2025.10.04
HIZAKI@横浜みなとみらいブロンテ
HIZAKI TOUR「Eidolon」

Versailles、Jupiterの技巧派ギタリストとして名を馳せるHIZAKIが、ソロプロジェクトでの新たなEP『Eidolon』を完成させ、同タイトルを掲げた全6公演のツアーを開催。そのファイナルが10月4日、横浜みなとみらいブロンテにて行われた。

HIZAKIがソロ名義で初の作品を発表したのは2004年に遡る。初期にはゲストヴォーカルを迎えた楽曲も多く存在したが、その後さまざまな変遷を経て、インディーズ時代の楽曲からVersailles、Jupiterでのナンバー、そして新曲までを収めたギターインストゥルメンタルのベスト盤『Rosario』を発表したのが2016年のこと。それは当時、HIZAKIにとっての集大成であると同時に、一つの節目ともなったに違いない。

そこから約8年という歳月を経た2024年6月、アルバム『The Zodiac Sign』の発表を機に、HIZAKIソロの新章が幕を開けた。本作品および同年10〜12月開催のツアーから、Mayto.(G)、Jill(Vn)、Tsunehito(B/D)、MAKI(Dr)をレギュラーメンバーに迎え、ギターインストゥルメンタル形態によるソロプロジェクトとして、本格始動を果たしたのである。

かくして2025年、昨年に続き同メンバーで臨む二度目のツアーとなったのが、今回のHIZAKI TOUR「Eidolon」。先述の通り、EP『Eidolon』を完成させたうえで実施されたものだが、今作はツアー終了後の10月15日に発売を控えていることから、実質的にこのツアーが全5曲の先行お披露目の場となった。

HIZAKI

5人での最新ビジュアルとツアーロゴを背景にメンバーが登場し、フロント4人が真っ直ぐに手を掲げたのを合図に「Grace and Dignity」でスタートを切った当夜。この楽曲は先に記した『Rosario』のリード曲でもあったわけで、それを現メンバーで演奏していること自体がなんとも感慨深い。早速HIZAKIらしい激しくも美しいメロディが響き渡り、トップギアの幕開けとなった。

キャッチーなロックチューン「Sky Falls Down」、叙情的かつスリリングな「Crystalize」と、カラーの異なる2曲をプレイしたのち、「HIZAKI TOUR『Eidolon』へようこそ! いよいよやってきました、ツアーファイナルです!」とHIZAKIが挨拶。「各地ギターインストとは思えないヘドバン率の高さでした(笑)。今日も、初めて観た人も思いっきり暴れて、声を出して、メンバーにかかってきてください! 皆の声を聞かせてくれ!」と投げかけると、すかさずフロアから威勢のいい声が返ってきた。

ここで投入されたのが、最新作収録の「Crimson Mirage」。邪悪なハードナンバーがフロアの熱量を一段階引き上げるのに十二分な役割を担えば、咽び泣くようなJillのヴァイオリンの旋律から、鬼気迫るメロディ展開を見せる「FLAME」へと繋いだ。さらにダークなSE「IVY」を挟み、「Explosive Anger」ではHIZAKIとMayto.によるツインの速弾きが炸裂すれば、最新作の中でも特にヘヴィーな「Form is emptiness」では、MAKIがパワフルかつ的確なドラミングを見せた。同期のアコースティックギターにJillのヴァイオリンが乗り、Tsunehitoによる温もりのあるベースのメロディから始まったのは「Celestial Veins」。HIZAKI、Mayto.、Jillによるソロ回しも含むドラマティックな展開で、オーディエンスを魅了した。

中盤では、メンバー一人ひとりがより鮮明に際立つステージとなったのが印象深い。「Desert Apple」は、HIZAKI、Tsunehito、MAKIによるスリーピースでプレイ。クリーントーンで浮遊感を描くギターソロをはじめ、HIZAKIとTsunehitoが背中合わせでユニゾンを奏で、MAKIのドラムも加わりトリッキーなフレーズをキメると、フロアからは「フーッ!」と称賛の歓声が湧き起こった。リズム隊がひとたびステージを後にし、HIZAKIがMayto.を呼び込むと、打ち込みのビートに乗せてツインギターのみで演奏を披露。その後Mayto.がアルペジオを奏でる中、Jillが再登場し、二人の音をバックにHIZAKIがメンバー紹介を。全員が再び揃ったところで、彼は今回のツアーを通して感じた、ソロプロジェクトに対する率直な思いを語った。

