今なお多くのアーティストたちからリスペクトされ続けるhide。トリビュートアルバムを通じ、彼に多大なる影響を受けたアーティストたちの褪せることない思いを聞いた。
hideが永眠して15年、ソロ活動20周年となる今年、彼の楽曲が、ジャンルと世代を超えたアーティストたちによる6つの作品としてリリースされる。シリーズ第1弾となる今回は、V系アーティストによって構成された2枚のアルバムが同時リリース。そのうちの1枚『hide TRIBUTE Ⅱ -Visual SPIRITS-』の参加アーティストであるheidi.のナオ(G)、桐(Dr)、DaizyStripperの夕霧(Vo)、風弥(Dr)に、作品の魅力、そして自らに多大な影響を与えたhideへの想いを語ってもらった。
◆【想い出】
――heidi.とDaizyStripperは、別のカバーアルバムにも参加していたりと、何かと縁がありますね。
夕霧:そうですね。最初に出た同じライブが「hide memorial summit」(2008年5月3~4日、東京の味の素スタジアムで開催された野外ライブ。※以下「hideサミ」)だったんですよ。出演日は違ったんですけど、どちらも1バンド目ということで、すごく共感して。「どうでした?」って聞いたりしてました。
――hideサミに出演していかがでしたか?
風弥:人生であんなアウェイを味わったことはないです(笑)。DaizyStripperを始めて1年経つか経たないかの頃だったから誰も俺らのこと知らないし、何万人もの人がhideさんが好きであの場に集まっているわけじゃないですか。「俺らが最初に演奏して大丈夫なのか!?」って思ってましたね。
夕霧:俺も歌っていて「歌詞間違えたら、特攻服のお姉様方に怒られる!」と思ってましたから(笑)。緊張しすぎて結局「MISERY」で歌詞を間違えちゃったんですけど、ファンの方がめちゃくちゃ温かかったのが印象的でした。
桐:夕霧くんは歌詞を間違えたみたいですけど、俺も緊張してテンポがものすごく早くなってました(笑)。
風弥:俺もカウントの3発目でストールがスティックに引っかかりましたからね(笑)。
――2バンドの初共演ライブがhideサミというのも縁深いですね。そんなみなさんのhideさんとの出会いを教えてください。
ナオ:俺は、中学生の頃にテレビでXを見て、「バンドってこういうものかな」っていうイメージが自分の中で固まってきた頃、hideさんがソロ活動を始めたんです。ソロってどんなのだろう、Xと同じようなことをやるのかなと思って聴いてみたら、全く違っていて。“聴いたことがない感じ”、というのが最初の印象でしたね。自由っていう印象がとにかく強かったです。それがこういう音楽を聴くきっかけになりました。
桐:俺は「Beauty & Stupid」を初めて聴いた時に、何てかっこいいんだ!と。“悪っぽい感じ”がすごく良かったんです。聴いたのは中高生くらいだったと思うんですけど、それまでこういう音楽は聴いたことなくて。hideさんがきっかけでXとか聴くようになりましたね。
――このジャンルの音楽に触れるきっかけになったんですね。夕霧さんは?
夕霧:僕は中学の時、X好きの友達に、「『Rusty Nail』の8mmシングルの裏ジャケットは、手首に釘が刺さってる」って言われたんですよ。僕、その頃ピュアすぎて、「釘が刺さったら死ぬから! お前嘘も大概にしろよ!」って言ったんですよね。
全員:(笑)
夕霧:そしたら、次の日に友達がCDを持ってきてくれたんです。見たら本当で、「しかも紫の血が出てる! この人大丈夫か!」と(笑)。友達が曲も良いからってCDを貸してくれたんですけど、聴いたらビリビリって衝撃が走りましたね。そのジャケットの裏に一人だけ赤毛の人がいて、気になっていたんです。そのうちに、その人がパフォーマンスもイカレてるし、ギターを置いた姿も最高にかっこいいし、ファンに優しいっていうエピソードも聞いたりして。hideさんは、僕がギターを始めたり、バンドをやるきっかけになりました。hideさんがいなかったら僕はきっと今頃、花屋さんになってましたね(笑)。それくらい神です。
――今の夕霧さんはhideさんあってこそ、なんですね。
風弥:俺がhideさんを初めて知ったのは、小学校か、もっと前かな。家の裏に山があって、親に「山には赤鬼さんと青鬼さんがいて、悪いことすると食べられちゃうからね」って言われてたんです。
――赤鬼さんと青鬼さん!?
