ライブレポート

2014.1.10

Sadie@SHIBUYA-AX

『MADRIGAL de MARIA』

 

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10月16日にアルバム『MADRIGAL de MARIA』をリリースし、直後から行われてきたSadieの全国ツアーが1月10日、渋谷AXで遂にゴールを迎えた。“MADRIGAL”とはイタリア語で無伴奏の5声合唱を指す音楽用語。つまり5人の音を、さらにオーディエンスの声と想いを重ね合わせることをテーマに制作されたアルバムとツアーだけに、そのステージは結成9年を迎えようとしている彼らの団結と、5人でバンドをやる意義を強く感じさせるものとなった。

 

床に敷かれた赤い絨毯、頭上にはシャンデリア、舞台をドレープ幕が縁取り、後方の紗幕が開くと十字架が嵌められた窓に映像が蠢く——。『MADRIGAL de MARIA』の重厚かつ荘厳な世界観を体現したかのようなステージで、冒頭よりアルバム収録曲が次々に披露されていったが、そのライブは決して観る者を上から圧倒し、突き放すだけのものではなかった。幕開けの「Demons cradle」こそ真緒がファルセットからクリーン、デスヴォイスと巧みに歌声を使い分け、難解な楽曲世界に惹き込んだが、アルバム随一の美旋律が際立つキラーチューン「Jealousy」に続くと一転、フロント陣が前に迫り出してフロアを煽動。以降もへヴィネスとメロディというSadieの二大武器を交互に繰り出して、ジェットコースターのように心地よく、スリリングにオーディエンスを翻弄する。共に声をあげて激しく、一斉に跳ねてキャッチーに、地底を這いずるようにドロリと、天を翔けるようにスピーディーに。色や形を変えてテンポよく放たれる音の銃弾は、Sadieの一筋縄ではいかない多様性の賜物だ。

 

中盤ではデジタリックなビートにレーザービームが飛び交う「viper」、薔薇色の照明を浴びて亜季のスラップベースと真緒が妖しくうねる「官能とParadox」、景の激烈なドラムフィルが炸裂する「斑−まだら−」等、アクの強いアルバム曲を大盤振る舞い。剣と美月によるアコースティックギターの協奏が哀しみを引き立てる「嘘にまみれた真実の底」から、ピアノの音色で「優シク殺シテ」に雪崩れ込むと、スクリーンに映った神々しいステンドグラスの前で、純と濁が入り混じった演奏と感情がディープな空間を広げてゆく。そこで顕著だったのが、エモーショナルに展開する真緒のヴォーカルに呼応する楽器隊の見事な変幻ぶりであった。5つの音が重なり合い、噛み合って、それぞれの情景を描き上げる様は、まさしくマドリガル。だからこそ音数多く、複雑で込み入った楽曲揃いにもかかわらず、しっくりと耳に馴染んで自然に身体を揺らすのだ。これぞバンドとしての大きな進化である。

 

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その躍動を客席との一体感にまで押し上げて、強力な熱を生んだのがアッパーな後半ブロック。お馴染みの代表曲「迷彩」、汗が見えそうなほどパッショネイトな歌と演奏に拳があがる「face to face」、軍隊的なビートでヘッドバンギングの嵐を呼ぶ「Decadance」等、ラウドに攻め切りながらも身が引き締まるような重々しさや崇高感を感じさせるのは、『MADRIGAL de MARIA』の大きな特色だろう。最後の「the REQUIEM」を“もう生きることに疲れてしまった”と歌い終え、大歓声を浴びた真緒がマイクをゴトリと落として去る斬新な幕切れがキマるのも、非日常の空間を舞台に人間の感情を何よりリアルに描くことのできるSadieだからこそ。メンバーが去っても鳴りやまない怒涛のような歓声が、彼らが残した衝撃の大きさを物語っていた。

 

そんなストイック極まる本編とは対照的に、アンコールではテレビ朝日系「Break Out」でクイズ対決した芸人バンドbustlipが乱入して、なんと「METEOR」をコラボするシーンも。そこで芸人顔負けの達者なトークを繰り出す真緒の姿は、歌以外では一言も発しなかった先程までとは同一人物と信じられないほどだが、これもまたSadieの幅を広げている要素の一つであることに間違いない。さらに「Rock’n roll stinky people」の曲中では、2日前に誕生日を迎えたばかりの美月をサプライズで祝福。「こんなふうにライブで祝ってもらったの初めて」と感激した面持ちの彼は剣や景のもとへと駆け寄ったり、珍しくもデスヴォイスで煽る亜季を真緒がセンターに連れ出したりと、続く「陽炎」ではいつになく仲睦まじいメンバーの姿も見られた。結果、とんでもない勢いでフロアは沸騰し、そのテンションのまま「もっと狂ってくれ!」と代表曲「Grieving the dead soul」へ。“聞こえてるか 生きてるか”と叫ぶ、この曲のメッセージこそSadieを支える最たる核である。5人で共に音を出し、共に生きる——。それが“バンド”であり、そこに対するオーディエンスの共鳴こそがバンドの存在意義なのだと、ダブルアンコールの「a holy terrors」で真緒の歌声に客席からの合唱が重なった瞬間、ハッキリと確信することができた。

 

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「このバンドを始める前、僕には居場所も無く、ずっと孤独感がありました。その哀しみや辛さを背負ったまま、メンバーやファン、みんなの居場所を音楽で作りたい。みんなの人生や未来に、少しでも僕たちを存在させてください」

 

真緒の言葉に大きな拍手が沸き、剣も「最高のファイナルでした。ツアーはファイナルですけど、今日がまた新たなスタートなんで」と告げる。全国20ヶ所を巡るワンマンツアーで培われてきたメンバー間の絆は、この日、彼らに心を寄せる全てのオーディエンスへと広がった。新たなステージの始まりとして、3月21日に結成9周年ライブをなんばHatchで行うことも発表。「生きていると辛いことのほうが多いけれど、少しでも楽しみや居場所が作れたらいいなと思います」と美月も語った通り、痛みを知り、悲しみ=Sadをその名に掲げる彼らだからこそ表現できる世界が必ずある。そこで奏でられる五重奏に耳を傾けたとき、誰もが生きる力を得られるはずだろう。

 

◆セットリスト◆

01. Demons cladle

02. Jelousy

03. Rosario-ロザリオ-

04. 心眼

05. 雪月花

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06. viper

07. Ice Romancer

08. 官能とParadox

09. 斑-まだら-

10. 嘘にまみれた真実の底

11. 優シク殺シテ..

SE

12. 迷彩

13. STARRING

14. face to face

15. Decadance

16. the REQUIEM

 

ENCORE

01. METEOR

02. クライモア

03. Rock’n roll stinky people

04. 陽炎

05. Grieving the dead soul

06. a holy terrors

 

 

(文・清水素子/写真・青木武史)