2014.11.15

黒夢@名古屋ダイアモンドホール

The second coming of 1996 『BOYS ONLY』

 

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デビュー20周年のアニバーサリー・イヤーを駆け抜けている黒夢が、11月15日、名古屋ダイアモンドホールで『The second coming of 1996 BOYS ONLY』と銘打ち男限定のライブを行った。

 

会場内に入ると、オールスタンディングのフロアに詰めかけた800人強の発する熱が充満している。この空気は久しぶりだ、と思う。遡ること1996年6月15日──黒夢は旧赤坂BLITZでBOYS ONLYライブをやっている。今でこそ数々の男限定ライブが行われているが、当時、メジャーシーンの先端に居るロックバンドがBOYS ONLYをやることはまずなく、彼らがその後の流れを作ったと言える。黒夢がシーンに付けた爪痕のひとつなのだ。

 

今夜のダイアモンドホールには、当時をリアルタイムで知っている年齢層の人、映像や文字情報でそういうことがあったことを知ったであろう若い層も居る。

 

18時30分。BGMが切り替わり、客フロアの電気が消えると、“ウォー”という地響きのような野太い歓声が轟く。そんな中、サポートミュージシャンのK-A-Z(G)、YOUTH-K!!!(Dr)、そして人時、清春が定位置に着く。モニターに片足をかけた清春が「名古屋ー!!!」と叫んだのを合図に、刺々しいサウンドが放たれる。オープニングナンバーは「FAKE STAR」だ。高かったオーディエンスのテンションのさらに上を行く、演奏と歌。人時が前後に体を大きく降りながらベースを弾く。清春が足でリズムを取りながら叫ぶように歌い、そしてカップの水を観客フロアにブチ撒ける。これに観客も「Oi Oi Oi」と声を上げ、拳を振り挙げて、食らいつく。

 

続いたのは、今の黒夢が生み落とした1曲「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」。“Hate, Star life”と清春は歌う。初めてBOYS ONLYライブをやったのと同じ1996年に彼らは「FAKE STAR」を世に出し、そこで金が目安の歌詞や買収した人気が本物とされるなら僕はニセモノの不適なFAKE STAR、と言い切ったわけだが、その頃と黒夢の二人の根っこにある大切な気持ちは、何も変わっていない、と改めて感じる。その嘘のニオイがない音楽に、オーディエンスは、古い曲、新しい曲の境なく、夢中になって歌い、跳ねている。

 

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「ハロー、名古屋。待ってましたBOYS ONLY、今日は女子の目を気にすることなく、日本中で一番最悪の日にしましょう」

親愛の情が溢れる清春のMCから、ライブはさらにヤバさを増していく。鋭い言葉の連射とメロディを自由に行き来する「D.P.I.D.C」、イントロのモールス信号の音だけで会場がどよめいた「S.O.S」、深いグルーヴとスリリングなサウンド&歌が同居した「MIND BREAKER」……人時のソロを挟みながら、“日本中で一番最悪”という名の、極上の時間を作るために用意された激しい曲が矢継ぎ早に浴びせられる。

 

「君たちの声が大きくて演奏が聞こえません。すごく歌いにくいです」

清春はそう言って笑うが、実際、正確に演奏し歌うことを考えると、環境はベストではない。でもそこは問題ではなかった。百戦錬磨のミュージシャン4人とオーディエンスは心を重ね、声を重ね、リズムを合わせて、この上なく強靱な“音楽”を会場全体で作っていく。室内の温度と湿度はどこまでも上昇していく。本編最後の「Sick」の頃には、フロアの中央ではサークルモッシュとウォール・オブ・デスが自然発生し、ステージ前方ではグランドサーファーがゴロゴロと転がっている、という状況が生まれる。

 

