ムック

ムック

ジャンルの垣根を越え、音楽の幅を広げ続けるムックの今。
待望のニューアルバム『シャングリラ』に見るバンドの15年間。

今年結成15周年を迎え、6月9日「ムックの日」には過去最大の単独公演、幕張メッセでのライヴを成功させたムック。その他にも今年はシングル2枚のリリース、15周年アニバーサリーツアー、様々なイベントライヴ出演と、息つく間もないほどの活動を展開してきた。そんな彼らが満を持してリリースするニューアルバム『シャングリラ』。驚くほど多彩なそのサウンドには、15年分のムックが余すことなく詰め込まれている。初登場となるYUKKE(B)&SATOち(Dr)に今作についてじっくりと話を聞いた。

◆まさかああなるとは(SATOち)

――お二人は初登場ということで、よろしくお願いします!

YUKKE・SATOち:よろしくお願いします!

――今年はリリースもライヴも盛りだくさんの怒涛の15周年YEARですが、ここまでの感想はいかがですか?

YUKKE:やっぱり15周年の年だったなっていうのがすごくあります。まずは幕張メッセでのライヴに向けてやってきた上半期でしたね。幕張が終わって、その余韻を引きずったツアーをやりながら、次のシングルの制作に向かっていって。ライヴは下半期はすごく多くできてるんだなっていう感じはしますね。改めて振り返ってみて、その時代時代のムックがいろいろな音楽をやってきたなぁと。それを踏まえて『シャングリラ』の制作にも入れたので、すごく広い目で自分たちを見れた年でした。

――スケジュール的には例年より詰まっていましたか?

YUKKE:リリースにしろライヴにしろ、今年は年末に集中させ過ぎちゃって。今すごいですね(笑)。分身したいくらい(笑)。ツアーリハもやりながら、制作もしながら、ライヴもたまにやって。

――SATOちさんは15周年YEARいかがですか?

SATOち:幕張をやったことが一番大きかったなと今思いますね。ドラムに関してもそうだし、メンタルの部分でも、どう曲作りをするかとか、昔を振り返るとか。幕張をやってなかったら大変だっただろうなと思います。幕張のときはすげーやったんで、そういう気持ちを忘れずに。次に繋がるなと思いましたね。

――今作『シャングリラ』はまさに“ジャンルの垣根を越えたバンド”という言葉が相応しい、すごくバラエティーに富んだ収録曲ですが、制作にあたって15周年を意識した部分はありますか?

YUKKE:結構その質問されるんですけど、誰もそんなに意識はしてなかったですね。結果こうなったというか。アルバムだからバラエティー豊富になってくると思うし、自然と昔のムックの匂いを持ったものや今の雰囲気のものがごちゃまぜになった感はありますね。たぶん15周年じゃなかったら言われなかったことだと思うんです(笑)。

――これまでのムックの様々な要素が詰め込まれた作品ですよね。

YUKKE:そうですね。1枚13曲で、すごく“ムック”がわかるなっていう感じはしますね。15年分がいろいろ入ったなと思います。

――最近のシングル曲の傾向からいくと1曲目がこういうヘヴィーなバンドサウンドの曲というのは意外だったんですが、この「Mr. Liar」が1曲目というのは、みなさん一致でスパッと決まったんですか?

YUKKE:そうですね、誰も反論もなく。俺もこれはすごく好きです。「こっからいくぞ!」っていう勢いがあるし、こういうバンドサウンドが特に強く出てる曲を頭に入れたかったのはあって。それプラス、『カルマ』(2010年10月リリース9thアルバム)とかでやってきたウワモノ系の要素の匂いもちょっと感じさせる、このアルバムの世界観を表す一番わかりやすい曲だなと思いますね。これ『カルマ』のときだったらもっとピコピコ入ってると思うんですけど、約2年間経て今このバランスになりました。この曲は本当に好きですね。自分でアルバムを聴いてても、始まり方がすごく好きで、1曲聴き終わってもう一回1曲目に戻って聴いちゃったりする(笑)。

――それわかります(笑)。

YUKKE:1曲目はやっぱりパンチが欲しかったですね。それは十分に出ているなと思いますね。

SATOち:これはもう掴みバッチリですよね。お客さんの心をグッと掴みますね。夢鳥(ムッカー※ムックのファンの呼称)は大好きだし、その他の人も…大好きなんじゃないかなと(笑)。

YUKKE:確かに、掴むなっていう感じはしますね。一回引きつけるというか、耳をこっちに向かせられる曲だなと。

SATOち:導入部分のシンセから、まさかああなるとは思わないじゃないですか。まさか…。

――確かに。ところで、「終着の鐘」は逹瑯さん・ミヤさん・YUKKEさんの共作ですが、原曲はどなたが?

