Vol.5:YUKKE(MUCC)

MUCCはPIERROTと対バンをしている。PIERROTと同じステージに立った経験があるYUKKE(B)は、テレビの中のPIERROTにわくわくしていた高校時代や、PIERROTと共にイベントに出演した時の衝撃を、ゆっくりと当時の記憶を辿りながら語ってくれた。そして今、第一線で活躍するアーティストとして抱くPIERROTへの思い。その言葉は、いつの時代もPIERROTへのリスペクトにあふれている。

◆ヒール的な魅力があった

――PIERROTとの出会いは?

YUKKE:俺は『Break Out』(テレビ朝日系列)ですね。それまで『Break Out』とかで、いろんなヴィジュアル系を見ていましたが、他のバンドとは全く違うヴィジュアル系がいるんだなと思いましたね。

――ヴィジュアル系番組をよく見ていましたか?

YUKKE:大好きでしたよ! 高校では俺、一番バンギャルでしたもん。学校で、机に好きな人の名前とか書くじゃないですか。俺は、ヴィジュアル系オールスター編成を机に書いていました。

――誰の名前を書きましたか?

YUKKE:ヴォーカルは清春さん。ギターにPIERROTの潤さんと、ROUAGEのRIKAさん。ベースがLa’cryma ChristiのSHUSEさんで、ドラムがROUAGEのSHONOさん。周りはみんなヒップホップが好きだったんですけど、その中で一人だけヴィジュアル系を聴いていました。『Break Out』は録り溜めしていつも見ていて、「Break Out祭」(※『Break Out』で取り上げたバンドが出演するライブイベント)も大好きでした。ある時、「Break Out祭」に出られる企画があって、MUCCに入ってまだ2~3ヶ月で応募しました。「俺、応募するから」と言ったら、メンバーに「何それ?」って言われたんですけど勝手に応募しちゃったんですよね。そうすると、テレビで、楽曲と写真が3秒くらい流れるんですよ。これは絶対プロモーションになるなと思って(笑)。

――結果はどうでした?

YUKKE:落ちましたね(笑)。

――PIERROTで最初に聴いた曲は?

YUKKE:「満月に照らされた最後の言葉」です。『Break Out』で聴きました。

――CDは買いましたか?

YUKKE:アルバム『パンドラの匣』は買いました。「SEPIA」とかすごく好きでしたね。「あ、これはすごい! 名曲だ」と思いました。

――音源で聴いて、他のバンドと違うという感じはありましたか?

YUKKE:ありましたね。当時は、GLAY、La’cryma Christi、SHAZNA、FANATIC◇CRISISとか、その辺ばかりを聴いていて、最後の方にPIERROTを知りました。PIERROTは、インディーズのヴィジュアル系の中でも、すごくヒール的な魅力があったなと思っていて。プロレスじゃないですけど、そこに惹かれたのかもしれない。あと、キリトさんのキャラクター。よくインタビュー映像などで、他のバンドさんとか、みんないいことを言うじゃないですか。何かを聞かれたら、「お客さんと一つになるために、みんなでがんばります」とか言うんですけど、キリトさんは全然そうじゃなかった。「こんな人がいるんだ」と思って、そこも衝撃でしたね。

――キリトさんが、どんなことを言っていたか覚えていますか?

YUKKE:番組の中で、ファンからの質問の手紙を読む企画があって。バンドをやっているファンからの悩みで「上手く煽りが出来ない」というのがありました。キリトさんは、「煽りっていうのは大事だ」という話をしつつも、「その煽りが出来ないとか手紙を送ってくる、こいつがムカつくんだよ」っていうのを言っちゃったり(笑)。アイジさんが喋っている脇で、キリトさんは潤さんとずっと遊んでいて、それをKOHTAさんが一喝するというコントみたいな流れもあって。そういうのも楽しみで、PIERROTを見ていました。

――PIERROTはとても世界観のあるバンドですが、テレビやラジオに出演している時は、おもしろかったですよね。

YUKKE:そうです。全く180度違うんだなと、ステージとオフステージのギャップというものを、PIERROTで初めて見たかもしれません。

――今でこそ、バラエティ感を出しているバンドはたくさんありますが、当時はなかなかいなかったですよね。

YUKKE:しかも当時はブログとかもないじゃないですか。だから、ファンの人はライブに行けば、MCでくだけたりするメンバーのことを知れたのかもしれないですけど、なかなかライブに行けない人は、メンバーの素の姿を知る機会がほとんどなかったから、テレビに出てきた時のギャップには驚いたと思いますね。

――ずばり聞きます。5人のメンバーの中で誰が好きですか?

