ライブレポート

2018.5.14
人間椅子・NoGoD@TSUTAYA O-WEST
「人間椅子提供 地獄の感謝祭~第三弾」

まさに「信頼関係」が生んだ成功と会場中に多くの笑みを咲かせたイベントであった。
この日は人間椅子主催ツーマンライブ「地獄の感謝祭」の第三弾。対バン相手はNoGoD、場所はO-WEST。今年に入り隔月にてDOOM、バックドロップシンデレラと、新旧異端ロックバンドたちと祭典を繰り広げてきた彼らだったが、今回はその中でも特に異例の組み合わせのようにも映った。
このツーマン実現のきっかけは、何を隠そう以前Vifで行った人間椅子・和嶋慎治(Vo&G)とNoGoD・団長(Vo)との対談であった。初対談となった両者。団長の長年に渡る人間椅子愛の告白から始まり、お互いの音楽性の考察、はたまた共通項やお互いの今後のスタンスを見出すに至り、最後は両者がしっかりと信頼関係を構築していった。そして、そこで交わした「ぜひ対バンしよう」という約束が、この度こうして実現したのだ。
お互いハードロック/ヘヴィメタル愛や影響を出自に、苦労人的道筋と異端児的なスタンス以外は、年齢、音楽性、雰囲気、メンバー構成、コスチューム、お客さんの層も対照的な2バンド。この二極がフロアにどのような融合や化学変化を起こすのかにも興味が募った。

2バンド共通の趣向を示すかのように、故ボン・スコットがヴォーカルを務めていた頃のAC/CDの曲たちがフロアBGMとして流れている。これらの曲が同バンドの「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」に変わり、しばらくすると音量のアップと共に場内が暗転。NoGoDの登場だ。Kyrie(G)、Shinno(G)、K(Dr)、リウ(GUEST BASSIST/from メトロノーム)がステージに現れ、Kの重いドラミングからインスト曲「In the cage…」を展開して会場全体を暖めていく中、袖より団長が登場。「始めましょうか! 行くぜ渋谷~!!」のシャウトを起爆剤に1曲目の「神風」に入る。特製のバイブル型ハンドマイクを持った団長のハイトーンロングスクリームが場内に轟き渡り、ラウドながらドライブ感のあるバンドサウンドが会場を飲み込んだ。〈俺を止められるか もっと!もっと!もっと!もっと!「神風」〉〈この命が尽きるまで 進むべき方角は定まった たとえそれがとても険しい道でも 迷う事は無い〉のフレーズがこの日も会場を抱きしめにかかる。続いて、Shinnoのチョーキングを効かせたイントロから「EZ L1F3」に入ると、ステップに上がり歌う団長が上昇感を歌と共に煽っていき、3フィンガーを使ったリウのベースがグリグリと会場を惹き込んでいった。

最初のMCは、団長が主に檀家(人間椅子のファンの呼称)に向けて、白塗りの難しさとポイントを丁寧にレクチャー。「今日は顔で選ばないお客さんばかり」と笑顔でライブに戻る。
Kyrieの特製7弦ギターによる妖艶なアルペジオから情景観溢れる「蜃気楼」に入ると、ダイナミズムが場内にゆっくりと広がっていき、不穏な雰囲気が場内を包んだ「電脳少年」では、切なさを交えた感情移入たっぷりの団長の叙情的な歌声が会場中に染み渡っていく。そして、疾走感溢れる「イピカイエ」では檀家も信者(NoGoDのファンの呼称)も関係なく会場が一体となってタオル大旋回の名場面を育んでいった。
「みんないい顔をしてるぜ、その調子でもっともっと楽しんでいこう!」と団長。「Arlequin」に入るとライブも更に加速。同曲ではKyrieの早弾きも映え、それを抜けて現れた切ないメロディアスさが胸に迫った。

「これを機に今後も人間椅子と共演したい。俺らも活動を止めていたら、このように共演することさえできなかった。今後も続けていく!」と団長が力強く宣言。その感動的なMCの後、「心肺停止させん!!」とばかりにラストスパートへとなだれ込んでいく。「break out!」では、スラップを交えたリウのベースとKのツインペダルが地響きを起こし、〈限界を越えてどこまでも遠くへ〉のリリックを体現すれば、そのストレートさをうねらせ淫靡さをまとわせた「夢」に於いては、ストーリー性とダイナミズムを楽しむことができた。また、Kyrieのメタリックなギターリフから入った「The Power」では会場一丸となってステージに掲げる拳も力強く、ラストの「愚蓮」では、会場も咲いたり、ヘドバンをしたりと大忙し。それぞれが楽曲に思い思いの楽しみ方を繚乱させる光景も記憶に残るものとなった。

 

