NoGoD

Kyrie×Shinno Interview

◆後ろに囚われるような見え方は絶対にしちゃいけない(Kyrie)

Kyrie×Shinno

――前作アルバム『proof』のリリースから現在までの1年7ヵ月は、お二人にとってどんな時間でした?

Kyrie:一括りにするには長すぎる時間なんですけど、『proof』のリリース後、年末までツアーがあって、そのツアーの終盤にかけて華凛ちゃんから辞めるという意思表示があったんです。年明けくらいから全員で今後どうしようかと色々話をして、3月に華凛ちゃんが脱退してからはその時の話し合いを元にやるべきことをやってきました。

――体感としては長かったですか?

Kyrie:俺にとっては長かったですね。

Shinno:俺は穏やかだなと思いました。ゆったりとした時間というか、大きな出来事の後の穏やかな日々という感じで。小さな物事は色々起きていたと思うんですけど、「あの大きな出来事に比べたら」という気持ちもあって、物凄く大変だと思い悩むようなことはなかったです。

――華凛さんから脱退の話が出た時の率直な気持ちを教えてください。

Shinno:なるべくしてなってしまったという感じがしました。実際、俺自身も過去にプライヴェートな事情で音楽を続けられなくなるかもしれないと、事務所やメンバーに話をしたことがあって。そのせいか、華凛ちゃんから、「本人に続ける意思と続けられないという意思が半々の時、どうやったら気持ちを前に向けていけるのか」という相談を受けていたんです。彼の中で消化しきれなかった負の部分があったんでしょうね。

――話し合いはどんなふうに行われたんですか?

Shinno:直接話さないとわからないということで、Kyrieの判断で、みんなで話をしたんです。その時に、「今の自分の気持ちでは続けていくことが困難だ。なので辞めます」と。他のメンバーの気持ちはわかりませんけど、俺は彼の気持ちを考えると止められないなと思って。

Kyrie:Shinちゃんは常々「もうちょっと頑張ろうよ」と話をしていた印象がありますね。ただ、自分もそうですけど、14年間一つのことを続けて来て、ゴールが見えない状態なわけじゃないですか。楽しいこともあるけど、同じだけ辛いこともあって、でも年月はどんどん過ぎていくから自分の体や気持ちに折り合いをつけなきゃいけなくなっていく。俺と華凛ちゃんは同じ歳なので、そろそろ色々考えるよなと思うし、自分はいつまで人前に立ってステージに上がり続けるんだろうとか、いつまで音楽をやり続けるんだろうとか、色々考えるようになっていくんですよ。そういう岐路に立たされる年齢やタイミングになっているんだろうなと。なので仕方がないという思いがあって。

Kyrie×Shinno

――昨年1月に脱退に関する声明が華凛さんから出されましたが、その言葉がとても深刻なものに思えたんです。でも、5人での最後のライブ(2018年4月6日『NoGoD SPRING ATTACK -2018- 「walk」』@新宿ReNY)後にKyrieさんのSNSに上がっていた「華凛、お疲れ様。いってらっしゃい。」という言葉がとても印象的で。そこで、あの声明の重さに色々考えてしまったことが一気に晴れた気がしました。

Shinno:あの声明もシリアスになりすぎていたよね。華凛ちゃんも後悔していたから(笑)。

Kyrie:そうだね。彼自身が割と思い詰める性格だったせいもあって、自分だけバンドを辞めるという負い目や、お客さんの期待を裏切ることになるんじゃないかという不安を理解してもらうために必死に書いていたと思うんです。それが悲痛と言えば悲痛だなと。それを必要以上に俺らが添削することは、彼にとって不健康なことだと思ったので、最低限の添削しかしなかったんです。

――長文で、言葉を尽くしている感じがしました。謝罪の言葉があちこちに見られましたし。

Shinno:彼は結構真面目な性格なので、前の言葉をフォローして、その言葉に更なるフォローを…ということが多いんです。そうしたらああなってしまったのかなと。補足補足補足で、最終的に俺は何を伝えたいんだろう?となって、戻って直したら悲しい方向にいってしまったんでしょうね。

――5人での最後のライブと、4人での最初のライブを振り返っていかがですか?

