ライブレポート

2012.8.4
ナイトメアvsバロック@日比谷野外大音楽堂
「NATURAL BORN ERRORS」

 

 

まさに“異色”の顔ぶれで実現した対バンツアー最終日。バロックは初、ナイトメアは実に7年ぶりとなるという日比谷野外大音楽堂はこの日、真夏のうだるような暑さと客席から放たれる熱気で、上昇気流が巻き起こりそうな熱が渦巻いていた。
時折パラついていた雨もすっかりやみ、開演時間17:30、日暮れ前の夏空いっぱいに、この日の1バンド目の登場を告げる爆音が鳴り響いた。

 

どちらのバンドが先に登場するかは、メンバーが姿を現すその瞬間までわからないというのも今回のツアーの面白さ。待ち受けるオーディエンスの前に、最初に姿を現したのはバロック。ベースの万作は生憎の不在となったが、怜(Vo)、圭(G)、晃(G)の3人が姿を現すと、会場は大歓声で迎え入れた。

 

幕開けは彼らの4thシングル「ザザ降り雨」。さえぎる物のない開放的な空間で奏でられる激しいシャッフルビート。豊かな声量で高音と低音を自由に行き来する怜の歌声と、どこかに切なさを秘めたメロディで、バロックはあっという間に会場を支配してしまった。

 

「改めましてバロックです。最後まで楽しみましょうね」蝉時雨の中、怜がこう挨拶をすると、トレードマークともいえるシルクハット着用の晃からは「暑い!」という一言が。しかしこの暑さはまだまだ序の口。続く「モノドラマ」ではイントロから大ジャンプが巻き起こり、熱気はさらに上昇! 軽快なギターフレーズにのせ、実に楽しそうにプレイするメンバーの姿に、客席にも自然と笑顔が満ちる。圭、晃のギターソロの際には、怜がそれぞれのメンバーを指し、この日不在の万作のソロパートでは、彼の定位置である下手後方に置かれたベースを指さして、“4人のバロック”を印象づけた。

 

「声出して! じゃあもう行っちゃいましょう」そう告げられて始まった「あなくろフィルム」では、怜も客席もおなじみの鍋とお玉を打ち鳴らし、体温までも上昇しそうなアクトを展開。最新シングル「メロウホロウ」では、怜の魂を揺さぶるような力強い歌に会場は拳で応え、眩い光の中、会場が一つになる様を目の当たりにしたのだった。

 

 

「まだまだ食い足りねーな! 頭振って!」

そんなアジテートで空気は一変。激しいナンバー「独楽」、続く「我伐道」では満場のジャンプで野音を揺らし、その勢いをさらに加速させる「唄」へ。くるくるとコミカルにステージを歩き回った怜がハートフルな「teeny-tiny star」を歌い上げると、「最高です! 今日でファイナルになっちゃったんですけど、もっと長いことやりたいな。全部が全部宝物です」そう笑顔で告げ、「野音でこの曲をやるとは…最後に聴いてください『キャラメルドロップス』」。
心地よい風吹く夏の夕べの「キャラメルドロップス」は格別で、視界には夕日のような赤いライトが照らすステージ、木々の緑、暮れ始めた空の藍と朱が、そして聴覚にはアンビエントなギターと稀有な美しさを持つ怜の歌声が満ち、この上なく壮大な景色を描き出したのだった。
この日、怜がステージ後方に立てかけてあった万作のベースを持ち、客席に一礼をしてステージを去った後も、いつまでもその余韻が会場を満たしていた。

 

メンバーの不在という事態にも関わらず、それを大きくカバーする、記憶に残る力強く美しいライブに魅了された。

 

 

バロックが魅せた熱く壮大なアクトの余韻をたっぷりと残したステージ。その後方に、まるで要塞のようなドラムセットが設えられ、次に登場するナイトメアのステージへと徐々にその姿を変えていく。
藍をわずかに深めた空の下、オープニングSEと共にメンバーが登場。その切ない旋律を振り切るように、最初に奏でられたのは「VERMILION.」。交錯する眩い閃光の中でプレイされる疾走感溢れる楽曲で、一気に客席を彼らのフィールドへと引きこんでいく。

「全力でかかってこい!」YOMIの叫びで幕を開けた「ジャイアニズム死」。常よりもアップテンポなリズムに同調するかのように、会場を吹き抜ける風も強さを増していく。メンバーはステージを縦横無尽に動き回ったかと思えば、ステージ中央で恒例の全員ヘドバンを繰り出し、その圧倒的な力強さと一体感を見せつける。
深い藍色の空にコウモリが飛び交う中、「the WORLD」「Can you do it?」、そして狂おしい詞世界を表現しきったYOMIのヴォーカルが印象的な「mimic」…全く手を緩めることのない怒涛のアクトはまさに圧巻だ。

 

「最初どうなるか不安もあったけど、(このツアーで)すごくバロックに気づかされたことがあって。2マン、やって良かったなと思います」そんなYOMIの言葉に拍手が沸き起こる。その言葉を裏付けるように、この日のライブはいつも以上に力強く、客席を釘づけにする要素に満ちていた。

 

「踊ろうぜ―!」という絶叫で幕をあけた「惰性ブギ―」の力強いビートで客席はあっという間に巨大なダンスフロアへと変身! モッシュでもみくちゃになっている客席は観ている方が羨ましくなるほどの笑顔に溢れていて、まるでお祭りだ。曲中、YOMIがバロックの鍋とお玉を持ち打ち鳴らすという、このツアーならではのお楽しみに大歓声が。続く「HATE」で咲人が優美な仕草と手拍子で客席を煽る姿に悲鳴のような歓声が飛び交い、「自傷(少年テロリスト)」ではYOMIの脚の間から柩のギターのネックが顔を出す笑撃のパフォーマンスには期待通りの笑いが起こる。全員が歌い、踊り、叫んだこの日、「極東乱心天国」で熱狂はクライマックスを迎えたのだった。

 

 

「俺達は7年前から変わってません。もう一度この場所でこの歌を」その言葉と共にツアーファイナルのラストを飾ったのは「Star[K]night」。客席の大合唱は、YOMIのアカペラと相俟って美しく夜空高くへと昇っていった。

 

真夏の空の下、2バンドが作り上げた至高の時間。二つのバンドの個性が色濃く出た渾身のステージは、ぜひもう一度と請わずにはいられない魅力に満ちていた。

 

◆セットリスト◆

バロック
01.ザザ降り雨
02.モノドラマ
03.あなくろフィルム
04.メロウホロウ
05.独楽
06.我伐道
07.唄
08.teeny-tiny star
09.キャラメルドロップス

 

ナイトメア
01.VERMILION.
02.BOYS BE SUSPICIOUS
03.ジャイアニズム死
04.the WORLD
05.Can you do it?
06.mimic
07.惰性ブギ―
08.HATE
09.自傷(少年テロリスト)
10.極東乱心天国
11.Star[K]night

 

(文・後藤るつ子)