7年ぶりに復活を遂げた元祖テクノ・ポップ・ヴィジュアル系バンド・メトロノーム。ニューシングル『解離性同一人物』を手に“再起動”した彼らをフィーチャー!
2009年5月31日にC.C.Lemon ホールで行われたONE MAN TOUR-2009-「Please Push Pause」のツアーファイナルをもって活動を無期限停止したメトロノーム。そんな彼らが今年5月31日、7年の沈黙を破り、“再起動”の名のもとに復活を遂げることが発表された。9月19日にZepp Tokyoで行われる再起動後初のワンマンライブ『Please Push Play』は見事ソールドアウト。その2日後にリリースされる第1弾シングル『解離性同一人物』には、あの頃と変わらないメトロノームの音楽が閉じ込められている。第10期メトロノームとして新たなスタートを切るシャラク(Vo)、フクスケ(G)、リウ(B)に、今の思いを聞いた。
◆もし、これがなかったら頑なに「嫌」と言っていたかもしれない(シャラク)
――再起動おめでとうございます。
全員:ありがとうございます。
――メトロノームはVif初登場ということで、順に隣の方の紹介をお願いします。
リウ:フクスケ君は、ギタリストとしてだけではなく、歌も歌い、さらに最近ではDJとしても幅広く活動していて、僕が知る限り、この音楽業界で顔が広い人だと思います。僕もスタジオミュージシャンとしていろんな現場に行くんですけど、一緒に音楽をやっていない時期も、どこに行っても彼の噂を聞くんですよ。ブイブイ言わせていますね(笑)。
――ではブイブイ言わせているフクスケさん、シャラクさんの紹介をお願いします。
フクスケ:彼は自分の持ち味を最大限に利用して、発揮することができる人だと思います。それによって、人の心を惹きつけることができる人物ですね。メトロノームは打ち込みだったり、作曲だったり、歌だったりをメンバーそれぞれが全部やっていて、あまりヴォーカルとしてだけでは片付けることができないので、そういう人だと説明したいです。
シャラク:リウさんを紹介しますと、オイラが見渡す限り、こんなにベースの上手い人はいないと思っています。当時はそれで我が事のようにデカい顔をさせていただきました。「うちのベース上手いだろ(ドヤ顔)」みたいな。
全員:(笑)
シャラク:職人タイプの人ってライブでは結構静かだったりするんですけど、リウさんはライブでもすごいんです。なので、対バンする時にも「どうだ、うちのベースすごいだろ」って、かなりブイブイ言わせてもらいました。
――シャラクさんもブイブイ言わせていたんですね(笑)。さて、メトロノームは2009年の5月31日に活動を無期限で停止し、今年の5月31日に7年ぶりの復活を発表しました。ファンの方々は本当に嬉しかったと思うのですが、具体的な反響は感じましたか?
フクスケ:あの当時はやっていなかったんですが、今はTwitterのリツイートで目に見える数字でわかるんですよね。昔は昔で良かったんですけど、そうやって目に見える形でわかると余計に「みんな待っていてくれたのか」「喜んでくれたのか」というのがわかって良かったです。
――8月末時点でリツイート数が4,166という大反響でした。再起動の発表は活動停止のちょうど7年後に行われましたが、活動停止の段階で将来の再起動は見据えていたんですか?
フクスケ:全くしていないです。むしろ当時は活動停止という名の解散なんじゃないかぐらいの気分でした。それぐらいでないと、きっと活動停止なんてしてはいけないですよね(笑)。
――生半可な気持ちでPauseボタンは押していないぞ、と(笑)。では、再起動に至ったいきさつを教えていただけますか?
リウ:今年の7月30日にTSUTAYA O-EASTでART POP(活動休止前のメトロノームの所属事務所)の「CRUSH OF MODE-HYPER HOT SUMMER’16-」という大きなイベントがあって、校長から僕に、この三人のソロでの出演と、アンコールでメトロノームの曲を1曲やってくれないかと相談されたんです。校長はシャラク君としばらく連絡を取っていなかったみたいで、僕から聞いてみてほしいと言われて。僕としては、これはLINEやメールでする話ではないなと思ったので、二人に「三人で久々に会いませんか」と声をかけて飲みに行って、そこで話をしたところから始まりました。三人だけで飲むというのも初めてだったのでお酒の力も借りつつ…。
――三人で飲みに行ったのはこれが初めてですか。
リウ:そうなんです。いつもスタッフや、いろんな人がいることが多くて。この三人の中の二人で、というのはあったんですけど。
フクスケ:リウが加入する前に二人で飲んだことがあったんですが、それくらいしか覚えていないです(笑)。
シャラク:でも、大体毎月ライブ等々あって、ほとんど一緒にいたんですよ。会わない日は休みの日、みたいな感じでしたからね。
フクスケ:昔からライブが多かったので、あの頃は常に顔を合わせていたから、あえて三人で飲みに行くということもなかったんですよね。
――なるほど。そんな初の三人でのお酒の席で、リウさんが話を切り出したんですね。
リウ:はい。僕はここ2年ぐらい、またやりたいなという思いがあったので、まずはART POPのイベントの話をして、再起動についてはその流れでタイミングが合えばちょっと言ってみようかな、ぐらいの気持ちだったんです。
――そこからはトントン拍子に?