Kyrie:俺らがバンド全体で一番ナーバスになっていたのは、話し合いをする時だったんです。発表した時には、団長が頑張って前を向こうとしていたので、俺らも後ろに囚われるような見え方は絶対にしちゃいけないなと。なので、ReNYやそれ以降のライブについてはスッといけたなと思います。もちろん外部のミュージシャンを混ぜてライブをするという、今までなかった行程での大変さはありましたけど、気持ちとしては話し合いをしたときに踏ん切りがついているんですよ。そこで止める人もいたし、止められないと言う人もいた。いろんな話を踏まえた上で事務所に話に行ったときには、みんなの中である程度、心の整理がついていた気がします。

Kyrie×Shinno

――そこからもう1年なんですね。

Kyrie:本当はもっと早く音源をリリースして、もっと早く体制を整えるのが理想だったんですけど…ちょっとよくわからなかったんですよ。十何年も一緒にやってきた人が辞めて、それでもバンドが続いていく。一番長くバンドをやっているShinno君でもNoGoDほど長く続けているバンドはないですからね。Shinno君が入るときもそうだったんですけど、あの時は、すぐに次のメンバーを探そうという気持ちになれたんです。けど、今回はそうではなかった。「代わりのメンバーって必要なのかな」と思ったし、音楽的に、楽器的にどうこう以前に、今のNoGoDというバンドに何かが入ることは異物感になるんじゃないかなという懸念があって、4人でとりあえず歩いてみようかということになったんです。

――団長さんが「今のNoGoD、すごく良いんです」と言っていました。

Shinno:彼は多分、5人か4人かはあんまり関係なく、表現として、今4人だから4人がいい、ということなんです。彼は今か明日が最高の人なので(笑)。

――最高を更新していくタイプの方なんですね(笑)。ところで、今回の『神劇』は歌詞や、無人の客席というアーティスト写真からも、かなり重い作品という感じがしました。

Kyrie:割と重めのテイストです。曲単位で聴けばまた違うのかもしれませんが、アルバムを取り巻く雰囲気が寂寥とした感じや、切ない感じがどこかに内包されているんでしょうね。

――1曲目の「Curtain Rises」の切ないギターのリフから、最後の「そして舞台は続く」のラスサビの歌詞まで泣かされました。

Kyrie:でもタイトルは『神劇』という(笑)。なので、決してバンドとして切ない気持ちになっているというわけではないんですよ。

Shinno:いや、わからないよ。団長はもしかするとロスなのかもしれない。

Kyrie:あぁ、それはワンチャンあるね。彼、そういうところが割と出やすいタイプだから。自分の生活環境や精神状態がすごく歌詞に出やすいタイプだから、もしかするとどこかにロスがあるのかもしれないな。でも、そこに伝えたいことや自分なりのメッセージがあって、それを作品として消化することができれば、それはその時NoGoDが描いていたものなので、いいんじゃないかと思うんです。

◆楽しい日々だということをちゃんと表現していけたら(Shinno)

Kyrie×Shinno

――今回はかなり時間をかけて制作をしたとお聞きしましたが。

Kyrie:まぁ体よく言えば(笑)。正確には、長い時間かけて作ったと言うより、いつもが短期集中なんです。例えば4月10日にリリースするとなったら前年の9月くらいから作り始めて、1~2ヵ月の間に曲を一気に書いて、選んで、編曲して、プリプロして録音するんですけど、今回は、随時曲を書いて、随時プリプロまで仕上げていくというプロセスをやろうと思っていたんです。

――達成できましたか?

Kyrie:できたのが半分、できなかったのが半分でしたね。「シアン」は昨年1月、「そして舞台は続く」は2月にできて、曲自体は今年1年NoGoDとして書き上げて来たものではあるんですけど、本当は1ヵ月に数曲ずつ仕上げていって、その中から作品の軸を見つけてと言うのが理想だったんです。でも、なかなかそこまではいかず。確かに長い時間作っていたといえばそうなんですけど、実際動き出したのはパッケージングをそろそろ考えようという話になってからなんです。

――今回の7曲で記憶に残っている曲はありますか?

Kyrie:俺は「シアン」ですね、最初に手を付けた楽曲ということもあって。単純にすごく面白いことが色々できたと思います。それができたから今回はこの曲より面白い曲を書こうとか、面白いことをやろうというモチベーションになったので。

――Shinnoさん曲で、サビがとても美しい楽曲ですね。

Shinno:俺は「far away」のギターソロのやり取りが面白かったですね。原曲が上がってきたときに、原曲者がこういう感じでというイメージを伝えてくれたんですけど、わからないぞと(笑)。

Kyrie:団長から「某大物バンドLの上手のSさんみたいなロングトーンのフレーズ」というオーダーがあったんですけど、俺はその人にロングトーンの印象が全くなくて。某Lが大好きなShinちゃんならわかるかなと思って聞いてみたら「あー、ロングトーンじゃないけどこういうことじゃないの?」と言ってくれて。

