2024.08.07
HELLBROTH@高田馬場CLUB PHASE
ONEMAN TOUR2024「Funeral for a Replica」

2021年に、夢人(Vo&G)、千歳(G)、てら(B)、大熊”けいと”邦夫(Dr)と、癖強な4人の強者共が集まりバンドが誕生。最新作の『レプリカ』を含め、これまでに3枚のシングル、2枚のミニアルバム、2枚のアルバムとハイペースで作品をリリース。東名阪を中心に精力的にライブ活動を重ねながら、HELLBROTHは自分たちを強靱な姿へと磨き続けてきた。

HELLBROTHは、7月に2ndアルバム『レプリカ』をリリース。同作品を手に、HELLBROTHは東名阪を回るワンマンツアー「Funeral for a Replica」を実施。同ツアーのファイナル公演が、8月7日に高田馬場CLUB PHASEで行われた。その日の模様を、ここへ記したい。

フィルムの廻る音が場内へ響きだす。そこへ折り重なった、ノスタルジーな匂いを覚える音色。その音は、この場にいる人たちから現実を切り離す。舞台の上にはメンバーたちの姿が。やがて開演のブザーの流れる音を合図に、HELLBROTHのライブは幕を開けた…。

シューゲイズな千歳のギター演奏の上で、夢人が今宵の物語を語るように歌いだす。始まりを告げたのが、最新アルバムの冒頭を飾った「モノローグ」。曲が進むにつれて熱を上げる歌や演奏に触れ、フロアにいる人たちも次第に手を高く掲げ、ステージの上からあふれでる音の物語へ心地よく身を預けだす。上がり続ける熱とビート。同じように気持ちも沸き立つ。さぁ、このまま胸を揺さぶる世界まで連れていってくれ!

荒々しいドラムロールを合図に飛びだしたのが、「PLAN.B」。躍動する楽曲と夢人の煽る声に誘われるよう、フロア中の人たちが、その場で勢いよく飛び跳ねる。気持ちが騒ぐなら、駆けるビートに合わせて飛び跳ね続ければいい。身体がむずむずするのなら、彼らの演奏に合わせて手を左右に大きく振り続ければいい。それが、この場に生まれた楽しむためのルール。夢人の「JUMP JUMP」の声も嬉しく胸を騒がせる。4人は「オーケストラ」を演奏。彼らの誘いに合わせて、心踊る音が渦巻く空間の中へ飛び込め。高く右手を上げて跳ね続けろ。HELLBROTHが奏でる興奮へ導く音楽の交狂曲は、理性を消し去り、心も身体も自由にしていく。

夢人

MCでは、親しみやすくも緩い姿も提示。この日より、新衣装姿でのライブなのも嬉しい。

「俺たちの始まりの1曲」の言葉に続いて演奏をしたのが、活動初期からライブの中に楽しい空間を描き続けてきた「Voyage」。演奏に合わせて飛び跳ねる人たち。でも、攻めたスリリングな演奏の上で朗々と夢人が歌うたび、その姿を心と視線が追いかける。歌を口ずさみながらベースを奏でるてらの姿も印象的だ。

大熊”けいと”邦夫の叩き出すビートに乗せ、てらのベース演奏が攻めだした。千歳の歪む攻撃的なギターの音に乗って、夢人が「HALF」を歌いだす。凛々しくも荒々しい演奏に刺激を受け、観客たちは気持ちを前のめりに音を求めていた。言葉のひと言ひと言へ強い意志と色を与える夢人の歌声も、印象的だ。大熊”けいと”邦夫のドラム音を合図に、「最後の絵画」へ。1曲1曲が、絵画や短い映画のように、強い存在感を与える。一つ一つの楽曲が持つ世界観へ気持ちがスーッと引き寄せられるのも、彼らが心の琴線を鳴らすどころか、ガッとつかみ、みずからの世界へぐいぐい引っ張っていくからだ。舞台の上からあふれでる音や歌声を零したくなくて、何時しか心の手でしっかり受け止めていた。

