子になったとたん、リズムに合わせてゆったり身体を腐らす…揺らすなど、誰もがZOMBIEの演奏と気持ちをシンクロ。〈死んじまえ!!〉の歌声を胸に受け止めながらも、この場で”生”を謳歌するように飛び跳ね騒ぎ続けていた。
【HERO】
◆全力で頭を振ったり、横モッシュしたりと大忙しだ。でも、それこそがHEROのライブの楽しさだ。
橋本店長の親友バンド(!?)HEROの登場だ。「横モッシュだ、しっかり暴れろ」。JINの声を合図にライブは「CRACKER」からスタート。胸を嬉しく騒がせるエモロックチューンが飛びだすのに合わせ、フロア中の人たちが両手を高く上げ、大きく左右に揺らしだす。ヴィジュアル界随一の、観客たちを魔法にかける音楽のコンダクターJINの誘う声に合わせ、フロア中の人たちか右へ左へと横モッシュ。その様は、まさに民族大移動のよう。JINの温かい歌声へ導かれるように、自然と身体が左右に揺れれば、前後へも折り畳みだす。どんなノリをしようと、表情はいつだって笑顔だ。JINの、HEROの誘いに乗っていたら、もう身体が疼いて仕方がない。
「肩組め、肩組め~」「一つになってくれ」。JINの言葉を合図に飛びだしたのが、「to you」。演奏が始まったとたん、両隣の人たちと肩を組んだ観客たちが、その姿のまま無邪気に飛び跳ねれば、身体を前後に深く折り畳む。一瞬だけ肩を組むのではなく、その後も観客たちは、両隣の人たちの腰に両手をまわし、一緒に身体を揺らし、飛び跳ねるなど、HEROの演奏に合わせて。JINの歌声が指揮するまま、「楽しい」の魔法にかかったまま、誰もが無垢で純真だった頃の少女に戻り、くしゃくしゃの笑顔で楽しんでいた。
SARSHIの掻き鳴らすギターの音を合図に演奏したのが、「Shall We Sing」。胸をキュンと騒がせるかわいい??ポップチューンに乗せ、フロア中の人たちが、演奏に合わせて掲げた手を左右に揺らしていた。誰もがJINと一緒に歌の世界へ飛び込み、ともに手を取り合い、ダンスを踊るように、ロマンチックな色に心を染めてはしゃいでいた。いいよね、この空気が。
JINが橋本店長の誕生日を祝いつつも、「俺も同じ5月6日が誕生日なんだよねぇ」と語りだす。これも、JINなりの橋本店長へのお祝いの仕方だ。
「大きな声で」「出てこいや!」のやりとりを合図に、「超過激愛歌~Super Ultra Lovesong~」の演奏へ。JINの煽りを受け、気持ちを荒々しく揺さぶる演奏に刺激され、フロア中の人たちが全力でヘドバンしだせば、ときに横モッシュをすれば、高く上げた両手を揺らし、バネの壊れた人形のようになって飛び跳ねるなど、気持ちが動くまま無邪気にはしゃいでいた。曲中、何度か出てくる「大きな声で」「出てこいや!」のやりとり。その様を見るたびに、沸き立つ気持ちを抑えられなくなる。全力で頭を振ったり、横モッシュしたりと大忙しだ。でも、それこそがHEROのライブの楽しさだ。
最後にぶつけた「ソプラノ」では、JINの〈また明日会えるかな〉の歌声に合わせ〈ごめん、予定あるの〉とお馴染みの歌声のやりとりを交わしていた。「楽しい」。ほんと、その言葉しか出てこないライブだ。たとえ心に闇を抱えていたとしても、HEROのライブに触れている瞬間だけは、身体中が楽しいという喜びに染まりきれる。自由奔放なJINの姿に触れていると、不思議と無敵で無邪気な自分でいられる。だから、フロア中の人たちが何時の間にかぐちゃぐちゃになりながらモッシュし続けていたのだろう。
【168】
◆葵と橋本店長とはズブズブの関係だと告白。
168のライブは、跳ねた演奏の上で歌声を踊らせるように葵が歌う「春の餌食」からスタート。ジャジーで妖艶な、大人の香りを醸しだす楽曲だ。妖しさの中へ、演奏陣が重厚な音を塗り重ね、楽曲をどんどん艶めいた妖美な世界へ染めあげる。触れたら心が火傷しそうな。でも、意外と純粋で無垢な恋心を、葵は歌に乗せて告白するように歌っていた。なんて、奥深い大人のラブソングだろう。それをさらりと、色気を持った歌声と演奏で、彼らは見ている人たちに甘い誘いをかけていた。