YUKKE:潤さんです。最初は潤さんから入りました。潤さんの、髪が短くてかわいい感じのキャラクターが好きだったんでしょうね。なんで、ベースじゃないんでしょうね。高校生の時に、La’cryma Christiのライブに行った時も、バンギャルのお姉さん達に、「誰が好き?」って聞かれて。俺、KOJIさんって言っていたんで、なんか下手ギターなんですよね。最初に好きになるのは、見た目かもしれない。金髪とか髪が短いとか。だから、机に書いていたヴィジュアル系オールスター編成にも、潤さんは入っているんですよ。

――ギタリストとしての潤さんの魅力とは?

YUKKE:最初はシンセギターって何だろうと思いました。ライブで見て、「これ全部弾いているんだ!」とびっくりしましたね。

――ベーシストのYUKKEさんにお聞きしたいのですが、KOHTAさんのベースはどう思いますか?

YUKKE:男らしいですね。男らしいベースを弾く、堅実なプレイをする人だと思います。PIERROTはリズム隊がすごく好きで。TAKEOさんとKOHTAさんでタイプが違うなと思っていて。KOHTAさんが、安定してしっかりとしたプレイをする人だったら、TAKEOさんは、変わったリズムとか、とてもおもしろいプレイをする人だなという印象がありますね。KOHTAさんとTAKEOさんのその関係性が素敵だなと思っています。PIERROTのベースは難しいという印象が昔はすごくあったんです。周りもあまりPIERROTをコピーしていなかったかもしれない。昔はバンドスコアがそんなにないじゃないですか。GLAYやBUCK-TICKとかは出ていたんですけど、PIERROTはあんまりなかったので、耳コピするしかなくて。他の高校には、コピーバンドもいっぱいいたんですよ。そういうところでも、PIERROTをやっている人はあんまりいなかった。いると「お!」ってなるぐらいな感じだったし。俺も文化祭で「脳内モルヒネ」をやろうとしたんですよ。覚えたんですけど、文化祭でバンド自体がダメだって言われてできなかったんですよね。

――PIERROTの曲をコピーしたことはありますか?

YUKKE:ありますよ。「脳内モルヒネ」と「screen 1 トリカゴ」のサビの前のアルペジオ。高校生の時、あのアルペジオだけは、スコアを見ないで自分で音を拾ったんですよ。あれはすごくかっこいいなと思いました。「MAD SKY -鋼鉄の救世主-」はカラオケでもよく歌います。MUCCのファンクラブ旅行でも歌いました。MUCCのファンも、PIERROTの曲を知っている子が多くて、すごく喜ばれました。

――PIERROTの歴史で一番思い出に残っているシーンは?

YUKKE:ライブで対バンをしたことがあって(2003年8月27日、テレビ朝日開局45周年記念“KINGDOM ROCK SHOW”)。すごかったですよ。PIERROTが出てくると、一気に武道館全体の空気が変わりましたね。自分達のライブが終わった後に、日本武道館のアリーナのPA席というすごくいい場所で観させてもらって。この時の「MAD SKY -鋼鉄の救世主-」がすごく印象的でした。その時は自分も高校生の時の感覚とは違いましたが、そんな自分から見ても、「あぁ、やっぱすげぇなPIERROTって!」と思いました。飛び抜けているなと感じましたね。

――PIERROTとの出会いは、YUKKEさんの人生にどんな影響を与えましたか?

YUKKE:オンとオフの違いというか、切り替えの仕方。昔はバンドに対して、ステージの姿のまま普段もいて欲しいっていう願望みたいなものがたぶんあったんですよね。PIERROTは、それをすごく壊していた人達だったし、そういうところが自分にもあるのかなとは思います。キリトさんが、例えばテレビでコメントをしている時にずっとふざけているのを、潤さんが突っ込んだり、なだめたりするようなやり取りって、俺と逹瑯にちょっと似てるなって思ったりもしますね(笑)。

――キリトさんと潤さんのやり取りはおもしろかったですよね。

YUKKE:おもしろいですよね。『Break Out』のコメントとか、番組のキャラクターの“チョコB”をめっちゃいじるんですよ。そのやり取りがすごくて。笑って見ていたけど、勉強になったし、番組の台本から逸れていくような、ああいう路線に行った人って初めてだっただろうなと思います。見ていておもしろかった。ハラハラする感じが好きだった人はたくさんいるんだろうなと思います。

◆PIERROTがいるところに「人を寄せ付ける魅力」っていうのがある

――2014年4月12日18時、発表の瞬間はどこにいましたか?

YUKKE:郡山でライブ中でした。発表はTwitterやヘアメイクさんからその場で聞きました。

――発表を知ってどう思いましたか?