夢人の歌声が、瞬時に心を惹きつけた。言葉の一つ一つに哀愁や郷愁を覚える。その思いへ、演奏陣が淡い彩りを与える。「distless」の演奏中ずっと、夢人が歌う言葉の奥に潜む思いをもっと深く知りたくて、ずっと耳を傾けていた。「午後の日さよなら」では、演奏陣が芯の太い音の絵筆で次々と凛々しい絵を描けば、太い音が躍るカンバスの上へ、夢人が、攻めた表情を持ちながらも繊細さを持った歌声の絵筆で、闇にさいなむ一人の人物の物語を塗り重ねていた。

世界観を持った曲を次々奏でながらも、MCでは親しみやすい隣の兄貴たちになるところも、彼らの魅力。MCでは、「今回のライブや衣装のテーマは”お葬式”」と語っていた。この日、背景に吊るした白い布の数々は、千歳が手がけたそう。

「ここから(のブロック)がサビ」と語る夢人。その言葉を受けて奏でたのが、「ステンドグラス」。まるで出来立てのポップコーンのように、攻撃的ながらも弾けた演奏が炸裂。その上で、ポップな彩りを持った夢人の歌声が、晴れた景色を塗り重ねる。楽曲が華やぐのに合わせ、フロア中の人たちも、その場で思いきり飛び跳ね、この空間へ、野外のロックフェスのような一体化した景色を作りだす。HELLBROTH流の灼熱した演奏に乗せて、一緒にはしゃぎ倒せ。全体的にクールな音楽性を持っていながらも、内なる衝動に火がついたとき、こんなにも華やいだ様を見せるのが嬉しい。続く「真贋」では、夢人の煽る声に合わせ、場内中の人たちも声を荒らげ、その場で跳ねる。荒々しく攻めつつも、気持ちを楽しくアゲる演奏だ。ときに飛び跳ね、ときに左右に手を大きく振りながら、その歌声や演奏に身を任せていたら、彼らと同じように気持ちが熱くなっていた。

千歳

歪む音を響かせ、猛り狂う千歳のギターソロ。その後、スラップを効かせた重いベース演奏をてらが披露。千歳が、てらが、それぞれギターやベースを背負って演奏をするなど、互いに荒ぶる演奏をぶつけあうバトルを展開。そこへ、大熊”けいと”邦夫の演奏も加わりだす。そのセッションへ夢人も参加。「Oi!Oi!」と熱い煽りを通して、観客たちと一体化した景色を作りあげる。そして…。

てら

「ぶっ殺してやる」の声を合図に「監獄」へ。猛々しい演奏に乗せ、フロア中の人たちが、拳を振り上げ、声を荒らげ、その場で大きく飛び跳ねる。夢人もカオスな演奏の上で、がなるように声を歪ませ、荒ぶる声で観客たちを煽り出す。雄々しき野獣と化した4人の演奏へ負けずと、観客たちも身体を折り畳み熱狂。気持ちを熱く激しく揺さぶる演奏に乗せ、熱情した拳でこの場を熱く染め上げたい。さらに激しさと勢いを加えるように、HELLBROTHは『現実逃避行』を突きつけた。音の刃で身体を切り裂くようなザクザクとした演奏の上で、夢人が心狂わせるドラマを歌い語る。夢人の歌と千歳のギターソロに合わせ、フロアのあちこちで手の華が咲く。激しさを抱きながら、楽曲はどんどん華やぎだす。この場に生まれた熱狂を、何時しか笑顔で掻き集めていた。

「モンスター」の演奏を合図に、フロア中の人たちが左右にモッシュ。夢人が熱狂を作り出すコンダクターとなり、観客たちを左右に走らせる。サビでは、興奮した観客たちが手にしたタオルを振り回す。いつの間にかこの会場が、夏祭りの場に変貌。騒げや踊れやではないが、この場にいる誰もが夏に惑わされたモンスターになり、HELLBROTHの演奏に合わせて、全力で祭り上がっていた。もっともっと走らせてくれ、もっともっと狂わせてくれ。
 荒れ狂うてらのべース演奏へ、ソリッドかつハードな千歳のギターが噛みついた。『Joker』に合わせ、メンバーらが煽りだす。ヒートアップした演奏に合わせ,拳やタオルを振り回し熱狂する観客たち。その様を見て、さらに煽るメンバーたち。終盤には、フロア中の人たちが折り畳みに興じる場面も登場。このまま限界を超える領域まで、楽しい気分のまま連れ出してくれ!

