2025.04.30
Azavana@恵比寿LIQUIDROOM

ONEMAN TOUR 2025 「証」-TOUR FINAL-

Azavanaが自身初のワンマンツアーに掲げた、『証』というタイトル。なんとも重みのある言葉を選んだものだと思ったものの、この一文字に対してそう思わせるほどAzavanaというバンドが持つ深みは底なしであるということを理解するまでには時間を要さなかった。それというのも、今ツアーを発表したのが昨年10月に行われた1st ONEMAN「灰の海に泳ぐホタル」(池袋harevutai)でのことで、冷静に考えればつい半年前であるのに体感的にそれよりも以前のことのように感じられたのは、この半年間でAzavanaの名がクロスメディア的にも瞬く間に広がり、それ相応の怒涛な活動を行ってきたからだとも言える。

そして、全14公演それぞれの形で”証”を示し、ツアーの締めくくりとしてこれまでの軌跡が烈火の炎の如く燃え盛ることとなった4月30日、恵比寿LIQUIDROOM。SEに乗せてメンバーが登場し、特に遼がセンターへ構えたとたんにとたちまち覇気が漲っていくのが見てとれた。「Morphine」から迫力十分かつ妖艶にAzavanaのライブ空間へと引き込むように幕開けを飾ると、逆光に浮かび上がった5人のシルエットが神格的オーラを放つ中、「おいリキッド、準備はいいか!」と遼の一喝が響いた瞬間にオーディエンスはすぐさま拳を突き上げて応えた。

遼(Vo)

このとき微かに感じた畏怖の念は、ここから始まる清々しいまでの混沌の予兆だったと後に思い知ることになる。「かかってこい!」という遼の扇動に観客はおろかメンバーも一気にタガを外した「GENOM」にはじまり、詩結の印象的なギターフレーズが映える「愛怨」、一気にデカダンな空間へ堕としこんだ「渇き」。さらに、「おいリキッド、気合い入れて来たか!? ファイナルだぞ、飛ばしてこい!」と遼がけしかけると、Яyuのベースから勢いづいた「ノイズ」でもフロアを絶え間なく躍動させ、ダウナーな空気に飲み込んだ「Focus」へと一気に駆け抜けていった。

ただし、ここまでの勢いはあくまでも序章に過ぎなかった。好機となったのが「Phantom Shell」で、格段に音圧は増しているものの疾走感やソロ回しの見せ場はそのままに、なによりもこの曲に込められた”疎外感”と遼の繊細でいて存在感のある歌声が掛け合うことで儚さを増強させる化学反応を見せていた。そこへ、「孤独におはよう」の荒みを内包したサウンドによって絶望を畳みかけていく。ネガティブに向き合う表現方法はさまざまだが、Azavanaでいうそれはとことんそこへ同調することで道を見つけだす、といったところだろうか。それでも一筋の”救い”を、音楽を通して残すことは欠かさない。観客がステージへとまっすぐ手を伸ばしてそれを掴み取ろうとした「Mother」で溢れかえる思いは、S1TKが踏み鳴らしたツーバスの勢いも相まって洪水と化した音にもしっかりと表れていた。

諒平(G)

暗転を挟み、メンバーを呼ぶ観客の声を打ち消すように雨音が響いたかと思えば、ピアノに乗せたアカペラからの披露となった「レンズ」のメロウさはより一層陶酔させる引力を発揮。続いた「他人事」で強く印象に残っているのが、”確かな証”というフレーズが耳に飛び込んできたのに加え、”求めあう今日も人は人を”というラストのフレーズをピンライトのもとで遼が歌い上げたこと。最後にマイクが落下した鈍い音だけが会場に響くと同時に暗闇に包まれたとき、今この瞬間にも世界のどこかで起きている惨劇を彷彿とさせるリアルを「他人事」を通して突き付け、やはりここでも絶望に似た感情を抱かせるも、そこに付随する遼の意思を、遼のやり方でライブに反映していたことを一際濃く映し出していた。

