◆これまでに終わりを経験したことがあるからこそ書ける曲(seek)
――アルバム『ナミダQUARTET』は、キャッチーで体にスッと入ってくる曲たちが揃っていますね。
seek:ありがとうございます。音を褒めていただけるのはとても嬉しいですし、キャッチーというのも嬉しいですね。
――MIMIZUQは4人全員が作詞ができるというのも強みですよね。作曲者と作詞者の組み合わせによって全く違うキャラクターの曲になっています。
AYA:面白いですよね。でも「絶対こうです!」って決めているわけではないんですよ。
seek:9月のワンマンに向けてバタバタと曲を作っている中で、できる人は自分で歌詞を書いたりしていたんですけど、まだ歌詞が乗ってない曲もあって。そこから、「タクヤ君、ちょっと歌詞書いてみいひん?」「TAMAさんこの曲の歌詞書いてみませんか?」という流れが自然にできていったんです。
――アルバムの中に、〈夜〉〈闇〉〈星〉〈夢〉〈雨〉という歌詞が散見されましたが、これは4人から自然に出て来た言葉なんですか?
タクヤ:そうですね。歌詞については全然決めていなかったですから。
AYA:各々書いたらこうなった感じです。でも、ファンタジーにはしたくて。特に「ずっと好きでした」(作詞作曲:AYA)なんて言葉がリアルなので、できるだけ幻想的な表現でと考えていました。前にやっていたMix Speaker’s,Inc.はファンタジーがテーマだったんですけど、MIMIZUQはリアルなものをいかにファンタジーに見せるかという逆転の発想です。
seek:緻密やな!
タクヤ:いいこと言う!
TAMA:沁みるなぁ!
AYA:(笑)
seek:これからもっとそれぞれのカラーが出てくるのかなと思いますね。
――では今回のアルバムの中からお薦めの1曲を教えてください。
seek:「Grand Guignol」(作詞作曲:AYA)ですね。僕らみたいにステージに立つ人と道化のステージの話が出てくるんですけど、「メジャーデビューです! これからです!」という時に終わりを歌うという(笑)。
タクヤ:強烈にエンドを匂わせますよね(笑)。
seek:この年齢だからというのもあると思うんですけど、もう1歩踏み込んだ自分たちのリアルさを感じられる曲なのかなと。普通に考えたら終わりの曲なんですけど、始まりの段階でこういう曲を背負ってこれから活動ができるというのは、この歳のバンドらしさだと思うし、この曲をライブでやっているとグッとくるんです。20代のバンドだったらなかなかこういうテーマを書かないでしょうし、これまでに終わりを経験したことがあるからこそ書ける曲かなと思います。
――エンドロールが流れる感じがしました。
seek:この位置にしか置けないというか、11曲目らしいなぁという感じですよね。
AYA:僕はSE「ナミダQUARTET」(作曲:AYA)ですね。水滴を使った音楽を作りたくて、今回色々サンプラーの音の勉強をして、都会から洞窟を抜けて森に辿り着く音の曲にしました。
seek:発想が面白いですよね。
――この曲を聴いて、暗い森と星空が浮かびました。
AYA:本当ですか。よかったです!
――この曲で幕が開いて、「Grand Guignol」で終わるという物語性が良いですね。
AYA:そうですね。でもライブでは静かすぎて、初ライブの時お客さんが座っていたんですよ(笑)。
TAMA:お互い緊張してね(笑)。
――確かにじっくり聴き入ってしまって、動くのが憚られる曲かもしれません。水滴のリズムも聴きどころですね。
AYA:メロディーに合わせているんです。音程も微妙に変わっていて、水滴から段々メロディーに変わっていくんですよ。
――さすがAYAさん、とても緻密です。
AYA:(笑)
TAMA:僕は全曲楽しく熱く思いを込めて歌ったんですけど、すごくエキサイトしたのは6曲目の「鎮む森に降る慈しみの雨」(作詞作曲:seek)ですね。僕は今まで雨というキーワードの曲を書いたことがなかったんですけど、ヴォーカルディレクションをしてくれたタクヤ君がそこを良い感じに引き出してくれて。この曲は演奏自体が雨が降っているみたいだなと思ったし、ライブでも特に思いが籠る曲です。
――感情を揺さぶられる曲ですよね。配信盤(2018年12月配信)とは表情が全く違います。
AYA:シンセが全部入れ替わっているんですよ。
seek:せっかくアルバムに入れるなら違うアプローチができるんじゃないかなということで、TDのエンジニアさんも配信盤とは別の方にお願いしました。
TAMA:それにしてもこの曲、いい位置に入ってるよね。カセットテープならA面からB面に切り替わるところというかね。
seek:懐かしいですね。カセットテープですか(笑)。
TAMA:そうそう。「ここからまた始まるぞ」っていう感じ!