Shinno:認識って面白いなと思いました。あと、今回大変だったのは、団長とやりたいことが被りまくって、色々と変更を余儀なくされたことですね。基本的に全員でよーいドンで作業することはなくて、Kyrieが録って、ドラムを録って、歌を録ってという流れでやるんですけど、原曲段階の音を聴いて全員バラバラに作業をしたものをKyrieのところで録るので、他の人が原曲者に相談している内容や過程を知らないんですよ。そうするとKyrieから「問題が起きた。ヴォーカルとメロディーラインが一緒だから、他のところに行ってくれ」と言われたりするんですけど、それが今回非常に多くて。

Kyrie×Shinno

――今回に限ってですか?

Shinno:いつもちょこちょこあるんですけど、今回は特別多かったよね。

Kyrie:うん。一番大きな要因は、現場処理なんですよ。いつもはその場で変えるから、処理するのに手間はかかっても時間はかからないんですけど、今回現場処理による部分を減らしていったんです。いつもは、被っていてもその場で、雑な言い方をするとShinno君が描いているものを歪にして入れているんです。

Shinno:抜け道を探して入れる感じだよね。

Kyrie:でも、本来こうありたいというものを歪にして入れる感じが勿体ないなと思っていて。なので、そうなりそうなものはその前の段階で違うものに変えていったんです。要はAをA´にするくらいならBにして、自分の思い描いているものを綺麗な形で入れた方がいいんじゃないかと。そもそもShinno君はすごく歌心があるギタリストだから、すごく歌っぽいフレージングだったりするんです。そうすると、「そこは歌が歌ってるとこやで」ということになってしまうので。

Shinno:今回は団長に対して「またお前か」ということが多かったですね。ちょっとイラッとしつつ変えなきゃいけないという(笑)。

Kyrie:みんながやりたいことをやるバンドさんももちろんいるし、それはそれで成立するんでしょうけど、NoGoDは音楽的にもセパレーションをすごく楽しみたいところがあって。何もないところがあればギターが何かやればいいじゃんとか、歌が出ているなら引っ込んでおけばいいじゃんとか。互いが重ね合わせて主張する部分があってもいいと思うんですけど、それはやっぱりここ一番という時に使いたい。でも、いつもそれだとどこが山場なのかわからなくなっちゃうから、常にそんなハイテンションなバンドでもないよなということを考えたりして。うちはレコーディングで録ったら基本的にはそれを変えることはしないんです。なので、決まっているものに対して、はまるものじゃなかったらだめという感覚なのでその場で直しながらやるんですけど、変えようと思えばどこも変えられる分、可能性が多い分迷うことも多いんです。

――ところで、お二人はお互いをどんなギタリストだと思っていますか?

Shinno:あまり気にしたことはないんですよ。言うなれば、違うパートだと思ってやっています。俺はギターなんですけど、ギタリストではないなと。ギタリスト同士だとどちらがソロを弾くのかとか、同じようなことをやったりしてぶつかり合うことが多いと思うんです。逆に例えばメタルでツインリードで、みたいなことに俺は適していないから、力になれないし、それは申し訳ないと思う。でもやりたいことが全く違うので、すごく楽ですよ。あまり自分が得意としない部分をやってもらえるので。「ギタリストじゃない」と言ったのは、ギタリストって一人で完結する、ワンギターで完結するバンドだと思うんです。極端な話。でもその隙間に俺が入っていけるというのが俺の遊び方なので、自分をギタリストとして見ていないんです。

Kyrie:Shinちゃんはどういう存在かと聞かれると、空気みたいなものですよね。そこにあることを疑うことはないし、そこにあるべくしてあるものだっていう。あんまりパートがどうとか関係なく、良いところも悪いところも踏まえた上で、なくてはならないものです。だからお前のここは良いところだから良し、ここは悪いところだからダメ!とか、そういうことで一緒にいるわけじゃないんだよなと。俺がNoGoDと言うバンドにいる限り、横にはこの人がいる、そんな存在です。

Kyrie×Shinno

――人生でそういう存在に出会えるというのは素晴らしいですね。

Kyrie:これは自分でそうしたいと思えるか否かだと思いますよ。そうなろうと思えば誰でもなれる。でも、この人で良かったなと思えるかどうかはまた別ですよね。団長はそういうことを思い込む力が強いのですごいなと思うんです。