そして、この日のハイライトは間違いなく「カトレア」だろう。「他人事」終わりでステージから遼は姿を消しており、それを確認できたのは真っ赤に照らされたステージに演奏陣の姿が物々しく浮かび上がったとき。各曲に度々登場する”咲く”という言葉はAzavanaというバンド名に親和性を感じさせるが、「カトレア」にはそれとは真逆の”儚く散れ”という言葉がある。そのフレーズが不気味に会場へ響き、迫真の演奏によるインストゥルメンタルのアレンジを施した冒頭に息を飲んだ一幕を経て、再び登場した遼が狂ったような笑い声をあげて歌い出し、挙句の果てには禍々しい曲の世界観を歌うだけに留まらず激しく手首を掻く衝動的行動でも表した。ちなみに、Azavanaを初お披露目した日の1曲目に披露したのがこの「カトレア」で、今思い返してもこんなにも強烈な曲を産声に選んだバンドだ、やはり只者ではなかったのだと今更ながら思い知る。

詩結(G)

圧倒的ゆえに込み上げる鬱屈とした気持ちに浸る間も与えず、Яyuが先陣をきって歓声を助長させた「微熱と過呼吸」を投下し、フロアを大きく縦に揺らした「ホオズキ」では更なる熱を乞うように遼は”手の鳴る方へ”に合わせて手招きの代わりに指で挑発。そんな遼が手持ちのCo2を噴射しながら「涼しいだろ?」と心なしか笑顔を浮かべた「牡蠣(仮タイトル)」ではウォールオブデスも起こし、興奮冷めやらぬ状態の中にかましたのが、もはやAzavanaを象徴する1曲と言っても過言ではない「飢えた球体」だった。オーディエンスはおろか、中指を立てた詩結をはじめとするメンバー共々凶悪な形相に仕立て上げてしまうのだから、もはや恐ろしいまである。

だからこそ、彼らの特異点としてまず挙がるのがライブにおける破壊力であることは納得なのだが、では、その核にあるものは一体何なのか。それは間違いなく演者である彼ら1人ひとりの”内面”にあり、ひいてはそれが今ツアーで示した『証』に通ずるヒントとなり得ることを物語っていたのが、ライブのクライマックスでのことだった。

Яyu(B)

「ぶつけてこい!」と遼が声を荒げると、”何を”と言わずとも各々が吐き出したいものすべてを声と拳に託すようにして突入した「空に落ちる蛍」。そして、「その命を咲かせろ!」と力強く言葉を添えて本編ラストを飾った「灰色の海を泳ぐホタル」。ここで、両曲に共通してある”ホタル / 蛍”にこそ、Azavanaの示す『証』の象徴的な意味があるように感じられた。遼は、「空に落ちる蛍」で繰り返される”この命を抱いてくれ”というフレーズをマイクレスで歌い、「灰色の海を泳ぐホタル」では「生きろ!」と何度も訴えかけていた。

これは筆者の推測に過ぎないが、おそらく遼が”ホタル / 蛍”で比喩しているものは”命”。それも、生気漂う音楽が溢れる空間でこそ生きていることを実感できる”儚い命”のような気さえしてくる。はじめ、『証』というツアーは各地にAzavanaを自分たちの手で知らしめるためのものとばかり思っていたが、ここには想像以上に深い意味があったように思えてならない。それはまさに、鼓動を本気でぶつけあうことで”生きてる証”を提示し、共有すること。そしてそれは、心が宿る音楽でしか生まれないものでもある。

S1TK(Dr)

アンコールに応えて登場すると、遼はツアーを振り返りながらこう話した。

「『証』ツアー、ファイナルです。14本回ってきました。1本1本やっていくごとにね、バンドもそうだしお客さんもそうだし、熱量がすごく上がっていって。本当に、一緒にAzavanaのライブを作ってくれてありがとうございます。この14本を回って……いっぱい(思うことは)あるんだけど、素直にこんなかっこいいバンドいねぇだろって、なるよね」