「このツアー回ってきて、純粋に楽しかったです。修学旅行みたいでした。(中略)集まってくれた皆さんも、ギターインストというものを初めて聴いた人も多かったであろう中で、これだけ暴れてくれて、声を出してくれて、本当に嬉しかったです。男女混合ということで、色々難しいところはあったかもしれないですけど、これこそ僕が音楽、芸術で表現したかったことなんじゃないかなと思います。昔、フランスでライブをした時に、それこそ性別とか国籍とか肌の色とか関係なしに皆暴れていて、その景色を今でも覚えています。そんなライブを作っていきたいし、皆が一緒に手を取り合えるような音楽をこれからも届けていきたいと思います。メンバーにとってもここは本当に大切な場所です。皆さんにとってもHIZAKIのライブというものが、かけがえのない大切なものになってくれると嬉しいです。そんな思いを込めて、この曲を皆さんと一緒に歌いたいと思います」

HIZAKI

背景には、この5人での最初のアーティスト写真が映し出され、「全員の歌声をステージに届けてください!」というHIZAKIの言葉から「Holy Ground」が供された。オーディエンスの温かなシンガロングが響き渡れば、5人の笑顔が溢れ、曲終わりにはフロアから「ブラボー!」の声も上がる光り輝くハイライトとなった。

「今日がファイナルですよ! 力残してどうすんの? 全部出し切って帰りませんか!?」とのJillの熱い煽りを合図に、キャッチーな「All for Love」から本編最終ブロックに突入。HIZAKIによる泣きのメロディが印象的な冒頭を経て、壮大でエモーショナルなミディアムナンバー「Lily」をじっくりと聴かせたのち、満を持して披露されたのは、新作の表題曲「Eidolon」。HIZAKIの王道メロスピと言っても過言ではない1曲だけに、新曲ながら早くもキラーチューンの風格を放っていた。そして、タッピングの妙技や、HIZAKIとJillによるクラシカルな中盤セクションなど、展開に富んだ「The Zodiac Sign」をもってクライマックスを迎えると、「Moon Shard」をBGMにライブ写真や楽屋ショット、アーティスト写真が写し出される感動的な演出をもって、本編を締めくくったのだった。

Jill/HIZAKI
Jill/Mayto.

アンコールでは和やかなMCが繰り広げられる中、MAKIが「ちょうど1年前の今日は、ツアーのスタートの日でしたね。気が付けば1年経って今日はファイナル。ここまでついてきてくれてありがとうございます! 直近で僕、色々ありまして、思うところも色々ありまして」と切り出し、「普段当たり前だとは思っていないつもりなんですが、ありがたいことに本数が増えてくると、どうしても日常になってきてしまう。普通の日常こそが我々全員にとっての幸せなんですけど、当たり前になってくると、初期衝動とかも薄れてきてしまうところが正直あって。それを見つめ直す良い機会だったかなという言い方もできるようなことが身の回りでありまして。ツアーができるってすごく幸せなことだなと思います。皆さんが応援してくれて、ついてきてくれるおかげでもありますし、メンバー全員が事故怪我なく、生きてここに立っているということが、本当に幸せなことで、いろんな奇跡が重なってここにいるんだなと改めて痛感しております」と感謝の思いを口にした。

また、Tsunehitoは「HIZAKIさんが今回の音源を作るにあたって、海外ライブもありながら、ものすごい過密なスケジュールの中、曲を作って、レコーディングして、全部のディレクションをして、撮影してっていうのを間近で見させていただいて。本当にヤバそうだったんですけど(笑)、ファンの皆が喜んでくれるんじゃないかなと言っていて。そういう愛みたいなものが今回のツアーでより一層HIZAKIさんから感じられて、その温かい人柄がライブに繋がっているんだなと」と、実感のこもった言葉を述べた。

