◆感覚としては新曲が10曲あるツアー

04.晴レノチアメ(作詞:眞呼、作曲:aie)
タイトルの「アメ」がなぜ漢字の「雨」ではないのか不思議だったです。
眞呼:区切りが違うんですよ。晴れの血雨、なんです。
aie:ブラッドレインってことね。
なるほど! keinの雨の曲と言えば「雨音の記憶」(1999年発売のデモテープ『自責と蠱毒』収録曲)ですが、あの曲も今回もそぼ降る雨ではなく激情という感じです。そしてこの歌詞に「斧と初恋」に通じるものを感じたのですが。
眞呼:そうなんです。この曲は「斧と初恋」の状態のまま書いたんです。続けて書いたというわけじゃないんですけど、そのモードを忘れないうちに、その状態をセッティングしてから書きました。
だからどちらの歌詞にも〈舌〉という言葉が出てくるんですね。
眞呼:よく気づきましたね! でもこれ、「晴レノチアメ」の時点ではまだ舌があるんですよ。「斧と初恋」になると、〈言葉を忘れた舌に切断痕〉ですからね。
「晴レノチアメ」の方が前の段階なんですね。
眞呼:そうです。そのつもりで書きました。漫画の『湘南爆走族』を読んだ時に…
aie:『湘南爆走族』!?
眞呼:そうそう。湘南爆走族のメンバーが中学生の時のエピソードが描かれた別巻があるんですけど、私そういうのがすごく好きで。映画の2じゃなくて0みたいな、元々どうだったのかっていう、少し過去に戻った感じが好きなんですよ。
それがこの歌詞なんですね。この曲は作っている段階から楽しかったのでは?
aie:ライブでやるのが楽しそうだなとは思っていましたね。だからあんまり難しいことをせずに、ただちょっと変なアクセントでBメロに休符を入れて、そこもポップに聴こえるようにしました。で、ちゃんとサビがある。昔だったらこういう曲は攻撃的な感じで終わった方がカッコいいと思っていたけど、今回はこういうテーマだし、これも候補の一つとしてどうですかという感じで曲出しをしました。
玲央:この曲はサビがすごく良いですよね。しかも短くて、ここで陽が差すなと感じました。出来上がった上での結果論になっちゃいますけど、歌詞との親和性がすごいなと思いましたね。
05.波状(作詞:眞呼、作曲:攸紀)
いつまでも耳に残る、切ない感じがたまりません。
眞呼:そうそう。モヤモヤっとした感じがいいですよね。
この曲は作り込まれた状態で、攸紀さんから渡されたんでしょうか。
aie:これは元々前半だけでした。後半は全員で構築していったんですけど、誰もこの6分半という尺を止めなかったんですよ。普段なら4分を超えたら、ちょっと削ろうよってなるし、しかもこの曲でMVを撮ろうとしていたのに誰も言わなかった。
眞呼:実は私、メロディを作る時にどれがAメロでどれがBメロなのかを聞かずに作ったんです。意外とはまったのでそのままにしたんですけど、私が言うAメロBメロと、みんなの共通認識が若干ズレていて。
玲央:セクション関係なく歌詞を書いて歌を入れたんですよね。
眞呼:そうそう。だから急にイントロで歌っちゃっている感じなんです。
それでちゃんと曲として成立しているのがすごいですね。この曲は眞呼さんの声をフルに活かしているなと思いました。
眞呼:すごくしんどかったです…ライブでは無理です…一発で喉が死んじゃう。この曲はギターも筋肉プレイだし大変だよね。
aie:完成が見えていない状態でレコーディングをしたから、多分こんな感じですよねっていうアプローチで。このスケール内で弾くけど、弾き始めた段階では何を弾くか全部は決めていない状態でした。これからツアーが始まるから覚える作業が必要になるんですけど、俺の中では、せーので一発でジャムセッションしている感じが強いです。
眞呼:MVで弾いている時の手の動きがすごいよね。
aie:あれは弾いてないんです。レコーディングで何を弾いたかも覚えていなくて(笑)。
玲央:レコーディングの時に、ここで盛り上がるようにソロっぽいことを弾いてくださいってその場でオーダーしたんです。「わかりました!」ってファズをバーンってしてギャーって弾いてくれて、「今のカッコいい! じゃあこれで」という感じだったからあんまり覚えてないんだと思います。
