2012.10.29
清春@SHIBUYA-AX
『The 44th Birthday』
清春が自らの44回目のバースデイの前夜にあたる10月29日、渋谷AXにて『The 44th Birthday』ライヴを行なった。毎年恒例になっているこのバースデイライヴ(この2年はsads名義で開催)、今夜は約1,500名のオーディエンスが駆けつけている。
18時50分、ブルーのライトを背に、白いシャツにロング丈のジャケット、細身のパンツというスタイリングの清春が登場。ギターを掻き鳴らしあの声を発する。サポートメンバーの三代堅(G)、中村佳嗣(G)、沖山優司(B)、楠瀬拓哉(Dr)が引き締まったサウンドを鳴らす。オープニングナンバーは「予感」だった。ストロングな清春の歌声の節々に、儚さゆえの愛おしさ、大切な人への想い……溢れる感情が滲んでいるのが分かる。
圧倒的なその歌は、説得力を帯び、ギュッと前へと詰めかけたファンを飲み込んでいく。清春のギターストロークから導かれた「confusion」では、フロアのオーディエンスが声を重ね、AXは歌に包まれる。
ライヴ中盤。「妖艶」で一度テンポを落ち着かせて、足下のモニターに膝をつきながら清春は艶のある声を響かせる。この直後に演奏された「バラ色の夢」、続く「LAW’S」「CRY OUT」……怒濤のごとく轟いたヘビーで激しい曲たちに反応してフロアが揺れるが、そこにはギスギスした空気や怒り不満といった負の感情の反発として発せられる要素は微塵もなく、ただただ心地良く、温かくすらある。本編ラストの「COME HOME」、清春は巻いていた細いネクタイをほどき客席に投げ入れる。そしてモニターの上に立って客席を見渡した。それに応えてフロア一面に拳、歓声が上がる。清春、サポートメンバー、オーディエンス、場内すべての人が笑顔を浮かべていた。
1度目のアンコールでは、黒夢時代、1997年に発表した「少年」を披露。スペシャルな夜に花を添える。そして2度目のアンコールでは、MCをし始めた清春の言葉の切れ目に、ドンとドラムが鳴り、三代が「Happy Birthday」をギターで奏でる。ケーキが運ばれてきてそこに立つ44本のロウソクの火を清春が吹き消す。
「活動を続けていくと1 週間お祝いされますが、今日が一番たくさんの人に祝ってもらっています。至上の喜びです」と清春が言う。この後、2年後の20周年をカッコイイ46歳になって迎えること、「自分のこれまでの活動中にも、いろんな人がデビューして消えていきましたが、なんとなくですけど消えない自信があります」という彼らしいMCも。続けて「音楽を続けてきて、ただ渋くなるのではなく、今の等身大のポップアルバムができた。しかも薄っぺらいものじゃなくてね」と、11月7日にリリースとなるアルバム『UNDER THE SUN』を言い表した。
「あの詩を歌って」のラストに、『UNDER THE SUN』にも収録されている「涙が溢れる」の、最後のラインを付けて歌い、幕を下ろす。「涙が溢れる」はファンと自分の今の関係性を歌った曲だが、体に残るすべてを搾り出して発せられる渾身の歌声は、やはり温かく、“ファンとのこの関係が続くように”という祈りに満ちていた。
清春は、アルバムリリース、恒例の年末のライヴを経て、年明け1月18日からは全国ツアーも控える。今夜感じた温もりがどう深まり、そして『UNDER THE SUN』の曲たちが伝わった時に出る温度がどんなものなのか、楽しみだ。
◆セットリスト◆
01. 予感
02. confusion
03. ALIZONA
04. WEDNESDAY
05. my love
06. RUBY
07. 新曲
08. garret
09. タランチュラ
10. 妖艶
11. バラ色の夢
12. LAW’S
13. CRY OUT
14. DEVIL
15. A.M.C
16. COME HOME
En.1
17. 光
18. I KNOW
19. 星座の夜
20. 少年
En.2
21. マークはバタフライ
22. SANDY
23. HAPPY
En.3
24. 涙が溢れる
25. EMILY
26. あの詩を歌って
(文・大西智之/写真・平野タカシ)