満を持して、待望のオリジナルアルバムを2枚同時リリースしたSUGIZO。『FLOWER OF LIFE』『TREE OF LIFE』それぞれに込められた想いを語る!
一体幾つの引き出しを持っているのか、その手が生み出す多彩な音に驚き、耽溺してしまう。『FLOWER OF LIFE』『TREE OF LIFE』、SUGIZOの根源とも言うべき言葉を冠した2枚のアルバムに収められたのは、ジャンルを超えた音楽たち。その無限に広がる音世界の魅力を、SUGIZOにたっぷり語ってもらった。
――今回のアルバムタイトル『FLOWER OF LIFE』『TREE OF LIFE』について教えていただけますか。
SUGIZO:これは神聖幾何学の名前なんです。
――なぜこの名前に?
SUGIZO:近年、神聖幾何学にすごくはまっていて勉強しているんです。幾何学や、数秘術が好きなんですね。まず“FLOWER OF LIFE”というのは、宇宙の生命の設計図で、いわば生命の根源がプリントされているような存在なんです。
――今回のジャケット写真にプリントされているモチーフですね。
SUGIZO:そう。あらゆる地上の文明もしくはそれ以前から存在していて、ここに宇宙創成の生命の秘密が封じ込められているといわれています。宗教や文明など、人間が作り出したものを超えた存在で、自分の精神的な根源にとても重要な意味を持っている幾何学なんです。
――では、もう一方の“TREE OF LIFE”は?
SUGIZO:こちらは“FLOWER OF LIFE”に重なる幾何学で、有名なものでいうと、ユダヤ教の秘教のカバラ。ここに全宇宙の存在が記されています。どちらも僕の指針となる意味を持つ存在なので、今回タイトルを決めるのに、どうしようかと悩んだとき「自分の根源でいっちまえ!」と。
――なるほど。タイトルは最後に決めたということですが2枚にしようとは決めていたんですか?
SUGIZO:この春頃にその方向にシフトしました。当初、12枚出しているデジタルシングルからアルバム用に選出して1枚の作品を作ろうと思っていたんですけど、多くのファンの人や周りの声を聞いてみると、どの曲もCDでほしいという要望が多くて。12曲あるので1枚には収まりきれんな、ということで2枚にせざるを得なかったんです。
――ファンの方々にとって待望のCD作品ですね。ところで今回のアルバムを作るときどんなスタンスで作りましたか? 例えば、異なるショートムービーを一つに集めた作品なのか、それとも一冊の本の章のように曲が集まって一つの作品を構成しているのか?
SUGIZO:基本的に前者なんですが、結果的には後者かもしれないですね。アルバム作品に関しては20年来そうです。自分のソロに限らず、LUNA SEAでも。アルバム1枚で一つの組曲なんですよ。
――その組曲を構成する楽曲ですが、今回2枚のアルバムそれぞれに楽曲を振り分ける際、何を基準に分けたんですか?
SUGIZO:すごくシンプルな話で、『FLOWER OF LIFE』は純然たるSUGIZOのオリジナル作品、『TREE OF LIFE』は様々なアーティストとのコラボレーション作品が中心になっています。コラボレーションによって生まれた化学反応を収めたと言えばいいのかな。全曲ではないですが、コンセプトとしてはそういう選び方ですね。
――化学反応の元になった参加アーティストですが、今回もすばらしく豪華ですよね。こういうアーティストがSUGIZOさんの音楽に出会うとこんなに深くて広い音楽が出来るのかと。
SUGIZO:それは参加したアーティストが素晴らしいからですよ。僕は自分に一つ自信を持っているのが「審美眼」なんです。この人とこの人が一緒にやるとこんな風になって絶対すごいものができるってことがあらかじめわかる。人を見る才能に関しては自分を評価しています。
――様々なアーティストとの見事なコラボレーションが揃い踏みですが、特に元JAPANのMICK KARN参加作品に至っては、どちらのファンにもたまらないものになりましたよね。JAPANに心酔した身としては奇跡のような作品です。
SUGIZO:JAPAN好きでしたか! 僕ももう30年近くJAPANのファンです。ありがたいことにここ15~16年は(メンバーと)すごく仲良しだったので、今年MICKが亡くなったことは本当に大きな痛手でした。実は「MISSING LINK」と「SLEEP AWAY」は、10年前にMICKと一緒にレコーディングしている曲なんです。生前MICKが、昔録った曲を一緒に再レコーディングしようねって言っていたんですが叶わず…。でもここで諦めてはいけないと思って、10年前の音からMICKのトラックだけ抜いて、それに合わせて他の音をレコーディングしたのが「SLEEP AWAY」なんです。
――そんな秘話があったとは。
SUGIZO:そこにSTEVE(JANSEN)のドラムとプログラミングが加わったんですよ。STEVEとMICKの黄金のリズムセクションは、僕らからしたら超憧れだったじゃないですか。
――確かに! あの二人のリズムには強烈な魅力がありましたよね。
SUGIZO:あの二人は私生活も音楽もコンビネーションが最高なんですよ。STEVEはMICKが亡くなるときまでずっとMICKをサポートしていて。僕も何度もMICKのもとを訪れたんですが…残念です。
――でも今回、本当に貴重な音源が完成したんですね。
SUGIZO:そうですね。結果的に自分の半生を背負うものになってしまいました。様々な友達の死があって、3.11があって。生と死という、特別な、でも人間としてはものすごく根源的なテーマが重要な作品になってしまいましたね。
――そういう意味でも今回のアルバムタイトルはぴったりだったんじゃないですか。
SUGIZO:結果的にね。「見つからないから良いかこれで!」ってつけたんですけど。
――(笑)。でも亡くなったMICKへの餞になる作品になったのでは。
SUGIZO:うん。でもこれからもMICKとセッションしたいですけどね。実はMICKと録った曲やトラックでまだ使っていないものが色々あるんですよ。
――それは世に出る日が楽しみですね!
