2023.05.06
MUCC@日比谷野外大音楽堂
「MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~鵬翼・極彩~」
2022年に結成25年周年を迎えたロック・バンド=MUCCが、過去のアルバムを再構築したセットリストで廻るツアーを開催中だ。第一弾は2022年10~12月に行なった『MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~是空・朽木の灯~』で、彼らが2003年に発表した『是空』、さらに2004年に発表した『朽木の灯』をコンセプトにしていた。そして第二弾として行なったのが、2023年3月から始まった『MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~鵬翼・極彩~』である。
そのファイナル公演となったのが、5月6日(土)に開催された日比谷野外大音楽堂でのライヴ。この日、関東地方には朝から強風が吹き荒れていたが、野音は公園の木々のおかげか、強風の影響はそれほどでもない。初夏を告げる暑い日差しが降り注ぎ、むしろ風が心地いいぐらいだ。そんな野音にSEとして『極彩』の1曲目「レイブサーカス」が鳴り響いたのは17時35分のこと。トライバルなリズムに合わせ、オーディエンスはハンドクラップしながら期待を高めるばかり。紫色や黄色など様々なスポットライトが点滅し、まさに極彩色となったステージ。そこに主役のMUCCが登場すると、でかい歓声と拍手が湧き上がる。鮮やかな振袖の着物をジャケット代わりに羽織った逹瑯(Vo)は、オーディエンスを煽るようにマイクスタンドを高く上げた。
アルバム『極彩』の流れを汲むように、「極彩」へ突入。興奮を煽りたてるヘヴィサウンドが炸裂し、客席を埋め尽くしたオーディエンスも激しいヘドバンを繰り返し、開演から数分も経たずして一体化。ミヤ(G)とYUKKE(B)は立ち位置を入れ替わりながらプレイし、逹瑯は宣戦布告するように歌をとどろかせていく。
「いい天気だな、日比谷!」
ミヤの喜びの声から続いたのは「嘆きの鐘」。ヘヴィな面もありながら、レゲエのリズムやフレーズも飛び交うナンバーだ。曲の途中でブレイクして、「いこうか!」と笑顔も見せる逹瑯。また「ガーベラ」のイントロでは「日比谷、飛べんの? 全員でトベー!」と焚きつける。とはいえ、ジャンプしながら楽しめるのはイントロ部分ぐらい。なにしろ切ないメロディやメロウな展開も顔を出す曲で、一筋縄ではいかないアレンジが「ガーベラ」の特徴でもある。それでも曲に見事に食らいついていくオーディエンス。バンドとひとつになり、さらに曲とも呼吸をしていく様は、さすが、MUCCの熱心なファンである夢烏たちだ。それに曲そのものも、リリース当時とは違う顔つきを見せている。
アルバム『極彩』をリリースした2006年当時、逹瑯はミヤの書くメロディに答えながら、シンガーとしての殻を破り始めた時期だったと思う。絶望感やネガティビティを背負ってもがいているような唱法が初期だったとしたら、暗闇や密室にいた自身を自ら解放したのが『極彩』に取り組んでいた時期だった。その結果、重苦しさばかりではなく軽やかさなども唱法に備わり、同時に幅広いメロディも積極的に歌い始めていった。そこからさらに約16年経ち、シンガーとして大きく成長した今、逹瑯は当時、思い描いた理想の歌を野音で具現化していく。細部まで気持ちを入れながら、しかし感情過多になりすぎることもなく、言葉のひとつずつがしっかり聴き取れる。早い話、伝わる歌だ。それが曲の新たな顔つきにもなっている。
「晴れたね。雨の野音も嫌いじゃないけど、やっぱ晴れって気持ちいいね。この自然の光も合わせてMUCCを楽しんでいってください。時の流れ、長い年月を感じながら、最後までよろしく」
