有村竜太朗

◆曲が見せる風景と一緒に気持ちも変わっていく

xxxx

――「くるおし花/kuruoshibana」はリード曲になるのが納得です。個人的にはすごく好きで、サビのメロの切なさがたまらないです。

竜太朗:本当ですか。ありがとうございます! これをリードにしようと言ったのはレーベルの社長なんですけどね(笑)。「これが良い!」と、すごく強く言っていたので、そういうのってなんだか有り難いし嬉しかったですね。割と早めに出来上がっていた曲でもありました。

――「色隷/sikirei」はベース始まりだったり、今作の中では最もバンドっぽいサウンドの曲で、プラっぽさも感じました。

竜太朗:これは去年作った曲ですからね。ちょうどプラの曲作りと並行して作っていました。

――そうなんですね。op.のほうもリズムが特徴的ですごくカッコいいなと。

竜太朗:ですよね。俺がギターを弾いていたらNARASAKIさんがそれに合わせて弾いていて、入れようと思って弾いたのか、何となく弾いていたのかわからないんですけど、「そのギター、めっちゃカッコいいっすね! それ弾いてほしいです」って言ったら入れてくれました。「リズムのイメージもあるんだ」と言っていましたね。

――歌詞には〈台詞〉、〈演技〉、〈エンドロール〉、〈自作自演独演終演〉など、映画にまつわるワードが随所に散りばめられているのが印象的です。

竜太朗:歌詞も最後に書いた曲なので、気分的にはまとめ的な感じに入っていたんでしょうね。

――歌詞にある〈シアン/マゼンタ/イエロー〉は、ジャケット写真にも反映されていますが、今回も竜太朗さんはヴィジュアル面のアイディアを出したのでしょうか?

竜太朗:スタッフの皆でアイディアを出し合いましたね。カメラマンはプラも撮ってもらっている人なんですけど、色々出た案を全部撮ってみて、それから皆で考えます。今回のアー写は、最初は正方形にトリミングされていたんですけど、これは間が大事だからこういう風にしようとか、映像として捉えていろんな色を付けるのはどうですかというアイディアが出て、実際に色を付けたもの、付けていないものも作ってみたり。本当に一つひとつ作ってみて確認しての繰り返しで、最終的なものが完成しましたね。

――なるほど。ところで、竜太朗さんが「ゲストを迎えて録った曲が凄まじくてラフ聴いて痺れて〼。凄すぎる化学反応。個人作品として作った原曲が理想から想像もしてなかった領域まで広がって曲として纏まってくその様に素直に感動して〼」とツイートしていたのは、どの楽曲ですか?

竜太朗:「19罪/jukyusai」ですね。想像していたものが、実際に出来上がったら凄すぎたという感じでした。レコーディングに一番時間が掛かった曲です。デリケートな曲という認識があったので、エンジニアの釆原(史明)さんともよく話し合いになった曲でしたね。何がしたい、これがしたい、それでいいのか、どうなんだ…みたいな。

――大事な曲ですもんね。「日没地区/nichibotsuchiku」は歌詞のモチーフになった場所、きっかけはあるんですか?

竜太朗:これは特にないですね。どこかの夕暮れの歌です。どちらかと言うと、頭の中の風景ですね。

――〈奪うのが愛です〉という直球な言葉が、竜太朗さんの歌詞としてはちょっと新鮮でした。

竜太朗:この曲は割と音先行ですね。途中くらいまで歌詞を書いていたんですけど、スタジオに入ってバンドでアレンジしたのが良くて、持って帰ってちゃんとメロディーを付けたので、曲のアレンジでどんどん表情が変わっていった感じです。他の曲にも言えるんですけど、曲が見せる風景と一緒に気持ちも変わっていくようなところがあって、初めはここまで感情が露呈するような曲ではなくて、ただ景観を歌ったような曲だったんですけど、このアレンジになったら急に、語り部みたいな人の本当の心情がグワっと出たらいいのかなと思って。言葉が曲に付いていったという感じですね。

――なるほど。

竜太朗:そういう時って、正解がもう見えちゃっているので、あまり考えていないんですよ。例えば1+1=2って、考えるまでもなくすぐに「2」という答えが出るじゃないですか。それと同じようなもので、これにはこの言葉が入る、みたいな感じです(笑)。

――ちなみに、この曲の元々のデモはいつ頃できたんですか?

竜太朗:結構最近ですね。ただ、2個のメロディーの組み合わせで、1個1個の時は結構前からありました。Aメロが、元々は何かの曲のサビだったんですよね。でもその曲は、サビ以外は気に入らなくてボツにしていて、この部分だけが残っていたので、だったらこのサビをAメロにして1曲作ろうと。2曲くらいの使わなかったパートの合体技ですけど、それがバンドでアレンジしていたら他のメロディーも出てきて面白い曲になって、自分としては結構好きですね。しかも、バンドの音を録ってから釆原さんが鍵盤のアイディアを出してくれて、それがすごく良かったので結果的に全編に入れました。なので、最初から設計図があったわけではないですね。

――聴かせるミディアムバラードですが、意外と色々なパーツが組み合わさって完成したんですね。

竜太朗:こういうことは結構あることなんですよ。

――そうなんですね。「ザジ待ち/zajimachi」とはズバリどういう意味なのでしょうか?

