待望のニューアルバム『SCUMS』を世に放ったNIGHTMARE。
彼らの更なる進化を鮮やかに描き出した、最新作をフィーチャー!
前アルバム『NIGHTMARE』から1年2ヶ月。NIGHTMAREが次なる作品をリリースした。結成13年目、8枚目となるアルバムでなお、音楽への飽くなき探求心を持ち、進化を続ける彼ら。今回、1年という長い時間をかけ、大切に創り上げた珠玉の楽曲たちに、そのまま訳せば“クズ”を意味する名前を付けた真意とは…。ヴォーカルのYOMI、ギターの咲人のスペシャルインタビューをお届け。
◆最近、制作作業がすごく楽しくて。やっと音楽に目覚めた感じ(咲人)
――今回はYOMIさんと咲人さんというVifでは初の組み合わせですね。YOMIさんはシングル『Deux ex machina』、咲人さんはアルバム『NIGHTMARE』以来の登場ということで。
YOMI:前回の『Deux ex machina』の時は、アルバムの制作の後半でしたよね。
――NIGHTMAREはいつもレコーディングかツアーをしているイメージがあるんですが。
YOMI:そうなんですよね。バンドマンって中高生の時思っていたより、意外と忙しいんだなーと思いました。リリースとかライブは表に出る活動だけど、レコーディングとか撮影とか、それ以外の影の部分が見えてなかったから。
――今回のアルバムはどのくらいの期間をかけて制作したんですか?
咲人:去年は1年中レコーディングしてましたね。シングル用、アルバム用で分けずに、とりあえず曲出しをしてどんどん録っていこうというスタイルだったんです。制作ばっかりっていうのも楽しかったですよ。実験室に籠っている感じで。
――咲人さん、好きそうですよね。
咲人:よく言われるんですけど、今まで実はそんなに好きじゃなくて(笑)。自家中毒みたいになっちゃうというか、消化不良を起こしちゃうというか。でも、今回はそれが楽しくて、精神衛生上は良かったです。
――YOMIさんは籠っているのが苦手そうなイメージがあるんですが。
YOMI:NIGHTMAREとしての籠りは大っ嫌いです(笑)。外に出ていた方が楽しいし、籠っている時期の方が自分の弱い部分と戦っている感じがあるから。昔よりは楽しめているのかもしれないけど、まだ苦手ですね。
――なるほど。ところで、今回のアルバムをなぜ『SCUMS』にしたんですか?
咲人:候補は結構あったんですけど、出すぎて最終的に決まらなくなっちゃって。自分的には前回のアルバムくらいから“SCUM”って言葉が引っかかっていたんですよ。いつか使いたいというよりは、呼ばれる部分があって。意味合い的にも結構エッジが効いているので、このタイミングで使いました。
――意味としては“クズ”ですから、決してポジティブな言葉ではないですよね。
咲人:そうですね。でも別に精神的に参っていて付けたわけじゃないんですよ(笑)。イメージとしては陶芸家がすごく丁寧に作った作品をガシャンと壊すような…自虐ではなくて、そういう振り切っちゃう感じが気持ち良かったし、おもしろいと思ったんですよね。
YOMI:自分たちの作品を“クズ”って言い方はなかなかしないですからね(笑)。これはROCKなんじゃなくてパンクなんじゃないかと思う時もあるんですよ。
咲人:確かにそっちの方がしっくりくる。「ROCKだぜ!」っていうより精神的にパンクというかアナーキズムというか。
――このパンクなタイトルは、曲が出揃ってから付けたんですか?
咲人:いや、1曲目(「My name is “SCUM”」)ができたくらいですね。この曲の仮タイトルが「SCUM」だったんです。その頃からアルバムのトータルイメージとして俺の中にあった言葉を使いました。そのイメージに作品がだんだん寄って行った感じです。
――冒頭で今回は「とりあえず曲出しをしてどんどん録って」と言っていましたが、曲出しは何回くらいしたんですか?
咲人:シングルの『Deux ex machina』とか『mimic』とかも入れると3~4回やってるんじゃないかな。最終的に1曲だけ歌を録ってない曲がありますけど、ほぼ全部の曲を使いましたね。
――ところで、シングル『Deux ex machina』に収録された咲人さん作曲の「UGLY DUCK’S WILL」は仮タイトルがなかなかすごかったですが、今回はどうでした?
咲人:前回、そんなにひどくなかったよね?
――え、「アジャコング」ですよ…?
