インタビュー

摩天楼オペラ

摩天楼オペラが掲げた次なるコンセプト“劇的なロック”。新たな音世界で究極の無償の愛を歌い上げるニューシングル『Orb』をフィーチャー!

コンセプチュアルなアルバム『喝采と激情のグロリア』で、一つのテーマを完結させた摩天楼オペラ。彼らが次に我々に見せてくれたのは、これまでとはさらに異なる新たな音世界。優しく紡がれる無償の愛の歌と、美しくも“劇的”な音の世界に、まずは浸っていただきたい。貪欲に進化を続け、リスナーに新たな驚きを与え続ける摩天楼オペラから、苑(Vo)、Anzi(G)、彩雨(Key)の3人のスペシャルインタビューをお届け!

◆今までの摩天楼オペラの形を壊してでも新しいものを作っていく(苑)

――今回のシングルは、「摩天楼オペラ初のバラードシングル」と銘打たれていますね。

Anzi:自分たちはバラードだとかそういうことは気にしていないんですよ。リスナーの捉え方次第だと思うので。うちのドラムの悠だったら頑なに「これはバラードじゃねぇ! ミディアムロックだ!」って言うと思いますし(笑)。

彩雨:「Helios」(メジャー1stシングル)をバラードと見るかどうかだと思うんです。

――「Helios」はバラードというには、やや違和感が…。

Anzi:下手したら「もう一人の花嫁」(※メジャーデビューミニアルバム『Abyss』収録曲)をバラードだって言う人もいますよ。

苑:えっ、そうなの!?

彩雨:そうそう! どちらも入口がピアノで始まるからかな。

Anzi:歌詞の世界観でバラードだと思う人もいますしね。

――バラードというと「永遠のブルー」(※アルバム『喝采と激情のグロリア』収録曲)のような曲を思い浮かべますが、「Orb」は意見が分かれるところかもしれませんね。

苑:そうなんですよね。

Anzi:本人たちは別にそこにこだわってはいないんですけどね。

彩雨:あ! でも僕、最初に発表する時にツイッターで「摩天楼オペラの新曲発表! バラードです!」って呟いた気がする!

Anzi:おい(笑)。

苑:でも僕もバラードだって認識してたよ(笑)。

――(笑)。ところで、アルバム『喝采と激情のグロリア』まで、かなり長いスパンでコンセプトに基づいた作品作りをしていましたが、今回はいかがですか?

苑:『喝采と激情のグロリア』の時は、コンセプトをガチガチに固めていたので、今回は決めないでいこうって話していたんです。でも、いざどういうものをやろうか考えていったら、作っている最中にざっくりしたコンセプトが生まれてきて。それが“劇的なロックをやりたい”ってことだったんです。それで、今までの摩天楼オペラの形を壊してでも新しいものを作っていこう、という方向になりました。

――“劇的なロック”というコンセプトは「Orb」のどういう部分に生かされていますか?

苑:“劇的”と表現したのは、「Aメロ→Bメロ→サビ」という通常の形ではなく、「Aメロ→サビ、サビ→Bメロ」のように、突然違う展開にして構成を劇的にしたいと思ったんです。そういう意味で「劇的なロックがやりたい」とみんなに伝えました。

――皆さんの反応は?

彩雨:何をもって劇的と言うかって難しいと思うんです。それこそ、たった1小節で「この曲、劇的だな」って思わせる曲もあるし、曲全体を通して劇的なものもあるし。僕も“劇的なキーボードを入れる”という話になったら、一体どんな風に入れるか考えたと思うんですけど、今回のキーボードは、「いつもとちょっと違うフック」という解釈で作りました。

Anzi:僕も、ギターで劇的なロックっていうのはないと思うんです。サウンド全部ができあがった状態が劇的であれば、ということだと思うんですよね。

――Anziさんの考える“劇的なロック”というのはどういうものですか?

