メジャー2作品目として、流麗なバラードをリリースするSCREW。「変わらない」という姿勢を守りながら、大いなる深化を遂げた彼らの魅力に迫る!
儚く美しいバラードで、SCREWの新たな一面と大いなる可能性を見せつけたニューシングル『Teardrop』。彼らが頑なに守り続ける「SCREWは変わらない」というスタンスを守り通しつつも、その世界観でバンドの更なる深化を明確に打ち出して見せた。結成7年目を迎えた4月20日にはSHIBUYA-AXでのワンマンライブを控える彼らの“今”を、ヴォーカルの鋲、ベースのルイ、ドラムのジンに聞いた。
◆今までと同じようなことは書きたくないし、似たような言葉を使いたくない(鋲)
――メジャー2ndシングルがバラードということに正直驚きました。
鋲:前作(シングル『XANADU』)が疾走感のあるROCKで、今回がバラード。普通に考えたら意味が分からないと思うけど、SCREWとしてはごく自然な流れなんです。
――これは、どの段階で決まったんですか?
鋲:インディーズで活動していく前提で、去年の春に組み立てたプランです。『XANADU』を出して、『Teardrop』を出して、SHIBUYA-AXでライブをやるっていうのは決まっていて、そこにメジャーデビューが…という感じでした。よく2ndシングルでバラードは珍しいと言われますけど、この曲をAXでやりたいという気持ちがあったし、俺たちからしたら予定通りなんです。
――この曲はジンさん作曲だそうですね。曲のイメージができたのはいつ頃だったんですか?
ジン:構想自体は以前からあったんですけど、デモを持ってきたのは『XANADU』を発売した後かな。制作はわりと最近なんですけど。
鋲:去年の春くらいからヴィジョンはあって、形にしていったのは秋ぐらいですね。「Teardrop」というタイトルは、いつか使いたくてずっと温めていた言葉です。
――デモの段階から完成するまでに大きな変化はありました?
ジン:デモを作る段階で構成ややりたいことを話し合って、それを形にしたので、デモからのイメージは変わっていないんです。でも、歌詞とか鋲の歌い方でプラスアルファの肉付けがされたので、完成してみたら予想以上に世界観が出ましたね。
――SCREWは曲を作る前に、いつもある程度楽曲の方向性を話し合っているんですか?
鋲:リード曲は作品のタイトルと内容の希望をメンバーに伝えて決めてます。リード曲にはコンセプトがありますけど、カップリングは各自がやりたい曲をライブを見据えて作って持ってくる感じですね。
――なるほど。今回のレコーディングはいかがでした?
ルイ:ベースはもう力を抜ききってます(笑)。カップリングと全く違うというか、角がないように、丸く丸く…。フレーズも音も雰囲気に徹するというか。こういう曲でのベースの役割はそういうものじゃないかと。最初にデモを聴いたとき、丸い音がイメージできたので、特に悩むこともなく作れました。良い意味でやることが明確だったので。
ジン:ドラムに関してはいつも通りではなかったです。今回はプロデューサーからいろいろ案が出て、僕が思っていたのとは別の叩き方で録りました。バラードなのに力強い叩き方をしています。
――現場で変わったんですか?
ジン:そうです。フレーズは同じなんですけど、叩き方で印象が全然違って。激しい曲を叩いているかのようなレコーディングでした。すごく機械的な動き方で抑揚をつけない、おもちゃみたいな動きなので、不恰好なレコーディングでしたけど(笑)。
――それはちょっと見てみたいです(笑)。それにしても『Teardrop』は、ものすごく純度が高い恋の歌ですよね。
鋲:歌詞で書きたいことは定まっていたんですよね。あとはニュアンスを変えたり、自分の色を出した結果、詩的な素敵な歌詞になったかなと(笑)。
全員:(笑)
鋲:新しい自分が出せましたね。今までと同じようなことは書きたくないし、似たような言葉を使いたくないし。あるものを傷つけていくのは好きなんですけど、さすがにこれだけ綺麗な曲に尖った言葉をのせても違和感ありありだったので。この透明な感じに下手に色を付けても仕方ないなと。それにしても、まさかジン君がこんな純粋だったとは…。
ジン:まぁ、僕の武器の一つですね。
全員:(笑)!
鋲:(笑)。経験上、スローテンポな曲とかバラードに自分の歌い方や歌声がうまく絡むことはわかっていたので、良い曲ができたなと思います。でもレコーディングの環境にはビビりましたね。ビッグアーティストの方々が録ったスタジオだったので、生まれたての小鹿みたいになってました(笑)。最初、近所だからコンビニに行く感覚で良いかなと思っていたんですけど、着いたらプルプルしちゃって。足を踏み入れちゃいけないところに入っちゃった…と思いましたね。
――(笑)。ジンさんとルイさんもプルプルしました?