咲人:あー(笑)。仮タイトルと言えども、メンバーに聞いてもらう時にインパクトを残したかったんですよね。そういえば、最近RUKAさんの曲が仮タイトルが普通だよね。
YOMI:普通だね。何か気ぃ使ってんのかね(笑)。ちなみに咲人の「雨と夜に堕ちて」の仮タイトルは「雨男」です。
――名残がありますね。
咲人:俺、この曲で家の外で実際に雨の音を録りましたからね。いわゆるフィールドレコーディングです。多分、夏前の梅雨の時期で、ものすごい土砂降りだったんですよ。で、外から帰ってきて「この音録っとこう」と思って。
YOMI:ちゃんと車の音とか入ってるよね。
咲人:息吸ってる音もね。エンディングが終わって、クロスフェードで雨の音が入ってくるんですけど、そのあたりがわかりやすいかも。「すぅ」って(笑)。
――フィールドレコーディングは、今までの楽曲でもやりました?
咲人:いや、素材集とか音源集から使ったことはありましたけど、実際録ったのは初めてですね。
――初フィールドレコーディング、じっくり聴かせていただきます。ところで、前回、咲人さんが「曲作りに関しては気持ち的に年々楽になっている」と言っていましたが、今回はいかがでした?
咲人:楽というか、最近制作作業がすごく楽しくて。やっと音楽に目覚めた感じがありますね。まだ知らないことってたくさんあるじゃないですか。今までは知っている人に任せることが多かったんですけど、自分が知っているに越したことはないなと。最近いろいろ勉強してますね。
――音楽にさらに一歩踏み込んだ感じですか。
咲人:そうですね。これを作っていた頃にエレクトロ・ダンス・ミュージックが好きで聴いていて、それを自分たちの楽曲に還元できないかな、とか。
――今回、耳馴染みが良い部分と、これまでのNIGHTMAREにはない色が混在しているなと思ったんですが、そのあたりの影響が色濃く出ていたからかもしれませんね。
咲人:俺が打ち込みとか電子音楽系のサウンドにハマっていたこともあって、いつもよりシンセとかの割合がかなり増えましたからね。あと、「404」は間奏でYOMIの声をサンプリングしてつなぎ合わせてたりするんですよ。声のコラージュというか。本チャンの歌の波形をちょっとずつ並べ替えたり音程を変えたり…っていう作業を家でずっとやっていました。そういう地味な編集作業が最近楽しくて(笑)。
YOMI:あれをライブ本番でどうしようかなとは悩みますけどね。
――確かに(笑)。どうするんですか?
咲人:ライブでは完全に再現しなくてもいいから、スキャットっぽくできたらかっこいいよねって話してはいたんです。新しい扉が開けちゃいますね。
――「404」は「Cherish」並みに中毒性がありますし、ぜひライブで聴きたいですね。
咲人:作るときも、多少ライブを意識はしてますね。テンポ感も、クラブミュージックはちょうど踊りやすいテンポの140前後が多いんですけど、それが普通の鼓動より、ちょっとドキドキしているときのリズムに近いんです。そこを意識したテンポ感にはしました。
――コーラスの音と言葉の感じが、また見事にハマっていますよね。
咲人:「warp! false! chase!」ですね。RUKAさんに歌詞を頼んだら「ストーカーの歌」って言っていて。“warp”“false”、はRUKAさんが持ってきたんですけど最後の言葉が決まらないって言っていたのでストーカーだし“chase”かなと。この“chase”が破裂音で、ものすごくハマりました。
◆ストレートにしか書けないけど、そこから何か感じてもらえたら(YOMI)
――今回のアルバムも、作曲者、作詞者がすごく良いバランスで散りばめられていますね。
咲人:流れ的にもすごく良いなと思いましたね。この組み合わせも今後変えていけば新しいものが見えてくるかなと思うし。
――今回YOMIさんは「DISSEMBLE」(Ni~ya作曲)、「BLACK OUT」(咲人作曲)で歌詞を書いていますが、ストレートな言葉なのに深いなと。
YOMI:俺はストレートにしか書けないけど、そこから何か感じてもらえると良いなとは思います。ストレートに書いている分、聴き手によっては嫌な気分になる人もいるかもしれないので、そのさじ加減を考えつつ書いてました。
――対照的な作風ですが、咲人さんの「Droid」も印象的でした。
YOMI:俺もあれ好き!
咲人:えっ、何で!?
YOMI:何でだろうなぁ。テーマが明確というか、一つの作品って感じがする。
――物語性がありますよね
咲人:自分の中で一番位置付けがわからない不思議な曲なんですよね。でもロボットってテーマがあったので、歌詞を書くのにロボット映画を観まくりました。
――私、聴いていて映画の『アイ,ロボット』が浮かびました。
YOMI:ロボット映画ね…『ロボコップ』とか? 『ターミネーター』とか(笑)?
――古い(笑)!
咲人:(笑)。ちなみに今回一番インスパイアされたのが、インド映画の『ロボット』っていう作品なんですよ。“インド版ターミネーター”とか言われて、一時期密かに話題になったんですけど。
YOMI:ちょっとコメディっぽいの?