竜太朗:この曲の冒頭の人が、子供のイメージだったんですけど、子供がブランコに乗って、誰か友達を待っているような、面白い奴を待っているような歌だなぁと思って。『地下鉄のザジ』という映画が、ザジという子供がいろんなところを冒険していて面白いイメージがあって、そういう面白い世界に連れて行ってくれる子を待っていそうだなと思って、このタイトルを付けました。

――そのザジだったんですね。そして今作を引っ提げたライブが決定していますが、これまで行われてきた、一部がアコースティック形態、二部がバンド形態での二部構成、しかも同じ楽曲を披露するという形のライブは、個人的には初体験でとても面白かったです。アレンジの違いでここまで曲の感じ方って変わるんだなと。

竜太朗:そう思っていただけたなら、とても嬉しいです。

――今回は10月2日にZepp Tokyo、10月23日になんばHatchということで、会場がこれまでより大きいですが、どんなライブになりそうですか?

竜太朗:音源を作るのにいっぱいいっぱいで本当にギリギリだったので(笑)、まだ具体的に考えてなくて…。でも、これまでに2回ツアーをやったんですけど、意識的な意味では同じです。ライブは良い実験場と思っているし、せっかくソロでこういう場があるなら、自分が思いついたことはすぐにできる場にしたいですね。時に無意識に、無自覚になっちゃうかもしれないけど、ソロだからこそ、それくらいやりたいと思ったことをできるような実験の場にしたいです。

――ちなみに、Twitterに上がっていた今回のグッズ撮影のメイキングムービーを見たのですが、ものすごくこだわっていますよね。ヒトリシネマとのことで(笑)。

竜太朗:俺、コスプレ癖があるので(笑)。あれはグッズの写真を撮影している風景なんですけど、せっかく映画というテーマがあるので、いろんな映画のコスプレをしようと。独りよがりですね(笑)。

――竜太朗さんの愛猫クロちゃんも出演していますし。

竜太朗:親バカ要素も含めて独りよがりです(笑)。どうせ作るなら面白いもののほうが良いかなぁと。グッズも楽しみにしていてほしいです。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

有村竜太朗

<プロフィール>

有村竜太朗(Vo)、長谷川正(B)、ナカヤマアキラ(G)、佐藤ケンケン(Dr)によるロックバンドPlastic Treeのヴォーカリスト。1997年、メジャーデビュー。デビュー15周年の2012年、4度目の日本武道館公演を成功に収める。2017年には、デビュー20周年“樹念”シングル2作を発表、バンド初のトリビュートアルバムのリリースも実現した。2018年3月、アルバム『doorAdore』をリリース。7月には2度目のパシフィコ横浜公演を開催し、9月16日よりニューシングル『インサイドアウト』を引っ提げた秋ツアーを開催中。ソロとしては2016年11月、初作品となる個人作品集1996-2013『デも/demo』をリリースし、これまでに二度のツアーを開催した。

■オフィシャルサイト
http://arimuraryutaro.com

【リリース情報】

個人作品集1992-2017『デも/demo #2
2018年9月19日(水)発売
(発売元:ブロウグロウ/販売元:ソニー・ミュージックマーケティング)

デも/demo #2
初回盤A(CD+DVD)IKCB 9559~60 ¥3,700+税
手書きタイトルステッカー貼付
amazon.co.jpで買う
デも/demo #2
初回盤B(CD+DVD)IKCB 9561~2 ¥3,700+税
手書きタイトルステッカー貼付
amazon.co.jpで買う
デも/demo #2
通常盤(CD only)IKCB 9563 ¥2,500+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

【初回盤A】
[CD]
01. 幻形フィルム/genkeifuirumu
02. くるおし花/kuruoshibana
03. 憑影と月風/tsukikagetotsukikaze
04. ザジ待ち/zajimachi
05. キュルるル/kyurururu
06. 色隷/sikirei
07. 日没地区/nichibotsuchiku
08. 19罪/jukyusai

op.7. 憑影と月風/tsukikagetotsukikaze AC Ver.
op.8. ザジ待ち/zajimachi AC Ver.
op.9. 色隷/sikirei AC Ver.

[DVD]
「くるおし花/kuruoshibana」Music Video

【初回盤B】
[CD]
01. 幻形フィルム/genkeifuirumu
02. くるおし花/kuruoshibana
03. 憑影と月風/tsukikagetotsukikaze
04. ザジ待ち/zajimachi
05. キュルるル/kyurururu
06. 色隷/sikirei
07. 日没地区/nichibotsuchiku
08. 19罪/jukyusai

op.10. 19罪/jukyusai AC Ver.
op.11. くるおし花/kuruoshibana AC Ver.
op.12. 日没地区/nichibotsuchiku AC Ver.

[DVD]
「憑影と月風 /tsukikagetotsukikaze」Music Video

【通常盤】
[CD]
01. 幻形フィルム/genkeifuirumu
02. くるおし花/kuruoshibana
03. 憑影と月風/tsukikagetotsukikaze
04. ザジ待ち/zajimachi
05. キュルるル/kyurururu
06. 色隷/sikirei
07. 日没地区/nichibotsuchiku
08. 19罪/jukyusai

【ライブ情報】

●有村竜太朗 LIVE2018 「デも/demo #2」-Premiere Show-
10月2日(火)Zepp Tokyo
10月23日(火)なんばHatch

●Plastic Tree Autumn Tour 2018「in the other side」
9月16日(日)仙台Rensa
9月22日(土)熊本B.9 V1
9月23日(日)福岡DRUM LOGOS
9月28日(金)名古屋ボトムライン
9月29日(土)なんばHatch
10月6日(土)神奈川県民ホール