ルイ:俺、家で録ったので。
ジン:僕は別のスタジオです。
――あれ!?
ルイ:俺は家で自分で録って、自分で編集して、データを「はい」って渡して終わっちゃうんですよね。事前のプリプロでどうするかをきっちり決めているので、それを録り直すだけですし。
鋲:彼は自宅に良いスタジオ持ってますからね。
――先日、某雑誌に載っていたあの素敵なお宅ですか。
ルイ:(笑)。インディーズの時からこうやって録っているので、違和感がなくて。今回、カップリングの曲は、ジン君が叩き終わる前に録り終わってました。
――なんて優秀な進行スケジュール!
ルイ:ちなみに、ギター陣は和己の家で二人で作業していて、彼らも彼らで「終わったよー」ってデータを持って来るんです。彼らはその後スタジオで機材を使ってリアンプ作業をするんですけど、ベースはその作業がないので、3曲分の同期もシンセも入ったUSBを渡して終わりです。
鋲:それだけプリプロで詰め切れてるってことですよ。
ルイ:うん。そこまで5人できっちりやりますからね。
◆ドラマーとしての表現の幅が広がって面白い(ジン)
――前作でも感じましたが、今回の収録曲3曲も楽曲の色が見事に分かれていますね。
ジン:そうですね。リード曲がバラードなので、カップリングには相反する曲を持ってきたいなと思って。似たような曲を入れても聴く方も納得しないかなと。
――カップリングの2曲は特にSCREW色が濃いですよね。
鋲:バランスは大事だなと。逆にこういう曲が入ってないと、自分たちとしても「SCREW、変わったな…」と思うし。
――変わらないというスタンスを大事にしていると、前に言っていましたよね。
鋲:変わったらバンドが死んでしまうと思うんですよね。一本芯を通したいなと。
――なるほど。そんなSCREWらしさ満載の「Blood Sucking Freak」はルイさん曲とのことですが。
ルイ:大元の曲は、1年前に家で作っていたんですけど、微妙だったので放っておいたんです。久々にデータを開いてアレンジしたんですけど、ほぼ1から作り直した感じですね。俺の曲って、良くも悪くもバンドの中で浮いてるんですよ。でも、5人で作ったらSCREWの楽曲になりました。
――すごく耳に残りますよね。
ルイ:暗い印象にしたくなかったんですよ。カップリングがこの2曲って決まっていて、「ANIMA」はズシッとしているので、暗くならないような曲にしたかった。自分で作ったデモと聴き比べると、全員で作るとやっぱスゲーなと思いますね。鋲ちゃんが歌えばSCREWになるんだ、さすがだなと。
――鋲さん、すごく褒められてますよ。
鋲:…あんまり褒められることないんでどう反応していいのか…。
ルイ:(笑)。
――それにしてもSCREWはメンバー一人一人、作る楽曲の色が違ってすごくバランスが取れていますよね。
ルイ:そうですね。うまく色が分かれるのは強みだなと思ってます。自分はピコピコしているのが得意分野なんですけど「ANIMA」みたいなズシッとリフ勝負みたいなのはあんまり得意じゃなくて。そういう曲は和己とかジンちゃんがカッコいいのを持って来てくれるので、俺はあんまり持って行かないです。
――そんなルイさんの曲を最初に聴いたとき、ジンさんはどんな印象を持ちました?
ジン:悪い意味じゃなく忙しいドラムだなと(笑)。でも僕目立ちたがり屋なんで、デモでルイ君が考えてきたドラムが自分にはない引き出しのフレーズだったことでチャレンジ精神がめらめらと(笑)。レコーディングは楽しかったですよ。
――ドラムは忙しかったですか?
ジン:はい(笑)。ライブではまだやっていない曲なので、ライブが楽しみです。「ANIMA」も楽曲自体は激しいんですけど、そのドラムより色々細かいことやってますからね。
ジン:ドラムが難しいのはルイ君の曲が多いですね(笑)。その分、ドラマーとしての表現の幅が広がって面白いなと。
――鋲さんは作曲者によって、歌いやすさ歌いにくさはありますか?
鋲:作曲者が持ってきたメロディを8~9割は変えるので、100%原曲のままで歌ったことがないからなぁ…。メロディは結成当初から自分がって話をしていたので。この曲もデモを聞いたときに自分の知らない世界のメロディが広がっていたので、よりかっこいい方向に行けないかなと模索して、結果的に一番化けましたね。最後にのる歌次第で化けるかなとは思っていたので、時間がかかりましたけど、頑張りました。
◆「あ、いつもの鋲ちゃんだ」と(笑)。安心感がありました(ルイ)
――もう1曲のカップリング曲「ANIMA」は和己さん曲ということですが。
ジン:「ANIMA」はデモの時からあまり変わってはいないですね。デモは大体ワンコーラス持ってくるんですけど、そのワンコーラスのイメージが最後まで続いた感じです。ミクスチャーへヴィーロックというか。スクラッチ音が入っていたり、間奏で今まで使ったことがないボンゴやティンパニーの生演奏を入れたり。ちなみにスクラッチ音は和己の声なんですよ。
――てっきり鋲さんの声だと思っていました!
