アルバム『SCREW』を経て、更なる一歩を踏み出したSCREW。
デジタルなサウンドに彩られた彼らの最新シングルの魅力に迫る!
SCREWが新たなシングル『CAVALCADE』をリリースする。そこに見えるのは、5人が共有するバンドの確固たる方向性。バンドの軸ともなる作品となったアルバム『SCREW』を経て、彼らが作り上げた今回の3曲は、また一つ歩を進めたSCREWの魅力を濃厚に感じさせてくれる。新たに世に放たれたこの作品について、5人にじっくり語ってもらった。
◆軸は前作のアルバムで固まっていたので今回は更なる一歩を(ジン)
――先日のツアーファイナルでタイトル曲「CAVALCADE」のPVが流れたときの会場の盛り上がりがとても印象的でした。今作のPV、アートワーク共に完成度が高いですね。
鋲:伝えたイメージをPVの監督さんやデザイナーさんがさらに広げてくれました。PVもジャケットも気合いが入っているところが伝わればと思います。
――それにしても今回のジャケット写真、鋲さんの手の部分はどうなっているんですか?
和己:スッて引っ張ると骨だけになるんですよ。名古屋の手羽先みたいに。
マナブ:終わったら戻せますからね。
全員:(笑)
――着脱可能!? じゃあ鋲さん、次の「SCREWのどういたしまして。」の10秒動画はこれで決まりですね。
和己:それ放送事故ですよ(笑)。
――(笑)。メイクもかなりのインパクトです。どこまでが実際のメイクなんですか?
鋲:メイクの原形は以前Twitterのアイコンになってました。
和己:あの汚ねーやつです。
鋲:ヴィジュアル系にはあの肌の色は受け入れられないんですよね。自分的にはパリコレ的な感じなんですけど。
全員:(笑)
――ガリアーノ風ということで…(笑)。話題に事欠かない作品ですが、今回は3曲通してのデジタル色の強さが耳に残りました。全体の方向性は早い段階から決まっていたんですか?
和己:そうですね。表題曲が決まった段階でバランスは見ましたけど。
ジン:今回のシングルは、表向きは新しいエッセンスなんですけど、色々やってきた中で出てきたたくさんのやりたいことの中の一つなんです。それをデモの段階で持ってきてイメージを伝えました。
和己:アルバム『SCREW』も今回の軸になっていますね。みんな方向性が見えていて、それぞれ曲を持って来たんですけど、その中でこの3曲が突出していた感じです。
ジン:今までシングルの収録曲には相反する曲があったりしたんですけど、今回はジャンルは一緒なのかなと思います。枝分かれした感じというか。軸となる部分は前作のアルバムで固まっていたので、今回は更なる一歩をという感じですね。
――バンドの目指す方向性がとても強く感じられました。タイトル曲はいつも鋲さんがタイトルやコンセプトを伝えるそうですが、今回はどうだったんでしょう?
鋲:今回は俺がどうのこうの言うより、アルバムができて次はどうするかということをみんなで話し合って、そこで各自が噛み砕いたものを音にしていった感じです。今回はタイトルが決まったのが締切ぎりぎりでしたし。
――悩みましたか?
鋲:はい。バンドが進んでいく道は見えてたんですけど、見えてわからなくなることもあるなと。
――それは詞に関しても?
鋲:詞はツアー中に、思ったことをそのまま書きました。いつも通り苦労しましたね。今までは、形がないものにタイトルを付けて、そこから曲を作るって流れが多かったんですけど、今回は、あるものに対してタイトルを付けたので、いつもと逆でした。
――「CAVALCADE」というタイトルを聞いたときの皆さんの印象は?
ルイ:そもそも「CAVALCADE」という言葉をその時初めて聞きましたからね。
和己:そうそう。で、次のタイトルこれでいくからって言われて「なるほど!」と。
ルイ:意味を検索して、ちょっと勉強になりました(笑)。
――なかなか日常生活の中で遭遇しない単語ですよね。
和己:ブランド名っぽいよね。発音はどんな感じなの?
鋲:「Cavalcade」。
ルイ:かっこいいなぁ。
全員:(笑)
◆かけたい部分にきちんと時間をかけられた(和己)
――「CAVALCADE」はジンさんの原曲ということですが、デモの段階から完成までに大きな変化はありましたか?
ジン:選曲会に持っていくのはワンコーラスサビくらいなんですけど、その段階からあまりイメージは崩れなかったですね。選曲会後にフルを作ったんですけど、いい意味でみんながアレンジで強化してくれたなと。元のイメージからの変化はあまりなかったです。
――曲作りはスムーズでしたか?
ジン:今回も生み出すのは難しかったです。アイディアが出てくると楽しいんですけど、それまでは苦労しますね。
――レコーディングはいかがでした?