風弥:はい。ある時、テレビに真っ赤な髪で奇抜なメイクでギターを弾いているhideさんが出ていて、親に「悪いことすると、あの赤鬼さんに食べられちゃうからね!」と。俺はそれ以来、Xが怖くて怖くて…。
全員:(爆笑)
風弥:その後、中学校の時に友達が『Forever Love』を貸してくれて、あの格好であのメイクでこんな綺麗なギターを弾くんだ!ってそのギャップにやられました。それからXが大好きになって、学校のノートにhideさんの切り抜きを貼りまくってました。バンドを始めた当時はベースだったんですけど、hideさんと同じ形のモッキンバードのベースを買ってペイントしたりしてましたし。
――キッズっぽい可愛いエピソードですね(笑)。みなさんヴィジュアル面で影響を受けたことはあったんですか?
夕霧:俺、赤毛にしたり、重ね着したりしてました。あと通販で、hideさんがつけてたのに似てる9,000円くらいのドクロのネックレスをつけたりとか………結構痛いっすね(笑)!
全員:(笑)
桐:俺はhideさんのカジュアルなファッションに影響を受けました。今見ても新しいんですよね。
ナオ:俺は、憧れはもちろんあったんですけど、凄すぎて真似しようと思わなかったです(笑)。ギターにしてもhideさんが使っていたあの形が独特だからみんな手に入れたがるんですけど、俺は全然。
桐:近づいちゃいけないと思ってたんだね(笑)。
ナオ:そう(笑)。「無理だ!」と(笑)。技術面もそうで、コピーする気にすらならなかったんです。俺は元々、完コピはしないで好きなフレーズだけコピーする派なせいもあるんですけど、今回トリビュートで原曲を参考にするにあたって、hideさんがすごいことをやっていたことが改めてわかりましたね。
◆【hideとの今】
――今回は両バンドとも、hideサミの時に演奏した楽曲のカバーですが、それぞれどんな風にカバーしようと思いました?
ナオ:原曲の感じを崩したくないというのが絶対的にあったんです。俺の中でかなり完成された曲なので、その雰囲気を崩したくなくて。hideサミの時と今回収録した曲に若干の違いはありますけど、雰囲気を崩さないように、というのは全員一致でした。
――heidi.の「TELL ME」は、まさに正統派のカバーですよね。
桐:そうですね。改めて聴いてみて、自分でも正統派だなと思いました。でも、わかりづらいけど、意外といろんなことをやってます(笑)。
ナオ:ギターでも一ひねりしていたりね。「この部分、俺だったらギターはこういっちゃうかな」ってとことか、リズムのすごく細かいところにアレンジを入れたり。そこが俺らなりの遊び心だし、これくらいだったら曲を壊さないなっていうところでheidi.らしさを表現できたかなと。曲にうちのヴォーカルが乗るとすごくheidi.っぽくなるから、ちゃんと表現できたんじゃないかと思ってます。
――DaizyStripperはheidi.とは対照的に原曲からはガラリとイメージを変えたピアノアレンジですね。
風弥:はい。ほぼ、hideサミの時のアレンジです。hideさんの曲はアップテンポでかっこいい曲が多いので、逆に超ドバラードにしようと思って。バラードにしてもメロディの良い曲はやっぱり良いんですよ。俺らはあのhideサミの空気感をいつか音源化したいってずっと言ってたんですけど、シングルとして出すのも違うし、アルバムに入れるのも違うし…と思ってたら今回のトリビュートアルバムのお話があって「今でしょ!」と(笑)。
全員:(笑)
風弥:このアルバムであの日の再現をしようと思いました。
――DaizyStripperの「MISERY」はかなりの高音ですよね。
夕霧:そうなんです。hideサミと同じ高さなんですけど、かざみん(風弥)が僕用にキーを上げてくれているんです。でも、やっぱり高い(笑)。hideサミの時、バラードバージョンをやろうって決まって、その前にスタジオで仮歌を録ったんですよ。音が高いから「風弥くん、この音出ないかも」って言ったら「大丈夫大丈夫。天井高いとこだと高い声出るから。当日は屋根ないし」って言われて。「え!? 何その理論!」って思ったんですよね(笑)。でも、かざみんが言うならそうなんだろうなって思って。
桐:素直だなー(笑)。
ナオ:でも声出てたよね。
夕霧:そうですね(笑)。でもレコーディングブースだと屋根があるんでなかなか苦戦しました。でも、今回、あの日の感動をもう一度というコンセプトのもと上手に歌うというより魂を込めることに重点をおきました。なるべく歌詞カードを見ないで歌ったり。休憩中に窓を開けて、空(のhide)に向かって「おーい、歌ってるぞー」って言ってみたり。
――この作品はhideさんご本人に聴いていただきたいですね。桐さんはこの曲を聴いていかがでしたか?
