2025.08.03
MizinkoFacT@目黒ライブステーション
MizinkoFacT DEBUT LIVE「しあわせの爆発」

現在活動を凍結しているAlice Nine.でドラムを務めていたNaoが、ギターヴォーカルへと転身し、ソロプロジェクト“MizinkoFacT”としてサポートメンバーを迎えたバンド形態での活動を行うと発表したのが、2025年4月26日のこと。同時に、オリジナル曲第1弾「察して彼女」のMVが公開され、その強烈なインパクトでシーンの中でも話題を呼んだ。さらに、8月3日に控える初ライブまでの100日間、YouTubeで毎日更新を続けるという前代未聞の試みにも挑んできた。
かくして、遂に迎えたデビューライブ「しあわせの爆発」。4月に実施したVifのインタビュー時点では、ドラマーとしての演奏も組み込む予定だったようだが、蓋を開けてみれば、全11曲(再演奏を除けば9曲)Naoがヴォーカルを務めるバンド形態でのステージとなった。このうち2曲は、これまでに弾き語りで披露してきたカバー曲とはいえ、それらもバンドアレンジを施す必要があったこと、もちろんMizinkoFacTのすべての作詞作曲はNaoが担っていることを考えれば、この短期間で0から1を形にするという挑戦が、どれほどの情熱と労力を要したかは想像に難くない。

現時点でのMizinkoFacTの名刺代わりとも言える「察して彼女」が幕開けを飾った当夜。「Naoが何をやるかわからないのに来てくれるって、すごいよね。愛だね」とNao自身が語った通り、前述のMVやいくつかの楽曲の一部はSNS等で公開されていたものの、作品としてはまだリリース前。そんな状況下で、MizinkoFacTとして初パフォーマンスとなる楽曲の数々が繰り広げられていった。
「とにかくオモロいことをしたい」「想像の斜め上をいくオンリーワンを目指したい」と、口癖のように言い続けてきたNaoだが、その言葉通り、彼自身が日常の中で感じたことをストレートかつコミカルに描いた歌詞がMizinkoFacTの軸でありながら、サウンドは一切の妥協がない高いクオリティであることが当夜のステージで証明されることとなった。
この日、2回披露された「YA-BYE!!」は、Naoの振り付けもありながら〈ヤバいバイバイバイ〉のリフレインでオーディエンスとともに飛び跳ねる、ご機嫌なダンスチューン。歌い終えたNaoが「もう息切れよ…(笑)!」と漏らし、フロアから笑いが起きつつ、「この曲、思ったよりカッコよくない?」と、ご満悦の様子も。一度聴いたら忘れられない、なんとも中毒性の高い1曲で、今後ライブの鉄板にしていきたいとのこと。8月中にはMVの公開も予定されているという。

「Naoが“なお子”だったら、こんな恋愛観かなという結構怖い曲」との曲紹介から始まったのは、跳ねたリズムに乗せて恋煩いを歌った「四丁目のあの角を曲がった貴方の家」。次いで、タイトル通りの歌詞に、キャッチーかつ楽器陣のプレイが冴え渡るロックナンバー「匂わせ」。カラーの異なる女性目線の2曲を披露すると、Naoが「匂わせ」について「こんな歌詞なのに、曲が壮大過ぎて(笑)。メンバー内ではこれもMVを撮りたいと話している」と述べたのだった。
中盤で披露された2曲のカバーは、いずれもNaoおよびMizinkoFacTにとって特別な意味を持つ楽曲。「弾き語りで結構歌っている曲。この曲をやり出した頃から、Naoの方向性が変わってきた。つまり、これがあったからMizinkoFacTが始まったとも言える」と語った、「POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜」(反町隆史)、そして「MizinkoFacTに影響を与えた、いや、生み出した曲なんじゃないかと。自分がソロをやるうえで、歌詞と気持ちがリンクする」という「ファイティングポーズ」(50TA)。だからこそ、この日のステージでも披露したかったのだという。
その後「素敵なんだけど、何か物足りないなという女心を歌った曲。こんな歌詞なのに、サウンドはめっちゃカッコいいのよ! 結構テンポが速くて盛り上がる曲です。V系で言うオイオイ系」という言葉から終盤で披露された「ごめんなさい。」では、「それじゃあ、飛ばしていくぞ!」とV系らしい煽りも飛び出し、Naoがセンターお立ち台に上がる場面も。まさにV系ファンには馴染み深いノリのナンバーで、フロアに拳が上がった。

「今日が近づくにつれて、無謀なことをやっているのかな、間に合うのかなと不安だったけど、サポートメンバーが向き合ってくれて、皆が応援してくれて、この日を迎えられました。俺が歌い出した理由は、ドラムだけで人生終わりたくない、もっと音楽を知って死にたいと思ったから。音楽的に成長したい、それが最終的にドラムに返ってくるなと。やるからには本気でやるんで、Zepp目指します! ミジンコでも頑張ればやれるんだということを見せたい。笑う人もいるかもしれないけど、大丈夫。3年後に笑っているのは、俺たちだから。これからも無限についてきてください!」
本編ラストナンバーを前にこう語ると、当夜のタイトルの由来でもあり、身近にある小さな幸せを歌った「しあわせの爆弾」をもって、温かな本編の締めくくりとなった。
そして、改めてファンへの思いを語ったのはアンコールでのこと。「人生すごく挑戦している感じがして、大変だけど楽しいです! 1ドラマーの俺を見てくれて、応援してくれて、MizinkoFacTを始める勇気をくれた、背中を押してくれたのは皆なので、今度は俺が皆の背中を押せる存在になりたいと思います」――そんな言葉に続いて届けられたのは「REUNION.」。そのタイトルや聴こえてきたリリックから、バンド凍結後の現状を綴ったようなリアリティのあるメッセージとして響いてきたのが印象深い。
「まだまだヴォーカルとして未熟ですけど、必ず皆に素敵な景色を見せるので、これからも無限についてきてください!」と、最後にMizinkoFacTの始まりの曲「察して彼女」を再プレイし、記念すべきデビューライブは終幕を迎えたのだった。なお、この日のステージ上で、9月にシングルをリリースすることを突如発表、さらに12月にスリーマンライブの開催が決定していることを匂わせる一幕があったことも記しておこう。
Naoにしか生み出せない、オリジナリティ溢れる世界が広がるMizinkoFacT。それは紛れもないオンリーワンだ。この先もきっと、彼は多くの人を笑顔にしてくれるだろう。この唯一無二のソロプロジェクトが、これからどのような展開を見せてくれるのか、期待したい。

◆セットリスト◆
01. 察して彼女
02. YA-BYE!!
03. 四丁目のあの角を曲がった貴方の家
04. 匂わせ
05. POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜(反町隆史)
06. ファイティングポーズ(50TA)
07. ごめんなさい。
08. YA-BYE!!
09. しあわせの爆弾
En
01. REUNION.
02. 察して彼女
(文・金多賀歩美/写真・Takuya Ohashi(NEXT DECADE))