2011.11.30
凛として時雨@恵比寿LIQUIDROOM
凛として時雨 TOUR 2011「αβ+1」

 



 9月の自主企画ライブ「トキニ雨#13〜Tornado Edition〜」を終えてすぐ、2ヶ月に渡る全国ツアーへと旅立った凛として時雨。彼らにとって今年3本目となった今回のツアーは、会場をライブハウスに限定して敢行された。初のホールツアー、そしてツーマンライブ形式をとった「トキニ雨」を経た流れを考えると、近距離で熱のやり取りが出来る場所を、バンドもオーディエンスも求めていたのではないかと思う。

この日の公演はそのツアーファイナル。平日の夜ということもあり、会場に集ってくるファンの中には仕事帰りという様子の人も少なくないが、誰の顔にも疲れは見えず、どこか嬉しげな表情で足早に建物の中へと入っていく。場内に足を踏み入れれば、フロアにみっしりの人、人、人。暗転した空間を白いライトが控えめに照らす中、歓声と拍手に迎えられて凛として時雨の3人がステージに現れた。お互いの“待ってました”という空気からか、ホーム感に似たものが漂う。

 

そこに発破をかけるようにして始まった「nakano kill you」。初っ端からガツンと攻めてくるサウンドと目まぐるしく点滅するライト、TK(Vo.& Gt.)と345(Vo.& Ba.)のキレのいい歌の掛け合いで、場内の空気が気持ちよく加速していく。そのまま音に身を任せていると、2曲目の「想像のSecurity」でもう、意識が頭のてっぺんあたりから巻き上げられていくような感覚に包まれた。腕を上げながら曲に揺られている観客は、かなり気持ち良さそうに見える。

 

 

このライブで感じたのは、ステージの引力の強さだ。客席との距離の近さも勿論あると思うが、3人のパフォーマンスに目も耳も奪われっぱなしだった。楽器をがんがん鳴らすメンバーから放たれる、この時間、この空間が楽しくてたまらないというオーラが視線を釘付けにし、それとともに意識も音の渦の中に引き込まれていく。

冒頭のドラムが表情豊かな「ハカイヨノユメ」では、一見勢いに任せて暴れ狂っているようでありながら緻密に展開される静と動の明確な対比に心地よく翻弄され、「Telecastic fake show」では上昇する熱のままにフロアはうねる波と化し、ダイバーも続出した。印象的だったのは「久々にアコースティックギターを」というTKの言葉から披露された「Tremolo+A」。ピエール中野(Dr.)のバスドラが鼓動のように響く中、掻き鳴らされるアコギはビィーンという弦の震えまで感じられるような気がしてドキドキした。それもこの距離感だからこそ楽しめる感覚だろう。

激しくノるのも、じっと聴き入るのも、音に身を委ねているのは同じ。カッコイイ音楽があって、その音楽を好きな同士がいて、奏でる者も聴く者も同じ空間で思いっきり音に浸る。ライブというのは、すごくシンプルでエキサイティングな音楽の楽しみ方だと、再認識できたライブだった。

 

ラストの「傍観」。陰鬱ともいえるような始まりから、三者三様に猛った様を見せる終盤まで、オーディエンスは微動だにせず黒い塊のようになって聴き入っている。オレンジの照明に照らされたTKが、スタンドマイクを掴んで「消えたい!」と幾度も叫び続ける様子に、鳥肌が立った。轟音が場内に響き続ける中、345とピエール中野がステージを後にし、一人残されたTK。獣のようにギターを弾き狂い、マイクを引き倒し、それでも足りずにギターをぶん投げる。彼が去ってもフィードバック音が鳴り止むまで観衆は沈黙を守っていた。そして沸き起こった大きな歓声と拍手。貪欲かつ行儀の良いファンによって最後の一瞬まで堪能し尽くされ、この夜のライブはこうして幕を閉じた。

 

◆セットリスト◆

01. nakano kill you
02. 想像のSecurity
03. COOL J
04. DISCO FLIGHT
05. I was music
06. knife vacation
07. a symmetry
08. テレキャスターの真実
09. ハカイヨノユメ
10. (新曲)
11. illusion is mine
12. Tremolo+A
13. 夕景の記憶
14. JPOP Xfile
15. Telecastic fake show
16. 感覚UFO
17. 傍観