YUKKE:原曲は6年くらい前に逹瑯が持ってきた曲だったんですけど、6年間たまにアレンジしたりしてできていった曲で。3人で集まって「曲作ろうぜ」って作ったわけではなくて、この部分は誰が作曲したメロディーっていう感じの作り方。俺はBメロを作ったんですけど、それ7年前に作ったメロなんですよ(笑)。
で、ミヤが「この曲にYUKKEのあのBメロ入れてみたらどうかな」って作業してみたらすごく良くて。そこからなかなかサビが付かなくてずっと眠ってた曲だったんですけど、ちょっと前にリーダー(ミヤ)がサビを足して、やっと終着した曲ですね(笑)。この曲に昔のムックを感じる人がたぶんすごく多くて。『極彩』(2006年12月リリース6thアルバム)くらいの時期に逹瑯が作っていた曲なので、昔のムックを匂わせてるのはコイツかなと思います。

◆俺はYUKKEらしいと思ったよ(SATOち)

――YUKKEさん作曲の「ピュアブラック」は、ウキウキするJAZZYな曲ですが、こういう楽曲を作りたいという気持ちは元々あったのでしょうか?

YUKKE:昔はジャズの匂いのものって自分ではあんまり作れなかったんですけど、ムックって毎回アルバムに1曲くらいはそういう曲が入ってて。そういうのを自分でも作ってみたいなという思いはありました。あと自分的にアップライトベースを弾くくせに、それを弾く前提で曲を作ったことがなかったんですよ。ちょうどその二つの思いが合致して作ってみたら結構いい感じにできました。これまでだったらアルバムでは「夜空のクレパス」みたいな歌ものでちょっと切ない感じの曲を俺が作ってることが多かったと思うんですけど、自分的にも違うテイストの曲を入れられて良かったです。

――逹瑯さんが書かれた詞を読んだときの印象はいかがでしたか?

YUKKE:詞はすごく良かったと思いますね。自分が想像してた世界観や登場人物の空気感と似てたんです。逹瑯が曲から感じてくれたものが似てたんだなと思ってすごく嬉しかったですね。

――イメージは伝えたんですか?

YUKKE:言ってないですね。言ってなくてその辺の空気感の歌詞を書いてきてくれたので、良かったなぁと思いましたね。

――SATOちさんは「ピュアブラック」を初めて聴いたときの印象はいかがでしたか?

SATOち:YUKKEらしいなと思いましたね。初めての試みみたいな感じはしなかったですね。YUKKEはバンドサウンド+ストリングスとか、そういう違う要素を足してくるんです。その感覚と一緒で「あ、今回はピアノなんだ」って思って、曲を聴いた感じも「これYUKKEでしょ」と。俺も逹瑯もそう思ったんです。

YUKKE:へー。

SATOち:「昔からあるもの」って逹瑯は言ってました。

YUKKE:自分らしいかな? そうかな?

SATOち:俺はYUKKEらしいと思ったよ。

――メンバーさんからの意外な感想でしたね。

YUKKE:なんか嬉しいですね。

――SATOちさんとしては、演奏面でこういうタイプの曲って…

SATOち:やりたくないですね。

一同:(笑)

YUKKE:ジャズドラマーがやるプレイをガチガチに勉強してやってもたぶんおもしろくないと思うので、エンジニアさんも「それを聴いたSATOちが感じるままに好きにやればいいんだよ」って。

――結構苦労しましたか?

SATOち:いやぁ苦労しましたよ。基本的にシャッフルも苦手なのでこれは大変でした…。何回も樹海に行こうとしたし。「行ってきまーす」って(笑)。