隠していた野獣のような本能をさらけ出すように、168は「本性」を演奏。先までの妖艶な姿はどこへやら、葵は台の上に乗り、今にもフロアへ飛び込まんばかりの勢いで、観客たちに挑みかかっていた。ときにマイクを両手でがっちりと握り、荒ぶる声を張り上げ、鋭い歌の牙でフロア中の人たちのハートに噛みつけていた。その姿に刺激を受けて飛び跳ねる人たちから、圧倒されるまま棒立ちで見ている人たちも。それくらい熱い衝撃を168はぶつけていた。
1曲ごと、巧みに表情を塗りかえてゆく168。「木犀」でも、軽快に跳ねた演奏に乗せ、葵は甘く優しい声で一人一人のハートに歌の手を伸ばし、心の奥にしまった淡い思い出にそっと触れていた。とても、甘い温もりを持った歌声や演奏だ。いや、演奏はいい感じで攻めた面も見せるが、葵自身が、一人一人の気持ちへ寄り染うように歌を届けていた。だから、彼が舞台の上で綴る思いへ見ている側も優しく寄り添えば、互いに心の中で伸ばした手を結び合っていた。
MCでは、葵と橋本店長とはズブズブの関係だと告白していた。この日の橋本店長はビューティーボーイでキラキラ輝いていたことも、愛を込めて語っていた。
続く「beauty girl」を、この日は橋本店長へ捧げる思いから「beauty boy」に変えて、演奏。冒頭から葵と観客たちが、激しく駆けだした演奏に合わせて両腕をくるくると回しだす。この曲では、葵の動きに合わせ、フロア中の人たちも同じ動きをしながら、一緒に華やいだパーティーを作りあげていた。 この日は、ギターソロでも、葵と観客たちがずっと拳をくるくると回しながら煽っていた。フロア中の人たちが気持ちを一つに橋本店長の虜に…、いや、熱狂の虜になっていた。終盤でも、一緒に飛び跳ねるなど、まさに一体化した様が、そこには広がっていた。
演奏は、さらに勢いを増して「MUSIC」へ。葵はスタンドマイクを手に、台に片足を乗せ、身体を前のめりに歌いだす。葵の攻めた姿勢に刺激を受けた観客たちが、エモいロックナンバーに気持ちのリズムをシンクロしながら無邪気に飛び跳ねていた。葵の圧の強い歌声に向けて手バンしてゆく様や、拳を突きあげる姿など、一緒にこの空間の熱を沸騰させてゆく様が、最高だ。演奏が進むごと、身体が火照る感覚を覚えていたのも嬉しかった。
最後に168は、熱いクラップに乗せて「ニュークラシック」を演奏。葵が左右に動く姿に合わせ、観客たちも身体を左右に向けながら、葵と心をシンクロ。スタイリッシュながらもエモーショナルな楽曲に気持ちを揺さぶられた観客たちが、ときに葵の振りに合わせ、ときに演奏へ触発されるように腕を振り上げ、共に「楽しい」という感覚を味わえば、その楽しさのバトンを、この日のイベントのトリを飾る橋本バンドへ手渡していった。
【橋本バンド a,k,a Yuya Session】
◆これからも、ずっとずっと、この箱を輝かせてほしい、よろしくね、橋本店長。
Ba.Yuya(SHIBUYA-REX)、Vo.mitsu(ν[NEU])、 Dr.輝喜(アンティック-珈琲店-)、 Gt.公佑(SPLENDID GOD GIRAFFE)、Gt.未月(アンフィル)と、豪華なメンバーが集結。さすが、開店以来、ずっと渋谷REXをヴィジュアル系バンドの聖地として育てあげてきた橋本店長だからこそ集められたメンバーたちだ。
満面の笑顔で、真紅の貴公子と化したYuyaこと橋本店長が舞台へ登場。ライブは、なんと菅田将暉の「さよならエレジー」からスタート。この日、ヴィジュアル系ナンバーばかりで攻めるのか…と思ったところで、意外性を持った楽曲を持ってきたところが、期待を嬉しく裏切る橋本バンドらしさ!? 低音域の声を生かしたmitsuの歌声が、とにかく渋い。いや、大人の色気をまとったこのバンドに、意外と似合う表情と言えようか。mitsuの歌声へ寄り添うように、橋本店長が優しく口ずさみながらベースを弾いていたことも伝えておこう。比較的後ろのポジションで控えめに演奏をする橋本店長。とはいえ、時にぐっと腰を落として演奏するなど、しっかりと見せ場も作っていた。
