CHAQLA.

“覚醒”と“命の衝動”を掲げたEP『覚命盤』が完成。唯一無二のCHAQLA.サウンドが未知の体験へと誘い、第三の目を開眼する

あなたはCHAQLA.というバンドを知っているだろうか。2023年に“ヴィジュアルアートロック”を掲げて始動し、鋭い攻撃性と高い芸術性を兼ね備えた独自の存在感で、瞬く間に“次世代ロックの筆頭”として注目を集めている。メンバーそれぞれが異なるルーツを持つからこそ生み出される、真の意味でのミクスチャーロックサウンドは、彼らが唯一無二である所以のひとつだ。そんなCHAQLA.から、kai(G&Cho)とBikky(Dr)が新作EP『覚命盤』を引っ提げてVif初登場。バンドの成り立ちから最新作、そして今後の展望までじっくり語ってもらった。


とんでもねぇバンド、ロックスターのバンドを組もうと(Bikky)

Bikky

初登場のフレッシュなバンドということで、まずはCHAQLA.結成の経緯を教えてください。

Bikky:発起人が自分なんですけど、とんでもねぇバンド、ロックスターのバンドを組もうと思って。まず、ヴォーカルのANNIE A(以下、ANNIE)は、CHAQLA.を組む前から仲が良かったんですけど、彼の才能をすごく尊敬していたので、一緒にやりたいなと。その後、ギターののあか(2025年2月脱退)を誘いました。それでライブをやろうと思った時に、前に同じバンドをやっていた鷹乃助とテレビ通話をしていて、「ベーシストがいないんだよね」という話をしたら「俺がいるじゃん」と。「え、待って。そうじゃん!」みたいな(笑)。

まさかの(笑)。

Bikky:普通に友だちとして話していたから、鷹乃助がいるってことをすっかり忘れていて(笑)。じゃあ一緒にやろうとなって、最初はその4人でライブを始めたんです。セッションバンドでコピーをやっていたんですけど、もう一人ギターが欲しいなと思って、いろんなライブを観に行ってカッコいいヤツを探そうと。その時に、いろんなバンドマン友だちから、「ギターはkaiちゃんがいいよ。でもkaiちゃんは、もうバンドを組めるかわからないね」みたいなことを、すごくいっぱい言われていて。でも、俺は絶対に組める自信があったので、Xでkaiちゃんをフォローしたら、フォロバされて、速攻でダイレクトメッセージを送りました。

今っぽい。それにしても、なぜ周囲の皆さんは、kaiさんはバンドを組めるかわからないと言っていたのでしょう?

Bikky:多分、次に組むのを相当精査しているというか。

kai:前のバンドが解散して間もない頃だったんですよね。

Bikky:おそらく「kaiちゃんがいい」と言っているヤツらは皆、kaiちゃんを一度は誘っていて、断られたんだと思います。だから、お前も無理だよって感じだったんじゃないかなと。

となると、kaiさんがこのバンドに入ろうと思った決め手は何だったんでしょう?

kai:Bikkyが前にやっていたバンドの時から存在は知っていて。彼はアパレルをやっていて、僕、服が好きなので、バンドマンでアパレルをやっている人というのは、ちょっと気になる存在でもあったんです。で、その人から急にフォローが来たので、とりあえずフォロバして。最初のメッセージも、なんか良かったんですよね。

と言うと?

kai:他にもバンドの誘いがいくつかあったんですけど、Bikkyは「とりあえずライブしたいっす」っていう感じだったので、良い誘い方だなと思って、会ってみようと。ちょうどその頃、先輩のバンドのサポートをしていて、ほぼ入りかけていたんですけど、Bikkyが気になったので1回会って、二人で飲んで…もうなんかマインドですね。話していて、精神性がいいなって。どこまで行きたいっていう話も、武道館とかドームじゃなくて、その時から宇宙と言っていたり。

Bikky:ドームを目指して、やっと武道館ソールドぐらいかなと思っていたので、じゃあドームをソールドさせたいとか、世界ツアーに行きたいとなると、宇宙ツアーを目指すしかないなっていう(笑)。

kai:スケールがデカい話だったので、おもろいなと思って。酔っ払って二人で川沿いに行って、彼がはしゃいでいた辺りで、一緒にバンドやろうかなと思いました(笑)。

(笑)。初めて音を合わせた時のことは覚えていますか?