フクスケ:そうですね。お酒の力も借りつつ(笑)。でも、自分としてもやりたくなかったわけではないので、「みんながやるというのであれば、じゃあ俺もやろう!」と。
シャラク:オイラは、そもそも音楽を辞めようと思っていて、今年いっぱいでちょっとずつ閉じていくつもりでいたんです。就職したい会社もあったから、それを報告しようかなというつもりで行ったんですけど…本当にタイミングなんですよね。じゃあやろうかな、と。もし、これがなかったら頑なに「嫌」と言っていたかもしれないです。
◆みんな元々あるメトロノームというものを、もう一回やろうという気持ちになっている(フクスケ)
――絶妙なタイミングで持ち上がった話だったんですね。7年ぶりに三人で音楽を一緒にやるということについて何か懸念はありましたか?
フクスケ:僕は全然。元からポジティブな人間だし、あまり嫌なことを考えたらできないので、それこそ「やろうか!」「じゃあやろうよ!」「会場どこにする?」くらいのテンションでしたね(笑)。
シャラク:オイラも、やるならガッツリというか何か残せたらな、とすぐに思いました。オイラは何でもかんでもマイナスに考えるんですけど、今回のメトロノームに関しては、できるだけ考えないようにしようと思って(笑)。
リウ:よくある音楽業界の事情で、元々いた事務所やレコード会社の縛りというのは少なからずあると思うんですけど、今回、ART POPの校長に、「うちに戻ってこなくていいから、三人でまたやらない? 好きにやっていいからさ」と言われたんです。
――素敵な社長さんですね。
リウ:そうなんです。「何なら三人で会社を立ち上げればいいじゃない」とも言ってくれて。色々経験した上で改めて好きなことをやれるっていいことだなと思ったので、僕も楽しみな気持ちが強いです。
――再起動に当たって、音楽やヴィジュアルについての方向性は話し合いましたか?
フクスケ:あまりしっかりと話し合ったわけではないんです。でも、こういう取材やどこかで話したときに気付いたんですけど、みんな元々あるメトロノームというものを、もう一回やろうという気持ちになっているんですよ。なので、みんなが思っているメトロノームをやる感覚です。
――アーティスト写真を見ても音を聴いても、7年経ったとは思えませんでした。
フクスケ:そうですね。今回、ちょっとロックテイストを入れたくらいで(笑)。
――まさに、ファンの方々が待っていたメトロノームだと思います。当時からメトロノームは唯一無二のバンドとして一つのジャンルを確立していましたよね。
フクスケ:以前から、よくそういうことを言ってもらえるんですけど、自分たちだとわからないんですよ。他にも同じようなバンドはいっぱいいるんじゃないかなと思っちゃうんですよね。それに、「元祖テクノ・ポップ・ヴィジュアル系バンド」って言われますけど、元祖しかいないんじゃないかと(笑)。後続がいないというのは、ちょっと切ない気持ちになります。
シャラク:「影響を受けました!」という可愛い後輩がほしいんですけど、一度も聞いたことがないんです。
――可愛い後輩募集中なんですね。
シャラク:はい。特に、「シャラクさんの歌い方に影響を受けて!」みたいな人に会ったことがないので、ぜひ後輩を募集したいなと(笑)。
――再起動を機に、骸骨マイクを持った可愛い後輩が来るかもしれませんね。ところで、今回のシングルは、それぞれが作曲した3曲が収録されていますが、これは最初から決めていたんですか?
フクスケ:最初から一人1曲、バランスよく入れようと思っていました。
――メトロノームのレコーディングは、作曲者がかなり作り込んだ段階で他の人が作業をするそうですが、フレーズもガッチリ決め込んだ上で、「これを弾いてくれ」と渡すんでしょうか。
フクスケ:それに近いところはあります。そこから後は個々のアレンジというか。でも、「きっとこんなふうに弾くだろうな」というフレーズは入っているんですよ。なので作曲者が想定したところからガラッと変わるということはないですね。
――原曲者の作業量はかなり多いのではないでしょうか。
フクスケ:そうですね。1曲に対して作曲者が責任を持ってやるという感じです。
――レコーディング中に顔を合わせることはありましたか?