Anzi:僕は、シネマティックなものに劇的感を感じていて。映画音楽の構成は、いわゆる歌謡曲みたいに、「Aメロ→Bメロ→サビ→2番のAメロ→Bメロ」ではなくて、ずっとAメロとBメロが繰り返されて、最後だけサビが来たり、最初にサビがあって最後急に違うサビ来たり。そういうところに劇的感を感じますね。今回は、うちのバンドの中でこれまでやらなかったパズルの組み合わせで、「サビ→Bメロ→もう一回サビ」っていうアプローチが面白いなと。これをリスナーが劇的な展開だと思うかはわからないけど、僕らの自己満足的な“劇的な展開”になったかなと思います。サビもすごくシンプルなので、前半もサビ率が高いんですけど、このリフレインが気持ちいいというか。〈Orb Orb〉と言い続けたら、気づいたら口ずさんじゃうんじゃないかと。

苑:…あの、サビの部分は〈Orb〉って言っているんじゃなくて〈オー〉だからね。

Anzi:え! あれ〈Orb〉って言ってるんじゃないの!? 俺間違ってた!?

彩雨:あの部分は、エンジニアさんも「〈Orb〉だよね」って言ってた(笑)。

――(笑)。それにしてもシネマティックという言葉がとてもしっくりくる曲ですよね。途中の沈黙も効いていて。今までにないパターンだなと新鮮な気持ちで聴いていました。ところで、「Orb」とはどういう意味でしょう?

苑:「球体」です。歌詞の中に「雪」という言葉が出てくるんですけど、雪が降っている時に部屋の電気を消すと、外の雪の影が壁に映るんですよ。雪の一粒一粒が大きく映って壁を流れていくんです。そういう情景を思い浮かべて「Orb」ってつけました。僕は札幌出身なので、そういう情景が思い浮かびやすかったせいもあります。あと、この曲は最初から冬っぽい雰囲気を持っていたので、そこから生まれました。

――〈雪のようにありたい〉という言葉で無償の愛を語るのはさすがです。

苑:主人公の男性から見たら、今見ている雪も、自分が子供の頃に見た雪も、同じように降っているわけじゃないですか。だからきっと、自分の子供が生まれたら同じように雪を見るんだろうなと。逆に言えば、その子供が大人になったら、また同じように〈雪のようにありたい〉って思うんだろうな、という思いで書きました。

――一瞬、母の目線で書いたのかと思うほど優しい歌詞ですね。

苑:そうですね。優しい歌詞です。ただ、この話の中ではお母さんは寝ているので、全部お父さん目線ですけど(笑)。

全員:(笑)

◆隠し味を至る所に散りばめています(彩雨)

――今回、いつもと構成を変えたとのことですが、レコーディングでは何か面白い試みをしましたか?

彩雨:今回、タンバリンを録りました。実はサビの裏に入っています。

Anzi:リズムに合わせてシャカシャカ鳴っているんですけど、ドラムのハイハットとかと似ていて、そんなに仰々しくは出していないんですよ。隠し味ですね。

彩雨:今回、いろんな隠し味をみんなで考えたんです。悠が色々提案してくれて、キーボードでシーケンスで隠し味も入れたり。タンバリンのレコーディングは悠がやったんですけど、悠っていつもドラムを叩くときにメタルTシャツを着ているんですよ。ひげも生えてるし、あんな出で立ちじゃないですか。そんな彼が大きな部屋のじゅうたんの上でタンバリンを鳴らしている姿をみんなでモニターで見ながらニヤニヤしてました(笑)。

Anzi:いろいろ混ざりすぎて、もうジャンルがわかんないよね(笑)。ミクスチャーとはこのことか!と。絨毯の柄も民族っぽい感じなのがまたね…(笑)。

――絨毯はオフショット動画で映っていたやつですか。

彩雨:そうですそうです!

Anzi:その上でハーフパンツとメタルTシャツで、タンバリン持って何やってんだろっていう(笑)。

全員:(笑)

彩雨:本人はすごく集中してたから、ますますね。

苑:猫背になってたもんね(笑)。

――想像すると可愛いですね(笑)。

彩雨:はい(笑)。でも、僕たちもプリプロを録るときにタンバリンで遊んでみたんですけど、すごく難しいんですよ。でも、悠はスムーズに録ってましたね。マイクの位置を変えたくらいだったかな。

――やはりリズムを刻む人は違いますね。では、彩雨さんの隠し味は?