桐:Daizyの「MISERY」は「あーDaizyStripperだなー!」って感じがします。あのアレンジをライブとかで聴いているから自分の中にスッと入ってくるっていうのもあるけど、ピアノを使った壮大な感じはDaizyの強みだよね。そして音が高い(笑)。
風弥:ピアノはhideサミでも、レコーディングでも俺が弾いてるんです。あと、今回はストリングスのオーケストラアレンジを1からやろうと思って、20数トラック使って一個一個楽譜を書いて、オーケストラ(の音を)全部入れました。だから、後ろにオーケストラを従えているような、さらに壮大な感じになっています。
夕霧:え! すごいね!
――あれ(笑)?
夕霧:だって、かざみんが自分の頭の中で作ったオーケストラの音が伴奏になってるってことでしょ!? すごいね!!
風弥:うん(笑)。すごい時間がかかったけどね。がっつりやろうと思って。
ナオ:俺たちとは対照的だなー。俺ら最小限でやるからね(笑)。
桐:そうだね(笑)。でも俺らも同じ気持ちで、あの日、hideサミでやったイメージがすごく強かったから、あの感じをもう一度っていう気持ちでしたね。
◆【hideとの未来】
――今回はそれぞれ「TELL ME」と「MISERY」を選ばれましたが、次に同じようなアルバムがあったらどの曲を選びますか?
桐:自分が初めて買った「Beauty & Stupid」をやってみたいです。
ナオ:俺もそうですね。「Beauty & Stupid」は、今回の候補曲に含まれていたんです。曲の取り合いになるのはわかっていたので第三候補まで出していたんですけど、その中には「MISERY」も入ってました(笑)。
夕霧:そうなんだ(笑)。俺も、歌ってみたい曲はいっぱいありますよ。「Beauty & Stupid」も大好きだし、「HURRY GO ROUND」も「限界破裂」も、今回入ってないけど「Hi-Ho」もいい…俺はカバーアルバムやってもいいよ、かざみん、って感じです。
全員:(笑)
夕霧:hideさんが亡くなった後、布袋さんやLUNA SEAさんがカバーしたアルバム(『hide TRIBUTE SPIRITS』1999年5月リリース)がありましたよね。あのCDをガキの頃めちゃくちゃ聴いたし、それこそクラス中が聴いてましたけど、今回、自分が同じような作品に参加できているわけですからね。不思議な感じです。
――しかも、風弥さん渾身のオーケストラのバック付きですからね。
夕霧:そうです。かざみんが夜も寝ないで昼寝して作った1曲ですからね。
全員:(笑)
風弥:(笑)俺もやってみたい曲はいっぱいあります。「ピンク スパイダー」をもっとミクスチャーロックみたいな感じでやってみたいし。「Hi-Ho」もすごい好きだからやってみたい。でも、あの原曲を聴いちゃうと、すげー難しいんだろうなと…。
全員:だよねー…。
風弥:ナオさんじゃないけど、逆に「やめとこう」ってなりますよね。
――そっとしておこうと(笑)。
桐:曲の個性が強すぎて、どうメスを入れていいかわからないですよね(笑)。でも「Hi-Ho」に限らずですよ。完成度が高すぎます。
風弥:未だにヴィジュアル系でポリネシアンリズムを取り入れた人はいませんし、誰もその後やってませんからね。
――今回のアルバムには、前人未到の領域に果敢に踏み込んでいったhideさんの楽曲が詰め込まれているわけですが、この作品に携わったアーティストとしては、どう聴いてほしいですか?
夕霧:俺らは、hideさんが残してくれたソウルやスピリットを継いでいるつもりで音楽をやってるんです。hideさんを知らない世代の人たちにはそれを知ってほしいし、hideさんを知っている人たちには今のヴィジュアル系を知ってほしい。世代関係なく。これって最高じゃないですか。たくさんの人に楽しんでほしいですね。
(文・後藤るつ子)
【リリース情報】
2013年7月3日(水)発売
(徳間ジャパン)
hideソロ活動20周年を迎えた今年、ジャンルと世代を超えたアーティストが集結してリリースされるトリビュートアルバム第1弾。
【『hide TRIBUTE Ⅱ』収録曲】
01. TELL ME/heidi.
02. DICE/摩天楼オペラ
03. OBLAAT/GOTCHAROCKA
04. D.O.D.[DRINK OR DIE]/柩 from NIGHTMARE
05. ピンク スパイダー/Sadie
06. ever free/defspiral
07. DOUBT/machine
08. HURRY GO ROUND/CELL
09. MISERY/DaizyStripper
10. Beauty & Stupid/DOPPEL
11. DAMAGE/THE KIDDIE
12. Junk Story/UNDER CODE PRODUCTION LAST COLLABORATION「D•N•A」
13. 50% & 50%/Mix Speaker’s Inc.