サークルモッシュもウォール・オブ・デスも、1999年に黒夢が休止した頃には日本にはなかった(清春も終演後「ああいうのなんていうのかしらないけど」なんて言っていた)。この様々なノリが自由に混在する光景は、昔からいるファン、若いファン、どちらもが、自分が今この瞬間、熱くなっていることを表現せずにはいられなかった、ということの現れだった。

 

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世代を超えて同性を熱くさせられる理由、しかも昔からのファンにとっては長い年月変わらず心を重ねている理由は、2度目のアンコールに応えた後、清春が言ったこの言葉の中にあったように思う。

 

「40歳代になるといいですよ。たぶん、流行にすぐ飛びつく若者よりも、俺らみたいなおじさんの方がカッコいいぜ。激しい若手バンドに男の子が集まるのは当たり前過ぎてつまんないじゃん。でもお前らは俺が観てほしいところをちゃんと観てるからすごく幸せよ」

 

「Unlearned Man」という長年観ている者でさえほとんどライブで体感したことがないであろうレアな曲で再びサークルモッシュが起こり、同時に跳ねている連中も、ダイヴするヤツも居るという状況が訪れる。そんな突き動かされたエネルギーは、4度目のアンコール、「少年」と「Like @ Angel」に流れつく。モラルで縛られるこの世の中に逆らい、抜けだそうとする姿を歌った「少年」。この曲が演奏されるフロアには、拳を挙げる者、隣の者と肩を組む者達が居る。そして、誰もが心の底から歌っている。ドラムとギターの音が消え、人時のベースの音、清春の歌も止まった中、観客だけが歌う時間が続く。その様子を観て清春が言った。

 

「名古屋、覚えといて! これが黒夢です」。

“観てほしいところを観ている”とはこういうことだ。黒夢の音楽には聴く者を熱くさせる激しさがある、ヘビーさがある。歌詞には、セックスソングもあり快楽もある。でも同時に、大人になろうがなくせない大切な想いがあり、それを侵されそうになれば闘う意志がある、そんな彼らを語る上では外せない最も重要な部分を彼らのファン達は強く察知し、それぞれの想いを重ね続けているのである。

 

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トータル31 曲。激ヤバな曲ばかりをプレイした3時間ものライブも終演を迎えていた。

「Like @ Angel」が終わり、限界を超え少しふらつきながらも笑顔でいる人時と清春が手を繋ぐ。K-A-ZとYOUTH-K!!!がそれに加わり、繋いだ手を3度、4度と挙げる。そして清春が言った。

 

「横のヤツと手を繋いでくれ」

間髪を入れずフロアに居るオーディエンスが横に居る者と手をつなぐ。ステージの4人がもう一度手を挙げるとそれに合わせて、フロアのすべての人が手を挙げる。

その景色は、涙腺をチクリと刺激した。

そしてこう思った。「これが黒夢だ」と。

 

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◆セットリスト◆

SE diary of a mad man / Ozzy

01. FAKE STAR

02. I HATE YOUR POP STAR LIFE

03. CLARITY

04. D.P.I.D.C

05. S.O.S

06. MIND BREAKER

07. 解凍実験

08. 13new ache

09. BLAND NEW LOVELESS

10. autism -自閉症-

11. カマキリ

~ 人時 BASS Solo ~

12. MASTURBATING SMILE

13. FASTER BEAT

14. SPOON & CAFFEINE

15. BARTER

16. C.Y.HEAD

17. BAD SPEED PLAY

18. 後遺症

19. Sick

 

<ENCORE 1>

20. Born to be wild

21. FREE LOVE, FREE SEX, FREE SPEECH

22. heavenly

23. DISTRACTION

<ENCORE 2>

24. LAST PLEASURE

25. ROCK’N’ ROLL

26. CANDY

<ENCORE 3>

27. Unlearned Man

28. CHANDLER

29. 親愛なるDEATH MASK

<ENCORE 4 >

30. 少年

31. Like@Angel

 

 

(文・大西智之/写真・今井俊彦、青木早霞)