これに対してすぐさま諒平は、「間違いねぇだろ! 一番かっこいいだろ、な?」と持ち前の親しみやすさでオーディエンスに同意を求め、「こんなに集まってくれてありがとう! 長いかなと思ったツアーでしたけど、あっという間でした。どうですか、皆さん。楽しかったですか?(拍手)またこうして全国ツアーもそうですし、できたら海外にも行きたいし。一緒に行こうぜ! デッケェとこ、いっぱい行こうぜ! 一緒に夢見ていこうぜ! 愛してるぜー!」と付け加えた。そして、”はじまりの曲”と紹介した「痣花」で美しいエンディングを迎えた……はずがない。「牡蠣(仮)」がはじまるやいなやフロント4人が一斉にフロアに降りて場内はカオス状態に陥り、しかも「S1TK!もう1回いきたい!」とフロアに居続けた遼が合図し2ループした後、全員がステージに戻ってオーラスに「飢えた球体」をハイスピードにおみまいする形で、今度こそエンディングを迎えたのだった。

「ここからがはじまりだからな。ついてこいよ、一緒に行こう」

遼は、この日を”はじまり”とした。今や未知数な可能性に不安は一切ないが、その行く末は誰にも想像がつかない。しかし、”生きている証”をダイレクトに交わし合えるAzavanaの音楽がある限り、不可能はないのだ。

また、本公演Azavana ONEMAN TOUR 2025 「証」-TOUR FINAL- 恵比寿LIQUIDROOM (2025年4月30日(水)) の模様を収録したライブDVDがリリースされることが発表された。

さらに、7月18日(金)代官山UNiTを皮切りに、初の対バンライブAzavana Presents「proelium」全10公演を開催する。

前半戦5公演に…<まみれた>ら5組の参加が決定。5月19日(月)20:00~オフィシャル先行がスタートする。後半戦の参加アーティスト等今後順次発表する予定とのこと。続報を楽しみに待とう。

◆セットリスト◆
01.Morphine
02.GENOM
03.愛怨
04.渇き
05.ノイズ
06.Phantom Shell
07.Focus
08.孤独におはよう
09.Mother
10.レンズ
11.他人事
12.カトレア
13.微熱と過呼吸
14.ホオズキ
15.牡蠣(仮)
16.飢えた球体
17.空に落ちる蛍
18.灰色の海を泳ぐホタル

    EN
    01. 痣花
    02. 牡蠣(仮)
    03. 飢えた球体

    (文・平井綾子/写真・ゆうと。)


    【ライブ情報】
    ●Azavana Presents「proelium」
    7月18日(金)vs [Royz] @代官山UNiT
    OPEN 17:45 / START 18:30
    7月19日(土)vs [MAMA.] @池袋BlackHole
    OPEN 17:00 / START 17:30
    7月26日(土)vs [THE MADNA] @池袋EDGE
    OPEN 17:00 / START 17:30
    8月3日(日)vs [XANVALA] @渋谷DIVE
    OPEN 16:45 / START 17:30
    8月4日(月)vs [まみれた] @池袋EDGE
    OPEN 18:00 / START 18:30
    8月16日(土)vs [???] @渋谷DIVE
    OPEN 16:45 / START 17:30
    8月18日(月)vs [???] @渋谷REX
    OPEN 18:00 / START 18:30
    8月23日(土)vs [???] @赤羽ReNY alpha
    OPEN 16:45 / START 17:30
    8月25日(月)vs [???] @渋谷REX
    OPEN 18:00 / START 18:30
    8月29日(金)vs [???] @代官山UNiT
    OPEN 17:45 / START 18:30

    チケット:前売¥5,500/当日¥6,000 (D代別)

    ▼7/18~8/4公演チケット
    オフィシャル先行
    5月19日(月)20:00~5月25日(日)23:59

    一般発売
    5月31日(土)10:00~

    Azavana オフィシャルサイト