2025.10.04-10.05
PENICILLIN@恵比寿LIQUIDROOM
「ROCK × ROCK -21st Anniv. Nandana Bandana-」

天使のように無邪気な愛嬌と、悪魔のごとく卓越したギターテクニックをあわせ持つ人物。PENICILIINの千聖が持つ稀有な存在感は、ある意味でずっと変わっていない。
「今日は10月4日=天使の日で、千聖くんの誕生日当日でございます。毎年恒例なんですけれども、何週目かになる永遠の18歳ということで(笑)。とにかく今日も最高の夜にしていきましょう!」(HAKUEI)
このたび10月4日と5日にわたり恵比寿LIQUIDROOMにて開催された2デイズライヴ「ROCK × ROCK -21st Anniv. Nandana Bandana-」は、そのタイトルどおりに千聖の誕生日を記念した恒例ライヴ「ROCK × ROCK」シリーズの第21回目を飾るもので、セットリストは主役である千聖が考案したものであったという。

DAY1の幕開けを飾ったのはソリッドなロックチューン「NEW FUTURE」で、ここでは千聖がエッジーなギターリフを刻みつつ、間奏ではワイルドさと流麗を混在させたソロを展開し、しょっぱなから見事な“ギターヒーロー”ぶりを発揮することに。
始動から33年を経てなおロックバンドとしての尖り続けている姿勢をあらためて提示した最新シングル曲「One Thousand and One Nights」でも、エキサイティングかつヘヴィなギタープレイをもって千聖が曲を牽引していた印象が強い。また、「one star」では実質HAKUEIとのツインヴォーカルに聴こえるくらい頼もしいコーラスワークを披露してくれており、彼が長年ソロプロジェクト・Crack6で研鑽してきている歌の面での実力もしっかりと発揮されていたのではなかろうか。

「大将、誕生日おめでとうございます!」(O-JIRO)
「ありがとうございます。無事に永遠の18歳の誕生日を今年も迎えることが出来ました! でも、遂に波平と同い年です(笑)。昔は自分がまさか波平と並ぶような歳になってまだバンドをやってるなんてイメージ出来てなかったけど、どうやら『サザエさん』の年代設定というのは1946年だったらしいんですよ。つまり約80年前ですね。当時の54歳はああいう感じがスタンダードだったのかもしれないけど、俺たちは別にそういうスタンダードには生きてないんで。80年後の54歳は違う、っていうところを今日のライヴでも見せていこうと思います。数字なんかに負けてはいかん!!」(千聖)

ちなみに、このときのMCでは「ROCK × ROCK -21st Anniv. Nandana Bandana-」というライヴタイトルの中に組み込まれている“Nandana Bandana”というワードの意味についても千聖が解説をしてくれたのだが、自ら物販用グッズのバンダナをデザインをしている際に「今年は21周年なんだな。そしてこれはバンダナ…!」と思い立ち、サブタイトルとして付け加えたものだったそう。
「まぁ、昼間のイベントだったら“昼なのにバンダナ”っていうのでも良かったんだけど。今回は“夜だからバンダナ”っていうのでもいいんじゃないかなと(笑)」(千聖)
ひとたびギターを弾き出せば際立ったギターテクニックでオーディエンスを魅了する一方、しゃべり出すと途端にシュールみまで帯びたギャグをも天衣無縫に繰り出してしまう千聖のこのキャラは、PENICILIINにとってある種のスパイスに近いのかもしれない。

特に、DAY2に関しては本編での「幻想カタルシス」で鮮やかなタッピングを決めてみせたり、「花」のソロにベートーヴェンのピアノソナタ第8番ハ短調「悲愴」第2楽章のフレーズを織り込んだり。かと思うと「Desire」では今回のライヴから初参加したサポートベーシストのYUCHI(sukekiyo)とステージフロントで激烈プレイバトルで観衆をおおいに沸かせてくれたものの…なんと、アンコールでは本来ならば誕生日を祝われる側の千聖が我々に対して強烈なサプライズを用意してくれていたのである。

