◆sukekiyoはアレンジするときには全員がアレンジャーという意識で取り組む(YUCHI)
――4曲目には「elisabeth addict」のアコースティックバージョンが収録されています。
京:これはライブでよくやっていたんですよ。元々sukekiyoは全曲こういう感じでやったら面白いんじゃないかと思っていたので、今回はとりあえず「elisabeth addict」を入れようと。
YUCHI:アコースティックだと必然的に音数も少なくなるんですけど、今回、「anima」や「12時20分金輪際」も意識的に音数を減らしているんです。音を詰めて全体を太くするというより、一人が演奏するもの一つ一つを太くすることで、全体を太く見せる手法に変わりました。これは、『VITIUM』でもそういう作り方ができたんじゃないかなという前回の反省点でもあるんです。細かいものを集合体にして一つを太くすると、太くはなるんですけど、メッセージが多過ぎて、一つ一つの意図が見えづらくなるんですよね。シンプルさにも欠けてくるので、今回はもっと研ぎ澄ませていこうと思って作りました。
――削ぎ落としていく作業は、より難しい感じがします。
YUCHI:そうですね。詰め込むほうが意外と楽だったりするので、勇気がいるアレンジです。
――これはベースをプレイする上で心がけたことですか?
YUCHI:sukekiyoはアレンジするときには全員がアレンジャーという意識で取り組むので、ベースに限らずです。曲全体を通して、どの音を抜こうとか、何が無駄なのかをよりはっきりさせました。
――他の人の音にも意見しながら作り上げていくんですね。
YUCHI:そうです。全員大人ですから、そこで喧嘩になったりもしませんし(笑)。すごくストイックにやっていましたね。
――5曲目には「leather field Collaboration with TUSK (新宿心音会, THE SLUT BANKS)」ということで、TUSKさんとのコラボレートが収録されています。TUSKさんとは元々お知り合いだったんですか?
京:昔1度会ったことがあるんです。個人的にZI:KILLのときからすごく好きだったんですよ。TUSKさんは七色の声を持つヴォーカリストと言われていたんですよね。いろんな声を使うヴォーカリストって、あの頃はTUSKさんぐらいしかいなくて。すごく好きだったので、一緒に仕事したいなと思ってお願いしました。
YUCHI:曲はTUSKさんが選ばれたんですよね。
京:うん。僕はキーをフルに使うから、人によっては得意不得意が出てくると思って。TUSKさんのいいところを出したかったので、全部の曲を渡して好きな曲を選んでいただきました。
――TUSKさんの魅力がフルに出ている、これぞというセレクトです。
京:録りもほとんど一発でしたね。パッと歌って、「どう?」って言われて。「TUSKさんがいいならいいです!」と(笑)。
――さすがです。個人的に三上博史さんとコラボレートした「focus」(『VITIUM』DISC2収録)がとても印象に残っていたのですが、今回はまた違う魅力がありますね。
京:ちょっと違う感じで面白いですよね。
――YUCHIさんはコラボしたい方はいますか?
YUCHI:もうたくさんの方としていますからね(笑)。『IMMORTALIS』(2014年4月リリースの1stミニアルバム)のときなんて、すごい数の方と関われましたし。でも京さんの人選がそれを超えてくるんですよね(笑)。
◆ファンの子も一緒に空間を作っている感がいい(京)
――4月15日になかのZEROで行なわれたsukekiyo 二〇一六年公演『桜肌、夢締め跡と優越の詩』のSEで、ZI:KILLの「I LOVE YOU」がかかっていましたね。
京:TUSKさんの声はやっぱりいいですよね。
――先日のなかのZEROは、あまりこのジャンルのライブで使われない会場ですが、会場選びにこだわりがあるんでしょうか。
京:したいことができる会場ならどこでもいいんです。スモークとか、物が吊るせるとか、キャパとか、そういうことが満たせればいい。僕らのライブは、会場とかファンの方にあんまり左右されないんですよね。バンドって、お客さんのテンションに左右されたりするんですけど、僕らの場合はそういうことはあまりなくて。
――sukekiyoのライブは実に独特な空間ですよね。ドレスコードがあって、イスがあれば着席で、私語厳禁という。
京:今までも、黒服限定とか、喋ったらダメというライブをやったバンドはありましたけど、それを全部やっているバンドはなかったですよね。最近は、ライブハウスでは動いてもいいよとは言っているんですよ。ずっと棒立ちでいたら足が痛くなってくると思うから。でも声は出しちゃダメねと。曲中暴れても、曲と曲の間はシーンとしてる。ちょっと変な感じで面白いんです。
YUCHI:それがまたいいんですよね。
――ライブの画というのは、思い描いていた理想に近いものになっていますか。
京:ほぼ理想通りになっていますね。みんな黒い服で、座って何も言わなくて、終わったら拍手だけ、というのは理想通りです。ファンの子も一緒に空間を作っている感が出ていいんですよ。