彩雨:実はBメロの中に電子ドラムの打ち込みのカチカチした音が入っているんですけど、これはほとんどわからないと思います。あとは、最初の出だしのピアノの裏にカシャカシャ鳴っているシーケンスの音を入れたり。今回、そういう隠し味を至る所に散りばめていますね。

Anzi:僕はこのバンド始まって以来、隠し味的なものは一度もやったことがないんです。本当にシンプルにギターを弾いているだけで。ただ、こだわりとして、今までこういう大きいグルーヴの曲はバッキングを普通に鳴らしたり、白玉(全音符)で鳴らすだけのことが多かったんですけど、今回ちょっと凝ってみようと思って。ちょうどこれを制作している時にMr. Bigの曲をヘビーローテーションで聴いていたんですけど、あの人たちの曲は結構バラードが多いのに、ギターはただ白玉で鳴らしているわけではなくて、憎いところでかっこいいロックなオブリが入ったりするんです。すごく参考にさせてもらいましたね。バッキングはよく聴いてもらうと面白いと思います。

――リスナーの楽しみが増えましたね。苑さんは今回、新しいマイクにしたんですか?

彩雨:オフショット動画を見ると、あたかも新しいマイクに変えたかのようですが実は…

苑:変えていません(笑)。新しいマイクで1発録ったんですけど、「ちょっと違うね」ということで、元のマイクに戻しました。

――何が違ったんでしょう?

苑:マイクによっては声の音圧に耐えられなかったり、息成分が聴こえないものもあって。今のマイクは僕の音圧に耐えられて、息成分も程よく聴こえるんです。

――苑さんの声の音圧は凄そうですね。

苑:そうですね。サビでは声を張るけどAメロとかは静かに歌っているので。その幅にマイクが耐えられないと、音が割れちゃうんです。

――マイクもいろいろなんですね。ところで、「Orb」には合唱が入っていませんが、意図的に取り入れなかったんでしょうか?

彩雨:ちょっと意図的でもあります。今制作している曲に合唱の曲はないです。ここで合唱をやってしまうと、「合唱でやっていくバンドなんだ」と思われてしまうので。僕たちもそればっかりをやりたいわけじゃないし、今後はこういう合唱のない曲もやっていって、たまにやったらそれがフックになるのかなと。なので、今は合唱はお休みです。

◆良い意味でファンの期待を裏切りながら楽しんでいきたい(Anzi)

――c/wの「DRACULA」は彩雨さん原曲ですが、曲のテーマは作曲の段階から決めていましたか?

彩雨:そうですね。ダンサブルで、ちょっとクラブミュージックっぽいテイストもあったり、でもちょっとメルヘンでおどろおどろしい…中世ヨーロッパのハロウィンやクリスマス的な要素を含んだダンスミュージックを作りたくて。

――この曲で、Anziさんの音が見つけられなかったのですが…。

Anzi:この曲は、苑と彩雨の二人だけでやってもらいました。今回、Zepp(6月8日にZepp Tokyoで行われた『GLORIA TOUR -GRAND FINARE-』)が終わってから、ドラムの悠がヘルニアでドラムが叩けない時期があったんです。でも、冬のリリースは決まっていたので、悠の復帰がどうなるかわからない状態で『Orb』の制作をしていたんですよ。c/wはどうしようって話になった時に、何曲も悠に叩かせるリスクが怖かったので、彩雨の打ち込みドラムのダンスミュージックにしようと。

――なるほど。この曲に今回ならではの音はありますか?