SUGIZO:世界屈指のベースプレイヤーであるMICKの存在を今後も伝え続けなきゃいけないと心から思います。
――私、「MISSING LINK」と「SLEEP AWAY」を聴いて、思わず久々にJAPANの音源を聴いてしまいました。やっぱり最高ですね。
SUGIZO:ですよね。僕ね、MICKが亡くなっても涙が全然出なかったんですよ。覚悟していたのか、苦しんでいたMICKが楽になったことでほっとしたのか…。でも、これは誰にも言っていなかったんですけど、夜一人で「SLEEP AWAY」のTDの細かいところを修正している時、MICKのフレーズが始まった途端、一気にMICKのイメージが広がって、涙がボロボロこぼれて止まらなくなった。MICKがそこにいる感じがして。そういう生命力があるトラックになったのかもしれないですね。
――確かに「SLEEP AWAY」には強烈に心の奥底を揺さぶられました。
SUGIZO:まるでMICKがそこにいるみたいにね。それをがっちりサポートしたのがSTEVEで、そこで僕がヴァイオリンを弾いているんですよ。それがすごく感慨深い。でも『FLOWER OF LIFE』って10曲中9曲アッパーなんですよね。10曲目で急に落ち着く、その安堵感もあるのかもしれないけど(笑)。
――なるほど(笑)。とはいえ楽曲のインパクトと、絶妙な音の重なりに感動してしまいました。
SUGIZO:僕はもう曲のイメージに引っ張られて作業しているだけで、自分で作っているというよりも音楽がそこにいるんですよね。僕はそれを出して磨いてあげているだけです。
――でもそこは磨き手の腕や愛情にかかっていますから。ところで、今回の2枚のアルバム、手がかかったのはどの曲でした?
SUGIZO:レコーディングが四苦八苦したのは「MISSING LINK」かな。「CONSCIENTIA」も長くて大変だったし…「ENOLA GAY」も大変だった!
――「CONSCIENTIA」は9分もある大曲ですよね。他の2曲はどのあたりに苦労しました?
SUGIZO:例えば「MISSING LINK」は、昔MICKと録ったものを再録したんですが、元の音源がアナログのテープで。音の純度が低くてそれを上げるのが大変でしたね。MICKのベースも他の素材もヒスノイズが多かったり、ピッチが曖昧だったりで、そのバックトラックを聴きながらヴァイオリンを弾くと全然音程が取れなくてね(笑)。「どこに正しいピッチがあるんだ!」ってすごく困りました。
――もう1曲の「ENOLA GAY」にはORIGAが参加していますね。
SUGIZO:これはORIGAがすごく重要な曲なんです。以前はレコーディングは日本でやっていたんですけど、今年彼女は日本からカナダに移住したので、向こうで録ってもらって。この曲のヴォーカルラインは、3年前ORIGAが録ったデモがすごく良かったから、ライヴではそのデモを基準にインプロ(※即興)だったんですけど、今回、「そのデモのメロディを録って!」ってORIGAにメールしたんですが、ORIGAがそのメールを見てなくて、全然違うのを録ってきちゃって(笑)。
――(笑)!
SUGIZO:「ORIGA全然違うじゃん!」って連絡したら「そのメール見てなかった!」って(笑)。1番~3番まで歌があるんだけど、3番の重要なポイントが全然違って、やむなく1番、2番はカナダでORIGAが録ったテイク、3番は昔ORIGAがお家で録ったデモを使ったんです。
――かなりいろんな音が混在しているんですね。
SUGIZO:しかも、8月に(シングルが)配信された後、ORIGAが日本に来たタイミングで3番だけもう一回歌ってもらってレコーディングして。だからカナダで録ったテイクと、8月に日本で録ったテイクと、3年前にORIGAがお家で録ったデモのテイクと、それがごっちゃごちゃに混在しているのが「ENOLA GAY」のヴォーカルトラックなんです(笑)。コミュニケーションで苦労した楽曲でしたね。
――アルバム収録されたものも混在したまま?
SUGIZO:配信したシングルと今回のアルバムではミックスも変えてるし、大分進化しています。