2013.7.5
AKIHIDE@赤坂BLITZ
1st Live Tour 2013“Amber”
「悲しみの意味、悲しみと向き合うこと」…これはアンコールで「Hello! Mr. Sadness」を披露する直前、AKIHIDEが口にした言葉。この言葉の真意が心の奥底にしっかりと届けられたステージであったことをまず記したい。先頃リリースされた1stソロアルバム『Amber』はAKIHIDEの音楽人生や死生観が色濃く表れている、本人曰く「私小説のような作品」であり、今ツアーは文字通り本作を引っさげてのものである。それだけに、彼が奏でる音と言葉には表面的ではない確かな重みがあった。
改めてこれまでの時系列を辿ると、昨年、BREAKERZがデビュー5周年を迎えたことを機に、バンドの更なる飛躍を目指し今年4月よりメンバーそれぞれがソロ活動を開始した。6月5日、ギタリストAKIHIDEは自身キャリア初となるソロアルバム『Amber』をリリース。その後、大阪 amHALLを皮切りにツアーをスタートさせたわけだが、ソロ1stツアーでありながら全8公演全てがソールドアウト。そしてこの夜、赤坂BLITZにてセミファイナルを迎えた。
今夜の“Amber”の旅はアルバム同様「涙の河」で力強く幕を開け、続く「愛しのヴァルキュリア」ではAKIHIDEは早くも前方へと繰り出し笑顔を見せる。ギターヴォーカルを担うAKIHIDEのステージをサポートするのは、ベースの二家本亮介とドラムの石井悠也のみという、スリーピースのスタイル。内にあるもの全てを吐き出すようにエモーショナルなギターを奏でるAKIHIDEと、彼がその音に惚れ込んだという2人のミュージシャンの音のバトルは、文句なしに純粋に“かっこいい”。
この日は曇天だったが「この一瞬だけ桜色の雨を降らせられたら」と披露された「桜雨」、“静と動”、“明と暗”といった相反するものが特に強く描かれた「星の狂想曲」と楽曲が進んでいく中、「遠い空の上にいる人に綴った曲です。思いを込めて」と前バンドであるNEVER LAND時代のナンバー「天国への手紙」を披露。悲しみから生まれたであろう楽曲でありながら、その曲調はアップテンポでキャッチー。爽やかささえ感じられるこの曲をAKIHIDEは満面の笑みを浮かべながら歌う。その姿はまるで、残された者が悲しみと向き合った果てのあるべき姿を体現しているようだった。また、これまでの様々な出会いに感謝していることを述べ「BREAKERZに敬意を表して」と披露した「哀しみデイズ(カナシミDays)」(BREAKERZ)においても、そこに描かれているのは悲しみの先にある明日へのメッセージだった。
冒頭に記したAKIHIDEの言葉には続きがある。「誰もが悲しみから逃れられないからこそ、お互いに共感し合えるし、手を取り合って生きていくことができる」…こうして奏でられた「Hello! Mr. Sadness」は、AKIHIDEがアルバム制作時に様々な人たちとの絆を特に強く感じることができたという楽曲。優しく穏やかな眼差しでオーディエンスを見つめながら歌うAKIHIDEと、彼ら彼女らとの〈Hello! Hello!〉の掛け合いの声が響き合い、この空間は何物にも代え難い温かさに包まれたのだった。
また、この日はAKIHIDEの誕生日ということで、アンコール時に「Happy Birthday」のサプライズもあったが、「実は次の作品を作っています。『Amber』の対になるような、ギターをメインにした作品」というAKIHIDEからの思わぬ発表で、ファンにとっては嬉しい逆サプライズとなった。そして、「明日からの日々に辛いことも色々あると思います。今日のライブがみんなの笑顔が繋がるきっかけになれたら」と、ラストは「ダッシュ」でフロアいっぱいに最高の笑顔が咲き、この夜の旅は終わりを迎えた。
今夜、この旅を共にした多くの人々の心の中に、何かしらの種が植えられたのではないだろうか。それは、この舞台に掲げられていたロゴの周りを四方に伸びる枝葉のように、少しずつ成長し、やがて綺麗な花を咲かせるだろう。そんな可能性を秘めた一つの種を大切に育てながら、AKIHIDEの次回作を楽しみに待ちたい。
この日、AKIHIDEが最後に贈ったメッセージをここに記そう。「良い夢と良い明日を。」
◆セットリスト◆
01. 涙の河
02. 愛しのヴァルキュリア
03. 黒猫のTango
04. サーカス
05. 蜘蛛の糸
06. 桜雨
07. 星の狂想曲
08. 天国への手紙
09. 哀しみデイズ(カナシミDays)
10. LION
11. マリア
EN01. 星の王子さま
EN02. グリーンストーリー
EN03. Hello! Mr. Sadness
EN04. ダッシュ
(文・金多賀歩美)