彩雨:ソロがエレピ(エレクトリックピアノ)なんですけど、歪んでいるんです。僕、ソロでは普段そういう音は使わないので、摩天楼オペラ初かもしれませんね。

苑:全英詞も今回が初めてです。「Orb」は主人公がいてその気持ちを歌っているんですけど、「DRACULA」は情景が見えるような歌詞ですね。

――この曲も映像化したら面白そうですね。

彩雨:そうですね。僕、このPVを作りたかったです。映画で『魔法少女まどかマギカ』っていうのを見たんですけど、その中で魔女と戦うシーンがあるんです。そこで非常に独創的な世界観の画が出てくるんですけど、その世界観でこのPVを作ったらすごくはまるだろうなと思って。

――では、PVを作るとしたらアニメですか。

彩雨:そうですね。はまると思うんですよ。

――ライブでやるとしたらどんな感じになるんでしょう?

苑:二人でやるとは思うんですけど、まだ見えていないんですよ。あまりに息継ぎがない曲なので、あんまり動けないだろうなと思って(笑)。でも、この妖艶な雰囲気とか、ダンサブルな感じを自分で作り出せるようなライブにはしたいですね。

――12月には東名阪のライブがありますが、そこで初お披露目になるんでしょうか。

苑:そうですね。

――ファンの方の反応が気になります。

彩雨:今回、先にPVを発表した「Orb」がこういう曲だから、c/wにすげーメタリックな疾走曲を期待している人もいると思うんですよ。そういう人が曲を聴いて「彩雨、この野郎!」って言ってくれるのが今から楽しみで仕方ないです(笑)。

全員:(笑)

彩雨:きっとこういう2曲は想像していないと思うんですよ。さっき「今までにないパターンで新鮮」と言ってくれましたけど、みんなそうだと思うので。そういうところを聴いてくれたらいいなと思います。

――最後に、2014年の摩天楼オペラの展望を教えてください。

苑:『Orb』を聴いてわかるかもしれませんが、前回の『喝采と激情のグロリア』から大きく成長していると思うんです。そこに居続けずに進化を続ける年にしたいですね。

彩雨:“劇的”という言葉を頭に入れつつ、新しいものをいっぱい作れたらと思います。

Anzi:僕らは、ファンが思っている以上に固定観念がないんですよ。リスナーの人は「摩天楼オペラってへヴィメタルバンドだよね」って言ってくれるけど、僕らは全くそんな風に思っていなくて、何でも面白ければアプローチしていけばいいと思っているんです。間口が広いバンドなんですよね。バンド名も、古い物から新しい物までいろんなものを取り入れてミックスしてやろうというコンセプトなので、『Orb』を出したからってこういう曲ばっかりには絶対にならないし、これからもずっと、次にどういう曲をやったら面白いかってことしか考えないと思うんです。でも5人でやれば芯は通っていて、必ず摩天楼オペラだってわかる音になる自信はあるので、2014年も遊び心を忘れずに、良い意味でファンの期待を裏切りながら楽しんでいきたいと思います。

(文・後藤るつ子)

摩天楼オペラ

<プロフィール>

苑(Vo)、Anzi(G)、彩雨(Key)、燿(B)、悠(Dr)の5人から成るロックバンド。2007年12月より現メンバーでの活動を開始。インディーズシーンで精力的に活動し、2010年12月22日、ミニアルバム『Abyss』でメジャーデビュー。2011年7月メジャー1stシングル『Helios』で、オリコンウィークリーチャート初登場16位を記録し、同年10月、メジャー2ndシングル『落とし穴の底はこんな世界』をリリース。2012年3月、メジャー1stフルアルバム『Justice』を発売し、3rdシングル『GLORIA』、4thシングル『Innovational Symphonia』を経てフルアルバム『喝采と激情のグロリア』をリリース。この作品を掲げて全29公演のライブツアーを行い、9月には、ファイナルとなったZepp Tokyoの模様を収めた『GLORIA TOUR -GRAND FINALE- LIVE FILM in Zepp Tokyo』を発売。


■オフィシャルサイト
http://matenrou-opera.jp/


【CDデータ】

KIZM.261~262
¥1,365(tax in)


『Orb』
2013年12月4日発売
(King Records =music=)
摩天楼オペラの5thシングルはクリスマスを舞台にした、未来への希望を表す壮大なミディアムテンポの楽曲。

【収録曲】
【CD】
01.Orb
02.DRACULA

【DVD】
「Orb」MUSIC VIDEO