PENICILLIN

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HAKUEI(Vo)が語るPENICILLIN 20周年ファイナルライブの記憶。PENICILLINの原点、そして未来。

2012年に結成20周年を迎え、ベスト盤のリリース、ツアーを経て、2013年2月16日渋谷公会堂にて20周年アニバーサリーのファイナルを飾ったPENICILLIN。2007年に脱退したオリジナルメンバー、GISHO(B)もゲスト参加したメモリアルなライブの模様を収めたDVDがこの度リリースされる。HAKUEIにこのライブを振り返ってもらいながら、20周年を終えた今、そしてバンドのこれからについて語ってもらった。

◆自分たちがやってきたことの責任

――結成21年目に入り早くも2ヶ月が経過しましたが、改めて20周年YEARはいかがでしたか?

HAKUEI:20周年を迎える企画からやっていたので、足掛け3年なんですよね。20年という節目ということで、たっぷりやったかな。じっくりいろんな角度から見たり振り返りつつ、現在進行形の感じというか。ただ普通に「20周年を迎えました。ありがとうございます」みたいな感じではなく、ずっと休まず続けてきたバンドで、そのサイクルの中でたまたま20年を迎えたよっていう。そういうことも20周年の企画の中で、すごく丁寧に表現できて良かったと思っています。

――1年の間にベストアルバムを2枚発表(Fan Selection Best『DRAGON HEARTS』4月リリース、Member Selection Best『PHOENIX STAR』12 月リリース)するのは、なかなか珍しいなと思いました。

HAKUEI:もうちょっとタームが短ければ2枚同時もあると思うんですけどね。それぞれ全然違うものだったし。まぁ珍しいですよね。

――楽曲を改めて見直すことで、これまでを振り返るきっかけにもなったのではないでしょうか。

HAKUEI:まずカウントダウンライブ(※1)で、約200曲ある楽曲を全部ライブで表現するということで20周年を迎えたんですよね。自分たちがやってきたことの責任を、まぁそれで簡単に果たせるわけではないと思うんですけど、一つのケジメみたいな形でそういう企画をやって。それから、ファンの方に選んでいただいたベスト盤を持ってツアーを回って。そして自分たちが選んだベスト盤を出してツアーをやって締めくくるという、そういう流れでやりたかったんですよね。

――ファンの皆さんが選曲したベスト盤『DRAGON HEARTS』の楽曲は予想通りでしたか? 意外なものもありましたか?

HAKUEI:ほぼ予想通りでしたね。ライブで育ってきてる曲がほとんどなんですけど、「Never Ending Story」はライブではほとんどやったことがない曲で、しかもアルバムにも収録されていないシングルのカップリング曲なので、なんで選ばれたのかなとは思いました。どっちかというとPENICILLINらしくない曲なので、きっとその当時変な目立ち方をして、心に残ってたのかな(笑)。あと、ベスト盤以前の一番新しいアルバムのタイトルチューン「WILL」がちゃんとランクインしていたのは、嬉しかったですね。自分の中ではすごく深くて重いテーマの歌詞を書いていたので、嬉しいですね。

◆彼ならではの存在感や空気がすごく懐かしい

――この度、20周年の集大成となった「PENICILLIN 20th Anniversary LIVE FINAL ~HAPPY BIRTHDAY & VALENTINE’S DAY LIVE~ 2013.2.16 渋谷公会堂」の模様がDVDとしてリリースされますが、このライブのセットリストの選曲は普段のライブより悩みましたか?

HAKUEI:んーそうですね。普段は生のライブらしさというか、良い意味でのラフさ、あんまりカッチリと決め込まないで、大きな流れだけを作ってあとはラフにやるんです。MCもその場のテンションでやったり。カッチリやる部分とラフにやる部分があるのが普段のライブなんですけど、渋谷公会堂はやっぱり20周年の集大成ということで、できるだけたくさんの曲をやりたかったんです。時間が決まってて、スタッフにも「絶対押すなよ」って(笑)。ちょっとでも押したらラストが削れちゃうくらい詰め込んで。だからMCも本編はなしで全部繋げたんですよね。そういった意味での大変さはいつもよりはあったかもしれないですね。

――バラードで始まるのが意外だったんですが、1曲目に「地球」を選んだ理由というのは?

HAKUEI:まぁそんな気分だったっていうことなんですけど(笑)。テンポの早い破壊力のある曲でドンッっていくよりは、ライブのオープニングとしては、いろんな思いがイメージしやすいというか。早い曲で始まるのもいいんですけど、入り口に関しては直接的に「こう行くからこう来いよ」みたいなものではなくて、観に来る人もいろんな思いがあるだろうし、僕らもそれぞれ思いがあるので、そういうことを考えながらできる曲にしたくて。噛み締めながら、少しずつ親密になっていくような。そういう感じにしたかったんですよね。

――PENICILLINのライブのセットリストの決め方は、いつもどのような方法なんですか?