咲人:うーん、ぶっとんでる。ロボットが大量生産されて合体して丸くなるのよ。
YOMI:ほうほう。
咲人:で、丸くなったところから銃が出てきてゴロゴロゴロゴロ転がりながら銃を撃ちまくったり。
YOMI:ほほー(笑)。
咲人:去年俺が見た映画の中でバカさ加減No.1です。俺、速攻でBlu-ray買いましたもん。曲がまたカッコいいんですよ。ダンスミュージックなんですけど、インスパイアされましたね。
――その映画、ものすごく気になります(笑)。歌詞の話に戻りますが、Ni~yaさんは作詞をしないんでしょうか?
YOMI:勧めてるんですけどね。
咲人:彼の言い分としては「歌うのはゾジーだから彼が書けばいい」ってことなんですけど、俺としては未知の可能性を秘めているのがNi~yaの歌詞とゾジーさんの曲なんですよね。まずとっかかりとして二人で一緒にやったらどう?
YOMI:その方がやりやすいかも。でもNi~ya、どんな歌詞書くのかなー。
――ものすごいラブソングを書くかもしれませんからね。
二人:あははは!
――ぜひ実現していただきたいです(笑)。ところで、前回のアルバム『NIGHTMARE』でYOMIさんに、歌に点数をつけていただいたんですが、今回は何点でしょうか。ちなみに前回は「Cherish」が80点中の60点でした。
二人:低いなー。
――今回一番高いのは?
YOMI:今回はアップテンポの曲よりも聴かせる曲の方が自分の中では点数が高くて、「雨と夜に堕ちて」も「I’m not」も80点中…
――また80点中(笑)!?
YOMI:うん(笑)。80点中70~73点くらい。アップテンポの曲は得意な方なので、聴かせる曲の方が満足度は高いです。
――なるほど。今回のアルバムを聴いて、YOMIさんの声の色気が増してる!と思ったんですが。
YOMI:まぁ大人になってますからね(笑)。柩の曲(「ERRORs」)を歌う時、「みんなが知ってるゾジーのスケベな部分じゃなくて、大人のエロスの部分を出して」って言われてたんですよ。この曲だけじゃなくて大人の色気を感じてくれたら良いなと意識して歌っていた部分があるんですけど。
――その変化をすごく感じさせるアルバムでした。
咲人:あとは、今回のアルバムの良さをライブでどこまで再現できるかですね。
――2月10日から、NIGHTMARE TOUR 2013「beautiful SCUMS」も始まりますね。そういえば、前回のインタビューでYOMIさん、柩さん、Ni~yaさんから「咲人さんはツアー先で個人行動をしているから何をやっているかわからない」という話が出たんです。その真相を教えていただけると。
咲人:RUKAさんが一番謎じゃん!
YOMI:確かにホテルから出ないからね。
――咲人さんはホテルからは出るんですか?
咲人:ライブが終わってご飯に行く時はみんなと一緒に行動しますよ。あと、俺、案外真面目ですからね。年末のツアーの時なんて、部屋で一人でずっとシンセの使い方の練習してましたもん。
YOMI:偉い! 俺はお酒を飲まないようにするくらいかなー。その次のライブに響いちゃうので。あとはまぁ支障がなければ(笑)。
咲人:(笑)。俺のは趣味の延長ですけどね。ツアー先では音楽的なことを勉強してるか、ひたすら飲んでるかです。0か10かみたいな。中途半端なことはしない(笑)。
――突き抜けてますね(笑)。
YOMI:まぁアルバムタイトルが『SCUMS』で、ツアータイトルが『beautiful SCUMS』ですからね。ライブでは“カッコいいクズ”、夜は“普通のクズ”ってことで(笑)。
(文・後藤るつ子)
NIGHTMARE
<プロフィール>
YOMI(Vo) 、柩(G)、咲人(G)、Ni~ya(B)、RUKA(Dr)によって2000年に結成。2003年にメジャー・デビュー。心地よく、耳に残るメロディはもちろん、美麗なルックスとは裏腹な爆笑トークで、多くのファンを魅了し続けている。2010年に結成10周年を迎え、記念アルバム『GIANIZM』をリリース。2011年、avexに移籍。2枚のシングルをリリースし、11月23日アルバム『NIGHTMARE』を発売。2012年、シングル『mimic』『Deux ex machina』をリリース。
■オフィシャルサイト
http://www.nightmare-web.com/
『SCUMS』(HPQ)
2013年1月30日発売
移籍後2枚目となるオリジナルアルバム。「mimic」「Deux ex machina」など人気のシングル曲他、新曲10曲(Type Cは12曲)を収録。
【収録曲】
01..My name is “SCUM”
02.ASSaulter
03.mimic
04.riddle
05.雨と夜に墜ちて
06.DISSEMBLE
07.ERRORs
08.終わる世界の始まりは奇なり
09.Droid
10.404
11.I’m not
12.Deus ex machina
13.BLACK OUT(※Type Cのみ収録)
14.BEHIND THE MASK(※Type Cのみ収録)
【DVD】
Type A:「ASSaulter」 Music Clip
Type B:「終わる世界の始まりは奇なり」Music Clip