シドの「妄想日記」では、スリリングかつスカビートに乗せ、少し甘めに。でも、mitsuは、いい感じでしゃがれた歌声を魅力に、誘いかけるよう艶やかに歌っていた。曲が進むにつれ、どんどん妖艶さが増してゆく。背景には「妄想日記」の歌詞が映し出されていた。そういえば、mitsuはこの曲を日本武道館で歌ったこともあった。そんなことも思い出しつつ、mitsuが「今日の主役は」と、アピール。橋本店長も前へと身を乗り出し、観客たちの「Yuya!」と叫ぶ声を嬉しそうに全身で受け止めていた。
フロア中から響く「Yuya!」の黄色い声。mitsuの「本日の主役は」の言葉を受け、ふたたびフロア中から響き渡る「Yuya!」の声・声・声。橋本店長は、めちゃめちゃ甘い笑顔と感動の表情で、その声を受け止めていた。橋本店長は、関西弁で、メンバー一人一人を誘った理由を語っていた。
このメンバーで、しかもmitsuの歌声でν [NEU]の「YES≒NO」を聴けたのも、嬉しいながらも、とても不思議な気分だ。曲が流れだしたとたん、フロア中の人たちが右に左へと横モッシュしだす。mitsuの煽りを受け、嬉しそうに飛び跳ねれば、サビでは、メンバーたちの〈YES≒NO YES≒NO〉の声に合わせ、フロア中の人たちも、同じように〈YES≒NO YES≒NO〉と叫び、手で大きく○×を作りながら、満面の笑顔で飛び跳ねていた。いつしか橋本店長も前へと乗り出し、観客たちにベースを突きつけ煽っていた。一体化したこの熱狂が、心を熱く燃えたぎらせる。
次に飛びだしたのが、なんとJanne Da Arcの「ヴァンパイア」。激しくも、心地好く掛けだした演奏の上で、誰もが気持ちをエモく染めあげ、高く拳を振り上げだした。mitsuの煽りに合わせ、フロア中の人たちがヘドバンや折り畳む景色も胸熱だ。スリリングな空気を振りまきながらも、mitsuの熱情した歌声が、ロックンロール特有の熱い衝撃を与えていた。身体を大きく反らしながらベースを演奏する橋本店長の姿も勇ましい。観客たちを煽るように、それこそ首筋に噛みつく勢いで煽るmitsu。その歌声や演奏に刺激を受け、フスア中の人たちが頭を揺さぶり続ける。途中には、mitsuが橋本店長へ噛みつくように妖しく絡み合う場面も登場。まるで恋人どうしのような様を見せてゆくところに、2人の強い絆も感じていた。落ちサビでエモい気持ちに心を染めあげながら。終盤に向け、フロア中がヘドバンする様に包まれていた。この曲でも、橋本店長がさりげなく前へ出てアピールしていたことも伝えておきたい。
最後にYuya Sessionがぶつけたのが、アンティック-珈琲店-の「スマイル一番イイ♀」。彼らの熱く甘い誘いにのって、フロア中の人たちが、きらめくいい女に気持ちを染めあげ、舞台上のメンバーたちへ向かってアピール。いや、フロアにいた女性たちを女神のようなきらめくいい女たちに染めあげていたのも、舞台の上でハートを落とすキラキラのスマイルを見せながら観客たちにアピールしていた橋本店長を筆頭とするこのメンバーたちが、本気で演奏を楽しむ姿を見せていたからだ。フロア中の人たちが演奏に飛び乗り、その場で、キラキラの笑顔で飛び跳ねていた。間奏では、大きく手の花を咲かせる場面も印象的だ。いいよね、誰もが無邪気な笑顔で幸せを感じていけるって。終盤には橋本店長が台の上に上がり、アピール。この楽しさを生み出す橋本店長がいるからこそ、渋谷REXに数多くのヴィジュアル系バンドマンたちが集えば、この箱を神聖化させてゆく。これからも、ずっとずっと、この箱を輝かせてほしい、よろしくね、橋本店長。
最後に、サプライズで出演メンバーたちがバースデーケーキを持って舞台へ登場。ケーキを手にした橋本店長の姿を写真におさめ、この日のライブの幕を閉じていった。
(文・長澤智典/写真・TOMIKE)
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