
9月19日に内容を一切明かさない予告をSNSで行い、9月24日に実施されたYouTube Liveでの生配信。最大同時接続数7万2000人、延べ接続数40万人が視聴。Xのトレンドも1位になるなど凄まじい反響が寄せられた。その配信の中で、新メンバーZAX(Dr)の加入&ミニアルバム発売、さらに新曲「Song About Fat Mike」の生演奏というビッグサプライズを巻き起こしたHi-STANDARDだが、改めて11月26日にリリースするミニアルバム『Screaming Newborn Baby』の詳細が発表された。
今から約9年前、2016年10月5日にHi-STANDARDが事前告知なしで16年半ぶりとなるシングル『Another Starting Line』をリリースした衝撃からHi-STANDARDは、バンドが結成された90年代を彷彿とさせるような勢いで音楽シーンを席巻した。「AIR JAM 2016」「AIR JAM 2018」の開催、カバーEP『Vintage & New, Gift Shits』、約18年ぶりとなるアルバム『THE GIFT』のリリース、初のアリーナ公演を含む全国ツアーの開催、ドキュメンタリー映画の公開など、現在進行系でぶっちぎりでカッコいいパンクバンドの活躍は、多くの人々の胸を熱くした。
2023年2月14日、恒岡章(Dr)が急逝した。彼を失ったことは日本の音楽シーンにとっても大きな損失であったが、何より Hi-STANDARDに残された2人を、言葉にし尽くせない深い悲しみが襲ったことは想像に難くない。バンドとしては、水面下で進行中のいくつものプロジェクトは、恒岡を失った後ほとんど全てが一旦仕切り直しになった。しかし、2人はバンドを止めなかった。訃報の2か月前にレコーディングをしていた「I’M A RAT」を4月にリリースし、6月には恒岡とともに出演するはずだった「SATANIC CARNIVAL ‘23」に出演。EKKUN、ナヲ、ZAXという3人のサポートドラマーを迎えたステージは、間違いなく“Hi-STANDARDのライブ”だった。そしてこの場で、横山も(「また必ず戻ってくるよ」)、難波も(「またハイスタをつくってくるからね、じっくりじっくり」)、Hi-STANDARDを続ける意志を明言。実際、その約束はすぐに果たされた。2024年に開催された NOFX の「The Final Japan Tour」では ZAX をサポートとして迎え、4本のライブを敢行。Hi-STANDARDをフックアップし、彼らが世界的に飛躍するきっかけを与えた恩人でもある、西海岸の大御所のエンディングに花を添えたのだった。
それから1年半以上が経ち、2人は再び表舞台へ帰ってきた、ZAXという新たな仲間とともに――。
『Screaming Newborn Baby』と名付けられた6曲入りのミニアルバムは、まとまった音源としては『THE GIFT』以来8年ぶり、ミニアルバムとしては1stミニアルバム『LAST OF SUNNY DAY』以来約31年3か月ぶりの作品となる。もちろん、新メンバーZAXが参加したレコーディング音源はこれが初めてとなる。
当然、この作品にたどり着くまでの道のりは平坦ではなかった。横山が自身のコラムで書いた「皆さんが慣れ親しんだトライアングルは終わってしまった」という言葉にもあるように、2人は言葉では言い表せない感情を胸に、必死でもがいていた。前には進みたい、簡単には進めない。絶望もあった、虚無もあった。しかし、バンドに残された2人は、今を生きている。であれば前に進むしかない。前に進みさえすれば、形や結果は後からついてくる。新たな作品を発表することで否定的な意見もあるかもしれないが、そんなことは関係ない。たとえそんな姿が世間にとってどう映ろうが、それすらハイスタの生き様として見せていく。壊しては創り、壊されては創り、壊れてしまっては創り、転がり続ける。それがロックンロールなんだ――そんな覚悟の末に辿り着いたのが本作なのである。

『Screaming Newborn Baby』はクリックなしでレコーディングされ、ハイスタ結成初期の生々しさを彷彿とさせる勢いが印象的。そこにはDescendentsのBill Stevensonがミックスを手掛けていることも少なからず影響を与えている。Daisuke Hongolianによるアートワークはパンク史に燦然と輝く名盤『MAKING THE ROAD』を想起させる。しかし、これは原点回帰とは異なる。むしろ、自分たちが歩んできた道のりを今改めて噛み締め、再び前を向いて前進する、そんな力強い意志を感じさせる。
収録楽曲に触れると、亡き盟友・恒岡について歌った曲もひとつではない。「OUR SONG」を筆頭に彼への想いも込められつつ、この歌詞に登場する“we”は、必ずしもすべてがHi-STANDARDのことだけを指しているわけではない。そこにはこの作品を聴いているリスナー一人ひとりのことも含まれている。楽曲後半に登場する、温かみのある8ビートに乗せたシンガロングパートはオーディエンスのために用意された特等席だ。2024年10月6日に解散したNOFXのFat Mikeについて歌った「Song About Fat Mike」も、Hi-STANDARDの「今」を綴っていることは容易に伝わってくる。
この作品からわかるのは、彼らはどんな浮世からも目を逸らさず、どんなにボロボロになろうとも、様々な想いを背負いながらロックンロールを鳴らしているということ。それがHi-STANDARDというバンドをより偉大に見せている。新ドラマーとともに重圧を感じさせないこの約18分の間に鳴っている音は、間違いなくHi-STANDARDのものだと断言できる。
Hi-STANDARD は、90年代以降のパンクシーンをキラキラと照らしてきた太陽だ。それは今後も変わらない。悲喜こもごもを重ねて、輝き方はこれまでとはまた違う新たな輝きを放つだろう。俺たちのHi-STANDARDは続いていく――こんなふうに今、再び思える幸せを噛み締めたい。
【リリース情報】
●New Mini Album『Screaming Newborn Baby』
2025年11月26日(水)発売/配信未定
[CD]PZCA-119 ¥2,000(+税)
01. Song About Fat Mike
02. Our Song
03. Moon
04. A Ha Ha
05. Book Of Revelation(Cover)
06. Stand By Me
Hi-STANDARD オフィシャルサイト
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