◆ライブでその時その時の最高のものが出せるバンド(楠瀬タクヤ)
タクヤ:僕も「鎮む森に降る慈しみの雨」が一番好きなんですけど。カッコいいですよね。MIMIZUQは、ロックよりポップスを得意にしていくべきバンドだと思うので、歌ものといわれるジャンルを目指していきたいんですけど、この曲にはロックな魂を感じるし、さっき言っていただいたように感情を揺さぶられて、デモを聴いた時に「おぉい、ハラハラすっぞ!」と思いましたからね。
――そんな江戸っ子風に?
タクヤ:てぇへんだ、てぇへんだって感じがすごく伝わってきました(笑)。この曲は秋口に録ったんですけど、そこからライブもやって、既に曲が成長し始めているんです。なので、「今録るんだったら、もうちょっとこうするかな」という思いもあるんですけど、そういう伸びしろが見える部分も含めて良いバンドだなと思います。MIMIZUQは、一つの到達点があったとしたら、それを通過点にしてライブでその時その時の最高のものを出せるバンドだと思うんです。「CDの方がええやん」とか「PCでCD流してるだけやん」というバンドもいる中で、常に一番生々しい部分をライブで出して、それがCDにもパッケージできるという作品を作りたいですね。生きている人間がライブをやっているんだから、揺れとか滲みがあってもいいと思うし。僕が音源で聴いて良いなと思うのが「VIOLET SKY」(作詞:TAMA、作曲:AYA)なんです。
――AYAさんにはちょっと珍しいラブソングですよね。
AYA:そうですね。こういう曲はあんまり書かないんですけど、TAMAさんとやるということで挑戦してみようかなと。絶対ハマるなと思って最初に書いたのは「東京INVADERZ」(作詞作曲:AYA)なんですけど、挑戦するという意味でコード感のある「VIOLET SKY」を歌ってもらったときに、「あ、ナミダミュージックって、泣ける音楽っていいかも」と思った、きっかけになる曲です。
タクヤ:緻密だな。
全員:(笑)
――個人的に、「Piggyback」(作詞作曲:seek)も素晴らしいと思いました。seekさんがお母様の背中を見て書いてみようと思った曲だそうですね。
タクヤ:オカンね。
seek:ファンタジー感の欠片もないな(笑)。
タクヤ:オカンをファンタジックに表現したんだな。
――パステルカラーのような優しい曲でした。
seek:こういうリズム感やテンポ感の曲が、ナミダミュージックに繋がるのかなと思いまして。これは曲が先にあったんですけど、そこに引っ張られるようにその時期にオカンに会ったので、ナミダミュージックにできたかなと思います。この曲、ライブで変なトリップ感があるんですよね。
AYA:いい感じなんですよ。
――ということは、これはライブ中盤の曲ですね。
AYA:そうですそうです(笑)。
タクヤ:中盤代表や(笑)。
TAMA:僕もそのオカンの話を聞いて、歌に入り込めました。
seek:曲中で〈オカン〉とは言っていないんですけど、そのエピソードを知っている人はまた違った聴こえ方になるのかなと。そもそも僕は「Piggyback」という言葉自体、知らなかったんです。この言葉をパッと見て「おんぶ」ってすぐ連想できないのが良いなと。調べてみて初めて、「あぁ、だからこの歌詞なんや」って伝わればいいかなと思ったんです。
――どの曲も、ライブの中でしっかり成長していて、そういう面での楽しさもありそうですね。
seek:そうですね。ライブでTAMAさんもタクヤ君もアプローチを変えて、その日にしかやらないライブの熱みたいなものがそのまま曲に出ていたりするし、TAMAさんの表現の仕方もライブごとに違ったりするので面白いです。ライブは僕らの楽しさが伝わる一番の場所なのかなと思います。
――すでに、結成1周年を迎える6月22日のワンマンライブ(1st Anniversary ONEMAN LIVE「Rain drop Tear drop」@Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE)まで発表されていますね。
seek:早いですよね(笑)。でもバンドとしてはまだまだこれからですので、たくさんイベントに出ていきたいと思っています。Vifをご覧になったバンドマンの方は是非声をかけていただければと!