続いては人間椅子の登場だ。「此岸御詠歌」をSEに、和嶋慎治(Vo&G)、鈴木研一(Vo&B)、ナカジマノブ(Vo&Dr)がゆっくりとステージに現れる。和嶋のギターのフィードバック音の後、まずはガツンと三位一体のデモンストレーションを轟かせた彼ら。1曲目は「新調きゅらきゅきゅ節」。和嶋のギターアルペジオの向こう、いきなりナカジマのツーバスが地響きをたてて襲い掛かり、3人が放つヘヴィネスがフロアを強襲してくる。Sabbathライクな「恐怖!!ふじつぼ人間」に入ると、和嶋もギターを弾きながらポップに跳ね回る。同曲でヴォーカルをとる鈴木の重い青森訛りの歌声が、彼等ならではの空気を場内に広げていった。

MCでは、「団長の動きはキビキビしてカッコよかった」と褒めつつ、「楽屋で先ほど、白塗りにはやはり下地が大事との講釈を団長から受けた」と鈴木が暴露し、場内に笑いを起こす。「今日はそんな白塗りという今や絶滅危惧種とも言えるメンバーがいるバンド同士の対バン」と和嶋自ら、この日の主旨を伝えた。
「アラフィフの楽屋での話題は、どうしても健康方面になっちゃう。死ぬまでバンド活動を行っていく為には必要なことだから」(和嶋)と繋いで演奏に戻ると、「恋のために命を落とす時代の純愛の歌」と紹介された、彼ら独特の和楽な雰囲気が炸裂する「品川心中」へ。同曲は3人のコーラスワークも聴きどころ。加えて、曲中には上下(かみしも)を切りながら落語も交え楽曲を目まぐるしく転がしていく。気づけばナカジマは既に上半身裸だ。いつの間に…。

そして、鈴木が歌う、彼らの湿り気を帯びたキャッチーさも独特な「膿物語」がライブをズンズン進ませていけば、同曲中盤ではステージ中央で和嶋と鈴木が背を合わせてソロをキメ、魅せ場を作る。また、2ビートとストーナーロックを目まぐるしく交差させた「命売ります」では、ドタバタ感を交え会場が走り出す。そして重いイントロから鈴木がヴォーカルを務める「死神の饗宴」に入ると、途中からモーターサイクル度が急騰。会場の熱狂度を上げにかかる。また、「深淵」に於いては、和嶋の3フィンガーのアルペジオからヘビーなリフ、そして恒例の長いギターソロも楽しませてくれた。

後半に入ると、ナカジマが叩きながら歌った「道程」では和嶋もギターソロを背弾き、歯弾きとアクロバッティングさを交え場内を魅了。「雪女」では再びナカジマの地響きのようなツーバスが襲いかかって来、ラストの鈴木がヴォーカルを取った「針の山」に於いては、会場一丸となってのジャンプでフロアを大いに盛り上げ、不思議な清々しさを残し彼らは一旦袖へと消えた。

アンコールはGuns N’ Rosesの「Welcome to the Jungle」のカバーセッション。和嶋もトレードマークとも言えるSGからレスポール(ガンズのリードギターもレスポール)に持ち替え、パーティー感たっぷりな同曲を2バンド、檀家と信者を交え実に楽しそうに歌う。その辺り、普段の両バンドからは伺えない、別表情が見られたようで嬉しくなる。美しいほどの大団円だ。こうして「地獄の大感謝祭」は大成功のうちに幕を閉じた。

事前に邂逅し、両バンドの信頼関係が形成された上での対バンとの安心感もあったのだろう。フロアが終始、双バンドを平等に楽しんでいた光景も印象深かった。スタイルやスタンス、音楽性は異なれど、そこに互いの信頼関係やリスペクトがあれば、各々のファンもそれを信頼し、存知未存知関係なくその中に飛び込み、楽しみ、ややもすればそれぞれのファンにもなっていく…。ツーマンライブの狙いを改めて確認できた一夜だった。それと同時に、人間椅子は、まだまだこの信頼関係をも糧に、そのままの音楽性を貫きながらも未知の観客と出会い、檀家を増やし続けていける。それを強く確信したライブでもあった。

◆セットリスト◆
【NoGoD】
01. 神風
02. EZ L1F3
03. 蜃気楼
04. 電脳少年
05. イピカイエ
06. Arlequin
07. break out!
08. 夢
09. The Power
10. 愚蓮

【人間椅子】
01. 新調きゅらきゅきゅ節
02. 恐怖!!ふじつぼ人間
03. 品川心中
04. 膿物語
05. 命売ります
06. 死神の饗宴
07. 深淵
08. 道程
09. 雪女
10. 針の山

EN
01. Welcome to the Jungle(Guns N’ Roses Cover)

(文・池田スカオ和宏/写真・コザイリサ)