02.汚レテ汚レタ時刻ニ(作詞・作曲:フクスケ)
フクスケ:この曲はメトロノームによくある感じですね。これは、サビのメロディーが出来上がったときに、シャラクに歌ってもらいたいなと思ったんですよ。自分もソロで歌ったりしているんですけど、自分じゃなくシャラクに歌ってほしいメロディーだなと思って。
この曲の特に2Aのあたりは、これまでのシャラクさんにはない歌い方ですね。
フクスケ:今回歌録りをするときに、珍しく二人ともレコーディングスタジオに行って、僕からニュアンスを伝えながら録ったんです。シャラクは自分以外の曲だとライブで育っていくタイプなんですけど、今回は僕が伝えたニュアンスと、さらにシャラクのニュアンスを上乗せして入れてきたので、これまでとは違う印象を持ったんじゃないかな。これまで、ニュアンスを直接伝えるということをあまりやってこなかったので、試しにやってみようという感じだったんですけど、上手く行ったなと思いますね。
シャラク:2Aの〈真っ黒だから〉のところも、自分一人で歌ったら〈真っ黒だかーらー〉って歌ったと思うんですけど、フクスケから〈真っ黒だかんらー〉って「ん」を入れてくれって言われたんです。新鮮でしたね。
フクスケ:こういうのはライブで出てくるニュアンスなので、この曲では初っ端から熟れた感じが出せたなと思います。ライブベストと一緒に収録する新曲としては、ライブ流れで曲が録れたような雰囲気があっていいんじゃないかな。
今後もレコーディングの時に、ニュアンスの伝達は続けていくのでしょうか。
シャラク:お手数ですが、来てもらうと録りが早いなと…。
フクスケ:そうですね。ただ今回の試みで、両方選べるようになったなという感じがします。自分で好きに録ってくれた感じが欲しい時もあるじゃないですか。選べるというのは良いなと思います。今回は良い可能性が探れました。
ところで、今回のサビで〈時刻ニ君ガ〉とありますが、「その時」というニュアンスの「時」に「時刻」という字を当てたのはなぜですか?
フクスケ:「その時」というと、ピンポイントでその瞬間という感じがするんですよね。でも「時刻」にすると1時間分の幅があるなと思って。その一瞬ではなく、「そのくらいのタイミング」というように視野を広げたかったのでこの漢字にしました。
なるほど。それにしてもこの曲、割と強めの絶望感を感じたのですが…。
フクスケ:本当ですか!? 自分の中では結構前向きな曲なんですよ。
Bメロの〈グングン進メ〉はメロにのるととても前向きに聴こえたのですが、それ以外の部分にそこはかとない闇が…
フクスケ:曲を作っているときの感覚としては、〈グングン進メ〉のところで旧日本軍をイメージしていて。そのくらいの「帰らない」という魂を持って進んでいくような、強い意思を込めたからかもしれないですね。あと歌詞の片仮名も、そういう印象を与えているのかも。
片仮名の歌詞で時代背景が曖昧になったことで、さらに色々含みを感じてしまいました。てっきり「PSYCHO-ENEMY」を絶望的にした感じかと。
フクスケ:(笑)。あと、実はこの曲はAメロの終わり際の2Aになるところで、ブツッと音が切れるんです。録音しているとそれまで他の音も鳴っているのに、なぜか一気に音が切れることがあって。その部分を切り取って持ってきているんですよ。なので、息が詰まるような止まり方しているんです。聴こえないところで何かギャンッて鳴っている。それでめちゃくちゃ不安になるんだと思いますよ。
そんな怖い仕掛けが…。
フクスケ:それが良いな~と思って(笑)。でも、一番の聴きどころは、サビのちょっと聴こえづらいシャラクのオクターブ低い声ですね。この曲ではこれを録りたかったので、ぜひ聴こえづらいほうの低音を聴いてみてください。
読者の皆さんにはじっくり聴いて探していただこうと思います。リウさんはいかがですか?
リウ:これは、いかにもフクスケ君の曲という感じですね。フレーズがループした状態でワンコードでバーッと進んでいくデモが来たので、音を間引いたり、スラップに変えたり、少しフレーズを変えたりして組み立てました。
「華胥之夢」はベースが静かで控えめでしたが、この曲はしっかり存在感がありますね。
リウ:結構勢いよく弾きました。でも個人的には、入りのベースが低く抑えられているところが気に入っています。頭は派手にやりがちなんですけど、抑えてみたらどうかなと思ってやってみたら、なかなかいいぞと。
間奏のギターとの絡みも素晴らしかったです。ところでリウさんは、「さくらん」(シングル『Catch me if you can?』収録曲)で5弦ベースを使っていましたが今回は?