ジン:実は和己なんです(笑)。トータルでいろいろチャレンジした曲ですね。
――ところで、この2曲の歌詞を聴いて「鋲さんがそろそろ本性を出してきたな」と思っていたんですが。
鋲:(笑)。「XANADU」の4曲は、メジャー1発目ということで、探り探りの部分もあったんですよね。どこまでOKなのかって。今回は逆にやりすぎてNGが出まくりました(笑)。「前回ここまでOKだったから、これもOKだろ」ってやったら…
ジン:検問にかかったと(笑)。
鋲:うん(笑)。だから、うまくかいくぐってニュアンスを変えて、言いたいことは変えずに突破しましたね。
――ルイさんとジンさんは、この歌詞を見たときどう思われました?
ルイ:「あ、いつもの鋲ちゃんだ」と(笑)。安心感がありました。
ジン:いろんな表現の仕方を今まで見てきているので、いつもの鋲ちゃんていうのも感じますし、何か生み出そうとしているなというのも感じましたね。成長というかうまい表現の仕方を出してきた感が。こいつぁやるな、限界感がないなと。
鋲:見ているところは一緒なんですけど、物の捉え方を変えたというか。例えば「ANIMA」だったら、“死のカウントダウン”ていうテーマで「どうせ死ぬし」みたいな方向で書いてたんですけど、捉え方を変えて「生きてる間の時間を、死ぬ気で生きていこうぜ」っていう方向から同じことを書いくようにしたり。僕の中では作曲者が曲を作るのと同じ感覚ですけどね。でも止まりたくないから常に新しい表現を出していきたいなとは思うので。それが伝わっているってことかな。
――作品ごとに進化しつつ、4月20日にはSHIBUYA-AXでのライブが決定、渋谷109MEN’Sで巨大懸垂幕も再登場ということですが。
鋲:まずはSCREWを知ってもらうことからですから。その先にどう心を拉致するかですね。
――(笑)。SHIBUYA-AXにはどんな印象を持っていますか?
ジン:結構前から決まっていたんですけど、当時より現実感がありますね。その頃は漠然とした意気込みだったんですけど、近づくにつれて、着実にそこに向かっているというか。
ルイ:重要な一本ではあるんですけど、あくまでも通過点として見たいので、そのためにもとにかくしっかりライブを形にしないといけないなと。でも個人的に、あまり前から意気込むと空回るタイプなので、あえて考えないようにしてます(笑)。
鋲:7年やってAXに立てる立場になったわけですけど、言ってもライブハウスじゃないですか。自分たちにはライブハウスで映える楽曲がたくさんあるし、いつも通りやるだけです。もっと広いところでできたら良いのにって思っていた曲が、やっと解放できる、今まで見せられなかったものを見せられる場所かなと思います。読んだ方はぜひAXでSCREWを観てほしいですね。
(文・後藤るつ子)
SCREW
<プロフィール>
鋲(Vo)、和己(G)、マナブ(G)、ルイ(B)、ジン(Dr)の5人からなるロックバンド。2006年3月結成。当初はシークレットライブを精力的に行っており、2006年4月23日、高田馬場AREAの初ワンマンライブから本格始動。2009年10月には、フィンランドでのTsukiconイベント公演を成功させた他、2012年5月にはSCREW EUROPE TOUR2012『蠍-SASORI-』を行うなど、海外でも高い人気を誇る。
2012年10月17日発売シングル『XANADU』で徳間ジャパンコミュニケーションズよりメジャーデビュー。2013年2月6日に2ndシングル『Teardrop』をリリース。
■オフィシャルサイト
http://www.pscompany.co.jp/screw/
『Teardrop』
2013年2月6日発売
(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
SCREWのメジャー2ndシングル。タイトル曲『Teardrop』の美しい旋律と、彼ららしさを色濃く出したカップリング曲を収録した必聴の1枚。
【収録曲】
【初回生産限定盤A】
[CD]
01.Teardrop
02.Blood Sucking Freak
[DVD]
01.Teardrop MUSIC CLIP
02.MUSIC CLIP MAKING
03.XANADU(Live at Shibuya O-WEST2012.10.17) 03. Photo Shooting [Type-A]
【初回生産限定盤B】
[CD]
01.Teardrop
02.Blood Sucking Freak
[DVD]
DOCUMENT of Shibuya O-WEST(2012.10.17)
【通常盤】
[CD]
01.Teardrop
02.Blood Sucking Freak
03.ANIMA