ジン:プリプロ段階で作ったドラムから変更して、その場対応になったりはしたんですけど、納得の上だったので、わけがわからないってことはなかったです。
――この曲はベースがかなり動きがありますよね。
ルイ:はい。でもレコーディングはわりと平気でした。本当はフレーズを作る段階でサビを平たくしようと思っていたんですけど、プロデューサーさんから動かしてくれと言われて、その変更でやり取りに時間がかかりました。基本的には自宅でまったり録ってましたね(笑)。もちろん、録るときはガシッと集中しますけど。
和己:基本的にみんな家の環境を整えているから、家でも録れちゃうんですよね。今回、ギターは自宅で録ってリアンプ(※ラインで録った音をアンプで鳴らしてマイクで録音し直す作業)でやったんですけど、この方法だと音作りに時間が取れるから、いろんなエフェクターを試すことができました。あと今回、全曲ギターソロがなかったのは楽でしたね。アルバムで結構やったし、今回はあんまり必要じゃないと思ったから、それ以外の部分に自分の個性を出したり、かけたい部分にきちんと時間をかけられた。時間を有効に使えたなと。
◆スピード感があってニードルな感じが出せるような音を(マナブ)
――今回、PVで和己さんのタッピングのシーンが目を引きました。
和己:俺は結構タッピングが多いんです。プロデューサーが勝手に入れちゃうんですよね(笑)。ソロじゃなくてセッションのスパイスとして入れることが多いんですけど、それがいい味出しているのかなと思います。
――マナブさんは今回のレコーディングはいかがでしたか?
マナブ:SCREWらしい曲だったのでSCREWらしい音を出すだけだなと。今回アンプを買ったので、今までより納得できる音が作りやすくなりました。
――どんな音にしたくてアンプを変えたんですか?
マナブ:スピード感があってニードルな感じが出せるような音を…
和己:ニードル?
マナブ:ソリッドよりも、さらに尖がってるやつがニードル。
和己:その言葉、絶対今作っただろ(笑)!
マナブ:(笑)。そのニードル感を出しやすい機材が、今の自分には合っているのかなと。アンプを変えたことでやりやすくなりました。
和己:その分、こっちはやりにくくなりましたけどね(笑)。アンプには個性があるから、タイプが違うと、抜けてくるというか、浮いてくるというか…。それがミックスまでは良かったんですけど、マスタリングの時に「あーダメだ!」と思って。納得いかなくて、そこを戻してもらいつつ…でした。なので、俺も機材を変えようと思って今探しているところです。今回、マナブがアンプを変えたことで自分の音の納得いかない部分に気づけたから、マナブにとっても俺にとってもレベルアップにつながるかなと。
――次回の作品のギターがとても楽しみです。それにしてもツアーもあって多忙な最中、いつレコーディングしたんですか?
和己:「CAVALCADE」は、ツアー前に楽器を録って、ツアーの真ん中で残り2曲を録りました。
――強行スケジュールですが、SCREW的には普通なんですか?
和己:いえ、しんどいです(きっぱり)。
◆ライブとレコーディング、どちらに気持ちを持って行っていいかすごく悩みました(鋲)
――鋲さんは、ツアー先で歌詞を書いて、戻ってきて録ったんですか?
鋲:そうですね。ツアー先だったり一回戻ってきて家で書いたり。録ったのはツアー初日が終わったあたりだったかな。でも、ライブとレコーディング、どちらに気持ちを持って行っていいかすごく悩みましたね。その時のテンションが歌に出ちゃうんで。
――ツアー中のモードとレコーディングのモードは違うんですか。
鋲:全然違いますよ。特に今回はいいアルバムができて、それがファンの子にすごく届いていることが伝わってると思えるツアーだったから、こちらとしてはいい気分なわけですよ。レコーディングではそこから現実に戻ってシビアにいかないとですから。
――その気分のまま録るのはダメなんですね。
鋲:うーん、きっと後悔します。まだまったく別物って考えなんですよ。そういうこともあって、今回は録るのに時間をかけましたし、かけさせられました。録っている時にいきなりマイクの音が出なくなったんですよ。別のところからマイクを運んで来る間、気持ちを一定のところに置いておくのが大変でしたね。レコーディングはワーワー騒ぎながらやっているわけじゃないし、ブースから一歩出たらまじめな大人たちがいるわけで、そこで俺は居場所もないし…。今回はそのトラブルに巻き込まれた苦労も大きかったです。
和己:ちなみに俺もギターのレコーディング中にマイクが破れました(笑)。
――今回、マイクのトラブルが多いですね(笑)。
和己:マイクなんて普通は破れないと思うんですけど、破れたんですよね(笑)。いい経験になりました。
――ところで、カップリング曲の「GROGGY SLUMBER」もジンさんの原曲ですが、どういうコンセプトで作りましたか?