kai:覚えています。最初の合わせはスタジオだったよね。

Bikky:しかも、なぜか全員上裸で。魂の熱さで脱ぐっていう(笑)。

kai:上裸で東京事変の曲をやったよね。その時は各々の演奏を上手い下手みたいな意識では見てなくて、どういう音や表現をしているかを見ていたような気がします。

Bikky:同じく。

話を聞けば聞くほど、集まるべくして集まったメンバーという感じがします。

Bikky:本当にそう思いますね。このメンツがちょうど皆、それぞれがやっていたバンドが終わって、新バンドを探しているタイミングだったので、割と奇跡だなと。

kaiさんとBikkyさんは2年ぐらい一緒に住んでいたそうですが、だからこそ知っている一面は何かありますか?

Bikky:そんなものは無限にあります(笑)。

kai:いっぱいあります。

Bikky:本当に申し訳ない気持ちでいたんですけど、kaiちゃんがとにかく家を綺麗にしてくれるんですよ。俺が汚してはkaiちゃんが綺麗にしてくれるという。二日酔いの俺が「ホントにごめんね」って言うと、「いや、俺は掃除が好きだから大丈夫だよ」って言ってくれて。なので、俺は料理を作っていました。

kai:いい役割分担だったと思います。別にストレスなかったし、喧嘩もしなかった。

Bikky:2年間で1回も喧嘩してないね。超楽しかったっすね。

いやぁ、青春っぽい。

kai:バンド自体が青春っぽくて。それに、メンバー以外の友だちも出入りするような、皆の集まり場所という感じだったので。

Bikky:めっちゃ思い出深いのは、バンドを組んでまだ準備期間の頃に、お金がなさすぎて皆で現場仕事のバイトを入れたことがあって。その後に、夜も各々飲食店でバイトみたいな。そしたらもう苦しくなっちゃって、しんどすぎて俺、帰り道で泣いちゃったんですよ。それで家に帰ったら、kaiちゃんも同じくらいの時間にバイトから帰ってきて、「俺、今日帰り道で泣いちゃったんだよね」って言われて、「え!? 泣いたの俺なんだけど…!?」みたいな(笑)。同じ日に同じタイミングで帰り道に泣いていて、これは青春だなって思いました。

最新作『覚命盤』やこれまでの楽曲を聴くと、CHAQLA.の皆さんがすごく色々な音楽を吸収してきたんだろうなというのが伝わってきます。

kai:好きなものがそれぞれ違いますね。

Bikky:ジャンルとかルーツは違えど、確かに皆、いろんな音楽を聴いているよね。その中で皆が共通して好きなものの一つがV系で。だからヴィジュアル系をやっています。最近、事務所の人が他の方に僕らを紹介する時に、「間違えてV系に来ちゃった子たち」と言っていました(笑)。

各々のルーツを混ぜているから出せる音楽って、真の意味でのミクスチャーだと思いますし、それこそがCHAQLA.の強みだろうなと。ちなみに、リンプ・ビズキットのライブを皆さんで観に行って、ビラ配りをしたそうですね。

Bikky:そうなんです。しかも、それまでビラ配り自体したことがなかった。

kai:その1回だけです。

Bikky:当時、バンドが使えるお金はそんなにあったわけじゃないですけど、5人分のチケットを買って観に行って、終演後にビラ配りをしました。

V系の先輩バンドではなく海外アーティストのライブ、しかもリンプというのがもうCHAQLA.を物語っているなと。

Bikky:確かに(笑)。ちなみに来週、皆でレッド・ツェッペリンの映画を観に行こうと言っています。

本当に仲が良いですね。ところで、かなりハイスピードで楽曲が生み出されていると思うのですが、CHAQLA.としては普通ですか?

kai:曲が大分増えてきた感じはありますね。でも、集中して制作に入る期間があるのと、メインコンポーザーのANNIEがそれ以上のデモも書いていて、いっぱいタマはある感じなので。まぁでも、言われてみれば早いのかもしれないです。

kai

音源制作に入る時、事前に作品の方向性を言葉でディスカッションするのでしょうか?