リウ:「華胥之夢」は5弦ベースで、さらにチューニングを下げて弾いています。レコーディングは結構自由にやっていて、今回のライブでも何曲か使っているんです。あえて今まで4弦で弾いていた部分を5弦で弾いたりして、その都度思い付きでやっています。
柔軟に実験的なことをやっているんですね。
リウ:そうですね。色々やりたくなっちゃって。配信を見ている人にはアーカイブもあるし、何回も観るんだったら、少しでも違うことをやったほうが楽しいかなと思ったんです。
完全に元に戻ったわけではないけれど戻りつつある、そんなライブになれば(シャラク)
さて、12月26日には遂に1年9ヵ月ぶりの有観客(+配信)ライブ「REAL TOP METRONOME ver.メーDAY X‘mas 2021」@川崎CLUB CITTA’が開催されます。
シャラク:配信ライブに慣れすぎてしまって、有観客ライブがどんな感じだったのか、どんなライブになるのか想像がつかないんですよ。
個々の活動では既に有観客ライブを再開している方もいますが、メトロノームとしてやるとなるとまた違うものなんですね。
フクスケ:しかも、俺だけまだやっていませんからね!(この取材後、12月9日SPACE ODDで開催された)
リウ:僕はサポートも含めて、3人の中では有観客ライブをやっているほうなんですけど、自分的には有観客のほうが集中力が上がるというか。配信の時は意識して集中する感じなんですけど、有観客の時は観られているせいか、自然と集中できるんです。有観客で配信というのも経験しているんですけど、あとで映像を見た時にそちらの方がより自然に見えたので、12月26日の配信もより楽しく見てもらえたらいいなと思っています。
このライブが、メトロノームの有観客ライブ再開の幕開けとなりそうですね。今回のライブに来てくれる方、配信で参加する方々にメッセージをお願いします。
シャラク:いろんな事情があるでしょうから、「絶対来てね!」とは言いづらいですけど、配信のライブとは全然違うライブ感を久々に感じることができるんじゃないかと思います。あと、個人で有観客の弾き語りをやったときに、手紙を持って来てくれて、直接ではなくても渡せるのを喜んでくれた人がいたんです。そういうこともできるようになりつつある。完全に元に戻ったわけではないけれど、戻りつつあればいいなと、そんなライブになればと思います。
フクスケ:さっきリウが言っていたように、有観客でお客さんの前でやることで配信の見え方も変わってくるんじゃないかと思います。その日は生で観ても、配信で観ても、さらにライブ感が増したライブができるんじゃないかと思うので、楽しみにしていてもらいたいです。あと、僕は個人の活動でも全くお客さんの前に出ていなかったので、もしかするとおかしなテンションになっているかもしれません。そういう時は「あいつ、テンションが迷子になっているな」と思って、フフッと笑ってくれればと思います。
リウ:メトロノームで有観客ライブがやれるのはすごく楽しみだし、期待していてほしいんですけど、いろんな事情でライブに来られない人もたくさんいると思います。そういう人たちは、せっかく僕らも配信に慣れたので、そちらを観ていただけたらなと。この先どうなるかわからないですけど、両方で楽しんでくれたら嬉しいです。
2年弱ぶりの有観客ライブ、感慨深いです。でもメトロノームは、無期限停止から再起動まで7年ありましたからね。今回のコロナ禍といい、再起動までの期間といい、ファンの方々の辛抱強さには頭が下がります。
リウ:そうですよ。しかも、ライブが次あるかなんてわからない状態で7年でしたからね!
フクスケ:最後の有観客ライブから2年弱。今回は、なまじライブの感覚を微妙に覚えているだけに、自分は余計に体にきそうな気がします。7年ぶりの時はまるで覚えていなかったから挑めたんですけど、2年ぶりだとどこかいわせそうで…。メトロノームのライブの後は大体いつも体が痛いんですけど、今度はもっと痛くなりそうです。ヤバいかもしれないけど、皆さん楽しんでください!
(文・後藤るつ子)
メトロノーム
シャラク(VOICECODER)、フクスケ(TALBO-1)、リウ(TALBO-2)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Album『5th狂逸インパクト』
2021年12月22日(水)発売
(キングレコード)
[CD2枚組]KICS-4037~8 ¥3,850(税込)
収録曲
[CD1]
- 5th狂逸インパクト
- 世界はみんな僕の敵
- 強くて NEW GAME
- 暗い baby
- 魔法
- おやすみ世界
- デリート
- 脳内消去
- とある事象
- PSYCHO-ENEMY
- まだ見ぬ世界
- 孤独氏
- 幣帚トリムルティ
- Catch me if you can?
- 血空
- 解離性同一人物
[CD2]
- 華胥之夢
- 汚レテ汚レタ時刻ニ
ライブ情報
●REAL TOP METRONOME ver.メーDAY X’mas 2021
12月26日(日)川崎CLUB CITTA’
※生配信あり
●メトロノーム新年祝賀公演「初メト出-2022-」
2022年1月9日(日)池袋harevutai
※生配信あり