【『hide TRIBUTE Ⅲ』収録曲】
01. ROCKET DIVE/R指定
02. Beauty & Stupid/DIAURA
03. ピンク スパイダー/己龍
04. In Motion/FEST VAINQUEUR
05. DOUBT/ダウト
06. DICE/SCREW
07. BACTERIA/アヲイ
08. ever free/BORN
09. D.O.D.[DRINK OR DIE] /DEZERT
10. 限界破裂/グリーヴァ
11. EYES LOVE YOU/A(エース)
12. HURRY GO ROUND/HERO
■hide MUSEUM、8年ぶりに復活
2000年に横須賀にオープンし、日本だけでなく世界からも多くのファンが訪れた『hide MUSEUM』が8年ぶりに復活。
6月29日(土)から東京のダイバーシティ東京プラザのフェスティバル広場、8月7日(水)から大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでそれぞれ1ヶ月開催される。各会場には、本人を忠実に再現したリアルヒューマンドール、生前愛用していた1959年製のギブソン・レスポールスタンダードギター、1stソロアルバムのジャケットに使用されたH・R・ギーガーによる仮面のオブジェなどが初披露され、hideの音楽、アート、ライフスタイルにリアルに触れられる空間が再現される。
■オフィシャルサイト
http://www.hide-city.com/
heidi.
<プロフィール>
義彦(Vox)、ナオ(G)、コースケ(B)、桐(Dr)の4人組ロックバンド。2006年6月始動以降、池袋CYBER、高田馬場AREA、Shibuya O−EAST、渋谷公会堂など、さまざまなステージを積み重ねてきた。結成5年の節目を迎えた2011年、映画「前橋ヴィジュアル系」への音楽監修と映画への出演、アメリカで行われたイベント「AM2」への出演などその視野を大きく広げた。2012年9月アルバム『アルファ』をリリース。2012年11月〜バンド史上最多本数31本の全国ワンマンツアーがスタートし、2013年2月SHIBUYA AXでツアーファイナルを迎えた。
2013年5月始動7周年を記念したワンマンツアー「零距離回路」を会場限定シングル『流星ダイヴ』を引っ提げてスタート。6月3日、東京キネマ倶楽部にてheidi.始動7周年を迎えた。
■オフィシャルサイト
http://heidi-net.com
heidi.ライブ情報
6月29日(土)渋谷O-EAST
GOTCHAROCKA主催「AWESOME PRISON Vo.2」
[出演]GOTCHAROCKA/Mix Speaker’s,Inc./花少年バディーズ/THE KIDDIE/MEJIBRAY/heidi. 他
7月6日(土)新木場STUDIO COAST
「ESP学園presents COLORS2013」
[出演]Silent Siren/真空ホロウ/TOTALFAT/摩天楼オペラ/FLiP/heidi.
7月16日(火)渋谷O-WEST
「MUSICIANS vol.1」
[出演] 中島卓偉×生熊耕治×KEIICHI(universe)×KAZUYA(universe)/universe/heidi.
7月29日(月)恵比寿LIVE GATE
「VestimitationWorks主催 3マンLIVE EVENT」
[出演]THE RHEDORIC/音影/heidi.
8月10日(土)恵比寿LIQUIDROOM
Ains PRESENTS
DIAURA主催LIVE「日本独裁計画2013」
[出演] DIAURA/DEZERT/12012/heidi. and more…(OA : グリーヴァ)
8月16日(金)渋谷AX
-Angelo Presents-「THE INTERSECTION OF DOGMA」
[出演]Angelo/INORAN/MUCC/lynch./heidi.
8月16日(金)新宿LOFT
master + mind 2MAN GIG 【 VERSUS 】
[出演]amber gris/heidi.
DaizyStripper
<プロフィール>
夕霧(Vo)、まゆ(G)、なお(G)、Rei(B)、風弥(Dr)による5人組ロックバンド。2007年3月結成。結成わずか1年後の2008年5月、味の素スタジアムで開催されたhide追悼イベント「hide memorial summit」に出演。精力的に活動を続け、2012年12月28日(金)には5th Anniversaryを締めくくる初のZepp Tokyoワンマン「THE END OF DREAM」を成功させる。2013年6月12日12th Single『MISSING』をリリース。
■オフィシャルサイト
http://daizystripper.com