YUKKE:その発表はライブかなとは思っていたので、その前(※2014年4月9日24時、「PIERROT 2014.04.12 18:00 新宿アルタビジョン」とだけ記された、PIERROT名義のWEBサイトが突如出現した)の方がびっくりしましたね。その時、俺、Twitterですごく反応が早かったと思います。興奮したバンドマンのつぶやきがタイムラインに、ばーっと流れて、おもしろいと思って、本当にぞくぞくしました。嬉しかったし、やっぱりPIERROTが好きだった身としてはもう一回観たいし、ちゃんとワンマンを観ていないので、それが観られるかもしれないっていう期待とわくわくはすごかったですね。

――今、復活ライブに思うことは?

YUKKE:この発表が出てすぐマネージャーに電話をして、スケジュールを空けてもらいました。MUCCのメンバー、四分の二がマネージャーに連絡していますね。

――もう一人は?

マネージャー:リーダーです。とびっきりすごいスケジュールが入らない限りは空けます。

――復活ライブで聴きたいこの1曲は?

YUKKE:「ドラキュラ」。今日ここに来る時に「ドラキュラ」ばかりリピートして聴いてきました。あと、「Adolf」では会場全部を観たいですよね。さいたまスーパーアリーナの全員の振りを。

――YUKKEさんも「Adolf」の振りをやりますか?

YUKKE:やりますね。「Adolf」の振りはかっこいいからやるんですよ。この曲を久しぶりに集まった、今のPIERROTのメンバーが演奏することがすごく楽しみです。「MAD SKY -鋼鉄の救世主-」も観たいなぁ。ライブで初めて観て超かっこよかったので。

――二日間ありますから、どんな選曲になるんでしょうね。

YUKKE:どう分けてくるんでしょうね。楽しみですね!

――PIERROTの新しいアーティスト写真はご覧になりましたか?

YUKKE:見ました。この写真、ファンは嬉しいでしょうね。久しぶりにこういう潤さんを見ました。ALvinoじゃない潤さんですね。変わらずかわいいし、かっこいいなと思います。(写真をじっくり見て)あーいいですね。青春ですもんね。

――YUKKEさんにとってPIERROTとは? 一言で表すなら?

YUKKE:「ヒール・ヒーロー」ですね。ヴィジュアル系という、きらびやかだったり、かわいかったり、異国感あふれるシーンの中で、PIERROTは全然違った。

――PIERROTの凄さとは何でしょうね?

YUKKE:「脳内モルヒネ」の頃のPIERROTって、メンバーの歳もまだ20代前半とかですよね。今の20代前半のバンドでこんなバンドはいないと思いますし、ここまで自分達はこれだっていうところを出しているバンドはいないと思うんですよ。当時はもっとインディーズシーンが盛り上がっていたし、バンドのクオリティもすごく高かった。その中で、頭一つ抜けているPIERROTはすごく引き付けるものがあった。宗教的って言っちゃうと、変かもしれないですけど、PIERROTがいるところに「人を寄せ付ける魅力」っていうのがあるなと思いましたね。曲も明るかったり、キャッチーだったりする曲も多いし。PIERROTみたいなバンドって、真似する人はたくさんいるけど、真似できるバンドというのがまだ出てきていないと思いますよ。もしも今、当時のPIERROTが自分達の後輩にいたらやっぱり尊敬しますもん。

◆終わった時に後悔したくないです

――さて、MUCCのお話を伺っていきましょう。9月10日にニューシングル『故に、摩天楼』がリリースされます。テレビアニメ「金田一少年の事件簿 R」のオープニングテーマとなっていますが、アニメのために書き下ろした曲でしょうか?

YUKKE:元々、アニメプレゼン用で何曲かストックがあって、昨年の9月くらい、アルバム制作の前からあった曲で、それをアニメサイドの人が気に入ってくれてという順番ですね。

――この曲の好きなところは?

YUKKE:『THE END OF THE WORLD』(2014年6月発売)というアルバムに入る曲ではないと思うんです。だけど、アルバムツアーのセットリストにポンと入ると、すごく引き立つ曲というか、アルバムの一歩先を見せてくれるような曲になっていると思うので、アルバムに入っているわけではないけれど、なんとなくパッケージが一緒に出来るなっていう曲ですね。ライブでのお客さんの反応も俺はいいと感じていて、ライブの後半とかで、盛り上がる曲に育ちそうな匂いもすごく放っている曲ですね。

――毎月異なる6種類のTOURで、7ヶ月間連続で行ってきた55本に及ぶLIVE PROJECT「SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-」が、いよいよ、9月23日(火・祝)国立代々木競技場第一体育館を残すのみとなりました。ここまでツアーを振り返っていかがでしたか?