Bikky:ANNIEは「どういう感じの曲がいい?」とか、割と聞いてきますね。だから、「じゃあ一緒に作ろうか」となって家に行くんですけど、大体お酒を飲みながらディグっちゃって、「この曲カッコいいね。このMVカッコいいね」って、1日音楽自由研究みたいになって曲を作らずということが(笑)。そういえば、全員での話し合いはないかな。

kai:うん。俺も、自分の曲は自分がやりたいものを作っているだけという感じだし。細かい話し合いはないですね。大雑把な道筋決めみたいなものは、毎回ありますけど。

ANNIEさんがデモを作って、メンバーの皆さんがアレンジする制作方法が基本のようですが、4人体制になって、例えば皆で一緒にスタジオで曲を作ったり、これまでと違うアプローチも考え始めているという発言を目にしました。実際曲作りの方法に変化はありますか?

kai:今回はまだないです。制作に関わってくれる人が増えたから、任せる部分を任せられるようになったぐらいで、作曲自体は今までと同じスタイルです。ただ、ライブでの曲間とかはフリースタイルセッションでやるんですけど、ANNIEがラップして俺らがセッションして、みたいなのは増えてきているので、そこから派生したら曲も作れるんじゃないかなと思います。

Bikky:スタジオでの音出しで、kaiちゃんがギターを弾いているところに、俺が急にドラムを合わせると、もうベースも乗っかってきて、そこにANNIEもっていうことが最近結構あって。スタジオは大体それでずっと遊んでいますね。

今後、そこから曲が生まれそうですね。各パートのアレンジは、それぞれ自由にやっていくのでしょうか?

Bikky:ドラムは割とANNIEの出したいビートがあるんですよね。それと、鷹乃助もドラムを叩けるので、ここはどういう手順で叩いたらいいかとか相談もできますし、今回のRecはエンジニアの人がドラマーだったので、お洒落なフレーズを色々教えてもらいました。なので、あまり自力でアレンジしてないですかね(笑)。

kai:ドラムは皆でやる感じだよね。ギターは好きにしています。ただ、ANNIEのデモは割と作り込むので、結構クオリティが高いんですよ。なので、そのままでいいところはそのまま、ちょっとだけ音を増やしたり、メロディとコードがぶつかっていて気持ち悪いなと思ったら、変えるくらいですかね。今回の「ANTHEM」とか変えた気がします。だけど、たまに1回弾き直して送った後に、ANNIEから「ここはやっぱ俺のこの感じを出してほしい」と返ってくることもあって。逆に僕も、自分の曲だけどANNIEに言われて変えることもあります。多分、全パート各々思ったことを感覚で言って、その感覚に寄せてみるみたいな作業をしていると思います。

ANNIEさんが譲れなかったのは、具体的にどんな部分だったんでしょう?

kai:ANNIEって、音楽知識が多いわけじゃなくて、実は感覚で作っているんですよ。だから分解すると結構めちゃくちゃだったり、ギタリスト的に見ると変な部分があるので、僕は元のニュアンスを殺さないように、上手く整えるアレンジをいつもしているんです。特にリードギターの単音とかは感覚でウニョウニョ弾いている感じなので、それをいつも綺麗にするんですよ。それで「Revolution-365」の最後のサビのリードギターを自分のニュアンスで綺麗にしていたんですけど、ANNIEのデモではちょっと激しいギターソロみたいなのが鳴っていて、あのニュアンスは残してほしいと言われたから、もう一度変えました。逆に「Crush! my honey」は僕の曲ですけど、サビの雰囲気をどうしようか、ANNIEと話して最初のデモからは結構変えましたね。

