2012.10.28

ギルガメッシュ@日比谷野外大音楽堂

「ギルガメッシュ完全燃焼!!~やれんのか?野音~」

 

 

2012年の“サディスティック・イヤー”を激走するギルガメッシュが、初の日比谷野外大音楽堂という檜舞台に立つ――その日がとうとうやってきた。当日に至るまでの彼らの熱の入れようは半端なものではなく、先輩バンド・ムックのライヴで自らビラを配り、チケット一般発売日には窓口で手売りをし、左迅(Vo)に至っては1ヶ月前からてるてる坊主を作って願掛けブログを綴り…。“好天のもと、満員御礼の野音”という青写真に向かってやれることを全力でやってきたのだ。

しかし、この日の天気は生憎としか言いようのない雨。全席完売には惜しくも届かなかった場内では、カッパを着込んだ観衆がメンバーの登場を待っている。どんな雰囲気での幕開けになるのだろうと想いを巡らせていると、ほぼ定刻でSEが鳴り響いた。

 

幕開けは最新曲「斬鉄拳」。バンドの現在のモードがそのまま投影された攻撃的なナンバーを着火剤に、びしょ濡れの野音が一気にヒートアップしたのを感じた。雨などもろともせず、メンバーとオーディエンスは体当たりでぶつかり合うような盛り上がりを見せている。

3曲目の「お前に捧げる醜い声」で、左迅と観客が掛け合うシャウトが会場を満たし、ヘッドバンギングのうねりが起こる様を目の当たりにして、この公演が最高のものになるという確信めいた予感を抱いた。今のギルガメッシュには天候も場所も関係ない。4人のガチンコなパフォーマンスが巻き起こす熱量によって、ライヴという場が作り上げられているからだ。こうなってくると、この荒天すらもサディスティックな演出としては悪くないのではと思えてくる。

 

「告知から約半年、日比谷野外大音楽堂へようこそ!」と口火を切った左迅が、てるてる坊主ブログの願いも空しく雨が降ってしまったことに触れつつ「みんな濡れてるか?! 冷たいか?! 寒いか?! …ごめんねごめんねー!」とおどけてみせると、客席からは笑いまじりの歓声が上がった。容赦なく濡れながらもめげることなく沸き返るオーディエンスに、「降っちまったもんはしょうがない! 雨がナンボのもんじゃーい!」と飛び切り熱いライヴを届けることを約束し、「FREAKS」や愁のベースが唸る「CRAZY-FLAG」といったおなじみの轟音ナンバーを連投していく。「MISSION CODE」では“自分を追い込んで火事場のバカ力を出そうとしたこの1年で、一番サディスティックだったこと(=辛かったこと)”を楽器隊の3人が各々発表する一幕も。この日は他に“ギルガメッシュの師匠”だという村上ショージのギャグを左迅と弐(Gt)が実演するなど、笑いの面でも客席を温めよう(?)とするサービス精神は野音でも健在だった。

 

 

中盤、この季節にぴったりの切なさ滲む楽曲「見えない距離」で空気ががらりと変わり、続く「終わりと未来」ではヘヴィかつストイックなサウンドにのった真っ直ぐなリリックが、心がひり付くほどに響いてきた。こうして生真面目な一面を覗かせたかと思えば、あっという間に再びハイテンションモードへ。「DIRTY STORY」、「BORDER」とアクセル全開でたたみかけ、場内に突き上げられる拳の嵐を巻き起こす。そして弐が奏でる泣きのギターソロから、“初の野音”という祭りに打ってつけのダンスナンバー「絶頂BANG!!」へ。メンバー全員による振り付けレクチャーもアリという豪華仕様で披露され、この日一番の盛り上がりを見せた。

本編最後の「Never ending story」、Яyoの刻むビートが楽しさのあまりはやる気持ちにシンクロしていく。ハッピー感溢れるメロディに思い切りはしゃぐ客席の様子を、センターで並んで眺めている弐と愁。その顔は心持ち嬉しそうで、満足感のようなものが感じられた。強まった雨脚はもはや豪雨に近い状態、その中でも会場中が笑顔に満たされていたのが印象的だった。

 

吐く息が仄白く見えるほどの寒さの中で迎えたアンコール。ファンから寄せられた沢山のてるてる坊主やツイッターのメッセージのことを語りつつ、「その気持ちがすげぇ嬉しかったんだ!」と言った左迅の目は輝いていた。この半年でしみじみ分かったという、支えてくれるスタッフやファンの有り難み――「ここに立てているのは皆さんのお陰です」という感謝をこめてプレイされたのは「shining」。眩しいライトに雨粒まできらきらしていたラストナンバー「Break Down」には、この先の未来への想いが込められていたように感じた。

この1年で熱さと真っ直ぐさはそのままに、ますます骨太になったギルガメッシュ。次はどんな無茶な企みで驚かせてくれるのか、楽しみに待ちたい。

 

 

◆セットリスト◆

01. 斬鉄拳

02. bit crash

03. お前に捧げる醜い声

04. driving time

05. 未発表曲

06. ALIVE

07. FREAKS

08. CRAZY-FLAG

09. MISSION CODE

10. 見えない距離

11. 終わりと未来

12. 未発表曲

13. sunrise

14. DIRTY STORY

15. BORDER

16. 絶頂BANG!!

17. evolution

18. Never ending story

 

EN1. shining

EN2. Break Down

 

 

(文・古原悠/写真・西槙太一)