フクスケ:今回はなかったです。以前はスタジオで録ったりもしたので、顔を合わせることもあったんですけどね。
リウ:でも、元々レコーディングはそれに近い感じだった気がします。フクスケ君はいつもスタジオにいるイメージですけど、僕なんかベースを弾くとき以外は行かなかったし。
――なるほど。では、お一人ずつ作曲した曲の聴きどころを教えてください。
01.解離性同一人物(作詞:シャラク、作曲:リウ)
リウ:根本的にやりたいことは昔からそんなに変わっていないので、シャラク君が歌ってフクスケ君がギターを弾くということを意識して、自然と作った感じがあります。でも、自分はこの7年間でいろんな人に曲を書いたり、アレンジの仕事をしたりして、器用になり過ぎたところもあって、あまり自分のことを客観的に見られない部分もあるんです。今回、何曲か出した中で、二人が「この曲がいいんじゃない?」と言ってくれたので、そうなのかなと思って。
――リウさんが出した他の曲の曲調は全く違うものだったんですか?
リウ:何パターンか出したんですけど、この曲が一番激しかったと思います。今回、作曲で悩むことは特になくて、後からアレンジでフクスケ君にギターソロを入れてもらったり、テルミンを入れてもらったり。そうやって付け足していって、いい感じでまとまったなと思います。
――この曲は作詞がシャラクさんですね。
リウ:これは作詞をお願いしました。
――テーマは伝えたんですか?
リウ:いや、そういうことは、これまでも一切ないんです。
――これまでにも、「三つ数えろ」「青い鳥」「アクアリウム」「デリート」など、作曲はリウさん、作詞はシャラクさんという曲がありましたが、この曲の作詞はいかがでしたか?
シャラク:やっぱり人の曲に歌詞を書くというのはすごく緊張するんです。言葉遣いとかもできるだけ丁寧にして。自分の曲だとどうでもいい歌詞が書けるんですけどね(笑)。これまで頼まれた曲の作詞ももちろん緊張しました。書き出すと、結構サーッといける感じなんですけど。
――歌詞は普段から書き溜めておくんですか?
シャラク:オイラはタイトルを書き溜めておくんです。それで、この曲調だとこのタイプでいこうかなという感じです。
――このMVが一部公開になりましたが、これまでのMVともまた違った印象ですね。
フクスケ:シャラクの知り合いの監督さんにやっていただいたんです。「こういう監督さんがいるんだけどどうかな」と紹介してもらって、作品を見せてもらったらカッコよかったので、じゃあこれでいこうよ、という感じでした。これまでにも何度かあったんですけど、今回のMVも監督さんに曲を聴いてもらってその印象で作ってもらった感じです。
◆当時のライブも純粋に楽しむ感じだったので、7年ぶりに楽しくやりたい(リウ)
02.○△□×(作詞・作曲:フクスケ)
――このタイトルは何と読んだらいいですか?
フクスケ:これは、「マル サンカク シカク バッテン」です。この曲は、ライブのときにサビの〈◯く考えて〉〈△に尖って〉〈□いふりしている〉〈✕な人間です〉の掛け合いのところで一緒に歌ってもらって楽しんでもらえたらいいなと思って、こういう感じに作りました。
リウ:この曲は、ほとんどデモのベースラインに近い感じで弾いたと思います。今までのメトロノームやフクスケ君のソロワークであるADAPTER。のレコーディングにも参加して、これまでにフクスケ君の曲を沢山弾いているので、デモでこういうベースラインが来たら、こういう感じだなと。
――歌詞がフクスケさんらしいなと思って聴いていました。
フクスケ:一番気に入っているのはサビの〈バカ〉が、2サビで〈カバ〉になるところですね。
シャラク:歌っているときに、よくだまされるんです。「〈カバ〉だった!」って(笑)。
フクスケ:〈カバでもわかる〉って、何だよって感じですよね(笑)。
シャラク:今回の3曲を歌ってみて、一番難しかったのが、この曲ですね。
――フクスケさんの曲は以前から難易度が高いんでしょうか?
シャラク:いや、今まではそんなイメージはなくて、難しいといったらリウさんの曲だったんです。譜割りには人それぞれ個性があるんですけど、この曲はサビで「あれ? こう来たか」みたいな感じで難しかったです。
03.メタリア~ノ?ピコリア~ノ!(作詞・作曲:シャラク)
シャラク:この曲は、一見全く意味がないものを作りたいな、というイメージで作りました。
――この曲は、作詞・作曲がシャラクさんですが、やはりご自分の曲の作詞は、気持ちとしては楽でしたか?