Shinno:そうだよね。疑うことがない。自分を洗脳していけるというか。「俺はこうだ!」と思ったことが彼の中でリアルなんですよ。MCでよく「Kyrieがこう言ってた!」って話すんですけど、彼の中で「Kyrieだったらこう言うだろう」→「Kyrieはこう言っていた気がする」→「Kyrieはこう言っていた」で完結するんです。なので、ヤバいことは大体Kyrieが言っていたことになっています(笑)。

Kyrie:一番面白いのはインタビューですね。いろんな媒体さんでお話させていただく中で、1回目で俺が話したことを4回目には団長が話しますから。

Shinno:自分から出て来た話みたいに話すよね。

Kyrie:でも、その時俺はまだ全部を話していないんですよ。でも、彼はその中でハイライトだけを使って話すから、ちょっとニュアンスが間違っていたりして(笑)。「制作に長く入っていた」という話も、ずっと制作していたかと言われるとそうでもなくて、ちゃんと制作に入ったのはパッケージが決まってからだったりするんです。昨年1月から曲は作っていたから長い時間制作していたと言えばそうなんですけど、ちょっと違うんだよなぁと。彼の中でのハイライトが「長い時間制作していた」というところだと、そうなっちゃうんですよね。

Shinno:今か明日しか見ていない男ですからね(笑)。

――(笑)。では最後にこれからのヴィジョンを教えて下さい。

Shinno:俺はこういう感じなので、モチベーションが低いように見られがちなんです。でも、低いも高いもなく毎日楽しんでいるので、これからは喜怒哀楽をはっきりさせていけたらなと。

Kyrie:Shinno君は人の面倒を見ることが多くて、この10年自分を出すことがあまりなかったからね。

Shinno:これからは、楽しい日々だということをちゃんと表現していけたらいいなと思います。

Kyrie:これから、と言ってもどうなるかはわからないんですよね。バンドは明日なくなるかもしれないし。でも、それはどうなるかわからないものだと思って精一杯楽しもうと思います。俺だっていつまで音楽をやっているかわからないし、Shinno君だってひょっとしたら、明日、音楽が出来なくなるかもしれない。終わりがあることを認識しないまま無作為に楽しむよりも、いつ終わりが来るのかわからないなら、それまで精一杯走ろうと思う方が俺は好きなので。もちろん、まだまだ終わる気はないですけどね!

(文・後藤るつ子/写真・コザイリサ)

ARTIST PROFILE

NoGoD

<プロフィール>

団長(Vo)、Kyrie(G)、Shinno(G)、K(Dr)の4人によるロックバンド。2005年に「新興宗教樂團NoGoD」として結成。バンド名義をNoGoDとして、2010年6月にシングル『カクセイ』でメジャーデビュー。2015年4月に結成10周年を記念したベストアルバム『VOYAGE』を、2017年4月にシングル『Missing』、7月にシングル『Arlequin』、そして9月にアルバム『proof』をリリースした。2019年4月に4人体制となって初の音源となるミニアルバム『神劇』をリリース後、5月より「NoGoD ONE MAN TOUR -2019-」を東名阪で開催する他、多彩なアーティストとのツーマンツアー「NoGoD PRESENTS-SPECIAL 2MAN 5DAYS-【D2M5D】」をスタートさせる。

■オフィシャルサイト
http://www.nogod.jp/

【リリース情報】

神劇
2019年4月10日発売
(KING RECORDS)

神劇
(CD)
KICS-3789
¥2,500+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

[CD]
01. Curtain Rises *竹下 幸之介(DDT)新入場テーマ曲(NoGoD ヴァージョン)
02. masque
03. Borderline
04. シアン
05. far away
06. DOOR
07. そして舞台は続く

【ライブ情報】

●『「神劇」発売記念イベント ~アルバム再現プレミアムショーケース~』
4月20日(土)神奈川・Music Lab.濱書房
4月21日(日)神奈川・Music Lab.濱書房
4月27日(土)神奈川・Music Lab.濱書房
4月28日(日)神奈川・Music Lab.濱書房

●NoGoD ONE MAN TOUR -2019-
5月11日(土)名古屋 ell.FITSALL
5月17日(金)大阪 ESAKA MUSE
5月25日(土)新宿BLAZE

●NoGoD PRESENTS-SPECIAL 2MAN 5DAYS-【D2M5D】
5月2日(木)渋谷DESEO[出演]NoGoD/中島卓偉
5月3日(金)渋谷DESEO[出演]NoGoD/Unlucky Morpheus
5月4日(土)渋谷DESEO[出演]NoGoD/ピアノゾンビ
5月5日(日)渋谷DESEO[出演]NoGoD/Develop One’s Faculties
5月6日(月)渋谷DESEO[出演]NoGoD/TAKE NO BREAK