逹瑯のそんな言葉をはさんで、曲はライヴ会場限定発売シングルの2曲へ。「想-so-」ではバイオリンとチェロ奏者も加わり、優しく切ない歌とバンドサウンドでオーディエンスを包み込む。しかしライヴはここから急展開。ミヤのエッジの尖ったリフに、逹瑯が気のふれたような狂った歌いっぷりが絡み合いながら「リスキードライヴ」で攻め立てる。その勢いのままコーラスやフェイクでコール&レスポンスも起こし始めた。逹瑯ばかりでなく、メンバー名を叫ばせるコール&レスポンスで楽しむのはYUKKE。さらにミヤもムチャなハイトーンすぎるフェイクでコール&レスポンスを楽しみながら、自分も笑ってしまうミヤ。一体感と熱気と楽しさのカオス状態だ。
「たくさんの人がMUCCに真剣に向き合ってくれて、そんな人たちに囲まれてとても幸せだと思います」
バンドを代表して逹瑯が感謝しながら曲は「パノラマ」へと続く。青空が徐々に夕刻へと表情を変えていく中で披露されたこのバラードは、自然の美も野音ならではの演出効果となり、スケール感ある曲となってどこまでも響き渡っていく。
ところが美しさにずっと浸らせないのが、『鵬翼』や『極彩』をリリースした時期のMUCCと言うべきか。憎しみと怒りもこもったレゲエ・テイスト強めの「メディアの銃声」を叩きつけたと思えば、そこから続くのは「25時の憂鬱」。YUKKEがアップライト・ベースでドゥーミーな香り漂うベース・リフに、ミヤがサイケデリックで荒々しいギターを絡ませる。逹瑯は、怪しくけだるい歌を恍惚とした表情も浮かべながら聴かせていく。照明の色使いもひたすらドラッギーだ。美しき夕刻だったはずが、おかしな世界へ精神を誘い込む世界へ変貌。
こうしてライヴは何度もの急展開を見せながら突き進む。恐らくメンバー自身、このツアーのセットリストを考えるのに相当、頭を悩ませたはず。なぜなら曲それぞれが、あまりにも異なる色を持っているからだ。
とくに『極彩』を作った2006年当時のMUCCは、“デビリッシュ・イヤー”と名づけ、国内ツアーはもちろん、フェスや海外ツアーなど、怒涛のライヴ活動を行なっている。その過程で刺激も触発もされただろう。新たな曲につながるヒントを掴むこともあったかもしれない。だがMUCCは、自分たちにしかできないことを常に探し求めた。その結果、自由にわがままに音楽を作り始めたのがその時期だったと思う。そのためアルバムは、ひとつの方向性を持ったものではなく、まるでオムニバス・アルバムのように違った色合いの曲たちで構成された。だから付けたタイトルが『極彩』でもある。
リリースしたときは初期からのあまりの変化に驚き、ふるい落とされそうになったファンも少なくなかった。しかし、あれから約16年。MUCCの持つ多彩さや多面ぶりも楽しみながら、それぞれの曲に改めてハマり込むオーディエンスの姿が野音に広がっていた。
ライヴ後半、強烈なスラッシュ・メタル「G.M.C」で激しいヘドバンで狂った直後のことだ。逹瑯も、あまりの曲順に自分でも思わず笑いつつ、「優しい歌」へと続いた。MUCCからの温かさと優しさが広がっていく中、オーディエンスはそれを受け止めるように両手を広げ、左右に揺らし、自分たちもMUCCと共に歌う。客席からの歌声を心地よく浴びながら逹瑯が「オマエらのライヴを聴いてんだよ、俺は」と言うと、さらに歌声は大きくなり、大合唱になって夜空に響いていった。そしてステージにレーザーの流れ星が幾つも流れる中、「流星」で感動的にライヴ本編を締めくくった。
アンコールでは、12月28日(木)に東京・国際フォーラムAで結成25周年イヤーのグランド・ファイナル開催も発表。その前には第三弾ツアーも、第四弾ツアーもある。逹瑯の「最後まで一緒に、盛大に駆け抜けようじゃないか!」という言葉に、野音からでっかい歓声も巻き起こる。アンコール・ラスト「WORLD」は、イントロからMUCCとオーディエンスの大合唱から始まった。レコーディングでもファンのみんなからコーラスを送ってもらい、1000トラック以上のコーラスで構成したナンバーだ。声出しも解禁になった今、MUCCと共に新たな世界の始まりを誓うように、1000どころか約3000人のファンが歌う。喜びと幸せに満ちた第二弾ツアーのファイナルとなった。