このメンバーの始まりの曲「Stella Maris」、いわゆる暴れ曲的な要素を持つハードナンバー「Eternal Reverberation」、HIZAKI、Tsunehito、MAKIによるアドリブコーナーを経て、フロアに手が揺れる美しい光景が広がった「SiLENT KNIGHT」、ラストは代表曲「Race Wish」へ。Mayto.、Jill、Tsunehitoがピョンピョンと飛び跳ねながらHIZAKIの背後に迫る、なんとも愛らしい場面も見られたわけで、このテクニカルバンド、可愛さまで完備とは実に油断ならない。かくして5人の清々しい表情をもって、この夜は終幕を迎えた。すべてのパフォーマンスを終え、最後に届けられた5人の言葉を記したい。

「メタルのインスト音楽で、こんなに会場が一つになって皆が一体となって楽しめる場所があるなんて、HIZAKIさんのおかげで、私も皆さんの一部になって楽しませていただきました」(Jill)

「今年も参加させていただいて、心から光栄に思いますし、育てていただけているということが、本当にその通りで。私は弱いですが、これから弱さも全部受け止めて、皆さんとまた会えるように精進していきます」(Mayto.)

「次も必ず生きてライブハウスで会いましょう」(MAKI)

「1本1本が思い出深いというか、自分の人生の中で本当に大事な瞬間だなと思いながら、このツアーを回らせてもらうことができたので、皆さんに感謝しています」(Tsunehito)

「性別とかそんなものを超えた、素晴らしいライブが作れたんじゃないかなと思います。もっともっと大きい会場で、HIZAKIのギターインストというものを日本中、世界中に届けていきたいなと思います。そのためには皆さんぜひ協力していただけると嬉しいです」(HIZAKI)

HIZAKI

どこを切り取っても美しいメロディとテクニカルな演奏、激しいパフォーマンスであることは共通していながら、決して単調ではなく見事な起承転結を描き出したステージは、良い意味でギターインストの概念を覆すと言えるのではなかろうか。加えて、随所でHIZAKIが「最高のメンバー」と述べていたように、5人の良好な関係性が明確に浮かび上がった一夜でもあった。今後のHIZAKIの動向として、2026年2月から5月にかけてのライブスケジュールが発表された。「来年もガンガンやっていくので、よろしくお願いします!」とのこと。これから5人がどんな景色を見せてくれるのか、期待が高まる。

◆セットリスト◆
SE. Elizabeth
01. Grace and Dignity
02. Sky Falls Down
03. Crystalize
04. Crimson Mirage
05. FLAME
SE. IVY
06. Explosive Anger
07. Form is emptiness
08. Celestial Veins
09. Desert Apple
10. Faraway
11. Holy Ground
12. All for Love
13. Lily
14. Eidolon
15. The Zodiac Sign
SE. Moon Shard

En
01. Stella Maris
02. Eternal Reverberation
03. SiLENT KNIGHT
04. Race Wish
SE. Back to Nature

(文・金多賀歩美/写真・Lestat C & M Project)


【リリース情報】
●New EP『Eidolon』
2025年9月24日 (水)HIZAKI ONLINE STORE販売
2025年10月4日(土)ライブ会場先行販売
2025年10月15日(水)一般発売&配信

[通常盤](CD)ZRHZ2501 ¥2,640(税込)
[オフィシャル通販限定盤](CD+撮影メイキングDVD-R)¥3,300(税込)

収録曲
01. Eidolon
02. Crimson Mirage
03. Celestial Veins
04. Form is emptiness
05. Moon Shard

【ライブ情報】
●HIZAKI LIVE「Beyond the Eidolon」
2026年
2月16日(月)西荻窪 BETTYROOM
3月5日(木)横浜 Music Lab. 濱書房
4月24日(金)初台 The DOORS
5月15日(金)梅田 Zeela
5月16日(土)今池 3STAR

HIZAKI オフィシャルサイト