ジン:この曲は、よりライブ色の強いものに仕上げようと思って。今回はコンセプト的なところがガッツリ決まってというより、みんなのフィーリングが合ったのでその中で作りました。
――まさにライブ色が強い1曲ですね。
和己:この曲はバンドサウンドが一番強くて、音数も他の2曲に比べて半分ぐらいです。
――それゆえの難しさはありましたか?
和己:シンプルだからこそ難しい部分もありますけど、うちら的には、今までやってきたことなので、特に難しいと感じることはないですね。
マナブ:結構今までの延長線上みたいなところがあるから、どれだけいい音でやるか、いいテイクでやるかを考えていました。弦楽器の感じは今までやってきたことに一番近いことをやっているんじゃないかと。変わらない部分というのも必要だと思います。
――この曲には聴いていて安心するような“SCREW感”がありますよね。
マナブ:そうですね。今回3曲ともそうなんですけど、楽器をやっている人間としてはこの曲は特にそういう部分が感じられた曲です。
ルイ:楽曲的にはこの5人からしたら朝飯前な感じなんですよね。この曲ではベースは楽曲に忠実に弾きました。バンドのアンサンブルが強くて、全体でドンと出る感じの曲は楽曲に忠実にやることがベストなので。この曲はセオリー通りというか、自分が学んできたことに従ったベースでしたね。
――「GROGGY SLUMBER」は“意識がもうろうとする”という意味ですが、音の響きが素敵ですよね。タイトルはいつもどうやって決めているんですか?
鋲:タイトルってすごく大事じゃないですか。だから時間をかけますね。歌詞とタイトル、どちらが先かはその時々なんですけど、今回は全部タイトルが後のせです。イメージが固まっていてそれに合う言葉を探すこともあるし、たまたますごくいい言葉が転がっていることもあるけど、これは後者ですね。
――〈闇の裏は光? もっと深い闇 嘘の裏は真実? もっと深い嘘〉の部分がとても秀逸だと思って聴いていました。
鋲:ここに疑い深い自分がよく表れているなと思います(笑)。
――鋲さん、疑い深いんですか(笑)。今回の歌詞の鍵になった言葉はありますか?
鋲:〈マリオネットにはならない〉ですかね。そこだけ世界を変えて、あえて意識して書いたんです。最後に壊した感じですね。この曲にはこんな歌詞のような人間になってはいけないぞという自分に対しての警告、という裏テーマもあります。
――自戒の意味を込めているんですね。
鋲:はい。こういう人は疲れますよ。俺は考えがちなので、何も考えずにいられた方が楽ですよね。
◆ 「何だこれ!」って思われる曲を作りたかった(ルイ)
――「IT’S A CATCH-22」は“八方ふさがり”を意味する言葉ですが、この言葉を選んだ理由は?
鋲:八方ふさがりは常に感じていますからね。思うことは多々あります。
――歌詞を書いている時にも、八方ふさがり感はありましたか?
鋲:孤独な作業なので、むしろそれしかないです。この歌詞は箇条書きにしたものを最後に英語にしたんですけど、箇条書きにしている時、書きたいことがダーっと出てきましたね。
――思いの丈を吐き出した感じでしょうか。歌詞の冒頭から〈新しい世界を探してた 変化が欲しかったんだ〉とすごくストレ-トですし。
鋲:八方ふさがりだから抜け出したいって気持ちがあったのかもしれませんね。
――この曲は、ルイさんの原曲で、お得意のピコピコ系ですね。ちょっと不思議な楽曲だと思ったのですが。
ルイ:曲を聴き終わったときに「かっこいい!」とか「すげぇ!」とかより、「何だこれ!」って思われるような曲が作ってみたくて。きれいに行き過ぎたくなかったから、打ち込みの要素をわざと不協和音っぽくしたり。聴き終わった後、「ん?」ってなってくれる曲にしたかったんです。
――途中、ベースが指弾きになっていたりして、ところどころで「ん?」となりました。それにしてもこの曲、聴いても構成が見えなかったです。
ルイ:これはわからないと思います(笑)。きれいな音の方が聴きやすいと思うんですけど、カップリングだし、まぁいいかなって思って作っていたので。変化球ですね。
――ある意味、「GROGGY SLUMBER」とは対極にある曲ですね。
マナブ:デモの段階から打ち込みがガツンと入っていて、奇想天外な曲でしたからね。ギターもそれに合わせて摩訶不思議な音とか入れていたんですけど、打ち込みを生かすことを考えたらそういう音をどんどん引いていって今の形になりました。ごちゃごちゃしたギターより、シンプルにしていくのがかっこいいのかなと。
和己:俺も、これは特にギターが主張する曲じゃないなと思ったし、アレンジ的には一番何もしていません。「GROGGY SLUMBER」はチューニングを変えて同じものを録ってみたり、今まで440Hzで録っていたものを400Hzで録ってみたりしましたけど、この曲ではないですね。ストリングスやシーケンスがいっぱいあるから、そこに余計なものはいらないなと。休符をしっかり合わせて一個の塊でいった方がいいんじゃないかということで。
――難易度としてはいかがでしたか?