HAKUEI:その時によりますけどね。大抵誰かが言い出しっぺになって叩き台を作って、それを皆で話し合ったりメールでやり取りしたり。基本的には話し合って決めるかな。

――一般流通盤は15曲収録ということで、全24曲の中から厳選するのは苦労しましたか?

HAKUEI:苦労しました(笑)。曲をいっぱいやり過ぎたからね。かなりボリュームがあるから、やっぱり全部入れられないし、アイテムとしての面白さもあったり。ライブが網羅できるものになっています。

――このライブで特に印象に残っているのはどんな瞬間ですか?

HAKUEI:やっぱりGISHOくんが参加してくれた時(※2)は、すごく懐かしくて。彼が脱退してから約5年なので、すごく懐かしいと思うほどそんなに年数は経ってないかもしれないけど。もちろんリハでも会ってるし。でも、ステージで横にいる存在感は人それぞれ独特のものがあって、彼ならではの存在感や空気がすごく懐かしいな、あぁこういう感じだったなって改めて思いました。もちろん(サポートメンバーの)HIROKIさんはHIROKIさんのカラーがあるんですけど、人ひとり代わるだけでこんなに変わるんだなっていうことがすごくわかって。それは他のメンバーにも言えることですけど、個人のオリジナリティ、力のすごさというものを改めて感じましたね。

――このライブは皆さん本当に良い表情をしていたのが印象的でした。終演後にお会いした際にO-JIROさんが「涙ぐんでいる顔がたくさん見えて、やばかった」とおっしゃっていたのですが、HAKUEIさんはいかがでしたか?

HAKUEI:そういう感じになるのかなって思ってたんですけど、あんまりならなかったですね。意外と冷静だったというか。変に高ぶるという感覚よりは、じっくりこの一瞬一瞬を記憶や目に焼き付けたいな、楽しみたいし楽しませたいなっていう、完全にそっちの方でしたね。「すげー素敵だ、感動だな」っていうよりは、貪欲にその場を楽しむ、貪欲に表現する。気持ちは完全にそっちに行ってましたね。むしろ感動する余裕がなかったのかもしれないね。楽しみすぎて感動する隙がなかったのかも。

――GISHOさんがベーシストのステージの立ち位置にはほとんどいなかったのも印象的でした。

HAKUEI:基本的にはあいつは昔からそういうタイプだけど、あの時は彼なりのファンサービスというか、メンバーと絡んだり、出たからには少しでも自分らしさを、立ち位置で黙って弾くベーシストじゃないっていうところを彼なりに強調した結果なんだと思いますね。

――なるほど。GISHOさんはベスト盤『PHOENIX STAR』のレコーディングにも参加されていて(※3)。その時の様子を伺った際に、GISHOさんのトークにさらに磨きが掛かっていたというお話があったのですが(笑)。

HAKUEI:磨きが掛かっていたかはわからないですけど、すごいですよ(笑)。

――楽屋ではいかがでしたか?

HAKUEI:この日は…どうだったっけなぁ。そんなにうるさくはなかったですよ。あんまり印象に残ってないということは、さすがに真面目にやってたんじゃないですか(笑)。リハはすごかったけど(笑)。あとは皆、真剣に準備してました。

――このライブで、「螺旋階段」という曲のバンド内での存在の大きさを感じました。PENICILLINとして初めて作ったバラード曲だったんですよね。

HAKUEI:そうですね。元々作る予定じゃなかった曲で、レコーディング中にもう1曲作ろうよとなって、スタジオの廊下みたいなところで1コーラス作って。それを徹夜で構成考えて歌詞を書いてバックトラック作って、みたいな感じだったので。
そういう勢いみたいなものが凄かったんだよね。初のフルアルバムを作るっていう時に、「もっともっと行くぜ!」みたいなところがあって。少しでもアイディアが出たら時間がなかろうが何しようが、それに食らいついていけっていうような。バラードだけど、そういう感覚があったから、PENICILLINがここまで来れた原動力である前のめりな姿勢というのが曲の成り立ち方に表現されていると思うし、その時一晩かけて考えた歌詞も、今読んでもその時の気持ちが素直に表現されてる。そういう意味では、曲ってじっくり作ればいいってもんでもなくて。そういうのも必要だけど、時にはテンションで突っ走ってしまう。そういうことも忘れてはいけないのかなという思いがしますね。この曲をやってると。

――「螺旋階段」は最後のBGMにもなっていますよね。

HAKUEI:やっぱりそういう感覚の曲だし、エンドロールには相応しいかなと思いました。