2014.5.24
PENICILLIN@SHIBUYA-AX
「リクエストライブ REAL FINAL AX」
2000年12月のオープン以来、多くのアーティスト、音楽ファンから親しまれてきたSHIBUYA-AXが、その歴史に幕を下ろす日まで一週間と迫った5月24日、PENICILLINが「リクエストライブ REAL FINAL AX」と冠したライブを行った。文字通り、彼らの最後のAX公演となったこの日は、そのタイトルにあるように、事前にリクエストを募り、その投票結果でセットリストを決めるという、一夜限りのプレミアムなライブでもあった。
2011年に発表されたアルバム『WILL』の1曲目かつタイトル曲「WILL」が今宵のオープニングを飾る。〈出逢いと別れを刻み〉〈本当の気持ちを歌うから〉と歌うこの楽曲に、常に音楽と真っ直ぐに向き合ってきた彼らの姿がリンクする。2曲目には早くも代表曲「ロマンス」をプレイ、そして、後に千聖(G)が「アルバム(1996年発表『VIBE ∞』)の収録順と同じ曲順で、自分で感動してる」と語った「REAL×××」「Imitaion Love」が立て続けに披露され、ライブ序盤とは思えぬ盛り上がりを見せる。
「AXができた12月16日は、偶然にも僕の誕生日で。そうとは知らずに、いつもここでバースデーライブをやらせてもらっていて。オリンピックが終わって数年後、55歳くらいの時かな、もしもAXが復活したら、またここでやろうな」とHAKUEI(Vo)。そして、今回のリクエスト投票結果に関して「みんな、センスがすごくいいね! 最後にふさわしいセットリストだと思うので、楽しんでいってください」と語ると、1994年に発表されたPENICILLIN最初の音源『Penicillin Shock』に収録されている「冷たい風」を披露した。
「レアな曲になった瞬間、みんなの目がキラキラするんだよね。この日の「ロマンス」は帰ってこないのよ?」という千聖の言葉に、笑いが起こる一幕もあったが、サポートメンバーのHIROKI(B)が「唯一リクエストが通った曲」だという「花」や、メジャーデビュー曲「Blue Moon」は、この日のセットリストの中でもレアな楽曲だったのではないだろうか。また、シングル『Imitaion Love』(1996年発売)のc/wで、以前HAKUEIが「どちらかというとPENICILLINらしくない曲なので、きっとその当時変な目立ち方をして、(ファンの)心に残ってたのかな」と語っていた「Never Ending Story」が入っていたことも、なんともリクエストライブらしい結果だ。
そんな普段とは少し違う構成に、「いつも味わえないような形で僕らの歴史を振り返れて楽しいです」とHAKUEI。今宵のライブも既に後半戦、最新アルバム『瑠璃色のプロヴィデンス』収録のハードナンバー「快感∞フィクション」から、ライブ定番の暴れ曲「Quarter Doll」、4月12日に行われたツアーファイナルでは1曲目に投入された、勢いあるメロディアスなロックナンバー「イナズマ」を連投。O-JIROの力強いドラミングが土台を支え、縦横無尽にフロント3人がオーディエンスを煽り、ぐんぐんと熱を上昇させながら一気に駆け抜けた。
するとここで、「あんまり実感がなかったんだけど、急に寂しくなってきちゃいました。AX、ありがとう。次の曲はリクエスト1位の曲です。一番新しい曲が1位に選ばれて、AX最後の日にこの曲がやれて嬉しいです。メッセージがちゃんと届いていて、良い楽曲ができたのかなという自信にもなりました」とHAKUEIがその胸中を語り、バラード曲「少年の翼」を披露。場内は、穏やかで温かな愛と幸福に包まれたのだった。
アンコール、「螺旋階段」を披露する前にHAKUEIはこう語った。
「時代の流れを嘆くだけじゃなく、前に向かってしっかり進んでいきたい。今22周年で、色々なところで“長く続ける秘訣は?”と聞かれることが多くなったけど、こっちが聞きたいくらい(笑)。ただ、結成した時と何も変わってないです。一生懸命、音楽に取り組んできただけ。先を見て、未来にワクワクしながら突き進んで行く。そういうポジティブな気持ちがみんなにも伝わって、ガンガン進んで行けたら、良い人生になるのかなと。そういう気持ちを込めた、一番最初の曲がこの曲なんじゃないかなと思います。」
最後のAX、リクエストライブという2本の柱によって繰り広げられたこの日のステージだったが、そこに映し出されたのは、PENICILLINの22年間の歴史と、決して揺らぐことのない音楽に対する真摯な思い、結成当初から変わることのない圧倒的なエネルギー…まさに、“PENICILLIN”というバンドそのものだった。
最後に千聖は、「AXは永遠です! 僕らも永遠です! 墓場まで一緒に行きましょう!」とメッセージを贈った。その言葉は、不思議と何の疑いもなく受け入れられ、絶対的な安心感さえ感じてしまう。こんなにも刺激的なバンドであるにも関わらず。それは前述の通り、強固なものが彼らの根底にあるからに違いない。そんなPENICILLINが繰り広げる世界を、これからも見続けていきたい。
◆セットリスト◆
SE. WILL SE
01. WILL
02. ロマンス
03. REAL×××
04. Imitaion Love
05. 冷たい風
06. one star
07. 花
08. Never Ending Story
09. 花園キネマ
10. hyper chord
11. PHOENIX STAR
12. Blue Moon
13. 快感∞フィクション
14. Quarter Doll
15. イナズマ
16. 少年の翼
EN1
17. Blue Impulse
18. orb
EN2
19. 螺旋階段
20. Chaos
(文・金多賀歩美)