和己:難しかったです。ルイの休符の位置と俺らの休符の位置が違ったんですよ。ギタリスト目線とベーシスト目線は違うんですよね。レコーディングでは、それを合わせるのが大変でした。
――この曲はドラムの難易度も高そうですが。
ジン:この3曲の中では一番ドラムが忙しい曲です。ルイが持ってきたドラムの打ち込みをわりと再現しているんですけど、パッと聴き、耳では聴こえない音符もあって。それが入っていることでニュアンスが出ているのかなと。曲的にはノリノリなんですけど、やっていることはシリアスです(笑)。
和己:結構シリアスだよね(笑)。
ジン:でも、演奏するのも聴くのも楽しいですよ。今までやってきたような手癖が入っていたりしますし、わりとベーシックなフレーズをフロアタムで刻んでいたりとか。自分的には引き出しが増えたというより、面白いアプローチができた曲です。
――今回の作品は、ぜひライブでも聴きたいです。ところで、先日のツアーファイナルで、「SCREW史上最大の挑戦」「2014年12月」「渋谷」「SCREWより愛を込めて」という謎のキーワードが発表されましたが、真相を教えてください。
和己:東京ドームでライブをやろうかなと思って。
鋲:いやいや、マナブが渋谷に引っ越すんですよ。
マナブ:そうそう、家賃40万円の部屋にね(笑)。
和己:本当のことを言うと、マナブが今度のオリンッピックに向けて渋谷AXの解体作業を手伝いに行くんです。
マナブ:「バイト始めました」って(笑)。
鋲:その告知か(笑)。
和己:もしくはマナブがオリンピックに出るっていう。
ルイ:じゃあ走り込みからスタートだね(笑)。
マナブ:その様子はVifさんの方で…
――うまくはぐらかされてしまいましたが、楽しみです(笑)。マナブさんは何の競技に出るんですか?
マナブ:……トライアスロン。
全員:(笑)
和己:まぁこの件は後々発表できると思いますのでお楽しみに(笑)。
――SCREWのこの夏のテーマは「フェス感」でしたが、次のテーマは何になりそうですか?
和己:来年の夏は決まってるんですよ。「筋肉」です。
全員:(笑)
和己:全員で鍛えていこうかと。みんな日焼けして、上裸のライブは当たり前!な感じで。こちらも楽しみにしていてください(笑)。
(文・後藤るつ子)
SCREW
<プロフィール>
鋲(Vo)、和己(G)、マナブ(G)、ルイ(B)、ジン(Dr)の5人からなるロックバンド。2006年3月結成。2006年4月23日、高田馬場AREAの初ワンマンライブから本格始動。2009年10月には、フィンランドでのTsukiconイベント公演を成功させた他、2012年5月にはSCREW EUROPE TOUR2012『蠍-SASORI-』を行うなど、海外でも高い人気を誇る。2012年10月17日発売シングル『XANADU』で徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビュー。2013年2月6日に2ndシングル『Teardrop』を、2013年7月10日にはバンド名を冠したメジャー1stアルバム『SCREW』をリリース。2014年4月20日には、SCREW 8th Anniversary Live「NEVERENDING BREATH AT AKASAKA BLITZ」の開催が決定している。
■オフィシャルサイト
http://www.pscompany.co.jp/screw/
『CAVALCADE』
2013年11月6日発売
(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
アルバム『SCREW』を経て完成したSCREWのメジャー第3弾シングル。彼らの方向性を明確に提示した1枚。
【収録曲】
【初回限定盤A】
[CD]
01. CAVALCADE
02. GROGGY SLUMBER
[DVD]
1.“CAVALCADE”Video Clip
2. Video Clip Shooting Off Shot
3.“Red Thread”-TOUR2013 UNDER THE“SCREW”FINAL AT LIQUIDROOM-
【初回限定盤B】
[CD]
01. CAVALCADE
02. GROGGY SLUMBER
[DVD]
1.“CAVALCADE”Video Clip -鋲ver./和己ver./マナブver./ルイver./ジンver.-,
2.“Get You Back”-TOUR2013 UNDER THE“SCREW”FINAL AT LIQUIDROOM-
【通常盤】
[CD]
01. CAVALCADE
02. GROGGY SLUMBER
03. IT’S A CATCH-22