シャラク:そうですね。歌詞で一番の注目どころは、〈3遍回ってワンワン〉という犬と、前の行の〈飯食うな〉がかかっているというところですね。オイラ的にはすごいことで、満足しています。
――そこでリンクしているんですね。このタイトルも書き溜めていた中から決めたんでしょうか。
シャラク:そうです。このタイトルは、メトロノームをやることになったときに真っ先に思い付いたものなんです。表に出すのであれば、このタイトルを使った曲を入れたいなと。あとこの曲は、メタルっぽい感じとピコピコした感じを1曲でまとめられたらなと思ったんです。でもオイラはそもそもメタルを通ってないから、そういう引き出しがなくて。それっぽさが全然出せなかったんです。
フクスケ:確かにメタルではないね(笑)。
シャラク:ピコリーモを、もうちょっとメトロノームナイズしたいなと思って。でも、オイラ本当にメタルを知らないので、オイラの思っている音楽とまた違うと思うんですけど(笑)。
――(笑)。それにしても本当に濃厚な3曲が収録されました。
フクスケ:最初に三人の曲を入れようと決めた時に、三人の個性が出たらいいなと思っていたんですけど、それがちゃんとクリアできたなと。曲調はバラバラですけど狙い通りにできたので、CDとしてはまとまっていると思います。
――どの曲もライブで聴くのがとても楽しみです。ライブといえば、再起動後初のワンマンライブとなる9月19日のZepp Tokyo『Please Push Play』はソールドアウトということで、ファンの方々の期待の高さが伺えました。
フクスケ:ありがたい話です。7年分の人が来てくれたのかもしれないですね(笑)。
――このライブのサポートドラマーとして、2001年12月~2007年5月のメトロノーム第七期にドラマーを務めたユウイチローさんが参加されますね。
リウ:そもそもドラムを入れる、入れないという話があった中で、サポートドラマーの候補者を何人か出したんですけど、やっぱり7年ぶりというのもあるし、そんなときに叩く人は限られるというか、みんなが一番安心する人がいいなと思って。彼は音楽を辞めて函館で就職しているんですけど、無理を言ってお願いしたら、快く引き受けてもらえました。
――そういう意味でも、すごく貴重なライブになりますね。
リウ:そうですね。一番長い期間いたメンバーでもあるし。
――ライブに先駆けて、YouTubeのメトロノームOfficialチャンネルにも、どんどん過去のライブ映像があがっていますね。
フクスケ:みんなにも思い出しておいてもらわないといけませんからね。
シャラク:メンバーを見ていたら大体何とかなるので、あまり考えずに、気楽に楽しんでもらえたらいいなと思います。オイラも映像を見返したんですけど、改めて見るとそこまで動いていなかったですね。手先でチョイチョイと振りをするぐらいなので、全然大丈夫だなと思います(笑)。
フクスケ:僕も昔の映像を見てみたんですけど、やっぱり一番映っているのはヴォーカルなんですよね。だから自分が映っていなくてどうやって動いていたかわからないんです。なので、映っていないところの動きは割愛させていただき(笑)、覚えている部分だけ頑張ります。もしかすると、新しい動きになっているかもしれないです。でも、今回メトロノームというものをもう一回やりたいなと思ったので、きっとライブに来ればその頃のことを思い出せると思うし、映像を見ている人もメトロノームというものにきっと出会えると思うので、そこを楽しんでもらえたらと思います。
リウ:僕もライブの映像を見直してみたんですけど、本当に楽しそうにライブをやっているし、映るお客さんもみんな楽しそうでした。当時のライブも純粋に楽しむ感じだったと思うので、7年ぶりですけど、そんなにカッコつけたりするバンドではないので、楽しくやりたいです。歳はみんな取りますからね(笑)。素敵に歳を重ねられればと思います。
(文・後藤るつ子)
メトロノーム
<プロフィール>
シャラク(Vo)、フクスケ(G)、リウ(B)によるテクノ・ポップ・ヴィジュアル系バンド。1998年に結成され、東京を中心に活動開始。テクノ・ポップの他、ニュー・ウェイヴやパンク・ロックを色濃く感じさせる特異な音楽性で注目を集める。2009年の5月31日にC.C.Lemon ホールで行われたONE MAN TOUR-2009-「Please Push Pause」のツアーファイナルをもって活動を無期限で停止。7年後の2016年5月31日に復活を発表。9月19日にZepp Tokyoで行われる再起動後初のワンマンライブ『Please Push Play』をソールドアウトさせた。
■オフィシャルサイト
http://meto21.com/
【リリース情報】
『解離性同一人物』
2016年9月21日発売
(発売元:KING RECORDS)
【収録曲】
[CD]
01.解離性同一人物
02.○△□×
03.メタリア~ノ?ピコリア~ノ!
【ライブ情報】
9月19日(月・祝)
Zepp Tokyo『Please Push Play』