黒夢

黒夢

ニューシングル『ゲルニカ』『I HATE YOUR POPSTAR LIFE』を同時リリースする黒夢。清春が語る“黒夢”の過去・現在・未来。清春にとって今の“黒夢”とは。

1999年に黒夢が活動停止を発表した日であり、それから10年後の2009年、解散ライブ「the end」を決行した日でもある1月29日。それから5年となる2014年1月29日、ニューアルバム『黒と影』のリリースと日本武道館公演が決定している黒夢。1994年のデビューから20周年を迎える2014年を目前に、彼らはシングル2作を同時リリースする。同作についてはもちろん、あらゆる面で重要な時を迎えているであろう“黒夢”について、清春に話を聞いた。

◆いい大人がシングルとして出すタイプの曲じゃない

――約1年前、ソロ名義のアルバム『UNDER THE SUN』(2012年11月発売)のインタビュー時に「20年目、21年目の“清春”がもう見えてる感じはある」と言っていましたが、思い描いていた通りになっていますか?

清春:計画されていたものから直前になってなくしてみたり新しく考えてみたり、そういう感じになってきちゃったかな。今年2月に地元岐阜でのソロライブで、今年や来年の動きをちょっとだけ発表したんです。その後、黒夢のレコーディングに入ったんですけど、やっていくうちにどんどん変わっていって。

――いつも突発的な発表が多いですよね。

清春:突発的に決めたりやめたり。やめる方が多いな(笑)。でも、1994年にデビューして活動した5年間もそうだったからね。

――今回も、元々11月発売予定だったニューアルバム『黒と影』が1月29日に延期になり、先行で今回のシングル2作が同時発売されることになったわけですが、発売延期はファンの皆さん的には想定内だったのではと思います。

清春:はい、僕らにはよくあることですからね(笑)。

――(笑)。アルバム前のシングルということで、こんな黒夢を提示したいというものはありましたか?

清春:「ゲルニカ」と「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」の(楽曲の)幅がアルバムなんでしょうね。作品としてのクオリティはいつも気にしてるけど、その他はあんまり気にしてないです。「ゲルニカ」はシングルになるのはわかるんですけど、「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」は、いい大人がシングルとして出すタイプの曲じゃないですね。

――(笑)。激しいですからね。

清春:激しいですねぇ。でも、「ゲルニカ」はK-A-Zくん(G:sads、カイキゲッショク)とGOくん(Dr:sads、SUNS OWL)が演奏しているので、黒夢とsadsの中間という感じがします。キャッチーさは黒夢で、サウンドのヘヴィーさはsads。

――ソロの楽曲に関しては、活動のど真ん中の曲と、世の中に出ていくシングルというものに差がなくなってきたと以前言っていましたが、これはバンドの楽曲に関しても同じですか?

清春:ソロとバンドでは違うのかもしれないです。どうしても黒夢だとライブでは8割くらいが激しい曲、早い曲になっちゃっているので、黒夢のイメージをいつの時代で持ったかその人によるけど、「BEAMS」「少年」「MARIA」とか、わりとキャッチーな曲を黒夢だと思っている人にとっては、今のライブを観たら驚くとは思うんだよね。どちらかと言うと「ゲルニカ」や「KINGDOM」はその中間をいってるなという気はします。やっと大人になった今の黒夢の位置するメインどころというのかな。キャッチーなだけではなくて、激しいところもあって、同期も入ってて、どっちにも寄らないという感じ。激しいだけなのをもっといっちゃったのが復活後のsadsだとは思うんですよね。

――確かに。

清春:でも僕がソロもやってるから、ソロでの音楽性が混ざってるようにも聴こえちゃうと思うんですよね。僕、曲作る時に黒夢もsadsもソロもわけて作ってないから結果的にこうなって当たり前だろうな、と思う。復活後の「ミザリー」や「アロン」にしても、ソロっぽいって言う人はいるだろうけど、何が黒夢っぽくて何がソロっぽいっていうのは、聴く人の僕に対する経験値でしかないよ。僕的にはソロの僕も黒夢の僕も僕に変わりはない。なんかね、僕らの方から“同じです”って提示しちゃった方がいいんじゃないかなと思って(笑)。こっちが「全て区別してる」って提示して「同じじゃん」って思われてるよりはもう「同じに決まってるじゃん」って言っといた方がいいのかなと(笑)。

――作ってる人が一緒ですからね。

清春:そうです。人時くんやK-A-Zくんが作った曲ならもちろん違ってくるけど、でも結局歌メロは僕が作っちゃうからある程度は同じになっちゃうんだよ。バンドマジックっていうのは違うところで起きてるけど、僕ら的には「そこって大したことなの?」って感じも。昼ご飯にカレーライス食べたのかラーメン食べたのか、その程度の違いの話。それよか昼ご飯を食べたのか食べてないのか、誰と食べたかということの重要性の方が大きいでしょ? 今この時点で黒夢があって、ソロもマイペースでやってて、sadsもたまにやるっていうことの方が重要。

――「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」は、今の黒夢のライブで既存のハードナンバーの中に入っても違和感ないのではと思いました。

清春:「13 new ache」(2011年11月発売のアルバム『Headache and Dub Reel Inch』収録)という曲を作りましたけど、ライブではやっと今年になって馴染んできた感じがありますよね。リリースした当時に武道館で1曲目にやった時は、なんかちょっと違和感があって。時間っていうのはすごいなと。ライブをバンバンやってたわけじゃないんだけど、1年後位には馴染むっていう。今の時代は時間の量でしかないんだな、と最近思いますね。昔はライブで曲を馴染ませていったんですけど、今はリリースからの期間でしかない。…っていう寂しさとか(笑)。

――それは不思議ですね。

清春:今の黒夢の活動の仕方にすごく合ってるのかなとは思います。バカみたいにライブをやってた時は、どういうリリースがあろうが「FAKE STAR」が1曲目だったけど、今は「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」を出すことによってもしかしたらこれが1曲目になるかもしれない。他の活動もしてるし、ライブで馴染ませていくという手法は今は肉体的にも出来ないから、リリースしてPV流して、PVがかっこよければそれが1曲目になっちゃう時代なんじゃないかな。結構ロック的ではないけど。まぁそれでもやっぱ「FAKE STAR」なんだろうな、もっと長い時間経ってるわけだから(笑)。イメージっていうのはキャリア的に付いちゃっているのは仕方ないので、そこを否定するのか、遊べちゃうのかっていうとこですよね。でも、復活したバンドは普通はこういう曲は出さないよね、日本では。

◆ロック少年でした

――今回「後遺症 -aftereffect-」のセルフカヴァーを収録した理由というのは?

清春:黒夢のオリジナルアルバムはこれで最後かもしれないなと思っていて…。再録をするきっかけがあるとすればまずc/wなのかなと。今でもライブでやってる曲だし、デビュー当時に出した「カマキリ」や「sick」を5年の活動の最後の方で再録しているんですけど、その感覚に近いです。今回のかっこいいよ。キーもだいぶ上げて。昔の黒夢の曲ってすごくキーが低いんですよ。アレだと爆音の中では声が抜けない。

――確かに最近の曲はキーが高いですよね。再録してみて、新たな気付きはありましたか?

清春:特にアレンジもせずにやったんですけど。で、手軽だからK-A-ZくんとGOくんということじゃなくて、このジャンルをやるには最高峰のメンバーだということ。気付きは…俺、昔から色々なことを考えてたんだなと。歌詞の歌いやすい歌いにくいっていう部分とか。歌い方の面では、なんでこれ気付かなかったんだろうっていうのを気付いた。今はもう少し違う歌い方をできてるから。昔は手法が2個くらいしかなかったんだよね。

――当時が2個なら、今はどのくらいですか?

清春:ん、5個くらいは。歌唱力、声量、リズム感、滑舌の違い。まぁほとんどの昔は可愛いなということに改めて気が付きましたかね。わかりやすく言うと、今の方が厳つくはなっております。

――さらに今回はカヴァー曲もありますが(『ゲルニカ』収録「ストローヘッド」/Jaco:neco、『I HATE YOUR POPSTAR LIFE』収録「奴隷」/SHADY DOLLS)、選曲がかなり珍しいですよね。

清春:僕が20歳くらいの頃の曲です。僕と人時くんで、カヴァーアルバムを出したらおもしろいねっていう話を前にしていて。しかも、ロックが危険だった頃の日本のバンドのカヴァー。でも、有名過ぎる曲はやらない。SHADY DOLLSはもちろん人気はあったんだけど、やっぱりロックが好きな人しか知らなくて、BOØWYやTHE BLUE HEARTSほどは一般的じゃなかった。僕らがそれをカヴァーしたからどうってことではなくて、ただ単純にやりたいっていうだけ。Jaco:necoは名古屋のバンドで、当時、深夜のローカルのテレビで名古屋のElectric LadyLandというライブハウス出身のバンドが演奏する番組をやってたんです。レコードを持っていて好きだった曲じゃなくて、その番組で見て覚えていてJaco:necoのあの曲なんだったかなって逆に今回CDを探したんです。この曲は難しかったなぁ。

――確かに難しそうですね。でもすごくハマってるなと思いました。

清春:昔のバンドって知らず知らずのうちに難しいことをやってたんだなって気付きました。今のロックと言われている人たちって、要はポップな曲をロック調の音やコード進行でやってるだけ。昔のバンドって、ポップスじゃない歪んだものを、そんなにヘヴィーなサウンドでやってるわけじゃなくて。その辺がすごく違うね。

――20歳の頃の清春さんは、どんな青年でしたか?

清春:ロック少年でした。海外のものも聴いていたけど、特に日本のロック。雑誌をめくり漁っては気になるものがあったら近くのCD屋さんに行って。昔のお店って、レコードを買う前に聴かせてくれたの。封を開けて聴かせてくれて、気に入ったら買うっていう。うちはレコードプレイヤーが親父のしかなくて、そのお店はレコードを買ったらその場でカセットテープにダビングまでしてくれたの。THE STREET SLIDERSもSIONさんもそうだった。SHADY DOLLSがSLIDERSのちょっと後だったかな。「奴隷」が収録されている『THE BAND ON THE ROOF』というアルバムは、僕らの仲間にはすごく人気が高いアルバムだったんです。このアルバムの中には他にもやりたい曲があった。

――今後に期待です。ところで、今回も様々なミュージシャンが参加されていますね。

清春:「ストローヘッド」は髙野哲くん(nil、THE JUNEJULUAUGUST、インディーズ電力、ZIGZO)がギターを弾いてくれてるんです。「ストローヘッド」と「奴隷」のドラムはKatsuma(coldrain)。俺、哲くんは普通にもっと脚光を浴びてもいいミュージシャンだとずっと思ってる。彼のライブ何回か観てて、タイプは違うけど凄いって思う。ロックバンドでギターを持って歌う人の中では、日本では今思いきり上位ですよね。

――アルバムの方も多くの方々が参加されているんですか?

清春:KEMURIのT(田中‘T’幸彦)くん(G)、東京事変やってた浮雲(長岡亮介)くん(G)、CrossfaithのTatsuya(Dr)、downy、unkieの青木裕くん(G)、toeの柏倉隆史くん(Dr)、Katsuma、K-A-Zくん、GOくん。あとは、是永巧一さんとか大御所のミュージシャンの方。もっと色々なミュージシャンとやりたいね。