ライブレポート

2012.12.29
Sadie@Zepp DiverCity Tokyo
「THE BLACK DIAMONDS」

 

 

10月にリリースした3rdフル・アルバム『THE BLACK DIAMONDS』を引っ提げ、全国20箇所で敢行されたSadieのワンマン・ツアー<THE BLACK DIAMONDS>。そして年の瀬押し迫る12月29日にZepp DiverCity Tokyoで行われたファイナル公演は、オーディエンスへの感謝にあふれたダイヤ級に輝かしい2時間となった。

 

ピアノの音色が冷たく響くSEをバックに、暗然たる景色が映像で流れるという幻想的なシーンでライブは開演。紗幕に映るマリア像の後ろから真緒の獣じみたスクリームで火蓋を切った「キミノミタイモノ」、すぐさま幕が上がってスピーディーに攻勢をかける「躯-mukuro-」とアルバム同様の幕開けをテンポよく畳み掛けるが、“涙”をテーマとした作品だけに場内を満たす空気は重く、冷たく、カオティックなもの。“すべてを出していこうか東京!”と真緒が煽って美月(G)がタフなシャウトを炸裂させる「心眼」に、しかし、妖しいグルーヴがクセになる「愛の罠」に到るころには、へヴィなサウンドの中に重苦しさではなく、心地よさが覗き出す。それはSadieの楽曲が本質的にキャッチーな核を備えているからこその仕業。続く「Ice Romancer」の切なくもメロディックな旋律がその事実を確認させて、Sadieが単にへヴィネスと激しさを売りにしたバンドではないことを証明する。

 

また、Sadie史上最大キャパシティの会場ということで、視覚を刺激する大掛かりな演出を堪能できたのも特筆すべきところ。「愛しさは孤独の支配者」では再び下りた紗幕に雪が降り華が咲いて、感情を抑えたボーカルと共に凍える心を映し出し、一転「obstacle progress」ではメンバーの真っ赤なシルエットが紗幕上に蠢めいて目を奪う。こういったディープな世界観をドラマティックに仕立て上げてしまうのも、Sadieの得意技の一つ。“聞こえるか?この声が!”と「哀しみの賛歌」を涙混じりで歌い上げた真緒の嗚咽と荒い息が響けばフロア中は静まり返り、心の奥底を綴るような囁きから“イケるか東京!?”と叫びがあがれば瞬時に大歓声が沸いて「Struggle Against Betrayal」のヘッドバンギングへと場面を一変させる。その“静”と“動”を巧みに操る見事なコントロール力により、終盤はダンサブルな「プレイガール」、手拍子と拳によるオーディエンス参加型の「METEOR」、“お前たちの居場所はココだ! 俺たちの居場所はココだ!”の煽りに胸が熱くなる「サイコカルチャー」と、客席との一体感は急速に上昇。そんな熱っぽさをアグレッシヴな演奏と流麗なメロディに封じ込めたアルバム・リード曲「Rain fall」で本編を締めくくる構成が、またニクい。

 

 

さらに、人気のシングル曲を立て続けに披露したアンコールも、ファンにとっては“これが聴きたかった!”のオンパレードで、嬉しいプレゼントにフロアは沸騰。「陽炎」と「迷彩」では弦楽器隊もステージ上を大きく動き、時にはセンターのお立ち台に上って、オーディエンスとの音を通じたコミュニケーションを懸命に図る。
“最後、この曲で一つになってください”
そうして贈られた「a holy terrors」は、生きる中で避けられない苦しみ、悲しみを乗り越える勇気を与えるSadie屈指のメッセージ・ソング。大サビではオーディエンスの合唱を浴び、真緒はいつになく神妙な面持ちで語った。
“ここでツアーが終わってしまうのが、寂しい気持ちでいっぱいです。いろんな場所で、俺たちの音楽を必要としてくれている人がいる。そのことが実感できて、ホントに今までで一番楽しかったツアーでした。……もう、何も言うことは無いです。本当にありがとうございました!”
そう言ってマイクを置き、深々と礼をした彼の頭はしばらくあがることがなかった。

 

本編ではMCを挟まないスタイルを貫いてきたぶん、アンコールでは饒舌に語ることの多い彼が、こんなにも口数少ないのは初めてのこと。聞けば、今回のツアーを通じてバンドを続けられることの有難さ、それを支える大勢の人々の存在を痛感したがため、この日は余計な言葉を挟まずに歌だけで勝負したかったのだという。曲に入り込んで、時に歌いながら涙してしまったのも、そのためだと。

 

また、アンコールでは結成8周年記念ライブがなんばHatchで3月16日に、ニュー・シングルのリリースが3月27日に為されることも、彼の口から発表された。求められ、それに応えることの喜び、名前も知らない誰かの居場所を作ることの幸せを知ったアーティストほど強いものはない。『THE BLACK DIAMONDS』という黒い涙の先に開けた温かな涙が、Sadieとリスナーを2013年、より強く結び付けてくれるはずだ。

 

◆セットリスト◆
01. キミノミタイモノ
02. 躯-mukuro-
03. Rosario-ロザリオ-
04. 心眼
05. 愛の罠
06. IceRomancer
07. tear drop
08. 愛しさは孤独の支配者
09. obstacle progress
10. ドレス
11. Payment of vomitter
12. 哀しみの讃歌
13. Struggle Against Betrayal
14. プレイガール
15. Flavor of blood
16. METEOR
17. サイコカルチャー
18. Rain fall

EN.1
01. Grieving the dead soul
02. クライモア
03. 陽炎
04. 迷彩
EN.2
01. a holy terrors

 

 

(文・清水素子/ 写真・青木武史)