「Ladies&Gentleman,おっかさん&おかっおとっつぁん、こんばんは! みなさん、このたびはワタクシの誕生日ライヴに来てくれてありがとうございます。ところで、2025年は日本でもいろいろなことが起こりましたよね。今日のアンコールでは、みなさんが「おめでとう!」と叫んでくれたら千聖が今年話題になったあのキャラクターになって登場します。準備はいいですか? それでは、さんはい!!」(千聖)
登場用のアナウンスまで自前でこなしたうえで、ファンからの盛大な「おめでとう!」の声が場内に響きわたると。我々の目前に突如として現われたのは、やや雑なクオリティでミャクミャク化した千聖(笑)。そして、彼はその姿のままでインカムを使い「ヒットエンドラン」を踊りながら歌い出しのだ。
完全なる出落ち芸でファンを笑わせながら、アタマサビ以降は通常通りにHAKUEIがメインヴォーカルをとり、千聖はほとんど手元も見えないであろうに、ミャクミャク化したままでギターを弾いて行くという荒技までみせてくれたのだから恐れ入る。ちなみに、ミャクミャク化のための小道具や衣装は全て「フリマサイトで集めた(笑)」のだとか。千聖はこのあとのバースデー・セレモニーでも、ミャクミャク姿のままケーキを前にメンバーと写真撮影していたことをここに付記しておこう。

「…で、54歳になられたんでしたっけ?(苦笑)」(O-JIRO)
「ヤメロ、冷静に訊くな! 我ながらこの格好で記念撮影ってちょっとエグイけど(苦笑)。でもまぁ、初心に戻ってみようっていうことですよ。昔はこれに近いようなこともいろいろやってたなって(笑)」(千聖)
そういえば、かつてのPENICILIINはHAKUEIと元ベーシストのGISHOがシリアス班、O-JIROと千聖がバラエティ班として認知されていた時期があり、その頃から千聖はボケ倒すことのみならず、的確なツッコミまでこなすエンターテイナーとしての才覚もふんだんに持ち合わせていたのだった。しかも、今や音楽面はおろかビジネス面でもリーダーとしての任を担っている千聖が、それでも2025年の今わざわざ誕生日という節目で主人公の立場を逆手にとり、なかば捨て身で笑わせに来るだなんて。それは間違いなく、心からの賞賛に値する素晴らしきホスピタリティではないか。

「今日は10月5日ですけど、昨日は10月4日だったということで。ラストはこの曲をお届けしたいと思います!」(HAKUEI)
奏でられたのは、言わずもがなの「天使よ目覚めて」。ダブルアンコールではさらに観客たちを熱狂させることになった「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」も投下され、結果的に「ROCK × ROCK -21st Anniv. Nandana Bandana-」は最高にロックで、最高に楽しい2日間になったと断言出来る。
今冬に向けてはコンセプト性の強い新音源『阿修羅』を発表したのち、11月からは「PENICILIIN WINTER TOUR 2025」が開始となり、そのツアーファイナルとなる12月14日の横浜1000 CLUB公演は「HAKUEI BIRTHDAY LIVE『SUPER HEART CORE’25』」として開催されるため、こちらもきっとまた特別な一夜となっていくはず。引き続き、ここからのPENICILIINの動向もつぶさに注視していきたい。
◆セットリスト◆
【10.04】
01. NEW FUTURE
02. anti catastrophe
03. Imitation Love
04. One Thousand and One Nights
05. anti beauty
06. prison
07. one star
08. SOL
09. hyper chord
10. 花園キネマ
11. Dead Coaster
12. No
13. Desire
14. 快感∞フィクション
En1
01. tomorrow
02. 天使よ目覚めて
En2
01. SEX
【10.05】
01. WILL
02. 幻想カタルシス
03. Imitation Love
04. BLACK HOLE
05. anti beauty
06. 花
07. ハカナ
08. One Thousand and One Nights
09. one star
10. 花園キネマ
11. 聖・MARIAN HURRICANE
12. Desire
13. No
14. Blue Impulse
En1
01. ヒットエンドラン
02. 天使よ目覚めて
En2
01. FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE
(文・杉江由紀/写真・折田琢矢)
【ライブ情報】
●PENICILLIN TOUR 2025「阿修羅」
11月22日(土)西川口Hearts ★FC[QUARTER DOLL]会員限定
11月24日(月・振休)水戸LIGHT HOUSE
11月29日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
11月30日(日)柏PALOOZA
12月6日(土)名古屋ell.FITS ALL
12月7日(日)阿倍野ROCKTOWN
●TOUR FINAL&HAKUEI BIRTHDAY LIVE SUPER HEART CORE’25
12月14日(日)横浜1000 CLUB
チケット絶賛発売中
イープラス
【リリース情報】
●最新音源『One thousand & One Nights』
サブスク配信中
【「One thousand & One Nights」MV】

