2012.1.13

黒夢@日本武道館

Headache and Dub Reel Inch

 

 

2011年2月に行われた国立代々木競技場第一体育館での完全復活ライブで「変わって変わって変わり続けます」と宣言した黒夢。2009年の一夜限りの復活&解散ライブ以来3年ぶりの日本武道館公演となるこの日。その公演に冠されたのは13年の時空を超えて産み落とされた黒夢のニューアルバムのタイトル『Headache and Dub Reel Inch』。

 

ステージの背面全てを覆うほどの巨大なタイトルロゴが構えるステージに、唐突に強烈な爆発音が響く…! そのあまりの凄まじさに場内が騒然としていると「Enter Loop」をSEに白煙の中メンバーが悠然と姿を現し「13 new ache」で攻撃的なスタートを切る。白煙が充満していくステージに赤と青が交互に点滅する様は、これから繰り広げられる世界への警告のようだった。

立て続けに「White Lush Movie」「Someone」「ミザリー」を放ち、どこまでアルバムの曲順通りに進むのだろうと思っていたところで「Born To Be Wild」のカヴァーを挟み、ベースが際立つ「I Like You」から人時作曲のナンバーを連投。「Starlet」ではサウンドと共に変化する清春のヴォーカルが1曲の中に優しさと激しさを交互に生み、現実の表と裏を見せられた気がした。

 

人時のベースソロは誰もが凝視してしまう見どころの一つ。このときばかりはその指先の動きを見逃すまいと巨大モニターに釘付けになってしまう。人時とGO(Dr)のセッションでは、その確かなテクニックはもちろんのこと、何より音で遊ぶ二人の姿が実に楽しそうなのだ。その勢いのまま定番のハードナンバーも投入し熱狂させたあと「3年前は新曲が無かったけど3年後の今日は新曲がある。それと人間的に成長できたなと思って気持ち良いです」と清春は想いを語った。

 

アルバムではボーナストラックを除きラストに収録されている圧倒的な存在感のバラード曲「Glass Valley’s Oar」をどこに配置するのだろうと思っていた。だが「Heavenly」から楽曲が進むに連れ、それはもはや当然の流れとしか思えないほどの確かなメッセージが刻まれていた。〈忘れないで、未来は孤独〉〈一度きりの生涯〉〈さよなら〉と清春は手を前にかざし、「アロン」では〈最後は独り〉と歌いながら、会場中の合唱となった最後のアンセムは、まるで“だけど独りじゃない”と伝える鎮魂のようで、思わず涙がこぼれそうになる。そして「Love Me Do」で〈君が先に舞ってるからそこは天国〉と“さよなら”の先の優しくて温かな世界を感じさせてくれた。

 

続いて「Walkin’ on the edge」で〈まだ変われるね急ごう〉と歌い、怒涛のハードナンバーに突入。「武道館!! ラスト!!」の合図でまたもや爆発音が轟き「sick」で叫び倒し、満場のメロイックサインのなか本編終了となった。

 

 

 

アンコールに迎えられ「本編までで僕ら的にはチケット代分は終わってます。ここからは若干サービスがあります」という清春の宣告。ネプチューンの堀内健が登場し、清春曰く「僕の中での黒夢は簡単にぶっ壊しました」という、テレビ番組の企画から発生した、堀内健作詞・清春作曲の「黒夢がやってきた」を初披露し会場を沸かせる一幕があれば、Wアンコールでは、“サムライギタリスト”雅-MIYAVI-がゲスト出演! 「少年」の共演を終えた清春の口からは「ヤバイ」と一言。それが全てを物語っていた。「DRIVE」では人時VS雅-MIYAVI-の掛け合いで魅了し、ラストは「焼き尽くしましょう武道館!!」と「カマキリ」で会場を揺らし白熱のステージとなった。

さらにサプライズは続き、なんと清春がパンダの被り物、人時がイチゴの被り物をして登場! 客席からは思わず「かわいい~」の声が。「恥ずかしいから1曲だけにしよう。歴史までが壊れるから(笑)」と被り物をしたまま真剣に「BEAMS」を披露した。

 

 

3月に行われるアジア公演について触れたあと「日本もやります。日にち決まってます、今日1時…嘘かもしれないよ」と清春らしくどこまで本当なのか掴めない思わせぶりな告知。そして「僕ららしく進みます。音で驚かせることには自信があるので、音楽が好きな人はまたお越しください。解散前の僕らに言えなかったことがあるとすれば、今の僕らには音楽に自信があるということです。バンドではなく音楽を愛してください。また会おう」と「SEE YOU」を披露。オーラスに「Like A Angel」を会場いっぱいの大合唱で終えたあと、笑顔の二人が並んでステージを後にする姿がとても印象的だった。

 

終演後の23時、オフィシャルツイッターで「代官山UNIT OPEN/START 24:30/25:30」の緊急ライブが告知された。約1万人を動員した武道館のあとにキャパ600人のライブハウスというなんともレアなステージ。チケットを入手できた幸運なファンは一日二本の濃厚な黒夢ライブを体感できた、なんとも贅沢な一日となった。

 

以前のインタビューで「僕らに伝説があるんだとしたらそれは完全に粗末に扱っていきたい」と語っていた清春。今、黒夢が活動する限り、どこまでも裏切ってくれどこまでも驚かせてくれる。そんな期待を抱くことができる“今”という時を大切に生きたい。

 

 

◆セットリスト◆

01. 13 new ache

02. White Lush Movie

03. Someone

04. ミザリー

05. Born To Be Wild

06. I Like You

07. Spazzy Addiction

08. D.P.I.D.C

09. Starlet

10. Bass solo

11. BARTER

12. C.Y.HEAD

13. Heavenly

14. Glass Valley’s Oar

15. アロン

16. Love Me Do

17. Walkin’ On the edge

18. Rock’N Roll

19. CANDY

20. sick

【En.1】

21. 黒夢がやってきた

【En.2】

22. 少年

23. DRIVE

24. カマキリ

【En.3】

25. BEAMS

【En.3】

26. SEE YOU

27. LIKE A ANGEL

 

 

(文・金多賀歩美)