AYA:ここでバンドマンに向けてのメッセージ!?
seek:僕もVifは読みますからね。きっと読んでいるバンドマンがいると思うので。あと、キャリアがあるバンドにはなかなか声をかけにくいと思うんですよ。
タクヤ:この前、えんそくさんにも言われましたからね。
AYA:でも僕ら新人ですからね。声をかけられればどこにでも行きますよ!
seek:「イベントやるの? 行こうよ行こうよ!」くらいのスタンスで行きたいと思います。
――ところで、今月に入ってseekさんの元にAYAさんから新曲が届いたそうですね。
AYA:そうなんですよ。1月はほとんどライブがなかったので、ひたすら曲を書いていたんです。実際、曲のストックはフルアルバムがもう2~3枚できるくらいありますよ(笑)。
――頼もしい! これからのMIMIZUQが楽しみです。
seek:これから、この4人でやっていることの意味と言うか、アートワークも含めいろんな形で作品を残していけるバンドになりたいし、個人的には1日も長く続けていけるバンドをやりたいなと思っています。初めてのワンマンの打ち上げでその話をした記憶があるんですけど、そのためにもTAMAさんが一番先輩なので健康に気を付けていただいて。
TAMA:あ、はいわかりました。
全員:(笑)
seek:この前、「10年後どないすんねん」って話をしていたんですけど、僕らの10年後はTAMAさんですからね!
(文・後藤るつ子)
MIMIZUQ
<プロフィール>
CASCADEのTAMA(Vo)、Psycho le CémuのAYA(道化)、seek(B)、元Hysteric Blueの楠瀬タクヤ(Dr)によって2018年6月22日結成。9月8日に新宿BLAZEにて二部性ワンマンライブ「MIMIZUQ 60min Showcase ONEMAN LIVE」を開催し、会場限定シングル『ずっと好きでした』をリリースした。10月より、『PINKY PUNKY PARTY!!』、『ジグザグザ』、『鎮む森に降る慈しみの雨』の配信シングルを3ヵ月連続でリリース。2019年6月22日にMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて1st Anniversary ONEMAN LIVE「Rain drop Tear drop」の開催が決定している。
■オフィシャルサイト
https://mimizuq.com/
【リリース情報】
『ナミダQUARTET』
2019年3月6日(水)発売
(徳間ジャパンコミュニケーションズ )
【収録曲】
[CD]※初回限定盤、通常盤共通
01. SE「ナミダQUARTET」
02. ずっと好きでした
03. NEW HOPE
04. 東京INVADERZ
05. VIOLET SKY
06. 鎮む森に降る慈しみの雨 -ナミダQUARTET ver.-
07. angel song
08. Piggyback
09. ジグザグザ
10. PINKY PUNKY PARTY!!
11. Grand Guignol
[PHOTO BOOK]※初回限定盤のみ
40P豪華ブックレット(予定)
【ライブ情報】
●AYA 2019 BIRTHDAY ONEMAN LIVE「Rabbit Hutch」
3月17日(日)姫路Beta
●MIMIZUQ主催EVENT TOUR「ナミダの森の木の下で」第1回
4月6日(土)アメリカ村BEYOND
[出演]MIMIZUQ、Kra、Bräymen、umbrella
●MIMIZUQ主催EVENT TOUR「ナミダの森の木の下で」第2回
4月7日(日)名古屋ell fits all
[出演]MIMIZUQ、Kra、Bräymen、umbrella
●楠瀬”poco”タクヤ 2019 BIRTHDAY TALK&ACOUSTIC LIVE「poco誕!!」
4月12日(金)新宿LOFT PLUSONE
●MIMIZUQ主催EVENT TOUR「ナミダの森の木の下で」第3回
4月15日(月)TSUTAYA O-WEST
[出演]MIMIZUQ、Kra、Bräymen、umbrella
●Psycho le Cému presents PLC Home Party
6月7日(金)新宿BLAZE
[出演]Psycho le Cemu、SiXX、MIMIZUQ、Dacco
●1st Anniversary ONEMAN LIVE「Rain drop Tear drop」
6月22日(土)Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE