特集-Special Feature-

有村竜太朗

有村竜太朗

ソロ作品第2弾が遂に完成。個人作品集1992-2017『デも/demo #2』に収められた有村竜太朗の25年。

2016年11月に自身初のソロ作品となる個人作品集1996-2013『デも/demo』をリリースした有村竜太朗。これまでPlastic Treeの作品として世に出ることなく眠っていた楽曲たちともう一度向き合い、鮮やかに蘇らせたことは、彼自身の中で「すごく意味のある作品になったし、意味のある行動になった」という。そんなソロ作品の第2弾、個人作品集1992-2017『デも/demo #2』が遂に完成を迎えた。Plastic Tree結成前に生まれた、有村竜太朗の原点とも言える楽曲から昨年までの実に25年分の思いが詰め込まれた今作について、じっくりと話を聞くと、19歳当時の葛藤や不安、現在の有村竜太朗に繋がる分岐点、そしてソロ作品への思いを知ることができた。

◆自分がこの後すべき一番大事なことを教えてくれた曲

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――前作の個人作品集1996-2013『デも/demo』は、曲作りをし始めたのが96年頃だったということで、1996~2013年の竜太朗さんのデモフォルダに眠っていた楽曲を蘇らせた作品でしたが、今作には個人作品集1992-2017『デも/demo #2』と冠されているので、実は92年に既に曲を作っていたということですか?

有村竜太朗(以下、竜太朗):プラをやる少し前だったので、92年くらいだったと思います。前回、96年と言っていたのは、正式な作品として出す前提での曲作りという意味でですね。96年って、もうプラを始めていますもんね?

――プラは93年結成、97年メジャーデビューですね。

竜太朗:何をもって「曲作り」と言うのかあれですけど、プラの前、単純に初めて自分で曲ができたと思ったのが、今作収録の「19罪/jukyusai」なんです。で、あれはいつだったかなと思い返したら、19歳の時だから92年かということで。

――1992~2017年ということは、25年なんですよね。

竜太朗:あ、四半世紀か…!

――ベスト盤ではなく、25年の振り幅のある作品はなかなかないですよね。

竜太朗:普通は作らない、もしくは既に作っていますからね(笑)。理由が特殊というか、この個人作品集作りって、デモにはしたけど世に出していない曲がたくさんあったからということから始まっていて、「19罪/jukyusai」は最初に作った曲なので、その根源のような曲ですね。でも当時は、自分が作った曲だけど自信もなければ、曲を作るよりもとにかくバンドをやらなきゃと思ってた時期だったんです。前に進みたいけど自分をどこかで見切らなきゃいけないみたいな複雑な心境だったので、自分が曲を出してそれをバンドに透過しても良かったんだけど、ちょっとデリケートな部分だったので、あえて見ようとしなかった曲だったんですよね。だけど前回、一度捨ててしまいそうになった曲とちゃんと向き合ったら、意味のあるものを作れるということを知ったので、だったら今回一番拾うべき曲はこれなんじゃないかなと思いました。逆に言うと、92年より前の曲というのは存在しないですね。

――それにしても、92年に作ったものがよく残っていましたね。

竜太朗:やっぱり最初に作った曲なので。手癖と鼻歌のメロディーで残っていたし、デモにもしていました。

――でも、最初に作った曲なのに、音源化しなかったんですね。

竜太朗:当時バンドをやっていなかったし、多重録音の機械も持っていなかったし、まず機械が苦手だし(笑)。自分の頭で覚えているだけでしたね。ただ、作ったその日のことを場所から何からすごく覚えていて、そこに至ったのはあの時だっていうのも自分のことだから大体わかるじゃないですか。「ミュージシャンになるんだ!!」という気持ちでやってたなぁと(笑)。

――ちなみに場所はどこだったんですか?