YUKKE:始まる前とかは、55本だし、6種類のツアーを組みましたけど、正直2ヶ月先のツアーをどうするかってなかなか考えられなくて。考えることはカロリーを使うなぁとは思っていたんですけど、やっぱりボーっとしていたらできないツアーだったので、常にライブに意識を置きながらやっていたツアーだと思います。1本1本のライブがすごく濃いんですよね。ワンマンにしても対バンにしても考えることがすごく多くて、刺激もあったから、意外とあっという間にここまできましたね。

――ツアーファイナルとなる、Final Episode「THE END」へ向けての意気込みをお願いします。

YUKKE:もうファイナルなんだなって寂しい気もするんですけど、この7ヶ月間の個人の成長したところだったり、いろんな7ヶ月の思いをぶつけられるライブになればいいなと思いますね。ここをやるために組んだ54本でもあったから、終わった時に後悔したくないです。終わった瞬間にどういう感想を持つのかまだわからないですけど、悔しいなとか、そういう気持ちを残さないライブにしたいです。

――最後に、復活ライブを控えたPIERROTのメンバーにメッセージをお願いします。

YUKKE:自分を含めて、この日を密かに待っていたバンドマンも、お客さんもすごく多いと思います。8年ぶりに5人のみなさんが揃ってステージで音を出すことを、自分が若い頃じゃなくて、今の自分の感覚で観られることがとても嬉しいです。当日は客席で、今の自分なんですけど、当時を振り返りながら観る部分もあると思うし、すごく楽しみにしているので、がんばってください。

(文・武村貴世子/編集・金多賀歩美)

※本文中に登場したPIERROTの楽曲・作品(発売日順)

1996.7.21
Indies 1st Album『パンドラの匣』
01. 自殺の理由
02. 青い空の下…
03. 利己的な遺伝子
04. KEY WORD
05. ドラキュラ
06. 満月に照らされた最後の言葉
07. Far East~大陸に向かって~
08. メギドの丘
09. SEPIA
10. 「天と地」と「0と1」と
1997.9.3
Indies 2nd Mini Album『CELLULOID』
01. セルロイド
02. Adolf
03. 脳内モルヒネ
04. Twelve
05. 鬼と桜
06. HUMAN GATE
1998.4.22
Indies 1st Single『Screen』
01. screen1 トリカゴ
02. screen2 VIRTUAL AGE
03. screen3 残酷な夜
1998.12.2
Major 2nd Single『MAD SKY -鋼鉄の救世主-』
01. MAD SKY -鋼鉄の救世主-
02. MOTHER sceneⅡ

MUCC

<プロフィール>

1997年、ミヤ(G)を中心に逹瑯(Vo)、SATOち(Dr)とともに結成。1999年2月、YUKKE(B)が加入。国内外で数々のライブを行い、2006年、初の日本武道館単独公演を開催。2008年、海外バンドと北米、ヨーロッパ、日本を回るツアー「Rockstar Taste Of Chaos 2008」に参加。2012年6月9日「ムックの日」には結成15周年を記念し、過去最大の単独公演となる幕張メッセワンマンライブを成功に収める。2014年5月、シングル『ENDER ENDER』を、6月にはアルバム『THE END OF THE WORLD』をリリース。また、2014年3月より、7カ月間、55本に及ぶ大規模なLIVE PROJECT「SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-」を開催。9月23日にファイナルとなる国立代々木競技場第一体育館公演を控える。

■オフィシャルサイト

http://www.55-69.com

【リリース情報】
『故に、摩天楼』
2014年9月10日(水)発売
(ソニーミュージックアソシエイテッドレコーズ)

『故に、摩天楼』
初回生産限定盤
(CD+DVD)
AICL-2724~2725
¥1,500+税
『故に、摩天楼』
初回仕様限定盤
(CD ONLY)
AICL AICL-2726
¥1,200+税
『『故に、摩天楼』
通常盤
(CD ONLY)
AICL AICL-2726
¥1,200+税

【収録曲】

【初回生産限定盤】
[CD]
1. 故に、摩天楼
2. THE END OF THE DEMO
[DVD]
故に、摩天楼MUSIC VIDEO

【初回仕様限定盤・通常盤】
[CD]
1. 故に、摩天楼
2. Conquest
3. 故に、摩天楼 -TV EDIT-
4. 故に、摩天楼 -ORIGINAL KARAOKE-
※初回プレス分のみアニメ描き下ろしワイドキャップ付き。以降は通常盤となります

【ライブ情報】
●SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-
Final Episode「THE END」
9月23日(火・祝)国立代々木競技場第一体育館