aie:決め込んでレコーディングに入ったわけじゃないからね。で、MVを撮るじゃないですか。何も覚えてないじゃないですか。でも何かソロでって言われたから、こんな感じのことやるかもな俺、という感じで弾いたんです。
MVでそのシーンに注目しちゃうじゃないですか。
aie:あっ…この話は嘘です(笑)! 弾いている手は、すごくカッコいいんですよ。ただこれは筋肉を隠した筋肉プレイなので、右手が壊れちゃう。
玲央:あれはしんどいと思います。僕はこの曲の、間とサビの広がる感じを大事にしたくて。広がる感じも、ホワッと広がる感じにしてほしいと攸紀君から言われたので、実はサビだけ、気づくか気づかないかぐらいに音を入れまくりました。4トラックぐらい僕だけでギターを入れていて、ちょっとずつ違うことをしています。ライブの時は、僕が弾けるギターの本数が限られているので印象は違うと思うんですけど、それも含めて僕はライブだと思いますし、むしろ会場の鳴りを考えたらイヤホンで同じものは聴けないので、そこを楽しんでもらえたらという解釈で作りました。
「波状」がライブでどうなるのかも含め、前作にこの新作5曲が加わったツアーが楽しみです。
玲央:大分印象が変わると思いますよ。
aie:ただ、まだ前作の5曲もしっかり消化しきれてない状態なんです。披露しただけで終わってしまったというか。なので、感覚としては新曲が10曲あるツアーに近いです。
玲央:人前での演奏回数が10回を超えていないですから。
aie:しかも、前回のツアーからもう半年空いていますし。
ファンの方々は毎回フレッシュな気持ちで聴けるんですね。
玲央:そう言ってもらえると、すごく前向きでいいですね(笑)。
新たな作品を完成させたkeinの今後の展望を聞かせてください。
aie:自分のギターに関しては、今回のツアーからシステムをもっとシンプルにしようかなと思って。色々な音色は玲央さんに任せて、アンプ1個でいいかなと思っているんです。あとは匠みな技術で、でもそういう風に見えないような。ゴリゴリのマッチョがめちゃくちゃ繊細なガラス細工を作っているみたいな、そういう見た目になろうかなと思って。
「技巧派じゃないけど、ギターをアンプで鳴らすのがすごく上手い」とご自分を評していたaieさんならではの進路かもしれませんね。
aie:そうそう。keinではそこを突き詰めようかなと思っています。
玲央:僕は逆です。lynch.ではシステムを結構組んでいるんですけど、通っている箇所はすごく少なくて、ほぼアンプ直に近いんです。逆にkeinだといろんな音色で遊べるので、aieさんとの対比がちゃんと届けられるように、僕も自分の立ち位置を意識しながら頑張ろうと思います。
眞呼:今回、作詞で女性っぽい歌詞も出しちゃったので、今後は性別に関係なく書いていきたいなと思いました。男なので女性のことはよくわからないんですけど。
いやいや、今回、眞呼さんの引き出しが無限なことに改めて驚かされました。
眞呼:じゃあ皆さん今度私を女子会に呼んでください。そしたらもっと何か色々書けるかもしれないので、ぜひ(笑)。
(文・後藤るつ子)
kein
眞呼(Vo)、玲央(G)、aie(G)、攸紀(B)、Sally(Dr)
オフィシャルサイト
リリース情報
Major 2nd EP『delusional inflammation』
2025年7月9日(水)発売
(KING RECORDS)

[初回限定盤](CD+Blu-ray]KICS-94204 ¥5,500(税込)

[通常盤](CD only)KICS-4204 ¥2,750(税込)
収録曲
[CD]※共通
- 斧と初恋
- 幻想
- 幾何学模様
- 晴レノチアメ
- 波状
[Blu-ray]
- 「波状」Music Video
- 「波状」Music Video Making
ライブ情報
●kein TOUR 2025「delusional inflammation」
7月11日(金)アメリカ村DROP
7月12日(土)NAGOYA JAMMIN’
7月20日(日)SUPERNOVA KAWASAKI