なるほど。さて、CHAQLA.の皆さんは音楽を研究するのが得意だと思うので、今回はぜひ各曲のお互いのパートの好きな部分を挙げてみてほしいなと。

Bikky:わー、それはなかなかムズい! いけるかな(笑)。

kai:いけるでしょう。

「-起-」はSE的なものなので、「PLASMA⚡️」からいきましょう。

kai:ドラムは、パンクのツービートをANNIEがやりたがるんですけど、Bikkyはそんなに通ってきているジャンルじゃないそうで。だけどANNIEに何回もやらされているうちに(笑)、どんどん上手くなっているのをこの曲で感じました。安定している感じ。

Bikky:メロコアとかは、あんまり通ってないですね。刻みを合わせる時に俺は両足で踏むわけですけど、ギターは手でやるじゃないですか。すごいなっていう(笑)。

kai:足のほうがすごいだろ(笑)。

Bikky:前の作品の「BACK TO THE FUTURE」でも思ったんですけど、こういう刻み系の曲とか、捉え方が多分違うんだろうなと思います。俺は足で捉えるから、手の感じとリズムの取り方が違うというか。感覚的な話ですけど、全然違う楽器だなと思います。

この曲は破壊力が高いですよね。個人的には〈おとぎ話のような人生は〉の部分で、ギターとベースが歌メロと同じフレーズを弾いているのが効果的だなと思って。あと、サビの所々に入るアクセントのギターもいいなと。

kai:あー、あそこですね。メロディアスなギターが好きなんですね。

Bikky:なかなかオタクですね(笑)。

2サビ後半のベースもすごいですよね。

kai:今回、エンジニアさんがピアノを弾ける人だったので、ピアノで当ててベースフレーズを一緒に考えながらレコーディングしているんです。だから、鷹乃助だけじゃ出てこない、ベーシストが思いつかないようなフレーズがめちゃくちゃいっぱい入っていて、これもその一つだと思いますね。

なるほど。この曲、サビのドラムは相当速くないですか?

Bikky:速いです。さすがにしんどかったですね。しかもデモのドラムが本当にめちゃくちゃだったんですよ。それこそこのセクションは、エンジニアの人も一緒に迷ってたよね。「これ、何を叩いているんだろう?」って、一旦綺麗に分解して助けてもらいました。

そうなんですね。では「Revolution-365」はいかがでしょう?

kai:サビとかキメが多くて、ANNIEはこういうのがやっぱり好きなんでしょうね。結構入っているから。それがBikkyらしいドラムみたいな雰囲気になってきている感じがします。

Bikky:このドラムって、洋楽っぽい気がするんですよ。あ、ドラムの話になっちゃった。まだ音源が完成したばかりで、ドラムに注目しちゃうところがあるので、ギターの良さまで深掘れていませんでした。ごめんなさい(笑)。

こちらこそ無茶振りですみません! ここから話を切り替えましょう。この曲のドラムは張りのある音色というか、スコーンと抜ける感じが気持ちいいなと。

Bikky:今回、曲ごとにスネアを変えていて、なんならシンバルも変えているんです。エンジニアの方が何個かスネアを持ってきてくれたんですけど、椎名林檎さんの「本能」のレコーディングをしたスネアの実物があって。あの音を超えるスネアは今後人生で出会うかなっていうぐらい良い音で、ヤバかったよね。

kai:感動した。これを聴いたら他は嫌だなぐらいのスネア。それを今回使っていますね。乾いているけど、スコーンってくるような感じは、それのおかげかもしれないです。

間奏からラップセクションの流れも、語彙力を失うすごさでした。

kai:これ、ANNIEは一気に録っているんですよ。ニュアンスを大事にしたくて、分けてないんです。さすがにこれを録っている時、「すごいね!」って言ってました。めちゃくちゃ難しいことをしているので、本当によくできたねっていう感じ。

楽器陣のユニゾンもめちゃくちゃカッコいいですよ。

kai:普通のギターのリフなんですけど、それだけだと面白くないので、オクターブ高いところを一瞬挟んだり、自分で勝手にやっているこだわりみたいなのもあります。好きな部分は、さっき話に出た最後のサビの後ろで鳴っているリードギターですね。ANNIEに言われて弾いたら、めちゃくちゃカッコいいなと思いました。サビだけど、ギターソロみたい。ライブでも弾こうかなと思っています。あとこの曲、リフのミクスチャー感がいいですね。