竜太朗:千葉の動物公園の近くですね。あの頃、バンドを組んではすぐクビになったり、辞めたりしていて。ただ、先輩から安く買った機材車みたいなライトエースだけは持っていたんです。その頃(ナカヤマ)アキラとバンドをやっていたんですけど、辞めたか空中分解したかくらいの時期で。千葉LOOKでバイトをしていたんですけど、やっぱりライブハウスで働いていると色々なカッコいいバンドを見るから、焦るんですよね。自分が今満足したバンドをやれていないことに焦るし、すごい奴はいっぱいいるし、でもやっぱりバンドをやりたいし。それを解決するのは自分でしかないっていう当たり前のことなんですけど、毎日そういう決意表明をするんですよ(笑)。その時の自分としては、曲を作るというトライはクリアしなきゃいけない絶対的なことで、毎日トライするんですけど、1曲もできないんです(笑)。それがどんどんコンプレックスになってきて。

――そんな時期が竜太朗さんにもあったんですね。

竜太朗:焦るし、若いからイライラするし。その鬱々としている状態で良いバンドを見て悔しくて、帰りに車で動物公園のほうに行くと森みたいになっていて周りに何もないので、大きな音を出しても大丈夫だなと思って、ギターを車に積んでいたので、「俺は今夜、この勢いで曲を作る!!」と。で、「できた!」と思ったけど全然自信がなくて、やっぱり俺はダメだ、曲なんて作れないなと思って。毎日ちっちゃく決意表明して、ちっちゃく挫折するんですけど、その日の挫折は自分にとって結構大きかったみたいで、考え方を変えなきゃ本当にダメだ、バンドを組むとかじゃなくて、自分の相棒を探そうという気持ちになったんです。なので曲を作る人を探さなきゃと思って、正くんとバンドを組むことになりました。今、話していて思ったんですけど、自分がこの後すべき一番大事なことを教えてくれた曲でもありますね。一度自分の理想から決別すべきという。普通だったら、そういう曲はネガティブなイメージしかないので嫌になると思うんですけど、何かずっと引っ掛かっていて。だから忘れていなかったんでしょうね。

――まさに竜太朗さんの原点ですね。

竜太朗:そうですね。そう考えるとPlastic Treeというバンドに行くようにしてくれた曲でもあるし。その時の自分をその時間、場所に置き去りにしちゃっているようなイメージもあって、本当は前回一番触るべき曲だったんですよね。でも、一番デリケートな曲でもあるから、やってみてやっぱりつまんないとなったら、最悪じゃないですか。ちゃんと確信みたいなものがないと、触っちゃいけない気がして。前作と今作で『デも/demo』の一つの区切りだと思っていて、今回はどうしても触るべき曲だろうなと。やっと作れましたね。

――お話にあった通りの歌詞で、若さ故の葛藤や漠然とした不安が描かれていますよね。

竜太朗:誰にでもあるような若さ故の感情ですね。当時、全部ではないですけど何となく歌詞は書いていたので、なるべく当時のままにしたいなと思って、今の自分ではあまり使わないような言い回しなんですよね。ただ、これだけで曲にするのは何か違うなぁと、この曲に対しての答えみたいなものを入れたいなと思ったら、二部構成みたいになって…約9分になっちゃったんですけど(笑)。

――まさかの9分でした(笑)。最後のブロックが今回足されたものですか?

竜太朗:そうですね。後から付けたメロディーで、今の自分の部分ですね。あとがきみたいな感じというか、今の自分の視点でも歌いたいなと思ったので。…まぁでも、25年分の気持ちが9分にまとまるならいいでしょう(笑)。

