2014.12.30
黒夢@なんばHatch
「TOUR 2014-2015 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.2『毒と華』」
〈TOUR 2014-2015 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.2 『毒と華』〉を展開中の黒夢。全国各地で最高の記憶を刻む中、12月30日の大阪・なんばHatch公演もまた特別に輝く夜となった。
カリスマたちの登場を今か今かと心待ちにしているオーディエンス。時計の針が午後7時を指す頃、突如場内が暗くなり、彼らの心は一気にひとつになった。「大阪ー!」の第一声でフロアを煽る清春。王国はいきなり揺れに揺れている。彼らのライブに訪れるたびに楽曲のバラエティの豊かさに感心するのだが、この日も恍惚とする場面が幾度も訪れた。「Love Me Do」の歌詞中の「天国」を「大阪」に替えて歌ったり、「REASON OF MYSELF」をアコースティック・バージョンで披露したりと多様な魅力で観客を虜にする黒夢。午後8時45分頃に本編が幕を閉じるまで、彼らは“2014年の今”の充実ぶりをおおいに見せてくれた。
数分後、観客の要求に応えて、再びステージに登場するメンバーたち。ここで清春の口からいつになく緊張感と高揚感の漂う言葉が放たれた。「今日来た人にサプライズがあります。ちょっと僕らもびっくりしているんですけども。いつもゲストがいらっしゃるときは敬意をこめているんですが、今回は僕らのレベルを超えています。日本が生んだ世界的なバンドの世界的なギタリスト! LOUDNESSからAKIRA TAKASAKI!」絶叫で包まれるなんばHatch。オーラをまとった高崎晃がオーディエンスの前に現れる。「1曲いくよー!」という清春の導きによって、激烈に奏でられたのは「ANARCHY IN THE U.K.」。黒夢と高崎晃が同じステージ上でSEX PISTOLSをカバーする。まさに今ここでしか観られない稀有な光景だ。清春と人時。さらにはサポートメンバーのK-A-Z(G)とYOUTH-K!!!(Dr)。踊り狂うように演奏する全員の顔が少年のように輝いていたことは、オーディエンスの記憶から一生離れないだろう。
このスペシャル・ゲストの登場は、もちろん事前に告知されていなかった。清春も述べていたように、対バンとしてではなく、飛び入りで高崎晃が参加したということに大きな意味がある。今の黒夢には、かつて想像しなかったことが何でも起こりうる。残るツアー会場にできる限り多く訪れて、その凄みを確かめてほしい。
燃料が投下されたかのように、続く「SUCK ME!」から更なる盛り上がりを見せる。気がつけば、時計は午後10時付近を指していた。3度目にして最後のアンコールの「棘」「For Dear」「Like @ Angel」は、このツアーの中でも特に印象深いシーンとなった。清春がMCで少し触れていたように、実はこの日の黒夢の二人の体調は万全なものではなかった。彼がやむを得ずステージ袖に下がったときに人時が長く語ったこのツアーに対する想い。その真摯さに、この夜大阪に集ったファンは胸を打たれたことだろう。サプライズ・ゲストの高崎晃に対する敬意はもちろんのこと、清春と人時の互いを思いやる気持ちがそこかしこに窺える、かけがえのない時間だった。しっかりと抱き合う彼らの姿はただただ美しかった。
特筆すべきは、彼らを支えるオーディエンスの合唱に非常に気持ちが込められていたこと。ライブというものは、演奏する者だけでなく、その光景を見守る者が参加してこそ完成するのだと改めて気づかされた。二度と訪れることのない時間を愛する、最後のロングツアー。バックドロップに書かれた「OUR KINGDOM」の文字がいつも以上に鮮やかに目に飛び込んでくる大阪公演だった。
◆セットリスト◆
SE. ZERO
01. I HATE YOUR POPSTAR LIFE
02. CLARITY
03. A LULL IN THE RAIN
04. heavenly
05. Love Me Do
06. 奴隷
07. Let’s go down the street
08. REASON OF MYSELF(ACO.)
09. Glass Valley’s Oar
~ BASS Solo ~
10. Starlet
11. アロン
12. ミザリー
13. ゲルニカ
14. LEAP
15. BARTER
16. C.Y.HEAD
17. SICK
<ENCORE1>
18. ANARCHY IN THE U.K.
19. SUCK ME!
20. ROCK’N’ ROLL
21. CANDY
<ENCORE2>
22. autism
23. 後遺症
<ENCORE3>
24. 棘
25. for dear
26. Like@Angel
(文・志村つくね/写真・今井俊彦)