◆セットリスト◆
SE. レイブサーカス
01. 極彩
02. 嘆きの鐘
03. ガーベラ
04. 月光
05. 心色
06. 耀-yo-
07. 想-so-(w/Vn:後藤泰観,Vc:吉田弦)
08. リスキードライブ
09. パノラマ
10. メディアの銃声
11. 25時の憂鬱
12. ホリゾント
13. 最終列車
14. 謡声
15. G.M.C
16. 優しい歌
17. 流星レーザー
En
01. 雨のオーケストラ(w/Vn:後藤泰観,Vc:吉田弦,キラーズオーケストラ)
02. 蘭鋳
03. TONIGHT
04. WORLD
(文・長谷川幸信/写真・冨田味我)
【ライブ情報】
●『悪夢69』
8月17日(木)Zepp Nagoya
8月18日(金)Zepp Osaka Bayside
8月24日(木)Zepp Haneda(TOKYO)
出演:NIGHTMARE、MUCC
開場17:30/開演18:30
・Tシャツ付チケット 前売¥15,000(税込)※入場時ドリンク代別途必要
・通常チケット 前売¥10,000(税込)※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:6月10日(土)10:00~
※営利目的の転売禁止、3歳以上有料、3歳未満入場不可
<「ナイトメアモバイル」会員/「朱ゥノ吐+」会員・「虚無僧DU MODE」先行受付(抽選)>
受付期間:5月8日(月)10:00〜5月14日(日)23:59
<オフィシャルHP先行受付(抽選)>
受付期間:5月15日(月)12:00~5月21日(日)23:59
●『MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜志恩・球体〜』
6月9日(金)LINE CUBE SHIBUYA
6月24日(土)三郷市文化会館
6月30日(金)メルパルクホール大阪
7月21日(金)高崎芸術劇場スタジオシアター
7月26日(水)Zepp Shinjuku
8月1日(火)浅草花劇場
8月2日(水)浅草花劇場
8月21日(月)水戸市民会館
チケット料金:前売¥7,800(税込)
※入場時ドリンク代別途必要(Zepp Shinjuku、浅草花劇場のみ)
※全席指定:LINE CUBE SHIBUYA、三郷市文化会館、メルパルクホール大阪、高崎芸術劇場スタジオシアター 、水戸市民会館
※スタンディング:Zepp Shinjuku、浅草花劇場
一般発売:2023年5月13日(土)
●『MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜カルマ・シャングリラ〜』
10月1日(日)仙台 GIGS
10月4日(水)渋谷 CLUB QUATTRO
10月7日(土)松山W studio RED
10月9日(月・祝)広島 CLUB QUATTRO
10月14日(土)長野 CLUB JUNK BOX
10月15日(日)金沢EIGHT HALL
10月21日(土)札幌PENNY LANE 24
10月22日(日)札幌PENNY LANE 24
10月24日(火)青森Quarter
10月28日(土)福岡BEAT STATION
10月29日(日)福岡BEAT STATION
11月4日(土)名古屋ボトムライン
11月5日(日)名古屋ボトムライン
11月11日(土)なんばHatch
※詳細後日発表
●『MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to「Timeless」&「WORLD」』
12月28日(木)国際フォーラム ホールA
※詳細後日発表