――(笑)。「op.10」(19罪/jukyusai AC Ver.)の方には最後のブロックがないですよね。

竜太朗:入れるか入れないか悩んだんですけどね。op.の新しい4曲に関してはNARASAKIさんと一緒に作ったんですけど、自分以外の人の視点が入っているので、これは当時の自分だけでいいかなという気がしました。「19罪/jukyusai」のほうは自分が作っていくから、当時の自分を触るには今の自分の感覚値が必要だったんですけど、op.に関しては自分が作ったものをちゃんと救ってくれる人がいるから。そんなイメージですね。NARASAKIさんに「何で『19罪』なの?」と聞かれて、19歳の時に初めて作った曲でという話をしたのを覚えていてくれて、録音した後に「あれからもう一つアレンジが浮かんだんだけど」とマーチングにしてくれたんです。「太朗さんが初めて作った曲だから、行進曲にしたくて」と。それがすごく良くて、やっぱり自分のことを知ってくれている人にお願いして、本当に良かったなぁと思いました。そういうのも引っ括めて、当時の自分の思いを他人としてちゃんと聞いてくれる感じがあるから、最後のブロックが要らなかったんだなと。

◆一つの曲で二つの可能性をじっくり突き詰められる

――op.を除くと全8曲収録で、1曲目と5曲目がSEという構成が前作と今作で共通していますが、これは意図的に揃えたのでしょうか?

竜太朗:無意識ですけど、多分揃えたかったんでしょうね。『デも/demo』は前作と今作で完結で、対というか、半分半分のような感じなので、自然とそうなったんだと思います。

――今回は“映画”がキーワードになっているようなのですが。

竜太朗:あー、でもそれは裏テーマみたいなもので、音源のことというよりも、『デも/demo #2』全体を通して見せたり聴かせたりしたいことというのが、例えると映画みたいだなと。この一連の企画のイメージですかね。音源で言うと、割と映像が見える曲、具体性がある曲が多いのと、歌詞も映画を彷彿とさせるような言葉が多くて。前回はタイトル通りデモテープのイメージだったんですけど、今回はフィルムとかムービー、映像作品のイメージがあったので、それが裏テーマになりました。なので、映画をモチーフに全曲書いたというわけではないです。

――「憑影と月風/tsukikagetotsukikaze」は、元々は会場限定シングルの「op.7」という曲でしたが、最後に〈上映が終わりを迎えて また明日〉という歌詞もありますよね。

竜太朗:今作の中で最初に完成した曲なので、本格的に今作の制作に入ったのはここからですね。

――シングルではop.なのでアコースティックver.ですが、やはりバンドサウンドで音源化したかったということでしょうか。

竜太朗:op.という名前を付けている曲は全て、できればバンドサウンドにしたいという気持ちで作っています。Plastic Treeでやっていることとは明確に違うし、元々アコースティックは好きなので、一つの曲で二つの可能性をじっくり突き詰められるというのはソロだからこそできることで、前回やってみてすごく面白かったんです。前回は好きだからという理由だけでop.シリーズを作ったんですけど、もっと追求したかったなという部分があって。前回は時間が足りなくて、ほとんど一発録りだったんですよ。それをもうちょっとちゃんとレコーディングしたいなと思って、そういうワガママを会場限定のグッズとして出せればいいなと、作品ではあるんですけど、ライブに来てくれた人が先行で聴ける音源みたいなイメージで、「op.7」(現在の「憑影と月風/tsukikagetotsukikaze」)、「op.8」(現在の「ザジ待ち/zajimachi」)を録ったのが始まりですね。その中に「メも/memo」という現在の「日没地区/nichibotsuchiku」の予告編も入れていたので、やっぱり『デも/demo #2』を作ることは頭にはずっとあって、そのスタートとしての作品が会場限定シングルでした。

――前作のop.は原型のデモのイメージということで基本的にはギター弾き語りでしたが、今回はちょっと違う形ですよね。追求したというのがとても伝わります。

竜太朗:追求するにはやっぱり自分以外の違う血がいるなと思ったので、NARASAKIさんにお願いしたんですけど、プラの中では兄貴的な存在だし、僕のこと、僕の音楽のことも一番理解してくれているし、僕の場合はバンドの音もあるわけだから、それもわかる人じゃないとアコースティックとかやっちゃいけない気がしていて。それをわかる経験値を持っている人となると、NARASAKIさんにお願いしてみようと思いました。