YUCHI:こういうライブに来てくれるというところが面白いですよね。もちろん曲とか世界観を観たくて来てくれていると思うんですけど、今の時代は何となくお客様にへりくだる世の中なのに、あえてやってはいけないという項目を増やしている。頑固な飲み屋じゃないですけど、いわゆるサービスとは逆行している感じがするのに。
京:でも、そういう店って何か行きたくなるよね。「あのおっさん元気かな」って(笑)。
YUCHI:そうですね(笑)。あえてそうやって縛られたい部分も人間あるのかなと思います。
京:みんな、いろんなバンドのライブにも行ってるじゃないですか。他のバンドは自由だし、声も出せるし、叫んだり暴れたりもできるから、そういうことをしたいのであれば、そっちでええやんと思うんです。いろんなバンドがいる中で1個ぐらいこんな変なのがいてもいいでしょうと思って。
――sukekiyoだからできることかもしれませんね。
YUCHI:ここまでお客さんに要求するバンドってなかなかないですよね。
――会場に来る大半の方は喪服を着て、さらに洋装から和装の方までいるのは圧巻です。今後のsukekiyoのライブがさらに楽しみになったところで、最後に今後の展望を聞かせてください。
京:7月17日に調布市グリーンホールでsukekiyo 二〇一六年公演「裸体と遊具、泥芝居に讃歌の詩」-漆黒の儀-をやります。去年の11月と12月に開催した「宙吊り娘と掃き溜めの詩」では2部作の前編、4月になかのZEROで開催した「桜肌、夢締め跡と優越の詩」では後編をやったんですけど、7月17日には3時間以上かけて、この前編と後編を1日でやろうと思っています。実はこの2部作で「烏有の空」以外、同じ曲が1曲も入っていないんですけど、この日来ると全曲が聴けますよ。ただ、リハが鬼のように大変なんですけどね(笑)。
YUCHI:それにしても、どれだけの方が、前編と後編で曲が重複していないことに気付いたんでしょうね。
京:どうかな。7月に来て、そこも聴いてもらえたらと思います。
YUCHI:最近、sukekiyoの世界観が色々浸透してきたなと感じるし、お客さんもすごく楽しんでくれているのを感じるので、ライブをやるのがどんどん楽しみになっているんです。ようやくたくさんの方にわかってもらえるようになったという手応えがありますし、自分たちがやることの意図を読んでもらえるのかなと思うので、これからが楽しみです。
(文・後藤るつ子)
sukekiyo
<プロフィール>
2013年10月、DIR EN GREYのヴォーカルの京のソロプロジェクトとして結成されたバンド。メンバーは、京(Voice)、匠(G/Piano)、UTA(G)、YUCHI(B)、未架(Dr)の5人。2014年1月1日(水)sukekiyoの初音源「aftermath」のMVを全世界111カ国のiTunes Storeで配信。2014年4月に1stアルバム『IMMORTALIS』をリリース。ヨーロッパツアーなど数々のライブを経て、2015年2月ミニアルバム『VITIUM』をリリース。2015年11月・12月に二部作のライブの前編となる「宙吊り娘と掃き溜めの詩」を、2016年4月には二部作の後編「桜肌、夢締め跡と優越の詩」を実施。7月17日には調布市グリーンホールにて、二部作を全曲披露する完全版公演、sukekiyo 二〇一六年公演「裸体と遊具、泥芝居に讃歌の詩」-漆黒の儀-を行うことが決定している。
■オフィシャルサイト
http://sukekiyo-official.jp
【リリース情報】
『ANIMA』
2016年4月発売
(Manufacured by sun-krad Co., Ltd. Distributed by sun-krad Co., Ltd.)
sukekiyoの初となるシングル。DISC1には書き下ろし2曲を含む5曲、DISC2にはMVとライブ映像を収録。
京公式通販限定盤
(CD+Blu-ray+Special Booklet)
PZSK-016~017
¥6,019+税
※京 公式通販サイト「Penyunne Zemeckis」にて発売中。
※数量限定のため予定数が無くなり次第販売を終了。
※iTunesにて『ANIMA』より表題曲「anima (Edit Ver.)」を配信中。
【収録曲】
DISC 1 [CD]
01. anima
02. 12時20分金輪際
03. 304号室 舌と夜
04. elisabeth addict (Acoustic Ver.)
05. leather field Collaboration with TUSK (新宿心音会, THE SLUT BANKS)
DISC 2 [Blu-ray]
◆ Music Video
01. anima
02. 12時20分金輪際
◆ Live Footage
2015.12.2 東京国際フォーラム
01. foster mother
02. aftermath
03. hidden one
04. 斑人間
05. in all weathersDISC 1 [CD](※初回生産限定盤、通常盤共通)
【ライブ情報】
sukekiyo 二〇一六年公演「裸体と遊具、泥芝居に讃歌の詩」-漆黒の儀-
7月17日(日)東京都・調布市グリーンホール