「足りねぇよ、もっとこいよ!」と煽る千歳。彼の感情のストッパーは、とっくにぶち壊れていた。激しく頭を振り乱す様を作り上げたヘドバンナンバーの「ドラマ」でも、彼らは歌系の表情の中へ荒ぶる要素を次々と詰め込み、観客たちを飛び跳ねさせる。気持ちを熱い高揚へ導く歌と爆裂疾走する演奏を重ね合わせ、HELLBROTHはこの場にいる人たちを、熱狂に溺れる無邪気な少年少女に戻していった。これこそが、HELLBROTHが作り上げた熱狂をむさぼり喰らう楽しい音楽の楽園。その様を示すように、HELLBROTHは「ラクエン」を演奏。さぁ、冷めない熱を抱いたまま上がれ、上がれ、上がり続けろ!

ライブの最後に奏でたのが、2ndアルバム『レプリカ』でも最後を飾った「LINK」。火照った気持ちを優しく揺らす演奏だ。ここまで共に作りあげてきた熱狂と興奮を、改めて身体の内へしっかり染み渡らせるように、誰もが「LINK」の演奏に触れながら、この日の記憶を、心のフォルダへ納めていった。

大熊”けいと”邦夫

アンコールは、HELLBROTH流のダンスロックナンバー「灰泥」から。夢人の手の動きに合わせ観客たちが手振りを真似れば、疾走躍動する演奏に乗せ、その場で飛び跳ねだす。サビ歌では、フロアのあちこちに花咲く景色も誕生。1曲の中、次々と表情を変えながら、HELLBROTHはふたたびこの場に熱を満たす環境を作りだしていった。最後にHELLBROTHは、会場中の人たちとシンガロングしてゆくエモチューンの「プラネタリウム」を演奏。歌心を持った楽曲を通して、この場に心地よくもエモい空間を作り上げ、一緒に胸を熱く燃やしていった。さぁ、この道を、今度は何処へ繋げていこうか。

止まないアンコールの声を受け、ふたたび舞台へ。「殺しますよ」と煽る言葉に相応しく(?)最後にHELLBROTHは、歌心あふれた開放感たっぷりの「Contact」を通し、この場に足を運んだ仲間たちと気持ちのチューニングを一つに合わせ、満面の笑顔が咲き誇る景色を作りあげていった。場内中の人たちが、無邪気な笑顔で大きく手を振る景色が眩しい。メンバーと観客たちが同じ気持ちと景色を共有したとき、そこには心を笑顔で満たす素敵な場が生まれる。みんながくしゃくしゃの笑顔で大きく手を振り飛び跳ねれば、その様を笑顔で抱きしめるように4人が歌い演奏をする。その姿が忘れられない。いや、忘れたくない景色として強烈に心へ焼きついた。

HELLBROTHは、秋から新たな全シングルを手に、メンバーの地元を廻る全国ツアーを行う。そのツアーでは、この日のライブでテーマにしていた「お葬式」の続きとなる物語が描きだされる。点と点をつねに線として繋ぎ、一つの物語として綴り続けるHELLBROTH。この日の続きとなる真っ白なページに、また一緒にカラフルな物語を記そうじゃないか。

◆セットリスト◆
01. モノローグ
02. PLAN.B
03. オーケストラ
04. Voyage
05. HALF
06. 最後の絵画
07. distless
08. 午後の日、さよなら
09. ステンドグラス
10. 真贋

〜てらVS千歳〜
11. 監獄
12. 現実逃避行
13. モンスター
14. Joker
15. ドラマ
16. ラクエン
17. LINK

En
01. 灰泥
02. プラネタリウム
03. Contact

(文・長澤智典/写真・Tomoya Baba)


HELLBROTH オフィシャルサイト